2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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志村哲祥氏(以下、志村):さて。ここから先は、1日4件の会議の他に、どういう人がテレワークで調子を崩しちゃうことがあるのかという類型なんですが、一番当てはまるのはこれなんです。
睡眠が悪化すると、人間はすごくストレスがかかってしまって心身の不調を起こすんですが、テレワークをやりすぎると眠りと生活リズムも狂って、体内時計が狂うんですよ。
日比谷尚武氏(以下、日比谷):体内時計。
志村:何が一番まずいかと言うと、人間は光のリズムを使って「いつが昼で、がんばる時間か」「いつが夜で、眠る時間か」ということを判断しているんですが、リモートワークをやっている時はけっこう簡単に狂うんですね。みなさん、意外と仕事中の部屋って日当たりが悪いんですよ。
加勇田雄介氏(以下、加勇田):(笑)。
日比谷:みなさん、テレワークの環境はどうですか?
沢木恵太氏(以下、沢木):昼も夜もわからないですね。
日比谷:窓もちっちゃい。
志村:だから危ないんですよ。人間は出勤していると、出勤時に家から出て歩きます。お日様を浴びるので、そこで人間の体は「ああ、太陽だ。今は昼だね」と。テレワークですごく暗い部屋にずっといると、体はいつが昼でいつが夜なのかわからなくなっちゃう。
日比谷:なるほどね。
志村:なんとなく体内時計が狂っちゃうし、夜は夜でダラダラと仕事をしちゃっていると、部屋は明るいしパソコンも明るいので、「まだ昼だな。夜じゃない」と思っちゃうので、あたかも白夜の国にいるような感じになっちゃうんですね。
日比谷:パソコンの光もちょっと刺激があるんですね。
志村:そうですね。あとでまた出てきます。
志村:下手をすると、フルリモート中に「今日はお日さまを見てない」という人もけっこういるんですよ。
日比谷:なるほど。わからないではないですね。
大塚:えぇ!?
日比谷:私も外に出ないこともあります。
志村:その状態だとまずくて。出勤するとだいたい朝は「いつもこの時間に出るから、朝ご飯は何を食べます」とか、昼ご飯も「みんなが休憩時間だから休憩を取ります」となるんですが、リモートワークをするとそれがみんなばらばらなんですよ。
「リモートで出勤しなくていいから」といって、9時までずっと寝ていて、9時ちょっと前にはっと起きて、急いで上着を着たり。
加勇田:(笑)。
志村:会議が始まってしまうので朝ごはんを抜いていたり、昼も昼でずっと仕事をしていて、「気がついたら2時だ」ということもけっこうあるんです。(日比谷さんが)ダメージを受けてますね。
(一同笑)
日比谷:耳が痛い。
志村:人間は、光のリズムで頭の「中枢時計」を作っていて、食事のリズムで内臓にある「末梢時計」を作っているんですが、(リモートワークで)食事が乱れやすくなっちゃって、結果的に不調を起こすということがわかってきています。
日比谷:なるほどね。光も大切ですし、食事も大事なんですね。
加勇田:そうなんです。
志村:ちなみに、(スライドの)右に書いてあるのがメラトニンというものの分布です。メラトニンは明るいと出なくて、暗闇だといっぱい出てくるんですね。でも、明るい環境で仕事をしているとメラトニンがずっと出なくなっちゃうので、体はずっと昼だと考えちゃうんです。
日比谷:メラトニンが出ると「夜だ」と思って、寝ようとするみたいな。
志村:そうですね。次にリモートワークは、全体的にはストレスを軽減しやすいところもあります。通勤時間にすごく時間がかかるだとか、やたらと家が遠い人。あとは「上司が怖い」「人間関係が良くない」とか、会社で不和がある人。あとは、睡眠時間が短い人には(テレワークの)恩恵があるんです。
一方で、テレワーク中だからといって気を抜いてこういうことをしてしまうと、不調になって生産性が悪くなることが明らかになりました。
日比谷:テレワークそのものが問題と言うよりは、テレワークによって起こる生活の変化が問題なんですね。
加勇田:冬になるとうつ病になる方が増えるという、「冬季うつ」という問題があるんですが、それもこれと関係があるんですかね。
志村:はい。昼間に浴びる光の量が多ければ多いほど、セロトニンというホルモンがいっぱい出ます。逆に室内だとそれが減っちゃって、不安になる、悲しくなる、やけに眠れないとか、動きたくなくなる。
加勇田:僕なんかは要注意ですね。
志村:そうですね。これは国際学会で発表させていただいたものなんですが、睡眠時間が伸びること自体はとても睡眠に良いし、生産性も改善するんですが、リズムがずれちゃうと不調が起きたりもします。
大塚:よく「寝溜めもダメ」って言いますよね。
志村:そうですね。
大塚:リズムが崩れると。
志村:というわけで軽くまとめると、心身に健康的なテレワークにするために大事なことがここに書いてあります。大事なことは、まずは朝と昼は明るく、夜は暗く。当然、外の世界は昼は明るくて夜は暗いので、それをがんばって作る。
これを作るためには、まずはテレワークをする部屋の環境を、できれば大きな窓に向かってディスプレイを配置して、窓に向かってテレワークをしてください。
日比谷:なるほど。外の光も感じつつ、ディスプレイも見ると。
志村:はい。お日さまの光って、曇っていても1万ルクスという光の単位があって、明るい晴天の時に外に出ると10万ルクスあります。一方でオフィスはだいたい300~1,000ルクスなんです。
日比谷:桁が違いますね。
志村:桁が違うんです。家の蛍光灯だけだと、お外の光がまったくないんです。
志村:というわけで、昼はできるだけ(太陽を取り込んで)明るい部屋にして、外の光を浴びるためにも、買い物は夜じゃなくて昼がいいでしょう。あとできれば、お昼ごはんは家でファストフードやウーバーじゃなくて、ちょっと外に食べに出ることもおすすめです。
そして「寝溜めに注意」というか、週末の朝寝坊に注意。週末に油断して夜更かしをして、朝寝坊をするとリズムが崩れます。それを防ぐためには朝寝坊に注意してください。どうしても寝不足で長く寝たい時は、遅寝遅起きじゃなくて早寝遅起き。
日比谷:起きる時間をキープすることのほうが大事。
志村:そうです。あとは、ご飯は毎日同じ時間に。ついつい後延ばしに注意。昔、有名な研究センターでされた研究がありまして、野菜類とか体にいいものをちゃんと食べている人たちと食べていない人たちでは、その後の自殺率が倍も違ってきたんですね。
大塚:倍も。
志村:ちゃんとしたものを食べていることは、メンタルにも大事です。
日比谷:なるほど。
志村:すごくシンプルなんですが、脳内物質とかにはタンパク質が使われますので、野菜とかタンパク質を摂らないとダメなんです。
日比谷:(脳内物質で)使って消耗しているので、ちゃんと補わないといけないよというシンプルな話なんですよね。
志村:なので、家で適当にパスタとかご飯だけではなくて、バランスの取れたものも大事です。ということで、大きく「眠り」と「食べ物」というところが、リモートワークでは注意が必要です。
日比谷:ありがとうございます。ここまでは、加勇田さんと志村先生の研究結果に基づいて解説いただいたわけですが、
聞いている方で「ここをもう少し聞きたい」とか「こういう場合はどうなんだ?」という話があれば、途中でも拾いますので、もし何か気になることがある人がいたらチャットでご自由に書いてください。
大塚:「全員の前だと言いづらい」ということが。
日比谷:確かに。
大塚:事務局宛て?
日比谷:そうですね。私か運営、もしくは会議の後でも質問があれば送ってください。
日比谷:ところで、お二人が気になったところや「なるほど」というところはありますか?
沢木:最後にまとめていただいたように、生活習慣と食事、運動、睡眠。結局これが大切なんですね。
志村:はい。すごく大事です。
大塚:でも、生産性を上げるために犠牲にするものの三大要素でもあるなと思うんです。「ぼーっとする時間が必要なんです」といって食事の時間を飛ばしたり、「毎日残業続きで食事なんてする暇もないです」という方が多くて。生産性を上げるために、生産性を下げる行動をしていることが多いなと、うかがいながら思いました。
日比谷:なるほど。これもどうなんですかね? テレワークになって、社員の自己責任で環境を整えるのか、環境が変わったから会社もそういうところまで気を配らなきゃいけないのかと言うと、一般的な考え方ってどうなんでしょうか。
大塚:もちろん、自律性を重視したい、社員に任せたい部分がある一方で、仕組みやルールや制度で支援できるものもあるとは思います。
最初に沢木さんがおっしゃいましたが、労働力人口が減っていく中で辞めてもらっては困るので。自分らしく、でも会社としては成果を高く働いてもらうためのコミュニケーションが始まっている感じがしますね。
人事任せにする会社はそもそも減っていますが、それでも人事任せにする会社は従業員が減っている。だから、対話していきましょうよという雰囲気が強くなっている気がしますね。
日比谷:建設的に話し合っていく。
大塚:そうですね。
大塚:日本にとって、テレワークはめちゃめちゃいいチャンスというか、家で働ける選択肢が増えたことで、出社するか家で仕事するかを自由に選べるようになっていくんじゃないかなとは思います。
(テレワークでは)見えないストレスがあるとおっしゃっていましたが、お互いに注意し合っていったり、自分で意識していくというところは、気づかされることがいっぱいありました。
加勇田:ありがとうございます。大塚さんと沢木さんにおうかがいしたいんですが、お父さんとお母さんたちの育児と仕事との両立なり、バランスについていろいろ調査をしていると、今ここに書かれていることはけっこう乱れがちだなと思っていて。
志村:育児中ね。
加勇田:こういった時に、どういうことに注意して乗り切ってきましたか? 今回の調査でも「睡眠の重要性を分かっていてもできない」と回答した方は、圧倒的に未就学児のお子さんがいる世帯だったので。
あと、志村先生におうかがいしたいのは、患者さんの中には一定数お母さんたちもいらっしゃると思いますが、これ(体内時計を保つポイント)を全部満たすのはけっこう難しいなという印象があるんです。「特にこれに注意するといいですよ」とか、どういうアドバイスをされているのかを聞いてみたいです。
沢木:私たちの会社は育児中の方が非常に多い会社なんですが、非常に好評な取り組みの1つとして、産休中・育休中のメンバーに、自社で取り扱っているお惣菜を毎月仕送りしています。
大塚:すごく羨ましい。
沢木:我々が取り扱っている商品は、管理栄養士が栄養バランスをちゃんと考えていて、かつ日持ちがする。子どもがいて、時間が限られている中でもぱっと食べられるものを提供するので、めちゃくちゃ好評です。もしかしたら産後うつとかの解消にも役立つかもしれないなと思っています。
加勇田:転職したくなりますね。
(一同笑)
沢木:ありがとうございます。お待ちしております(笑)。
日比谷:ありがとうございます。
大塚:私も子どもが2人おりまして、今は大きくなっちゃいましたけど、上が15歳、下が10歳なので、遡ること10年以上前なんですが、一番大変だったのはやはり夜の授乳の問題です。おそらく、当時私の体はすごくがんばっていたんだろうなという実感もあります。
志村先生におうかがいしたいんですが、女性は産後のホルモンの影響が特に大きいと聞いていまして、ちょっとしたことでもすごく落ち込むところがある。なので、普通に仕事をしながらも「がんばろう」と思うところにホルモンの働きがプラスアルファして気持ちの波が大きいということを、夫も含めて自覚することが大事な気がしました。
志村:産後に健康的な育児生活をされていくためには、「どれかをがんばれ」「これをしなきゃ」というよりは、「どれかでもできればいいね」「自分だったらここはできる」というところからやっていただければいいのかなと思ってますので、大丈夫だと思います。
あとはお金で解決できる部分もあって、お父さんもお母さんもご飯を作るのが面倒だったら、それこそ宅食やOKANさんのサービスもあるでしょうし。あと、子どもにも良いことがあって、夜は暗くしておかないとお子さんが寝てくれなかったりしますので、子どもと一緒に過ごす上で意識していただけると思います。
日比谷:「これが乱れると良くないよ」というポイントは、企業の生産性という観点だけじゃなくて、産休や子育てでも同じところが大事になってくる。みなさん、どうでしょうか。ここまでは、調査に基づいて意見の交換をしてきました。
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