2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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前川孝雄氏:今日はちょっと駆け足でお話をしてきましたが、今までの話を念頭に置きながら、これからの理想の上司像とはどんな人なのか、聞いてみたいかなと思います。
上司自身が仕事に打ちこんで、「この仕事おもしろい」とか、「なんとか達成したい」とか思って、エンゲージメント高く働いていることがまず第一義にあります。その上で今、僕が言ったような6つの上司力が満たされていくと、チームが活性化するし部下も育っていくんじゃないかなと思うんですね。
やっぱり大人が活き活きすることがめちゃくちゃ大事だと思っていて。なんとなく子どもや学生たちの会話を聞いてると、仕事ってつらいもの、会社で働くってつまらないイメージが強いんです。「苦役」とも言いますしね。
僕は家で朝仕事に行く時に、いちいち子どもたちには「うわ、今日も仕事だ。楽しいなぁ」って必ず言うんです。「めちゃくちゃ今日仕事できるのうれしいなぁ」とか、「仕事させてもらえるのは幸せだ」って話してから行くんです。どの上司も同じですよね。意識的に、自分をポジティブに、前向きにしていく。
もちろん日々の仕事が大変で、しんどいこともいっぱいあるんだけど、これを乗り越えた先にある喜びや働きがいとかを意識しながら働くことが、今の時代はめちゃくちゃ大事だと思います。
ちょっと余談です。上司力の話で、部下の心を動かすことが上司の大きな仕事になってきてるという話もありましたが、これは社会心理学者エドワード・デシのいう「内発的動機づけ」なんだと思うんですね。
これを僕なりに少し絵にしたのがこれです。動機づけ、平たく言うと「やる気を出してもらう」ってことだと思うんですけど、やる気の構造を整理したんです。
旧来型の指示管理型のマネジメントだと、外発的動機づけだったんだと思います。経営から、もしくは本部から目標が下りてきて、「あれやれ」「これやれ」と言って。現場の管理職は部下たちにもそれを振り分けて、「これやれ」って説得するわけですね。
部下からすると、そもそも自分たちのキャリアとかやりたいこととか持ち味とかも踏まえずにそれだけ下ろされるので、無能感があるわけですね。しかも、会社はコントロールしようとするわけです。他者統制というかな。
しかも上司は管理職なんですね。上司は管理して、究極マイクロマネジメントをやってしまう。当然やらされ感の蔓延しかない。世界主要各国の中で日本のワークエンゲージメントが低いのは、ここが原因になってるんだと思うんです。
これを内発的動機づけにシフトする。エドワード・デシは、内発的動機づけには「有能感」と「自己統制」の2つが条件として欠かせないって言ったわけですね。
これを上司力の概念にセットして僕が考えたのがこれなんです。業務目標。売上とか収益とか納期とか品質とかいろいろあるんですけど、この「目標」はもちろん伝えないといけない。
その上位概念にある、「何のためにこの仕事をやるんだっけ」ということを、対話の中で納得してもらうことが、まずスタートなんです。その上で、「あなただからこの仕事を任せるよ」っていうことで本人も納得して、「よし、自分だからやれる仕事だ」と思うと、有能感が持てて、「よし、できる」という感じになれるんです。
作業ではなくて仕事を任せましょう。すなわち自己裁量、自己コントロールできる状態で任せてあげれば、その仕事の主体者は部下になるわけですね。
となると、上司の役割は管理職じゃなくて支援職に変わるはずなんですよ。だから、僕は上司は管理職から支援職に変わりましょうって言っています。そうするとやる気が高まっていくと思うんですね。
同志社大学の太田肇教授とは懇意にさせてもらっていて、学ばしてもらっていますけど。やっぱり「管理をする」ということと「モチベーション」は相性が悪いそうです。一般感覚でいうとよくわかりますけど、そういうことなんです。だから管理職じゃなくて支援職に変わっていくことが大事だと思いますね。
先ほど(上司は)役割だと話しましたが、『本物の「上司力」』という去年出した本でも強く言いたいのは、人の上に立つ以上は肩に力が入っているかもしれないけども、「上司は偉い立場である」と誤解しないほうがいいんじゃないかなということです。
上司はあくまでも役割なんだと割り切ってやること。場合によっては後輩が上司になることもあっていいじゃないのということですね。
さて、いったんここまでのところで上司力の考えをお伝えしてきました。ここからちょっと宣伝もしたいなと思っています。僕たちFeelWorksの考え方は、やり方の前にあり方という、ちょっと抽象的な言葉をよく使っています。
テクニカルスキルはもちろん必要なんですけど、コンセプチャルな領域とかヒューマンスキルの領域が、僕たちの強い領域です。
コミュニケーション・サイクル理論という、10年以上前に考えたフレームがあります。研修もこの流れに沿って組み立てています。違いを認める。価値観を知る。あり方を定める。やり方を変える。コミュニケーションはこの4つに分解してやっていく必要があります。
上司力®研修でも、まず違いを認めるのがマネジメントの課題です。部下に対して指示待ちだとか積極性がないとか、一気にわーっと話が出てくるわけだけど、そうやって違いを否定しちゃだめで、それを認めることから始まるんだと。
じゃあなんで部下はそう思ってるんでしょうか? っていうので、部下の価値観を知ることに関心を向けていただいて。そうなると上司ってどうあるべきでしょうかっていう、自分の基本スタンスを考えていただいて。
日々面談をしましょうとか、ミーティングでこんなことしましょうとかっていうやり方は、(あり方がわかれば自然と)それぞれ考えていただけると。こういう流れになっているわけですね。
これが実際のリアル研修で使っているワークシートです。最初のアウトプットはもう本当シンプルな流れで、今の4象限でやっていくわけですね。
最近コロナ禍なので、リモート環境でもオンライン研修をやるようになってきました。先ほどのワークシートは、(リアルでは)実際にホワイトボードとポストイットを使ったりして、みんなで修練していくわけです。
それがオンライン環境だとちょっと難しいので、専用のワークシートに書き込みながら、みんなで画面共有できるように作ったりとかしています。オンライン環境でもある程度上司力研修はできるように作っています。
今日は「現場の上司力®」という、直接プレイヤーである部下の方々と対峙する上司の方々目線の話の講義部分を、ダイジェストでお話ししました。一方で、「トップの上司力®」というプログラムもあります。
これはどっちかっていうと、部長とか事業部長とか幹部クラスの方々が、どうやって組織を作っていくのか。一人ひとりが活き活き働く、パフォーマンスにつながっていく組織を作っていくのかという、考え方の研修プログラムもあります。
このように階層によって分けているものもあれば、ピンポイントで困ってることに焦点をあてて研修をやりたいというお話もあります。最近よく引き合いがあるのが、リモート環境でのマネジメント。「リモートワークで求められる上司力®」を3時間ぐらいでやる研修も、この2年間で相当開講しました。
それから、パワハラ防止法ができたりとかしたので、パワハラとか「ハラスメントを予防する上司力®」というプログラムもあったりします。
アクションラーニング型で、2~3ヶ月おきに、半年から1年かけてやっていく研修も用意しています。
僕が研修でこだわってるのが、理屈は理屈で大事なんだけど、結局講師の説得力もすごく大事だなと思っています。働きがいを育む講師養成講座というのを6年~7年やっていて、説得力のある講師を育てています。
上司としての苦労とか修羅場経験を乗り越えて実際講師になってる人でないと、理屈だけで説得力がないなと思っています。そういう人たちに講師になってもらうことにこだわっています。
パワハラに関してはeラーニングも去年開発してリリースしているので、もしご興味あれば、担当のほうに問い合わせいただけるとうれしいです。
もうあっという間に1時間半が経ちました。最後みなさんに聞きたいんですけど、みなさんはこれから管理職の支援に向けて何ができるでしょうか。
根本的にはみなさんのご意見にもあったように、上司だけの、現場の中間管理職だけの責任にするのには問題があります。根本的には会社組織の構造の大きな変革のタイミングがあって、その狭間で苦労してらっしゃるんだと思うんですね。
これは、『人を活かす経営の新常識』という本の中に書いたメインのコンセプトですけど、ジェイムズ・アベグレンが昭和の頃に主張した、「年功序列・終身雇用・企業内組合」という日本企業の強みの三種の神器は、見事に変わってきてるわけです。市場価値序列、終身キャリア自律、企業の枠を超えたネットワークが重要になってきてるわけですよね。
「人を大切に育て活かす社会作りに貢献する」のがうちの会社の経営理念なんですが,最近僕は、人を大切にすることは雇用を守ることでなくて、プロフェッショナルに育てあげることだと思うんです。
それには上司自身もプロフェッショルにならないといけない。多様な現場で働く部下の人たちもそうなっていく組織を、どう作っていくのかというのは、経営人事としての課題になっている時代なんだと思いますね。
ということで、時間なのでこのあたりにしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
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