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もっと知りたい !! 越境学習 第2回 「リフレクションと越境学習」(全3記事)

経済的豊かさはないのに幸せそうなアフリカの人に、モヤモヤ... 自分の「ものの見方」に気づく、越境学習×内省の醍醐味

「挑戦・学習・成長を加速させる“場”をデザインする」をミッションに掲げる株式会社ウィル・シードは、人材開発サービスを提供する大手企業の人材コンサルタントとして、研修などを通して組織や人の成長を支援を行っています。本セッションでは同社主催のセミナーより、『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』著者の熊平美香氏が登壇したセミナーの模様をお届けします。テーマは「リフレクションと越境学習」。リフレクション(内省)と、ふだんの環境と違う環境に身を置く「越境」を通して、自分をアップデートする方法について語られました。本記事では、越境学習の魅力と、リフレクションを組み合わせることで得られるものについて、熊平氏自身の経験も交えて語られました。

経験を通して形成される「メンタルモデル」

熊平美香氏(以下、熊平):さて、3つの基礎力をお伝えしましたので、ここからは越境体験とリフレクションとの関係について、お話を進めてまいりたいと思います。

まず、越境する前のメンタルモデルから説明させてください。メンタルモデルというのは、『学習する組織』に出てくる用語です。一人ひとりが持つ世の中の人や物事に関する前提のことになります。そして、このメンタルモデルは経験を通して形成されます。

左に「推論のはしご」という絵がありますが、私たちはいろんな経験の中から、何かしらの事実や経験を選び、そしてそれに意味付けをして、判断の尺度を形成します。判断の尺度がいったんできると、そのレンズで世の中を眺めたり、判断して行動したり意見を述べたりということをやっています。

つまり常に私たちはメンタルモデルを持って生きているわけです。例えば、越境の前に長い間同じ組織の中で、ずっと一緒に仕事をしている状況の時には、その世界の中でのメンタルモデルというのがある。でも越境するとぜんぜん違う。そことは違う世界に出会うということになるわけです。

ですので、このメンタルモデルをまず理解することがとても大事です。

メンタルモデルは、実は先ほどメタ認知の話でご紹介した「認知の4点セット」と同じことなんです。「推論のはしご」は、経験からどうやってメンタルモデルができるのかを説明しています。

一方、4点セットは、自分の持った意見から自分にはどんなメンタルモデルがあるのかに気づくというアプローチです。上からか下からかっていう感じのツールになっています。ですので、自分のメンタルモデルに気づくためのツールと言ってもいいと思います。

越境学習で体感した「驚き・違和感」をリフレクションする

熊平:この認知の4点セットを使っていただいて、そもそも自分にはどういうメンタルモデルがあるのかに気づくことが越境学習では可能になります。なぜなら違う世界に出会った時には自分のメンタルモデルに気づきやすいからですね。

越境学習では(自分のメンタルモデルに)気づきやすいという背景には、驚き・違和感が絶対あると思うんですね。ここが、学びの一番の醍醐味だと思います。

そこでリフレクションしていただくことで驚いて終わるんじゃなくて、なんで驚いてるのか、なんで違和感を感じてるのかをリフレクションしていただくことで、自分自身の枠を知る。自分のメンタルモデルを知ることは、ある意味自分自身のありようを知ることにもなります。

そして、もしかすると自分がまったく知らなかった世界に触れて、自分のメンタルモデルがアップデートされる可能性を秘めています。越境学習の魅力は、自分の常識の世界ではなくて本当に未知の世界に遭遇することが簡単にできる。それがすばらしいことなんだと思います。

事例を2つご紹介したいと思います。まず私自身が体験したことからお話ししたいと思います。10年少し前から「Learning for All」というNPOで立ち上げ時からずっと活動しております。

ここでは(生活環境が)困難な子どもたちに学習支援をしたり、生活を支援したりする活動をやっています。

メンバーは、スタート時点の時にはほぼ全員が大学生でした。そして、プロボノで、私も含めて大人たちがピーク時で100人ぐらい。なかなか楽しいスタート時期でした。そこで、私も本当に越境学習いたしました。

子どもに「勉強したい気持ち」があるという驚き

熊平:その当時の写真を見るとみんな若くてすてきなんですが、その時の体験をお話しさせていただきます。当時、私の常識の世界では、中学生は九九や割り算ができて当たり前っていうものでした。勉強ができないのは、努力しないから。勉強ができないのは本人の問題っていう物の見方だったんです。

これがもう完全に覆されたのが、一番最初にやった寺子屋での出来事でした。いつも家庭の支援をされているケースワーカーさんが寺子屋に子どもたちを集めてくれたんですね。

そのケースワーカーさんが、「この子たちは15分座っていられれば大成功ですから」って。なんかまぁ、学生さんたちがすごくがんばって準備してたけど、子どもたちが勉強をやりたくなくなっちゃったら(学生さんが)かわいそうという配慮もあったのかなとは思うんですけれども。

今思うと、その子たちに勉強したい気持ちがあるとか、できるようになるとか、ケースワーカーさんたちには子どもたちに対するそういうイメージがない感じだったんです。

でも、その最初の寺子屋で子どもたちが3時間ぶっ続けて勉強したんですよ。中学生で九九、できないんですよ。でも、勉強したんです。それを見た時に、「うわ~」と思って。いや、本当は勉強がしたいと思ってたんだな。だけど、周りの人がもう期待してないんですよ。だから、この子たちを諦めてるのは周りの大人だと、初めて気づかされて。

しかも、彼らが勉強できない背景は、家庭の事情とかいろんな理由があって、本当に環境がないんですよ。勉強をするのが当たり前で、勉強しないと怒られるっていう、私たちが当たり前のようにもらっていた環境は、すごいことなんですね。

そういう子たちにはそういう環境が一切ないから。学校に行かなくていいぐらいの雰囲気だったりするので、(勉強ができないのは)その子たちのせいじゃないっていうのもわかりましたし。そういう新しい世界を知るきっかけになりました。

それ以来、この活動からは離れられなくなってしまったっていう私の経験です。もう、それは本当にやってみないと、行ってみないとわからない。自分たちの見ていた世界とはまったく違っていたので、やっぱり越境学習は本当に想定していないことと遭遇する機会になると思います。

経済的な豊かさはないのに、幸せそうに暮らしているザンビアの人々

熊平:もう1つの事例は、これはもうまさに次世代リーダーの育成です。なんと豪華でしょう。アフリカのザンビアまで、企業のみなさまをお連れして1週間の越境学習を一緒にやった経験があります。

この時も、やはりみなさんにリフレクションを頻繁にやっていただいて、学びを深めていただきました。最終的には4点セットで振り返ることを繰り返しますと、自分が大事にしている価値観が何か、出てまいります。そこに触れる機会が何度も何度もあって、自分が何者なのかに到達できる、そういう研修でした。

ですので、自分の軸をしっかりと持つことができる。こちら(スライド)がその時に使ったフレームワークです。経験・感情・価値観。そして驚き。ないしは違和感。とにかく、それをいっぱい洗い出してもらったんです。

そうすると、まさにそれが自分の常識ということですよね。常識の外にあるものに出会う度に驚いたり違和感を持ったりするので、そこをどんどん掘り下げていってもらいました。こちらは1つの事例ですけれども、すごく私も印象に残ってるんですが、向こうに行くと生活がとっても貧しいんですね。お家に行っても電気がないとか、みんなで水を汲みに行ったりとか。日本とは生活の様式もかなり違います。

そんな中で経済的な豊かさがないのは、すごく視覚的にもわかるわけですけれども、一方でみんな幸せそうです。そこがやっぱり一番私たちの印象に残ったことだったと思います。

多くの方がこういうリフレクションをされていました。ホームステイをした村の家には、本当にそんなにお金がある感じでもないですけれども、子どもたちも何人もいて。でも子どもたちは、当たり前のように家事を手伝ってみんなでご飯を作ったりしているんですね。ちっちゃい子の面倒を見てるお兄ちゃんがいたりとか。

それが「誰かがやりなさい」ではなくて、みんなが自然に役回りを持っている。そして家族がとても仲良く幸せそうに暮らしている光景に触れることがありました。

「自分のものの見方」に気付かされる

熊平:これまでは、豊かさが幸福度を高めると考えていて、その方程式が通用しないことに驚いた出来事だったんです。感情としては、ザンビアの人々の幸せに驚いたし、豊かさと幸福の方程式が通用せずにモヤモヤした経験でした。

価値観としては経済的な豊かさの追求だったり、幸福の追求という、(自分の)ものの見方が大事だと思っていたこともこのリフレクションから見えてきます。

ですので、そういう経験を通して、この価値観を掘り下げていくことによって、自分が何を大事にしているのかな。ふだんから何を考えているのかをあらためて言語化できるということになります。そして今後生きる上で、この学びをどう活かしていくか、そういう話につながってまいります。

こんなふうに、やはり驚く場所はいいですね。学びが早いです。越境学習で違和感や驚きに出会うことで、早く学ぶことができるので。スピード学習という感じだと思います。

対話をするときは「事実」と「解釈」を分ける

熊平:さて、越境学習には対話も欠かせません。なぜなら私たちはこの瞬間も、1,100万ビットの情報に触れているそうですけれども、たった40ビットしか認知できない。これが私たちの意識を向けられる範囲ということですね。1パーセントも認知できていない。これが現実です。

ふだんの生活の中だったら、それでもある程度認知しているものが、一定かもしれませんけれども、越境学習になりますと、まぁ珍しいことばかりじゃないですか。でも、全部は拾えないんです。だとすると、対話をしようという話になります。

私たちはこれもよく使っています。事実、どんな事実を拾ったかという話と、それに対してどんな解釈を加えているのか。何を思ったかではなくて、事実と解釈を分けてリフレクションしていただいたりします。人は同じ事実を拾わないし、万が一同じ事実を拾っても、解釈は人によって違う。その背景に経験とか価値観が存在しているという話になります。

ですので、そのあたりも含めて対話をしていただきますと、その1つの事実に対しても多様な物の見方があったり、多様な経験というバックグラウンドがあることから学ぶことができます。

この事実と解釈を分けるのは、私はとてもいい学び方だなと思います。自分の思い込みをいったん分析的に、それが思い込みなんだということも捉え直すことができるので、とても効果があるなと思っています。ですので、やはり越境学習は1人でやってもだめですね。チームでやらないとだめです。

この越境学習で、とてもいいなと思うのは、多様な会社の人たちが入っているので、レンズが違う可能性が高いことです。拾うものが違うと、たくさんのことが学べる。このぐらいまでの深みでリフレクションを一緒に行うから、他人の経験からも学ぶことができて、自分の世界を広げていくことができると思うんです。

ですから、いろんな多様性が一緒にいるから視野が広がるわけではなくて、やっぱり一緒にしっかりとリフレクションをしていくことが、視野や視座を変えていくことにつながっていると思います。

越境学習の魅力は「器を大きくしていくこと」

熊平:そして最後に、器の拡大という話もさせていただきたいなぁと思います。やはり、越境学習の魅力の1つは、最終的にはこの「器を大きくしていくこと」なのではないかなと思います。

自分の境界線の外にある世界に学ぶことができる。そしてリフレクションと対話を行うことで、自分を深く知る機会になりますし、かつ多面的、多角的な物の見方を手に入れることが可能になります。

最近では、スキルや知識を増やしていく学び方ではなくて、この自己変容を伴う学びが、問題を解決する際にも不可欠になってきているとも言われております。リーダーとしてはやはり器を大きくしていかないと、今の時代に求められていることを引き受けるのが、難しくなってきていると思いますので。

そういう意味でも、越境学習を通して、そしてリフレクションと対話を通して、器を大きくしていただくためにも、リフレクション。最後にリフレクションと申し上げたいです。やっていただけるといいのではないかと思います。

私からは以上とさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

司会者:熊平さん、ありがとうございます。

熊平:Q&Aに移ります?

司会者:そうですね。ぜひ、今お話があった内容に関してでももちろんそうですし、ここだけはせっかくなので聞いておきたかったということも含めて、ぜひみなさんからご質問を受ける時間をとろうかと思います。チャットにぜひ質問やコメントご記入ください。

熊平:LFAをささやかに応援してくれているというメッセージをいただきました。ありがとうございます。うれしいです。

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