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メタバースは世界のビジネスを変えるか ~メガテック企業の思惑と事業創出の可能性~【久保田氏 ご講演】(全5記事)

一企業としてメタバースに関与する、今一番ホットなやり方 コストのかかる「基盤作り」以外でメタバースに参入するには?

業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる日本最大級のスポットコンサル「ビザスク」。そのビザスク主催のセミナーに、株式会社Moguraの代表で、『メタバース未来戦略』の著者・久保田瞬氏が登壇。本記事では、メタバースと宇宙開発の類似点や、個人のクリエイターを増やす取り組みなどが語られました。

メタバースと宇宙開発の類似点

久保田瞬氏先ほど「理想のメタバース」について話をしましたが、まだまだ技術的に制約が多い今のメタバースが「未来にどうつながっていくのか」というところが今後の課題ですね。じゃあ、将来何が起きるんでしょうか? 例えば、メタバースが広がるとアバターを作ることが多くなるので、アバターも併せて普及するわけです。

今もTwitterで複数のアカウントを持つことがありますけど、複数のアバターを持ってメタバースごとに人格を変えていくみたいなことが出てくる。そうすると、おそらく「人のアイデンティティはどこにあるんだ?」という話も出てくるでしょう。

またツールの進化の話もしましたが、ワールドの生成、アバターの作成などがより簡単になってくる。場合によっては「AIが自動で作る」といった世界がおそらく必要になってきます。そういった技術が徐々に出始めているんです。あと、AIとの連携ですね。

それから、ハードウェアが進化をしていく。これはヘッドセットをはじめとする、あらゆるハードウェアかなと思っています。また、クラウドなどバックエンド技術が伸びていく。「全部伸びていく」と言ったらおかしいんですけど、今後は全部の進化が必要ということになります。

あとはARを通じて、現実とメタバースがつながっていく。こういった世界観を、今はまだ考えづらいと思いますが、これから増えていくのではないかと思います。

本の中にも書きましたが、私は「メタバースは宇宙開発とほぼ同じ」だと思っているんですね。宇宙開発という1つのお題に対して、さまざまな分野が関わっていますよね。メタバースも同じなんです。

ブロックチェーンとか半導体とかVRとか、本当にさまざまな領域がその傘の下にあるんですね。さっきの7レイヤーでご説明したように、さまざまな領域にわたって、ある意味技術を応用している分野となっています。

それらが個別に進展していくことによって、集合体である、結果としての、成果物としてのメタバースが今後おそらく進化していくと考えられます。さっきの7レイヤーのように、「個別に分解していって、そのどこに関わることができるのか」というのが、考えるきっかけの1つになると思います。

一企業としてメタバースに関与する、いま一番ホットなやり方

次はハードウェアの進化ですね。スライドの左にあるのは2016年のデバイスで、真ん中が去年か今年あたりに出てきているVRのヘッドセットです。そして下にあるのは、パナソニックさんが「今年の年末までに出す」と言っているデバイスですが、だいぶスリムになってきたなと思います。性能だけではなく、「かけたくなるかどうか」が非常に重要なので、小型化・軽量化が進んでいます。

性能は2~3倍になっていて、より良く、安く、そして使いやすくなっています。また5~10年経つと、右のようなものが出てくると。これはMetaが2~3ヶ月前に発表したプロトタイプイメージですが、彼らは「今より3~4倍の性能のデバイスを実際に出していく」と宣言しています。

これだけ見ると、「どこまで期待が持てるのか」というのはありますが、進化の方向としてはこんな感じです。

次は投資の側面です。「メタバースを作る役割」と、「作るのをサポートする役割」。作るのをサポートする役割は、いわゆるゴールドラッシュの時にジーンズやツルハシを売る役割ですが、そういったところが投資価値としては高い。そして、現段階が黎明期であるがゆえに「そこに注目すべきである」というのが1つ目にお伝えしたいことです。

スライドに表示したのは本の中にも入れた表ですが、基本的に一番大変で時間がかかるのは「基盤作り」です。しかし、結果としてそれを摘み取る5~10年先には、非常に大きく返ってくると。「数億人の基盤を持っている」みたいなことになるので、投資対効果が高くなっていきます。

主にザッカーバーグのIRでの発言ですが、実際Metaもさまざまな発言の中で「decade」という言葉を使っています。彼らも10年単位で考えているんですね。

とはいえ一企業がメタバースに関わるという時に、「その基盤を作っていくことができるのか」「そのための道具を提供することができるのか」というと、難しいと思います。じゃあ「他の役割で関わる方法はないのか?」というと、今一番ホットなのがこの「モノづくり」の部分だと思います。

これはつまり、クリエイターに関することなんですね。「メタバース時代のモノづくり」とは、主に「世界や身体も含めた、体験そのものを作る」ということ。つまりコンテンツ作りなんですね。

これは、これまでのさまざまな領域で行われてきた技術やデザイン、場合によっては物語を描くことをストーリーテリングといいますが、そういったものも組み合わせた、まったく新しいコンテンツ作りになります。「世界そのものを作る」ということ。これがコンテンツなわけですね。

個人のクリエイターを増やす取り組み

さらに企業が取り組む時には、例えば「見た目をどうするのか」「マネタイズはどうすればいいのか」、また中長期的にやっていくのであれば「運営はどうしていったらいいんだ」「サーバー代はどうするんだ」という話が出てくる。ふだんやっているモノづくり、コンテンツづくりとはまた異なる、さまざまな検討事項が発生すると思います。

このあたりは企業が取り組むより先に、個人のクリエイターが今非常に活発に動いていまして。例えば、ワールドを作っている人たちもいるし、現実をスマホやいろんな機材を使って3Dスキャンをして、みんなが入れるようにメタバースとして提供している人もいます。

また、完全にゼロから作った世界で、世界そのものがいろんな物語を紡いでいくとか。よく聞いてみると、環境音が全部音楽になっているみたいな、そういうワールドを作っている人もいます。あとはダンサーの人たちで劇団を作って、メタバースの中で上映会をやっている人たちもいますね。

また、単にアバターを作るだけではなく、背景も含めてメタバースの中で展示会をする人たちもいて。つまり、「どういう文脈でそのアバターがあるのか」という世界観をくっつけて、アバターそのものを数万円で売るんです。本当に、いろんな個人のクリエイターたちが登場しています。

企業としては少し遠回りになるかもしれませんが、例えば「彼らと一緒になって何か新しいメタバースの取り組みをしていく」とか、逆に「クリエイターが増えるように支援していく」みたいなこともあるかもしれません。

スライドに紹介しているのは企業というよりは自治体ですが、群馬県は今年「tsukurun」という人材育成の拠点を作るなど、一足先に積極的な活動を行っています。小中高生向けにプログラミング教育をしたり、最新鋭のゲーミングPCを使ってゲームやメタバース作りを教えているそうです。

それから教えてくれる人たちとの提携など、さまざまな提携活動も行ったり、積極的に教室の運営をしています。

また群馬県は今年メタバースのクリエイター教育をやっていて、アワードというかたちで小中高生向けにアイデアを募集しました。審査に通った人たちがクリエイターさんと一緒に、実際にワールドを作っていくみたいです。

このように群馬県は「クリエイターを増やすこと」に取り組んでいて、自治体としてはおもしろいと思いました。こういう例は、これから増えていくと思うのでちょっとご紹介しました。

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