2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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久保田瞬氏:「メタバースは世界のビジネスを変えるか?」ということで、今回のお話をさせていただきます。
当然このタイトルの場合、多くのみなさまは「変える」という答えを期待されるのではないかなと思います。すみません、いきなり不穏な話をしますが、「変える」という返事を今日するかというと、正直「変えない」という答えも一部出てくると思っています。
これを少しだけ紐解くと、「すぐには変えない」ということですね。少なくとも向こう1年、2年でメタバースによってビジネスが劇的に変わりましたという事例は、たぶんほとんど出てこないのではないかなと思います。
では、さっき「ちょっと違いますね」と言った「変える」に関しては、「長い目で見れば変える」であり、さらに言えば「変えるかもしれない」です(笑)。なので100パーセント、メタバースはすばらしいもので、非常に可能性があって、数十年先にはもう当たり前になっているので絶対やるべきですよ……という保証は正直ないですね。
これが何と同じと考えたらいいのかを、自己紹介の前にお話ししておきたいと思います。(スライドを示して)それがこういうものになります。
果たしてどの程度伝わるかわからないんですが(笑)。
例えば左上は、Apple IIですね。PCの一番初期のものといってよいデバイスです。当然こういったPCもWindows95が出てくるまでは、非常に高額なもの、しかも一部の人しか使えないものとして、今回聞いている方は記憶しているかもしれません。
そして真ん中下、これはショルダーフォンですね。今ではスマートフォンという非常にすばらしい、名前のとおり小さくて薄くて軽くて、誰でも使えてどんなこともできるデバイスになりましたが、最初はこれでしたよね。
右上はインターネットの図です。インターネットも最初に出てきた頃、非常に限られた個人の趣味で使ったり、個人サイトが隆盛を誇っていました。いつの間か企業がサイトを持っていないことはありえない、そしてインターネットに接続していないビジネスはないと言っても過言ではないところまできましたが、最初はどうだったでしょうか? というように考えるとよいと思います。
それぞれ出てきた時に「これからすごいことになる」と言われていたこともありますが、確証がない中、可能性を信じた方々が道を切り開いてきました。
そういう意味でメタバースは、ビジネスの特効薬ではないといえます。今後1、2年で新しい事業になっていくかというと、かなり長い目で見て付き合っていく必要があると思います。
このあたり、今聞いている1,200名程度の方々がどの程度共通認識を持っていらっしゃるかはわからないです。今の話を聞いてもいまいちピンとこないという方は、もしかしたらメタバースをまだ触っていないのかなと思います。
まず最初の質問としては「やったことがありますか?」ということです。別に答えていただく必要はないんですけれども、まずはそこを通ってみていただきたいです。最後のほうで少し、この「やる」ということに関してもお話しできればと思っております。
最初からいきなり少し期待を裏切っているかもしれないんですが(笑)。私のほうから、メタバースという話題にどう向き合ったらいいのかを50分お話しさせていただければと思っております。よろしくお願いします。
まず自己紹介ですけれども、私はMoguraという会社の代表をしています。あと「Mogura VR」という、XRとかメタバース、VTuberなどの「バーチャルな領域」専門のメディアを運営しています。ファーストキャリアは環境省で、ぜんぜん関係ない公務員の仕事をしていました(笑)。いろいろあって独立をして、メディアを立ち上げ、そこから法人成りをして今会社をやっています。
もともと公務員という背景もあるように、業界全体をどう盛り上げていったらいいのかとか、中立的な視点を個人的には大事にしています。その関係で各種業界団体の事務局長や役員をやっています。
最近だと左下にある『メタバース未来戦略』という本を、日経BPさんから6月に出しました。
2ヶ月半経つと、もうここに書いてある内容が少し色褪せてきたような気がしているんですが、もし今日の話を聞いてより深掘りしたいという方は、お手に取っていただければと思います。
あと最近はこういった活動が功を奏したのかはわからないですけれども、経済産業省さんでやっている研究会の座長も拝命して、ちょうど今年度の取り組みをしているところです。私自身は本当にこの領域がすごくおもしろいことになるなと、これが世の中を変えていくだろうなと思っている、信じている人間ですので、それを広げていくことを生業としています。
簡単にMoguraの紹介をいたします。非常に小さくて、まだ社員7人くらいの会社なんですが、バーチャルの領域を広げていく、バーチャルでの豊かな体験を世界中に広げていくことを会社のミッションとしています。
調べていただくとメディアが一番出てくるんですが、ほかにも業界イベントやグッズを売ったり、あとはいわゆる採用の支援をしています。
また企業のコンサルティングを行うなど、いろいろなことを展開している会社です。
そして専門メディアをもうかれこれ7年間やっていまして、VRやメタバースのことをGoogleに打ち込んだらかなりの確率で出てくるようになりました。またニュースだけじゃなくて、ちょっと深掘りしたコラムや特集を載せています。最近だとメタバースど真ん中ということで、Roblox特集を4回にわたって掲載しました。この領域を掘り下げて、少しでも洞察やヒントをみなさんに得ていただければということで、情報発信をしています。
あと最近、耳経由がはやってきていますけれども、我々も『もぐラジオ』というPodcastをやっています。ほぼ毎週XR・メタバースのトレンドについて50分ぐらいしゃべり倒していますので、もしご興味ある方がいらっしゃったら聞いてみてください。
自社の取り組みと共に、我々が当事者としていろいろなイベントを開催しています。Webメディアをやっていると一方的な発信になってしまうので、場を作りたいなということで展示会やカンファレンスなどのイベントをやっています。
ここ1〜2年、コロナ以降は我々も主催者として、どのようにオンラインのイベントを開いていったらいいかと悩んでいました。今日はZoomでやっていますけれども、それ以上に良い体験や、新しいエクスペリエンスができないのかと試行錯誤しています。
こちらに貼ってあるスクリーンショットにいくつかメタバースを使ったものがありますが、実際に我々も主催者として、イベントの価値を出すためこのようにいろいろなプラットフォームを試しながら今使っているという経緯がございます。
ちょうど去年の終わりくらいからは、メタバース、オンライン、オフラインを組み合わせた、ハイブリッド開催を自分たちでも行い、トライ&エラーしています。
また12月にはXR Kaigiというイベントを予定しています。これはテックカンファレンスで、開発者・クリエイター向けのイベントになります。オンライン3日間、オフライン2日間という非常に濃密なイベントになりますが、たぶん国内外のXR・メタバースの動向や最前線の話が聞けると思います。今年は2,000名くらいを予定しています。もし関心のある方がいらっしゃったらご参加ください。
あと企業さまのお手伝いですね。先ほどビザスクさまもお話しされていましたが、ビザスクさまでやられているようなリサーチとかディスカッション、コンサルティングから、開発と運用を一気通貫でご支援しております。
いろいろな企業さんからご相談いただいていまして、我々は特にジャンルは問わないのでXR・メタバース、あとVTuberとかアバターに関する総合的なコンサルティングと開発を行っているということを知っておいていただければと思います。
ということで、基本的な自己紹介でちょっと時間を使ってしまいましたけれども、ここから中身に入っていきます。メタバース、量が少ないようでかなり広範な話題に及びますので、持ってきているスライドの枚数も少し多くなっています。もしちょっと時間がなかったら早口かつ飛ばしていきますが、その点ご容赦ください。あとのQ&Aで答えていきたいと思います。
まず「メタバースの現状」というところからです。どうしても「メタバースとは」という話をしなければいけないので、避けて通れぬ話題です。なぜこんなに私が後ろ向きなのかというと、定義が定まっていない言葉なんですね。SF由来なので定義がまちまちなのです。
なぜ揺れるのかというと、プレイヤーごとに「自分たちはメタバースを目指していく、そのメタバースはこういうものですよ」という定義をしていく中で、確実にポジショントーク化してしまうからです。
そして一言で言い表す言葉が少ない。やれアバターを使ったものだ、3DCGの空間だとか、経済圏を内包している、いやWeb3と連結しているんだとか、本当にいろいろな考え方があると思います。それらの言葉の共通項だけ取っていくと、基本的にはこの「3次元のインターネット」という言葉に収束するのかなと思っております。これでもはみ出る使い方はあると思うんですけれども。
より空間的で、そして自分の体を実際に動かしていくようなインターネットの世界ということですね。だから現実に非常に近いんですが、やっぱりこれはデジタルであると。現実に非常に近い感覚で体験できるデジタルの世界、という考え方が一番良いのではないかなと思います。
このメタバースの定義でよく出てくるMatthew BallさんというアメリカのVCの方が、ちょうど最近新著を出しました。『The Metaverse』というそのものの本ですね。この中でかなりメタバースのことを掘り下げています。ずっとこの定義をブームの前から考えている人なので、非常に深い考察が入っています。私も今読み進めている最中なんですが、気になる方は見てもよいのではないかなと思います。ちょっとまだ日本語訳は出ていないですね。
メタバースは、ご存知のように2021年の10月から一気にバズワード化しました。
これはGoogleトレンドという、Googleにワードを放り込んだ数を取っていまして、まさにこのガクンと上がっているのが2021年の10月ということになります。もう目に見えて突然上がっているんです。ちょっと前に、2006~2008年くらいにぴょこんと上がってるのは、たぶん「Second Life」などの少し前の世代のメタバースが話題になった瞬間だと思います。
なぜメタバースがこんなに話題になったのか。日本だと急に2021年から聞かれるようになりましたが、もともとは欧米のテック業界でその前から言っている会社がありました。後ほどいくつか会社を紹介しますが、そのうちのいくつかはメタバースを自分たちで作りたいとか、もしくは最終的に出てくるビジョンとしてメタバースという言葉を使っていました。
なので背景はあるんですね。例えばゲームと、それからゲームを作るツール、ソフトウェアが非常に発展して、まさにリアルタイムに3DCGの世界を動き回ることができ、複数人が同時に接続して、コミュニケーションを取ることができる。こういうゲームが一般的になってきたわけですね。
昔はMMORPGくらいしかなかったんですが、FortniteとかApexのように、こういう機能が前提になるゲームがたくさん出てきています。そしてそれに合わせて、ユーザーが慣れてきているわけですね。特に若い人たちは、キャラクターを動かしてみんなでしゃべりながら、ゲームをすることがもう当たり前の文化になっています。
VRとかARなどの没入型の技術がヘッドセットを中心に登場したことで、メタバースは画面の中なんだけれども、場合によってはデバイスをかけたら中に入っていけるんだと示しました。そしてどんなコンテンツにしたらいいかがわかるような、技術進化も起きています。
あとよくWeb3と一緒に語られますけれども、まさに既存のインターネットビジネスが行き詰まってきて、GAFAがある程度独占的な市場になってきている中で、じゃあ新しいフロンティアはどこにあるのかといった時に、いわゆるWeb3に向かっていくブロックチェーンをベースにした流れと、インターフェースですね。
2Dではなくて3Dのインターネットという概念であるメタバース、こういったところがつながっているという、ある意味2つのトレンドが合わさっていくような流れがあるわけですね。
そして4つ目は偶然になりますけれども、コロナ禍です。今までは現実で何かをすればよかったわけですね。どんなにオンラインで話をしていても「やっぱり会うのが一番だよね」となっていたんですが、現実側のリスクがコロナによって顕在化して絶対に家にいなければいけない状態になりました。
ただ家にいるんだけど、実際に会っているようにコミュニケーションを取りたいと思うようになります。そういうところでデジタルで可処分時間がどんどん延びていきました。みなさんがここにお金を使うようになって、どんどんデジタルで時間を過ごすことに慣れていくわけですね。そこにコロナが非常に寄与しているかなと思います。
そして最大のポイントになったのが、最大手のテック企業であるFacebookのピボットです。
名前をMetaと変え、そして年間1兆円の投資をしていくという宣言を行いました。これによってメタバースという分野が、どうやらそれだけ投資をする価値がある成長分野だという認識が一気に広がり、特にビジネスサイドと投機筋で期待が急激に高まったというのが2021年の状況かと思います。
技術的にはここで急にぴょんとリープが起きたわけではなくて、どちらかというとビジネスサイドの都合によってメタバースが話題になったという状況です。
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