創業100年の石鹸メーカーの社長が登壇

倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。

仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。

倉貫:『ザッソウラジオ』は倉貫と、「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、「雑な相談」の「ザッソウ」をしながら、ゆるくおしゃべりしていくPodcastです。

今回で、なんと『ザッソウラジオ』は90回目ということで、記念すべきゲストは、大正13年創業の木村石鹸工業株式会社の代表取締役社長・木村祥一郎さんです。よろしくお願いします。

木村祥一郎氏(以下、木村):よろしくお願いします。木村石鹸の木村です。

倉貫:初めに、いつも通り木村さんをご紹介してからお話に入りたいと思います。木村さんは1995年に大学時代の仲間と起業されて、約18年間商品開発やマーケティングなどをご担当されてきたと。ITの会社ですかね。その後、家業の木村石鹸に入社されて、2016年9月からは4代目の社長に就任されています。

木村石鹸工業株式会社は大正13年に創業した石鹸のメーカーで、2018年に規模は小さいけれども可能性を秘めた企業を発掘する、Forbes JAPAN主催のプロジェクト「SMALL GIANTS AWARD 2019」のベスト7社に選定されました。職人の方たちが、昔ながらの手作業による釜炊きで石鹸の製造を行っていることも特徴です。

ちょうど僕、今回木村さんがゲストに出るという話で、木村石鹸さんのサイトを見て、『ザッソウラジオ』で冷蔵庫の話をしていた時だったから、「製氷機、いいよね」みたいな(笑)。「製氷機に洗浄剤があるんだ」と教えてもらって。「いや、これを使おう」と思って買って。

木村:めっちゃうれしい。ありがとうございます。

倉貫:ついこの間洗浄したところでした(笑)。

木村:ありがとうございます。

ほぼ「はじめまして」で『ザッソウラジオ』のゲストを快諾

倉貫:今回は、僕と木村さんははじめましてで、がくちょと木村さんつながりで来ていただいたということですけど。

木村:そうですね。

仲山:そうですね。

倉貫:がくちょとの馴れ初め的なところからいきます?

木村:言ってもがくちょとリアルで会ったの、たぶん15秒ぐらいですね。

仲山:(笑)。ICCというビジネスカンファレンス。

木村:そうです、ICC。

仲山:ですよね。それで僕が、コロナになってからリモートでワークショップをやらせてもらっていた時に、そこに木村さんが参加してくれたのが最初の「はじめまして」みたいな感じで。

木村:受講させていただきました。ただ、その時はリモートだったのでリアルにお会いしたことはなくて、やっと京都のICCで、初めてすれ違ったという(笑)。

仲山:すれ違って、「あ、木村さんだ」と言って(笑)。

木村:「あ、がくちょだ」って。

仲山:ちょっと僕は移動中だったんですけど、「こんにちは」と言ってちょこっとしゃべった時に、「今度『ザッソウラジオ』のゲスト、どうですか?」と言って、「いいですよ」って快諾をいただいたっていう(笑)。

木村:本当にその会話だけをしたっていう。

倉貫:コロナになってからだから、そんなに昔じゃないですね。

仲山:ぜんぜん。

木村:はい、ぜんぜん。

仲山:ちゃんとしゃべったのもなくて、今日が初めてちゃんとしゃべる。

木村:そうですね。

倉貫:マジですか。じゃあ、ほぼはじめましてじゃないですか。

木村:だからこれは知り合いと言えるのかとちょっと思っていたんですけど。申し訳ないなと。

仲山:はじめましてです。

倉貫:僕は完全に木村さんとははじめましてですけど。

仲山:さっき始まる前の楽屋トークで、木村さんが「ソニックガーデンはだいぶ前から知っていた」って。

倉貫:がくちょより先に知ってくれていたっていう。

木村:はい、がくちょよりもぜんぜん先で。たぶん木村石鹸に戻る前ですね。ITの会社をやっていた時に、ソニックガーデンの「納品のない受託開発」というのを知って。僕らも受託開発をやっていたので、「すごいサービスだな」と思って興味津々で見ていて。逆に羨ましかったんですよね。「いいなあ」と思って。

本も読ませていただいたりして、受託をやっている時のいろんな悩みが、「そういうかたちで解決しているんだな」って思って、「うまくいくといいな」と思っていました。

顧客のための提案が自分の首を締める、受託開発のジレンマ

倉貫:いやあ、うれしいな。僕らが2011年の創業で、木村さんは2013年に木村石鹸に戻られたっていうことなので、IT業界で2年ぐらい重なっていたという。

木村:そうですね。ぎりぎり重なっているタイミングで。今(前職の会社)は受託をやっていないんですけど。当時はけっこう受託メインでやっていて、受託のそういうサービスってけっこうジレンマに陥ることが多いなと思って。

人月で仕事をもらったり、あるいは僕らでいくとサイトの規模とかページ数とか、そういうので売上が決まったりするじゃないですか。でも実際には工数を減らしたり、例えばページを減らしたり、機能をもっとシンプルにしたほうが良かったりするものもあるのに、それをやると僕らの売上は減る。

倉貫:売上が下がっちゃうというね。本質的には作んないほうが良い提案もしたいけど、自分たちの首を絞めるような提案になるので、やりにくいみたいな。

木村:そうなんですよ。

倉貫:人月の世界の苦しさはありますよね。

木村:そういうもののジレンマを抱えていた中で、受託はやはり難しいねということで、自社プロダクトに変えていって、今は自社プロダクトの会社になっちゃったんですけど。ソニックガーデンさんが、まったく他では見たことのないようなビジネスモデルを提唱されたので、「すごいな」と思ってびっくりしました。

倉貫:いやあ、うれしい。その時に知ってもらっていたのが、10年ぐらい経って『ザッソウラジオ』に来ていただいてもらえたという(笑)。

木村:ありがとうございます。うれしいです。

前職のITの会社を経験して気づいたこと

仲山:しかもあれですよね。今、木村石鹸さんって「自律型組織」みたいな切り口で。

木村:そうですね。なので、倉貫さんの書かれた最初のほうの本があるじゃないですか。組織、マネジメントをしないとか管理しないとかって。

倉貫:ああ、管理しない(『管理ゼロで成果はあがる』)。

木村:あれとかは、かなりいろいろ参考にさせていただきました。

倉貫:うれしい、うれしい。僕も今回ゲストで来ていただくということで、はじめましてなので情報を見たいなと思って探したら、noteを書かれていますよね。けっこう更新されていて。僕自身、最近書いてないから、ちょっと身につまされながら読みましたけど(笑)。

木村:いえいえ。

倉貫:さっきの「自律型」みたいなところとか、話題になった記事で言うと、「自己申告型給与制度」みたいなやつとか。なんでしょうね、木村石鹸という、言ってみたらITでもないぜんぜん違う業界というか。

IT業界で自律型とかは、わりとスタートアップで言ったりもするのかなと思うんですけど、昔ながらの会社の中で自律型をやってきたというのは、すごくおもしろいなと思って拝見していたところではあるんですね。

木村:前職時代の後半に当たる10年から18年目ぐらいまでが、ビジネスとしてはうまくいってきたタイミングですけど、立ち上げから10年ぐらいまでのほうがめっちゃ楽しくて。

その時って、組織がぜんぜんなかったんですよね。それぞれが自分の知り合いを連れてきて、どんどん人が増えて、誰が何をやっているかもようわからんけど、なんかみんな同年代でけっこう楽しくやっていて。指示とか命令とか、そういう組織のルールがなくても、すごくみんなでうまくやっていけていた感覚がすごくあって。

それが人数が増えて、「やっぱり組織をちゃんと作らないと」ってなってくると、事業はうまくいき始めるけど、組織の人間関係とか部門間の調整とか、そういうところにすごく……。

倉貫:多少の窮屈さが出てきますからね。

木村:時間が取られたりとかするようになったなと思っていて。でも木村石鹸に戻った時って、人数的には立ち上げた頃ぐらいのサイズで、20人ぐらいだったので、自分の成功体験の時の、「何をやっていても、このメンバーでやったら楽しいな」みたいな感じになるといいなと。