アメリカから広まった金融不安、その背景は

赤池実咲氏(以下、赤池):今回、番組が社会人5,641人にアンケートを実施して、気になるニュースランキングを作成してみました。アンケートの結果はこちらです。

藤野英人氏(以下、藤野):おお~。

赤池:ウクライナの侵攻ですとか、インドが中国の人口を抜いたとか。あとは現行NISAが2024年から新NISAとして始まる。

藤野:意外と注目度は高いですね。NISAも。

赤池:そうですね。あとハリーポッターの施設が開業するとか、いろいろありましたけれども。

藤野:僕、ハリー・ポッターのことは知ってたんだけど、7位ぐらいにみんな関心があるのは意外。やっぱりハリー・ポッターは人気なんですね。

赤池:チケットは最初、(予約)開始10分で9万人待ちだったみたいですよ。

藤野:そうなんですね。

赤池:この中で三宅さんが気になるニュースはありますか。

三宅一弘氏(以下、三宅):2位の、アメリカの中堅銀行が経営破綻して、今後どうなっていくのか。銀行システムにかなり負荷がかかってきてますから、この先行きは非常に、私自身も注目していますね。

ナレーター:3月10日にアメリカのシリコンバレー銀行が経営破綻。これをきっかけに銀行破綻が連鎖し、世界中に金融不安が広がりました。一連の破綻劇の裏で、いったい何が起きていたのでしょうか。

赤池:藤野さんは、3月10日に経営破綻が起きた時に、運用チームで1回話し合ったりしたんですか。

藤野:そうですね。三宅さんを交えて、リーマンショックと比較してどういうことが起きているのか、チームで話し合いをして、今後緊張感を持って状況を見守ろうというふうにしました。

リーマンショックよりも静かに、一瞬で起きた「SNS破綻」

藤野:ちなみに、赤池さんはお金を支払う時、どうしてます?実際にATMに行ってますか?

赤池:いや、もう完全に電子マネーですね。スマホで決済してます。

藤野:今回、シリコンバレーが危ないかもしれないという話があった時に、シリコンバレーバンクの店舗に並んでる人なんていなかった。いないことはないんだけど、みんなスマホでやっていたんです。今回の新しい取り付け騒ぎは、スマホで静かに行われた。

赤池:ああ、人が並んでいればなんとなく「やばいな」って思うけど......(笑)。

藤野:やばいなっていう(危機感)はあるんだけど、それはスマホの取り付けだったんですね。全国でスマホの取り付けがあったんです。

要するに、シリコンバレーバンク以外の地銀でなんか危ないなと思ったら、1ボタンでお金を移せるじゃないですか。だから今回の金融危機は、リーマンショックの時よりもより静かに、一瞬で起きた。

だから政策当局の人も数字を見て本当に驚いていて。それで素早く対応した。土日の間に会議を重ねて、おそらく徹夜で、シリコンバレーバンクの救済策と、マーケットの安定策を図った。それによってパニックが広がらずに済んだということです。

僕らもその短期間の中で分析して、金融株を減らすとかいうことは行ったんだけれども。でも今回の教訓ということで、ネット時代、スマホ時代の新たな金融ショックのあり方をリアルで学んだかなと思いますね。

三宅:よく「SNS破綻」って言う。

藤野:そうですね。

赤池:へぇ~。もうそんな言葉が出てきてるんですね。

アメリカの地方銀行株は4割近く下落

ナレーター:では、ここで「SNS破綻」とも呼ばれるシリコンバレーバンクの経営破綻をきっかけに、アメリカで起きた金融不安について、今後どうなっていくのか。経済リサーチのスペシャリスト、三宅さんに解説していただきます。

三宅:3月の前半にアメリカの中堅銀行の2行が経営破綻になって、その後、この図にありますように、アメリカの地方銀行株が30パーセント以上、4割近く下落しました。

一方で、平均株価のほうは、実は堅調なんです。ですからその面では、今のところは、アメリカ株式市場全体には、この銀行破綻の問題は波及していないと言いますか。あまり悪い影響を与えてない。でもど真ん中のアメリカの地方銀行とか中堅銀行は、かなり大きな影響を与えられているということなんですね。

スイスの世界的な金融大手「クレディ・スイス」の信用不安で、こちらはUBSに救済合併されて、どうなるかということだったんですけれども、リーマンショック、2008年の世界金融危機の経験もあって、非常に迅速に世界の中央銀行がドル資金を供給をするとか。

あるいはスイス政府も豪腕を発揮するかたちで、UBSとクレディ・スイスを吸収合併させるというかたちで、一応、グローバルにも危機は止まっている。小康状態になっているというのが現状だと思います。

赤池:そもそも、3月10日にシリコンバレー銀行の破綻のニュースが出てから、ポンポンポンと、クレディ・スイスまで、ここもここもここも(破綻した)という印象があるんですけど。それぞれが関わり合ってるんですか? 

三宅:おそらくアメリカの問題と、スイスの問題が直接的(に関わっている)かと言われると、それほど直接的じゃないんですけれども。クレディ・スイスの場合、かなり長年にわたって経営が悪かった。一種のショックが起こった場合に、最も焦点になるところが、クレディ・スイスだったというかたちだろうと思うんですね。

隕石じゃないですけれども、石が池にどぼんと落ちましたと。その波紋で、最も影響が出たのが、今回クレディ・スイスだったというかたちだと思います。

銀行破綻の背景にあった「物価の急上昇」

赤池:銀行が潰れてしまうって、すごくショッキングなんですけれども。どういった背景があったんですか。

三宅:結局、今回コロナがあったじゃないですか。コロナに対応するために、アメリカの政府は巨額の資金を、家計とか中小企業に現金給付しました。一方、FRBの金融政策としては、大規模な金融緩和をやりました。

たかが2年間で、アメリカの商業銀行の預金残高が5兆ドル。日本のGDPってだいたい五百数十兆円ですから、日本一国のGDPぐらいの規模感が、一気に2年ぐらいで、アメリカの商業銀行の預金として増えたというわけです。

こういった金融緩和政策とか財政支出をやった結果、今問題になっているようにアメリカの物価がどんどんどんどん上がって、物価高騰です。去年の春からFRBは、金融政策として強烈な金融引き締めをやって、金利が上がっていったわけですね。

だからその面では、金利が上がって、安い時に投資していた債券の価格が急落する。

ナレーター:三宅さんによると、新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援金の給付などで預金が急増したため、物やサービスを買う人が増え、物価が急上昇。

インフレ率が40年ぶりの高水準に達したため、中央銀行が政策金利を引き上げて対応したのですが、この政策金利の引き上げによって、シリコンバレーバンクの(保有)債券価格が大幅に下落。巨額の含み損が、経営破綻の原因となりました。

三宅:銀行破綻で、自分の預金大丈夫かっていうのもあります。預金がどんどん今抜けていってるんですね。だから銀行にとってみれば、預金が抜けるわ、投資してたり貸し出していた資産に相当、損が出ているっていう事態になってるんですよ。

アメリカの銀行システムには、相当なストレスがかかってると言えるんだと思うんですね。

赤池:銀行が破綻してしまうと、企業とか個人がお金を借りたいと思ったらどうすればいいんですか。

三宅:それまでに、銀行とすれば、破綻しないように与信とかローンとかを非常に厳格化していくと思うんですよ。

赤池:本当に信用のある大きい企業とかじゃないと借りづらくなってしまうってことですか?

三宅:そうです。