専門家が解説する、中小ベンチャー企業の入口と出口の戦略

石川哲也氏(以下、石川):それでは定刻になりましたので、本日のAuthense法律事務所さまとの共催ウェビナー「中小ベンチャー企業のための誰をバスに乗せるか?入口と出口の組織戦略」を始めさせていただけたらと思います。

みなさま、改めましてこんにちは。今日のセミナーはAuthense法律事務所から今津先生にお越しいただきまして、さらに白潟総合研究所からは私、石川の2人で、中小ベンチャー企業の入口と出口の戦略についてお話をしていけたらと思います。

ざっくり1時間半、どう時間を使っていくのか、流れのお話をさせていただきます。

まずは第1講座として、私、石川より「入口の組織戦略 ~採るべき人を採る採用力~というところで、“バスに乗せるべき人”をどのように集めるべきなんだろうか、あるいはどのように見定めるべきなんだろうかという、大事なポイントをお話しさせていただけいたらと思います。

その上で、次は出口の戦略ということで、Authense法律事務所の今津先生に「問題社員対応の法律知識」について、どのように対処すべきか、どのように規則整備すべきかというところをお話しいただけたらと思います。

今回、弊社のほうからお声がけさせていただきました。「一緒に中小ベンチャー企業のためにやりましょうよ」というところで、今津先生をオファーさせていただいて、引っ張ってきたかたちです。

あんまり言いすぎちゃうとよくないんですけれども、おそらく最も多く問題社員対応のご経験がある、出口の戦略でいくとトップオブトップの、なかなか会えない先生でございますので、今日はすばらしい時間になるかと思います。

ちょっとハードル上げすぎかもしれないですけれども、どう降ろしていくかについて今津先生に40分ほどお話いただきまして、最後の質疑応答のところで、「自社で実践するために」というお話をさせていただけたらと思います。

中小ベンチャー企業のための“誰をバスに乗せるか?”入口戦略

では早速、第1講座の白潟総合研究所のパート「入口の組織戦略」からお話をさせていただけたらと思います。「中小ベンチャー企業のための“誰をバスに乗せるか?”入口戦略」というところ。

弊社に接点があるご企業さまと、Authenseさまでご参加いただけているご企業さまいらっしゃるかと思いますので、初めましての方も多いのかなと思います。簡単に自己紹介をさせていただきますと、私、白潟総合研究所の取締役を務めております石川哲也と申します。

ファーストキャリアとしては、デロイトトーマツのトーマツイノベーションという、中小ベンチャー企業向けの部隊に入りました。白潟総合研究所の代表は白潟という人間になんですが、実はトーマツイノベーションという会社も、トーマツグループで白潟が立ち上げた会社なんです。

白潟が後任にトーマツイノベーションを譲って、トーマツの傘を取っ払って、本当に中小ベンチャー企業のための会社作りたいんだというところで、私どもが創業メンバーとして入り、一緒にやってきたといったような人間です。

新規事業開発として、元々私もトーマツイノベーションで、組織とか能力開発とかの専門家でやらしていただいていました。白潟総研に入ってからは、新規事業を作るところで、こちらのソーシャルリクルーティングやリファラルリクルーティングといった採用に関わる子会社を立ち上げながら、自社でも採用室長をやっていました。

今日もお客さまを支援するという立場からも、自社のお話もふんだんにさせていただきながら、みなさまに何か1つでも示唆を、ヒントを与えられる時間にできたらなと思っております。

もし万が一、石川個人に興味があるという変わった方がいらっしゃいましたら、私の自己紹介noteをお送りいたしますので、もし興味があったら後ほど見ておいていただけたらと思います。

実は私がお話しさせていただくパートの後半戦では、この自己紹介noteが効いてくるところもあったりしますので、ぜひ話を聞きながら軽く覗いてみていただけたらなと思います。

いま、おさえておくべき2つのビッグトレンド

それでは簡単に会社のご紹介をさせて頂きます。一言で申し上げますと、白潟総研は中小ベンチャー企業特化のコンサルティングファームです。実は、代表の白潟がこれまで45冊書籍を出しておりまして、その中でも1番売れた本が『上司のすごいしかけ』という本です。

もし「白潟総研の石川、面白いじゃないか」と思っていただけたら、『上司のすごいしかけ』でAmazonで検索して、覗いてみていただけたらなと思います。

話を戻しまして、「白潟総研、どんなサービスやってんの?」というと人・組織に関わるコンサルティングを幅広く展開しています。新卒/中途採用のお手伝いや、人事評価を作ったり、ミドルマネージャーの育成をしたりと。

最後に会社紹介として一番お伝えしておきたいことが、去年の10月くらいにお客様から「白潟総研を一番うまく使う方法って、無料オンラインセミナーに参加することだよね」と言われまして。「そうか、じゃあそこに突っ切っちゃおうかな」ということで、今は「無料のオンラインセミナーで日本で一番役に立つ会社」を目指しております。

今日のこちらのウェビナーもそうですし、この後企画しているウェビナーもご案内させていただきます。では、会社紹介、自己紹介はこれくらいにさせていただいて、本日私のパートでお話させていただく「入口の戦略」にお話に入らせて頂きます。

最初にお話させていただくのが、改めて「いま、おさえておくべき2つのビッグトレンド」というお話です。私もそうですし、みなさまもそうかと思います。採用や組織作りといった人事領域で仕事をしていくのであれば、これは押さえておかないとうまく仕事を進めていけないよね、というところをお話しさせていただけたらなと思います。

2つ目が、それを踏まえた上で「3つの採用力」というお話です。採用力を、3つに分解して捉えませんか、という内容でございます。

3つに分解した中でここがポイントだというところがありますので、「あーなるほど」と思える、考え方の転換をみなさまにお伝えできればと思います。

同じ採用方法でやっていると、どんどん採れなくなっていく

では、「いま、おさえておくべき2つのビッグトレンド」ですが、結論はこの2つです。

1つ目、「人口減少」です。それはわかってるよというお話だと思いますが。大前提をちゃんと押さえた上で組織戦略、採用戦略を考えないと転びますので、ちゃんと確認して、前提を揃えさせてください。

日本は少子高齢化で世界でもこの最先端を行っている国で、人口は減っています。特に若者が減ってるんですよね。なので「若い人」というだけで、採用においてはプレミアがつくような環境になっています。

もうちょっとだけ人口減少についてお伝えさせていただくと、毎年毎年減っていってるんです。おととしより去年、去年より今年、今年より来年、来年より再来年、毎年難易度が上がり続ける環境に我々はいます。私も自社の採用室長として感じていますし、みなさんもお感じになってるところだと思います。

同じ方法でやってると、どんどん採れなくなっていくんですよね。これが今、我々がいる環境です。日本という国で採用・組織作りを考えるのであれば、大きいトレンドとして押さえておかなくてはいけないことである、ということです。

価値観の多様化で「誰にとってもいい会社」は存在しづらくなった

さらに2つ目が、「価値観の多様化」です。正確にこの年代からっていうのがわかってるわけではないですが、要はテレビがメディアの主流だった世代と、テレビからスマホやタブレット、PCの中でメディアを見てきた世代。

もちろんテレビがマスメディアの中心だった世代も価値観はいろいろありましたが、それでも同じようなテレビを見てるので、なんとなく同じような価値観を持っているんですよ。学校行けば、「昨日あのドラマ見た?」と、「あのテレビ見た?」っていうのがあるわけですよね。

「そうだな」って思っていただけると思うんですけど、そこからタブレットだとか、スマホだとかに移行しました。今、テレビを持ってない家庭や若手がかなり多いですよね。

何を見てるかっていうと、YouTubeやAmazonプライムやNetflix、こういった個人にパーソナライズされたものを、色々なで見ている時代です。結果、価値観がものすごく多様化しています。

さらに言うと、就業観や人生観も多様化しているわけです。つまり、様々な価値観、就業観、人生観を持っている人がいるってことは、ある程度、「誰にとってもいい会社」が存在しづらくなっているんです。

様々な価値観があるからこそ、その価値観にピシャっとハマる会社を選ぶようになる。逆に言えば、価値観が打ち出せてる会社とそうでない会社で、採用の優勝劣敗にものすごい差が出ています。

大企業を志望する学生が増えているわけ

これがどんなかたちで出ているかというと、実は学生の意向でも2極化が進んでいます。その2極化の中でも、大企業を志望する学生が増えているという事実があります。

これが何を意味するかというと、大企業はある程度どんな価値観を持ってても安心して働ける環境だということです。自分の価値観は自分の価値観で、仕事は仕事として、大企業で働きましょうという価値観かなと。

定性インタビューで学生や20代前半に話を聞くと、会社を自分の価値観が合うところとして求めない人と、自分の価値観と合う中小ベンチャー企業に行きたい人で分かれます。

今日のお話の中でも主軸になるので、ちょっとお話を頭のどっかに引っかけておいていただいて、後で私がするお話とつなげていただきたいんですけど。「誰にとっても良さそうな中小ベンチャー企業」は、一番モテないんですよ。

誰かにとっての価値観に合う、自分の人生の中心に持っていける中小ベンチャー企業と、様々な価値観を持ちながらそれでもまあまあ働けて、自分の価値観は別のところで発揮すればいいやという大企業とで分かれてるのが、このトレンドのお話です。

この2つのビッグトレンドによって何が起こっているかをもう1度まとめてみると、採用難易度がどんどん上がり続けているということですね。

さらに、実は人は減ってるんですけど、採りたい企業の数とか意向は上がっているっていうデータが出てるんですよ。何を意味するかっていうと、本当に昔は「企業が従業員に働かせてやってる」っていう上下関係がものすごいはっきりしました。社員も働かせてもらってる、「ああ、ありがたや」っていう時代。

この感覚がまだ残っているお客さまがまだいらっしゃいます。これ、どんどん逆転しています。今は社員と企業では、社員の方が強い時代です。

結果、ものすごく転職しやすくなってきていますし、企業側が学生側に選んでもらう時代です。

さらに3つ目、価値観の多様化ってところで、会社に属さないフリーランスや業務委託という形での新しい働き方の台頭もありますね。

生き残る組織の「採用力」「求心力」の強み

これを踏まえると、この中で、中小ベンチャー企業で生き残る組織の強みっていうのが大きく3つ。

1つ目は、採用が難しいって言っても、それでも人を集めてきて採用するっていう「最強の採用力」を持っている会社。ここが強ければ強いほど、今いる社員がもし辞めちゃったとしても代わりを採用すればいいっていう、人材の循環っていうんですかね。会社がうまくいきますので、かなり強気の組織戦略というものを取ることができるようになります。

逆に採用力がないと、今いる社員が辞めちゃったら、かなり困ります。組織戦略をとがった方向や、思う方向に持っていきにくくなります。このように、実は採用力は、経営の自由度を規定するんです。それが1つ目。

そして2つ目。本当に社員の交渉力が強い、社員が選ぶ側であると言っても、その中でも選ばれ続ける。どこの会社でも転職できますよと、他の会社行ったら今この会社にいるよりも給料が上がるっていうオファーをもらえますよ、と。それでもここにいたいって思われるような「強烈な求心力」を持つ会社です。

価値観が多様化するからこそ、求心力を持とうと思ったら、誰にとってもいい会社である必要はありません。

先ほどのお話とつながってくるところですが、求心力を持とうと思ったら、万人に受ける会社ではなく、「私たちはこれが正しいと思う」「これが正義だと思う」、あるいは「私たちはこういう働き方をしたい」いう人のためにある会社。幸せに働ける会社です」というふうに、とがらせればとがらせるほどマッチするんです。

企業が提供する環境と本人の価値観、これがあると「強烈な求心力」として辞めないっていう話が出てきます。

「最強の採用力」と「最強の求心力」のつながり

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、実はこの「最強の採用力」と「最強の求心力」はつながっていて。採用力があればあるほど、強気の組織戦略が取れるってことは、とがった組織にできますので、結果、強烈な求心力を持つことができる。

あるいは、強烈な求心力を持つことができれば、採用において入る人が長く辞めないので、グルグルといいかたちの採用を回してくことができると。これ2つずつ、あいのこでつながっているということです。

あとは、「新しい働き方の台頭」とつながってくるところなんですけれども。新しい組織形態をいち早く作れている会社も伸びています。

要は、人や正社員っていうかたちに頼らない組織形態。本当に回さなくちゃいけないコアメンバーのところは正社員で作りながら、それ以外はどんどん業務委託やフリーランスに仕事を出していくという。そういう企業様も、出てきていますね

ここまで2つの大きいビッグトレンドから、我々が今押さえておくべき勝ち筋というようなお話でございました。ここまでよろしいですかね。