「生成系AI」とともに出てくるキーフレーズ「LLM」

Brandon K. Hill氏(以下、Brandon):テクノロジーの話をちょっとだけ僕も勉強中なんですが、ここでキーフレーズ「LLM」も生成系AIとともに最近出てくるキーワードです。なんぞやと思ったんですけど、「Large Language Models」という英語の表現があります。

AIのエンジンになるような、たくさんの言語、何億という言語パターンとか、その仕組みを理解してくれるエンジンみたいなものです。これがあるからAIが駆動するという、そのコアになってる部分です。

これを作ってる会社が何社かあって、そこの恩恵にみなさんがあずかっています。検索エンジンがあったと思うんですが、これは「生成系AIエンジン」みたいな感じに近いのかなと僕は理解しています。

現時点だとけっこう強いのは3社です。数週間前からとても取りざたされているChatGPTとかはこのOpenAIという会社です。最近は日本のテレビでも特集されていますね。イーロン・マスクやMicrosoftも、OpenAI社にものすごく投資して一緒にやってる。

あと強いのはGoogleですね。もともと検索エンジンやデータはものすごく持ってるGoogleも、LLMを保有してます。ここ最近ではFacebookだったMeta社も実は頭角を現してきてまして、AIエンジンを持っていて、それも稼働し始めています。3社だったので三国志になぞらえています。

そういうLLMから生み出されてるのがChatGPTや、画像だったらStable Diffusion、Midjourney。BingというMicrosoftの検索エンジンのAIボットなどもあります。

急激にAIが発達したのは、コロナ禍の影響

Brandon:ほかにも有象無象で山ほどAIドリブンなサービスがあって、SlackやAdobe系にも実装されて、いろんなサービスにもどんどん今つながっています。始まったばかりの感じですよね。CopilotはMicrosoftのOfficeで使うものですね。

これにも僕はちょっと興味があって、「なんで急激にAIが発達したのか」という感じじゃないですか。いきなり最近出てきてる。

傍島健友氏(以下、傍島):確かに、すごいですよね。急にきましたよね。

Brandon:うちのCTOにも聞いて、なるほどなと思ったんですよね。重要なのはコロナ禍だって言うんですよ。なんでかというと、コロナ禍でみんな何したかと考えると、自粛規制、リモートワーク、リモートエデュケーション、オンラインサービス、Zoomミーティング。いろいろオンラインでやったんですよ。これでものすごく、ここ2、3年でデータが集まったんだって。

コロナの時期に、今やってる我々のこのZoomウェビナーも、全部データとしてZoom社にいってるじゃないですか。どういう時に人間が笑っているのかとか、背景がどんな雰囲気なのかとか。

また、Instagramで、自分の写真ですけど「Sunset:GOLDEN GATE BRIDGE」と書いてるのは、「ゴールデンゲートブリッジの夕焼けはこんな写真だ」という情報がAIにいくわけじゃないですか。「『Sunset:GOLDEN GATE BRIDGE』で文字入れて画像生成して」って言ったら、左みたいな画像がたぶん出てくるんですよね。僕はこういうことをAIに教えちゃってます。

コロナ禍の3年間で集まった大量の情報をAIが学習

Brandon:Meta社はFacebookとInstagramを持ってるんですけど、MicrosoftはTeamsがあったり、GoogleはGoogle Meetなど、各社にいろんなサービスがあるじゃないですか。Redditもあります。

ここ3年間でそういったものから文字、画像、映像、人間のリアルな表情、動き、しゃべりなど、ものすごい量の情報をAIに与え続けました。そうしてAIが水面下でどんどん開発されてて、コロナ明けの2023年に一気にバーンと出てきました。潜伏期間がずっとあったということです。

傍島:確かに、AIのエンジンが賢くなってたんですね。わかりやすい。

Brandon:我々がリモートでデジタルサービスをどんどん使ってる間に、人間のことをよく理解してくれるようになっているという。

傍島:怖いけどな(笑)。

Brandon:アナログだとなかなかできないんですけど、みんなカメラにも映って、声もちゃんとマイクを通してるし。写真も撮ってくれてるし、文字もタイプしてメッセンジャーとかでメッセージ送ってくれてるので、情報が世界中から集まってくれていたんですよね。それが最近、急激に発達したきっかけになったそうです。

Generative AIとメタバースの組み合わせでできることは?

小川りかこ氏(以下、小川):なるほど、ありがとうございます。ご質問が届いておりますので、Brandonさん、お答えいただいてもよろしいでしょうか。

まず1つ目、「btraxではすでにGenerative AIを使用していますか?」というご質問が来ております。

Brandon:使用しています。去年の末頃から実はデザインの現場で使用していて、最後に事例紹介で説明させていただきます。

小川:ありがとうございます。そして2つ目ですが「少し前までメタバースがはやっていましたが、Generative AIとメタバースを組み合わせると、どのようなサービスが生まれるとお考えでしょうか」というご質問です。

Brandon:どういうサービスができるかは、まだちょっと不明確です。ただ、メタバースの仮想空間や3次元空間などは、AIでジェネレートしやすくなるのは間違いないです。そして「こういうサービスができるかも」というのであれば、予測ですけれども、リアルタイムでどんどん世界が生成されていく。

地球は行けるところに限界がありますが、メタバース空間で生成系AIが後ろにあれば、どこに行ってもどんどん街や空間が広がっていくので。無制限にいろんなところに行ける世界、リアルタイムで生成される世界がサービスとして作れるのは想像できますよね。

小川:ありがとうございます。

技術に詳しければ詳しいほど、悲観的な意見も出てくる

小川:続いてはご質問というよりご感想ですかね。「『こたつにみかん』はおそらくペルシャのコルシから取ってきてるっぽい気がしますね」というご意見をいただいております(笑)。

Brandon:そうなんですね、わかりました。ペルシャのデータがそこで活用されてる感じなんですね。

小川:そうかもしれないですね。そして同じ方ですかね、「画像・音声生成は未来のある技術だと思う反面、フェイクニュースやプロパガンダに利用される可能性が高いと思っていて、逆にAIで生成されていないとか加工されていないことを証明するための技術も必要になってくると思うのですが、その分野の研究も進んでいるのでしょうか」というご質問です。

Brandon:デコードとかファクトチェックとか、そういうサービスとか仕組みもできるんじゃないかという話はあります。うちのCTOにこの話もして「ブロックチェーンなどでそういう証明を作っていけばいいんじゃないのかな」と僕が聞いたら「いや、下手するとAIがブロックチェーン作れちゃうから、それはまたいたちごっこになる可能性あるんだよね」と言われて(笑)。

傍島:おぉ、確かに……(笑)。

Brandon:ちょっと恐ろしいなと思って(笑)。技術に詳しければ詳しいほど、これに関してはけっこう悲観的というか、かなり緊張感を持って考えてると言われましたね。本当に危ないと言っていました。

傍島:AIが出てきた時から倫理的な問題は言われてますよね。人間より賢くなっちゃうんじゃないかという話も出ているので、ここは慎重にみんないくとは思います。慎重にいってほしいですよね。

小川:確かに。映画の世界のように人類が滅びないといいですけれど(笑)。

傍島:本当にありますからね(笑)。

Brandon:フューチャーリストで未来を予測する人によっては、かなり今後ちゃんとやっていかなきゃ危ないと言われてたし。今GPT-4が出たんですけど、進化していく過程のGPT-2の段階でOpenAI社が「あまりにもパワフルすぎて、世の中に出すのがセキュリティ上は危ないかも」と表明してたんですけど、GPT-3であっさり出しちゃって(笑)。実は、大丈夫なのかなとシリコンバレー界隈では言われてましたね。

シリコンバレーで得られるのは、「目利きの人」からの質の高い情報

小川:なるほど。そして次々とご質問が届いております。あと2問よろしいでしょうか。

「毎週、毎日のようにChatGPTの情報交換会などが行われていると聞きますが、この領域でやるにはネット情報よりもどのくらい速いですか? 移住の投資をやる価値はもちろんありますよね」ということです。

Brandon:現時点ではシリコンバレーにいて人と接して、その情報が入ってくるのと、ネット情報ってそこまで変わってないと僕は思ってるんですね。こっちに住んで何が良いかというと、情報量じゃなくて、質を正しくキュレートされた情報を「絶対これは正しいと思う」という目利きができる人と、直接会って聞けるところだと思うんですよね。

なので実はスピードと量は、ネットを介して見るのとそこまで差はないと僕は思ってます。精度が高いものとそうじゃないものを、特にこういう新しいものに関しては目利きできる人がシリコンバレーにはいて、そういう人からいただけるアドバイスとか情報は価値があるかなと思っていますね。

傍島:確かにね。せっかくクイズの画面が出ているので、クイズにいきましょうか。

小川:そろそろクイズにいきますか。では後ほど、またご質問をさせていただきます。お願いいたします。

この写真はリアルか? AIか?

Brandon:ここ1~2週間で僕が自分で撮った写真とか、違う方が撮った写真とか、AIで生成した画像を集めてきて「これリアルだと思う? AIだと思う?」というのを持ってきました。

12ページあったので、サクサク進めようかなと思ってます。みなさんけっこう馴染みのある映画の写真のように見えますが、これどう思いますか?

傍島:どうでしょう。リアルでしょうか、AIでしょうか? 終了しますね。結果をお伝えします。

小川:「AI」が75パーセントですね。

Brandon:みなさんすごいですね、さすがです。次は桜と舟。

小川:美しい。きれいですね。どちらでしょうか。「AI」が89パーセントですね。

Brandon:リアルなんですよね。フィルターとかあるからさ(笑)。これはAIっぽい写真が撮れた感じですよね。

小川:すごい、AIかと思いました。

Brandon:女性の写真でございます。

傍島:これもわからないですよね。

小川:(参加者の回答は)「AI」が67パーセント。

Brandon:これはAIですね。というかAIの答えが多いですね。片方が僕が撮ったリアル写真で、もう片方がAI生成なんですよね。

傍島:よく見てくださいね。

Brandon:これは僕が「AIっぽい写真撮れた」ってアップしたら「AIでも生成してみました」というのをいただいた(笑)。

小川:(笑)。

傍島:これは「左がAI」「右がAI」「両方AI」「両方リアル」の4択ですね。

小川:「左がAI」が59パーセントです。

Brandon:左がリアルなんですよね。左はこれ、僕がこの前オースティンで、テキサスに行った時に撮った写真なんですけど。

小川:お上手ですね(笑)。

Brandon:ありがとうございます。フィルターはかけてないんですけど、あとで見たら超AIっぽいのが撮れたと思った(笑)。

小川:みなさま、ちょっと騙されてしまいましたが(笑)。

画像生成は、人の目で見てもわからないレベルに

Brandon:じゃあ、鮭はどうですか。両方AIか両方リアルか、どちらかがAIか。

小川:おいしそう。こちらも4択です。

傍島:これはわからないですよね。いや、微妙ですね。発表します。

小川:29パーセントで「両方AI」が一番多いようですが、いかがでしょうか。

Brandon:これはけっこうバラけてるんですね。左がリアル、右はAIですね。右が2番で、27パーセント。

傍島:キリがないな、これはすごいな。

Brandon:テイラー・スウィフト。

小川:歌姫、どちらでしょうか。

傍島:微妙ですね……。

小川:AIっぽい感じがしますけどね。

Brandon:おっ、AIが多い。でも、だいぶリアルに投票する人が増えてきた。これはAIなんですよね。肖像権はどうなのかという感じはしますけどね。詳しくはわからないですけど(笑)。次はこれです。

小川:さて、どちらでしょうか。

Brandon:リアルです。だいぶ気付き始めましたね。これリアルなんですよね。フィルターや加工が入ってるからだとは思います。生成っぽく見えるんですけど、これはリアルなんですよね。

傍島:リアルとAIで頭がむちゃくちゃになってきましたね(笑)。

小川:そうですね、なんかわからなくなってきましたね(笑)。

Brandon:今度は蜂の決定的瞬間の写真です。

小川:どちらでしょうか……51パーセントが「リアル」。

Brandon:五分五分か。AIですね。次は食べ物。

傍島:これだけみなさんが五分五分になるということは、わからないってことですね。

小川:ということですよね。「リアル」が55パーセント。

Brandon:そうなんですよ。リアルがちょっと多いですけど、これはAIです。今度は、ちょっとアニメっぽい画像を手かAIのどちらに描いてもらったか。

小川:なるほど、手描きかどうか。

Brandon:写真っぽくない場合ですね。「AI」。そうですね、AIなんですよ。だからこういうのも描いてくれるから、アニメーターとか言われる人たちの仕事が(危うくなってきます)ね。

最後にこれですね。シリコンバレーの偉い人たち(笑)。CEOとかテックの人たちですね。冗談みたいな最後の質問ですいません。

小川:「AI」が88パーセント。

Brandon:もちろんそうですね。……という感じで、結論は「わからない」ってことなんですよ。

小川:そうですね、みなさん騙されたというか。

Brandon:人の目で見てもわからないので、画像に関しては人間が作ったのかAIが作ったのかわからないレベルまできている例でした。