2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石井遼介氏(以下、石井):安齋さんと私、お互いの本を「すでに読み込んだ」という方や「まだ読めてないよ」という方など、いろんな方がいらっしゃると思います。まずは、土台をそろえる意味でもそれぞれ10分から15分ずつくらい、簡単なプレゼンテーションからスタートしたいと思っています。
今、画面を共有させていただきました。みなさま見えていますか? 「思わず2冊買いそろえました」と書いてくださっている方とか、「ザ・姉妹本」と書いてくださっている方がいらっしゃいますね。あとは『心理的安全性のつくりかた』編集者の山地さんから「公式に姉妹本としましょう」という許可も頂けました!笑
今日は合同トークイベントということで、本の中でも「ここはちょっと強調したり言い方を変えて伝えたいな」という部分があります。そこで、最初に簡単に私のほうから心理的安全性そのものについて紹介したいと思います。
簡単に自己紹介からと思っておりますが、石井遼介と申します。『心理的安全性のつくりかた』という書籍を2020年の9月に出させていただきました。生産的な組織やチームの鍵である心理的安全性の研究と実践をしている人だと思ってください。
『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)
この「心理的安全性」は今、日本の社会で大事なテーマだと思っておりますので、ラジオ、新聞、雑誌など、いろいろなメディアへの寄稿やイベント・研修での登壇をしています。
そして、最近うちのメンバー総出でがんばっているのは、「心理的安全性AWARD2022」です。です。心理的安全性づくりの取り組みについてたくさん応募していただいています。その中でも特に良い取り組みを称えるもので、いま絶賛審査中という状況になっております。
我々はこの「心理的安全性」をキーテーマに、いい組織・いいチームを作るお手伝いをしてきました。今日のイベントはそれらの知見も活かして、安斎さんとともにいい組織、そして問いかけについて掘り下げていきたいと思っています。
石井:すでにみなさんがチャットで闊達に書いてくださっていますけれども、今日の会はできるだけインタラクティブに進めていきたいと思っています。なので、我々の話を聞いていただく部分もありますが、みなさんと一緒に作っていくイベントになったらいいなと考えています。
まずは我々自身が私語最大化、心理的安全にやっていきたいですね。ということで、始めていきたいと思います。
さっそくチャットを使ってみたいと思います。みなさんは、もしかすると日本全国(から参加していて)、あるいはまだ朝の4時という場所にいらっしゃるかもしれません。
そこで、みなさんは今どちらから参加していて、「ふだんこういう仕事をしてますよ」とか、「こういうことに趣味で取り組んでますよ」というように、ふだんのお仕事や役割をぜひチャットに書いて教えてください。「こんなところから参加してくれているんだな」と我々も楽しい気持ちになれますので、ぜひチャットにご協力いただけるといいなと思います。
さっそく名古屋、横浜、千葉、渋谷から。いろんなところから参加していただいていますね。埼玉、神奈川、広島から。広島からは2人もいらっしゃる。小売の人事をされている方。静岡から。奈良県のご自宅から。香港からもいらっしゃいますね。いいですね。
僕がまだ見られていないコメントが40件以上あるんですけれども(笑)。こんな感じでぜひリアルタイムに突っ込んでください。できるだけ我々も反応したいと思いますし、質疑応答もやっていきたいと思っています。
さて、みなさんにコメントを書いていただきながら本題に入っていくのですが、「心理的安全性ってなんでしょう?」というところからスタートしたいと思います。
石井:この「心理的安全性」を一言で言いますと、地位や経験に関わらず、誰もが率直な意見・素朴な疑問を言い合えるような組織・チームのことだと思ってください。
率直と聴くと、「あの人にズバッと冷たいことを言われた」ということが思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれないんですが、もちろんそうではないです。率直に言った結果、人間関係に衝突が起きるのではなくて、価値あるゴールやお客さまのため、成果のために、いろんな観点、視点で意見を出し合えるのが心理的安全性です。
大事なポイントは、「心理的安全だからこそ意見をぶつけ合うことができる」ということです。みなさんも、上司と違う意見を言った瞬間、絶対怒られるとわかっていたら、意見があっても「ちょっと上司と違いそうだな。黙っていよう」と思いますよね。安全性は決してぬるい職場ではなくて、意見をたたかわせるためにも大事なんです。
メタファーが大事というのは、安斎さんの『問いかけの作法』にも書いてありましたが、最近ちょっといい(心理的安全性の)メタファーを見つけたので、紹介したいと思います。
みなさんが街を歩いていると工事現場に「安全第一」と書いてありますよね。冷静に考えると、「安全第一」は、本当に安全だけが第一だったら工事をしない、何もしないというのが一番じゃないですか。でも、「なるほど。この工事現場は『安全第一』と掲げているから工事をしないんだ」と思う人はいないですよね。
その工事を安全に進めるために所定の手順を守るとか、こういう作業をする時には命綱を着けてからやろうねという(意味ですから)。「工事はします。その工事を安全に進めるためにいろんなことをやる」というのが「安全第一」ですよね。
同じように心理的安全性も、「意見は言いません、挑戦もしません」というと安全かもしれないけど、そうじゃないんですね。意見を言っても、挑戦しても安全なんだというのが心理的安全性だと捉えてください。
このメタファーを活用して頂くと「それはぬるい組織なんじゃないの?」と言っている人に対して、「いやいや、違うんですよ。やらなくても安全じゃなくて、やっても安全ってことなんです」と理解を深める助けになると思います。
石井:昨今、心理的安全性は伝統的なメディアでも取り上げられるなど、すごく注目を集めているキーワードだと思います。実際、2021年の年末の朝日新聞さんと日経新聞さんで取り上げられた他、この土曜日にも産経新聞さんで取り上げていただいています。
注目の集め方としては、主に2つのポイントがあると思います。1つは、朝日新聞さんの記事のように組織の活性化の文脈。「挑戦・イノベーションを加速・促進しましょう」とか、「ダイバーシティを成果につなげましょう」という、「もっといい組織・いいチームを作るぞ」という文脈で注目されるパターン。
もう1つは日経新聞さんが取り上げたように、コンプライアンスとか不祥事に対する予防の文脈です。どちらも重要だと思っているので、この2つの文脈それぞれに合わせて、お話をしたいと思います。
まずコンプラ・不祥事の文脈で言うと、心理的安全性がないと「現場レベルでは知っている。でもそれが組織とかチームとか上司のもとに上がってこない」という、いろんな問題が起きるんです。「気付いていたけど沈黙します」とか、「同僚に愚痴を言って終わりです」というようなことですね。これらによって、もう引き下がれなくなってから大炎上してしまうことは、心理的安全性がないことによる問題だと思っています。
石井:もう1つ。挑戦の加速とか、イノベーションの促進のほうですね。今、コロナだけではなくて、ロシア・ウクライナ戦争もそうですけれども、変化が激しくて先の見えない時代ですよね。
ロシア・ウクライナの戦争は、専門の研究者の人ですら、あの戦争が起きる前日まで「私は自信を持って戦争はないと言い切れる」と言っていたそうです。そのくらい、専門家であっても先が見えない時代に、私たちは仕事をしています。
現実にこんな起こるはずもなかったことが起きちゃったけど、「で、ここからどうする?」ということをチームや組織のアイデア・知見・力を合わせて、考えていくしかないですよね。そのためにも心理的安全性は大事なテーマだと思っています。
実際、学会でもさまざまな成果につながっているという証拠もあるんですけれども、大事なポイントは、心理的安全性が組織やチームの成長そして、パフォーマンスの先行指標になるということだと思います。
株式会社ZENTechでは「心理的安全性がめちゃくちゃ大事です」という講演・研修を、本当にいろんなところで、たぶん年間200回から300回くらいやっています。だからと言って心理的安全性が魔法とか万能薬、「これだけあれば、みなさんもビジネスで大成功できますよ!」などと夢のようなことを言うつもりは、もちろんありません。
魔法でも万能薬でもない。けれども、複雑な協働が必要な時、つまり組織やチームで望む成果を上げようとする時には、すべての土台になるのがこの心理的安全性だと考えています。
石井:心理的安全性づくりの「大方針」というのも、簡単に紹介しておきます。まずは「お互いに罰とか不安を与え合うのをやめませんか」という点が大事なことだと思っています。
罰と不安のアプローチはあんまりうまくいかないことが多いです。例えばみなさんに、何かミスが発覚して上司に報告した時に2時間詰められた記憶があるとしたら、明日はどうでしょう?
明日も些細なミスを見つけた。「これは、報告する? いや、ルールでは報告しないといけないけど、これはもうなかったことにして自分で処理したらいいんじゃないの?」と、僕も含めてみなさんは考えると思うんですよね。
「トラブルが起きたのであれば報告する」という行動自体は望ましくて、やってほしい行動のはずですよね。でも、罰を与えるとやってほしい行動はどんどん減ってしまう、ということを押さえておいていただくといいと思います。
罰・不安を避ければ心理的安全性が担保できるかと言うと、もちろん罰・不安を避けるのが一歩目ではあります。ですが、大事な二歩目というものがあります。それはこの4つの因子で、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」です。
それぞれ4つの因子のうち、自分たちの組織ではどこが高いかな、低いかな、じゃあどうアプローチしていくかなというのを、問いかけを含めて今日みなさんと掘り下げられるといいなと思っています。
石井:まとめますと、心理的安全だからこそ率直に意見を言えるとか、「これはどうなっていますか?」とフラットに聞くことができる。安全だからいろんなことをやってみる、聞いてみる、しゃべってみることができるというのが心理的安全性。そのように捉えていただけるといいかなと思います。では、安斎さんにバトンタッチしたいと思います。ありがとうございました。
安斎勇樹氏(以下、安斎):ありがとうございます。石井さん、すごいですね。出版してからしゃべりまくっているせいか、どんどん話題提供がレベルアップしているんじゃないですか?(笑)。
石井:おかげさまで。
安斎:スライドもそうだし、説明も安全第一のメタファーとかね(笑)。
石井:いやあ、やっぱり考え続けると何か思い付きますよね。
安斎:そうですよね。「あれも書いておけばよかったな」と、出した後にいろいろ気が付くことがあります。
石井:だから締切は大事ですよね。締切がないと、10年くらい考え続けることもできちゃうので。
安斎:しゃべっていくうちに、自分でも読み返しつつ、いろんなことに気が付いていくことがあると思います。
石井:ありますよね。
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