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『問いかけの作法』『心理的安全性のつくりかた』 合同トークイベント「生産的なチームは何をしているか」(全7記事)

孤軍奮闘するマネージャーが抱える「報われない気持ち」 チームで心理的安全性をつくるための上司・部下の意識変革

二子玉川 蔦屋家電にて、『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』著者の安斎勇樹氏と 『心理的安全性のつくりかた』石井遼介氏が合同トークイベントを行いました。成果の出るチームの共通点として、注目を集める「心理的安全性」。本イベントでは、「問いかけ」などのコミュニケーションと心理的安全性の相互作用について、「生産的なチーム」がしていることについて議論されました。最終回の本記事では、心理的安全性をつくるためにマネージャー・メンバーそれぞれが意識できることが語られました。

上司と部下の関係の質は、部下だけに評価を聞く

石井遼介氏(以下、石井):最後に、ご質問があれば1、2問お答えできると思います。チャットであったりQ&Aであったり、いかがでしょうか。

そうですね。SDGsじゃないけれども「心理的安全性の取り組みとかレベルが、会社の価値を測る指標になる」みたいなことはけっこう大事かもしれないですね。就職をする上でも、それが一定、1つの指標になる。というところは、大事にしてもいいのかもしれないですね。

心理的安全性の評価方法は、「当社のサーベイSAFETY ZONE®を受験いただき……」みたいな話になるんですけど(笑)。とはいえ簡便にやるとすれば、どのくらい話しやすいですかという話を、まずはメンバーそれぞれに聞いてみて。

「5点満点で3.5点ぐらいですかね」とかという話をしてもらうと、5点だとめちゃくちゃ話しやすいとみんなが思っている。でも、3.5点だとそこまでではなさそう、というぐらいまでは測れますよね。

安斎勇樹氏(以下、安斎):経営学の心理的安全性に限らず、この手の評価に関して共通している傾向でおもしろいのがあるんですけれど、上司がサポートしているかどうかとか、上司と部下の関係性がどうかという話。

これはちょうど先週末僕が運営しているCULTIBASE(カルティベース)というメディアで、経営学を専門としている伊達洋駆さんという方に来ていただいて、議論をしていたんですけど。

おもしろいのが上司のサポートがあるかどうかとか、上司と部下の関係の質がいいかって、経営学では全部部下に聞くんですね。上司が上司サポートしていると思っているけれども、部下が上司サポートされていると思っていなかったら、経営学的には上司サポートは起きていないとなるんですよね。

石井:間違いない(笑)。

心理的安全性を部下が感じていなければ意味がない

安斎:だからうちは心理的安全性を担保しているよといくら言っても、メンバーが感じていなければ意味がないというところがけっこう重要なのかなと思います。

石井:おっしゃるとおりですね。我々も心理的安全性を測るとき、チームごとに全員から計測することを大切にしています。加えて、我々は心理的安全性を測る時に「ばらつき」というパラメーターを算出しているんですね。

このチーム5人の平均値はこのぐらいですけど、ばらつきが大きい。つまりだいぶ低い人とだいぶ高い人がいますね、ということが可視化される。このばらつきの大きさを見ると、チーム内で心理的安全性の格差が大きいので話しにくいと思っている人はそれはそれでケアしたほうがよくないですか。という話まで踏み込んだりはしていますね。

あとのご質問は……、これで最後ぐらいかな。「本当の意味での心理的安全性を作り上げ、持続させていくための管理職あるいは、管理職以外のメンバーにとって最も意識しなければならないことは何でしょうか」

安斎:何でしょうねぇ……(笑)。

石井:(笑)。共通で何か伝えられるとすると、「相手の立場をシミュレーションしてみましょう」というところですかね。昨日まで怖かった上司が、何冊か本を読んで前置きも何もなしに、急に優しく接し始めたり、まったく違うことを始めたりすると、どうでしょう? 急に優しくされる部下側の立場からすれば「どうしたんですか?」って、怖く感じてしまいますよね。

部下側から見た景色も踏まえて、もし怖い上司が変わろうとするなら、「心理的安全性というのを、僕もこの土日で勉強してさ。ちょっと1週間試してみようと思うんだけど、協力してもらえないかな?」ぐらいの会話からスタートして、心理的安全性に繋がりそうな行動が持続すると、この上司、本当に変わろうとしているんだな。と伝わりますよね。みたいな話は、上司側・部下側、どちらのポジションでも大事なポイントかなと思います。

部下ができることは、つらい状況にある管理職に共感すること

安斎:そうですね。先週末CULTIBASEのイベントでマネージャーの方が多い中で、ミドルマネージャーの最新の行動科学の知見をちょっとやっていたんですけど。みんな泣き出して(笑)。別に本当に泣いてはいないですよ。「目から汗が」みたいなことを、みんなチャットで言い出して。

だいたい経営学の知見とか、こういう結果の本とかってマネージャーに厳しいんですよ。「がんばれ」みたいな。チャットで「マネジメントの今の悩みは」と聞いたら、「この報われない気持ち」とか「実はすごくいろいろやっていることを知ってほしい」みたいなことをすごく言っていて、「つらい」「悲しい」とシクシク言いながらマネジメントしている……。

石井:上司だって褒められたいですからね。

安斎:そうそう。

石井:部下は褒めてくれないんだよなーと。

安斎:……というのがあるので。そういう意味では、管理職はけっこうつらい状況にあることに対してまず共感を持つ。心理的安全性が低いのはお前のせいだと言われたらもうね。

石井:もう戦争ですよ(笑)。

安斎:お前の主体性のせいだろうみたいなね。主体性VS心理的安全性の戦争が起こるので。誰1人幸せにならないと。そうそう、その共感が大事だなと思いますし。

大事なのは、マネージャーが1人でがんばろうとしないこと

安斎:マネージャーってまさに孤軍奮闘していることが多くて。マネージャー同士でコミュニケーションを取っていないとか、マネージャー同士でチームになっていないことが多い。それぞれが下を見ていて、上からの圧力があって、横のつながりがないことが多いので。

最近マネジメント変革がうまくいっている会社さんの例を見てみると、マネージャー同士が結託して仲間になってお互いの1on1のナレッジを共有しあったり。あとはシステムで変えられるところは仕組みを変えていくとか。マネージャーが1人でがんばろうとしないってけっこう大事だと思って。

石井:あぁ、大事ですよね。それを人事がサポートした、みたいなケースもある。心理的安全性のサーベイをやって、高い順にヒアリングしていく。すると、高いチームのマネージャーがやってることのノウハウがたまりますから、比較的低いチームのマネジャーのお悩みや課題に合わせて「実は、ウチのあそこのチームでは、こんなことをしているらしいんですけど」って、ヒントを渡せたりするんですよね。そういうのも組織としての戦い方としてあるのかなと思ったりしますね。

安斎:そんなところですかねぇ。

石井:けっこういい時間になりましたね。

安斎:はい。本当にあっという間の90分でしたけれども、どうしましょうか。最後に一言ずつコメント、挨拶をして締めようかなと思いますけれども。僕からいこうかな。

石井:はい。では、お願いします。

認識を共通化する「書籍」の力

安斎:定期的に2人でディスカッションしたりはしていたし、それこそもう15年ぐらいの付き合いですけど。出席番号がたまたま隣だったやつ同士がまさか蔦屋家電さんで本を隣にしてもらえるとは思っていない(笑)。

石井:思わないですねぇ。

『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)

安斎:感慨深いイベントだったなぁと思っているんですけど、書籍の力というのをあらためてすごく感じますし、書籍が現実を説明するための言葉を作っていって、言葉が新たな現実を再構成していくみたいな。あらためて研究者としてもすごくやりがいを感じるなと思ったところで。

他方で、その本が広がって認識が共通化してきたからこそ見えてくる課題とか、なんかやっぱりその中で……。

石井:「ラベルを貼って終了になってしまって行動しない……」の課題とか、ですね。

安斎:行動してくださいって、後書きとかにめっちゃ書いているんですけれども。我々自身もアクションを止めるわけにはいかないなみたいなところがあって。

今だからこそ語るべきところとか、次に書くべき本ってなんだろうとかあるいは本以外で実践することってなんだろうみたいな感じで。なんかそのPDCAが、みなさんと噛み合っていけるといいなという意味で、今日はそういう探究の場をライブでできたのがすごくよかったなぁと思います。

石井:確かに。

安斎:次の本もご期待ください! (笑) もう書いています。

石井:さすが(笑)。

安斎:宣伝だったみたいになっちゃったけど。

石井:安斎さん、今日はありがとうございました。チャットを通じてご参加いただいたみなさんのおかげもあって、この90分が成立したなと思っています。ちょっと安斎さんからいただいた、心理的安全性そのものを、手段ではなくむしろ「目的」にしていいんじゃないかという問いを抱えながら、しばらく生きてみたいなと思いました。

というわけで今日は本当にありがとうございました。またどこかでお会いできればなと思います。

安斎:どうもありがとうございました。

おすすめの本を5冊ずつ選出

司会者:安斎さん、石井さんありがとうございました。こちらのイベントの終わりの時間となりましたので、本日のイベントを終了させていただきます。実は本日はお二人におすすめの本を実は5冊ずつ……。

石井:あ、そうそう。

司会者:はい。(トーク中には)出てきませんでしたが(笑)。

石井:いやいや、大事な5冊ですね。

司会者:実は5冊選んでいただいておりまして。組織やマネジメントに関する書籍を3冊選んでいただきました。

石井:この3冊でーす。

司会者:それと新入社員の方にぜひ読んでほしい書籍を1冊。

石井:『独学大全』ちょっと分厚いけどおすすめです。

司会者:あとジャンルレスにすごくおすすめの書籍を1冊。計5冊選んでいただいております。当店でも5冊並べて展開しているんですが、本日のこのイベント終了後にタイトルだけですが、一覧で書籍をご覧になれるようみなさまにメッセージで送らせていただきます。

それで当店のECサイトからそのまま購入できるようにもなっておりますので、ぜひご覧ください。それでは、このイベント終了後にアンケートのご入力をお願いしております。大変お手数だとは存じますが、こちらで感想を入力いただきますと今後のイベントの参考にさせていただきます。よろしくお願いします。

石井:お願いします。

司会者:それでは本日のイベントを終了させていただきたいと思います。安斎さん、石井さん、本日はどうもありがとうございました。

安斎、石井:ありがとうございました。

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