2024.12.03
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久保田瞬氏:先ほど「理想のメタバース」について話をしましたが、まだまだ技術的に制約が多い今のメタバースが「未来にどうつながっていくのか」というところが今後の課題ですね。じゃあ、将来何が起きるんでしょうか? 例えば、メタバースが広がるとアバターを作ることが多くなるので、アバターも併せて普及するわけです。
今もTwitterで複数のアカウントを持つことがありますけど、複数のアバターを持ってメタバースごとに人格を変えていくみたいなことが出てくる。そうすると、おそらく「人のアイデンティティはどこにあるんだ?」という話も出てくるでしょう。
またツールの進化の話もしましたが、ワールドの生成、アバターの作成などがより簡単になってくる。場合によっては「AIが自動で作る」といった世界がおそらく必要になってきます。そういった技術が徐々に出始めているんです。あと、AIとの連携ですね。
それから、ハードウェアが進化をしていく。これはヘッドセットをはじめとする、あらゆるハードウェアかなと思っています。また、クラウドなどバックエンド技術が伸びていく。「全部伸びていく」と言ったらおかしいんですけど、今後は全部の進化が必要ということになります。
あとはARを通じて、現実とメタバースがつながっていく。こういった世界観を、今はまだ考えづらいと思いますが、これから増えていくのではないかと思います。
本の中にも書きましたが、私は「メタバースは宇宙開発とほぼ同じ」だと思っているんですね。宇宙開発という1つのお題に対して、さまざまな分野が関わっていますよね。メタバースも同じなんです。
ブロックチェーンとか半導体とかVRとか、本当にさまざまな領域がその傘の下にあるんですね。さっきの7レイヤーでご説明したように、さまざまな領域にわたって、ある意味技術を応用している分野となっています。
それらが個別に進展していくことによって、集合体である、結果としての、成果物としてのメタバースが今後おそらく進化していくと考えられます。さっきの7レイヤーのように、「個別に分解していって、そのどこに関わることができるのか」というのが、考えるきっかけの1つになると思います。
次はハードウェアの進化ですね。スライドの左にあるのは2016年のデバイスで、真ん中が去年か今年あたりに出てきているVRのヘッドセットです。そして下にあるのは、パナソニックさんが「今年の年末までに出す」と言っているデバイスですが、だいぶスリムになってきたなと思います。性能だけではなく、「かけたくなるかどうか」が非常に重要なので、小型化・軽量化が進んでいます。
性能は2~3倍になっていて、より良く、安く、そして使いやすくなっています。また5~10年経つと、右のようなものが出てくると。これはMetaが2~3ヶ月前に発表したプロトタイプイメージですが、彼らは「今より3~4倍の性能のデバイスを実際に出していく」と宣言しています。
これだけ見ると、「どこまで期待が持てるのか」というのはありますが、進化の方向としてはこんな感じです。
次は投資の側面です。「メタバースを作る役割」と、「作るのをサポートする役割」。作るのをサポートする役割は、いわゆるゴールドラッシュの時にジーンズやツルハシを売る役割ですが、そういったところが投資価値としては高い。そして、現段階が黎明期であるがゆえに「そこに注目すべきである」というのが1つ目にお伝えしたいことです。
スライドに表示したのは本の中にも入れた表ですが、基本的に一番大変で時間がかかるのは「基盤作り」です。しかし、結果としてそれを摘み取る5~10年先には、非常に大きく返ってくると。「数億人の基盤を持っている」みたいなことになるので、投資対効果が高くなっていきます。
主にザッカーバーグのIRでの発言ですが、実際Metaもさまざまな発言の中で「decade」という言葉を使っています。彼らも10年単位で考えているんですね。
とはいえ一企業がメタバースに関わるという時に、「その基盤を作っていくことができるのか」「そのための道具を提供することができるのか」というと、難しいと思います。じゃあ「他の役割で関わる方法はないのか?」というと、今一番ホットなのがこの「モノづくり」の部分だと思います。
これはつまり、クリエイターに関することなんですね。「メタバース時代のモノづくり」とは、主に「世界や身体も含めた、体験そのものを作る」ということ。つまりコンテンツ作りなんですね。
これは、これまでのさまざまな領域で行われてきた技術やデザイン、場合によっては物語を描くことをストーリーテリングといいますが、そういったものも組み合わせた、まったく新しいコンテンツ作りになります。「世界そのものを作る」ということ。これがコンテンツなわけですね。
さらに企業が取り組む時には、例えば「見た目をどうするのか」「マネタイズはどうすればいいのか」、また中長期的にやっていくのであれば「運営はどうしていったらいいんだ」「サーバー代はどうするんだ」という話が出てくる。ふだんやっているモノづくり、コンテンツづくりとはまた異なる、さまざまな検討事項が発生すると思います。
このあたりは企業が取り組むより先に、個人のクリエイターが今非常に活発に動いていまして。例えば、ワールドを作っている人たちもいるし、現実をスマホやいろんな機材を使って3Dスキャンをして、みんなが入れるようにメタバースとして提供している人もいます。
また、完全にゼロから作った世界で、世界そのものがいろんな物語を紡いでいくとか。よく聞いてみると、環境音が全部音楽になっているみたいな、そういうワールドを作っている人もいます。あとはダンサーの人たちで劇団を作って、メタバースの中で上映会をやっている人たちもいますね。
また、単にアバターを作るだけではなく、背景も含めてメタバースの中で展示会をする人たちもいて。つまり、「どういう文脈でそのアバターがあるのか」という世界観をくっつけて、アバターそのものを数万円で売るんです。本当に、いろんな個人のクリエイターたちが登場しています。
企業としては少し遠回りになるかもしれませんが、例えば「彼らと一緒になって何か新しいメタバースの取り組みをしていく」とか、逆に「クリエイターが増えるように支援していく」みたいなこともあるかもしれません。
スライドに紹介しているのは企業というよりは自治体ですが、群馬県は今年「tsukurun」という人材育成の拠点を作るなど、一足先に積極的な活動を行っています。小中高生向けにプログラミング教育をしたり、最新鋭のゲーミングPCを使ってゲームやメタバース作りを教えているそうです。
それから教えてくれる人たちとの提携など、さまざまな提携活動も行ったり、積極的に教室の運営をしています。
また群馬県は今年メタバースのクリエイター教育をやっていて、アワードというかたちで小中高生向けにアイデアを募集しました。審査に通った人たちがクリエイターさんと一緒に、実際にワールドを作っていくみたいです。
このように群馬県は「クリエイターを増やすこと」に取り組んでいて、自治体としてはおもしろいと思いました。こういう例は、これから増えていくと思うのでちょっとご紹介しました。
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