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仲山x尾原新著対談『「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』(全2記事)

上司が目の前にいない時代は「組織のイヌ」から「組織のネコ」へ イヌ⇒ネコ⇒トラへと進化する「働き方の加・減・乗・除」

仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長で、新刊『「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』の著者・仲山進也氏と、IT批評家・尾原和啓氏の対談の模様を公開します。

突然の「作れ。3週間後にオープンする」

尾原和啓氏(以下、尾原):でも、楽天って不思議な会社じゃないですか。たぶん外からだと、ものすごくイヌを強制する会社に見えたりする。

仲山進也氏(以下、仲山):言われがちですよね。

尾原:そこで、仲山さんってすごいトラでいられて。(社内にも)意外とネコもいますよね。

仲山:いっぱいいますね。

尾原:あれって、なんなんでしょうかね?

仲山:なんでしょうね。逆に言うと、あんまり考えないで言われたことしかやらない、イヌみたいな働き方の人って居心地悪くないですか?

「この仕事、どうすればできるんですか?」って上司に聞いても「この仕事って誰もやったことない仕事じゃん。俺に正解を求められても困るから、自分たちで考えながらやろうよ」って言われるだけ。

だから指示待ちの人にはたぶん居心地が悪くて、それで辞めちゃって。「合わなかった」っていうことを周りに口コミする時に、そういうニュアンスになってしまうのかなと(笑)。

尾原:そうですね。「やりきること」と「今やっていることに疑問を感じる」「自分なりに良い匂いがする方向をうろうろする」「問いを立てる」みたいなことって、本来は別ですもんね。

仲山:正解がわからない仕事しかない会社なので、それを「無茶なことを上から押しつけられた」みたいに感じる人だったら、そうなりそうな気がします。

尾原:そうですね。その中でも仲山さんなんて、楽天の店舗さまを成長させるための大学を、突然「作れ」って言われて。

仲山:「3週間後にオープンする」って言われて。

尾原:3週間後にね(笑)。まったく正解がないことをやるのもそうだし、サッカーチーム買収したから、そこをどうにかしてくれみたいなのもありましたよね。

仲山:「サッカー好きです。神戸いいですね」と伝えたら、「ヴィッセル手伝ってきて」と言われまして、翌日から神戸に行って働き始めました。

イヌ・ネコ・トラそれぞれの強みを活かした役割分担

尾原:今や会社の寿命って20~30年って言われているから、さっきの昭和96年の会社ともなると、本来3回ぐらい、会社のやっているモデルが変わっていてもおかしくないわけですよね。

そうすると、やっぱり正解が決まっていないことを始めなきゃいけない。だから、自分の中の「イヌ成分」と「ネコ成分」を見分けながら、どうやっていくかっていうのが(必要かもしれない)。

仲山:そうですね。それこそ最近だと、大企業も「新規事業やんなきゃ」という圧を感じて、そういう活動をやっているところが増えている気がします。

この時、トラが組織にいて、トラが立ち上げるプロジェクトにネコの人たちが加わればうまくいく。ネコの人たちは、トラが立ち上げるプロジェクトだと急にイキイキしながら働き出します。犬小屋では死んだ魚の目なんですけど。

尾原:とりあえず時間を過ごす場、みたいな。

仲山:はい。要は、強みを活かした役割分担ってことだと思うんです。しかも、トラとかネコって立ち上げた事業が軌道に乗って「あとはもう運用フェーズです」となった瞬間に、やる気なくなっちゃうじゃないですか(笑)。

尾原:はい、そのとおりです。ごめんなさい。

仲山:また新しいことを立ち上げるために、どっか行っちゃうので。今、尾原っち、画面から消えていますけど(笑)。まさにそんな感じで、事業が立ち上がるとどっかいなくなっちゃうのがトラなので。その場合は、イヌの人たちがちゃんとバトンを受け取ってくれて、きっちりと運用してくれれば、会社としては良くなると。

ネコ・トラが生息しやすい環境のつくり方―やってはいけない9ヶ条

尾原:そういう意味で、これからネコ・トラが大事っていう中で、僕にはこれ(ネコ・トラが生息しやすい環境のつくり方―やってはいけない9ヶ条)が響いたんですけど。

仲山:これ「わかりみしかない」って、トラの人には好評です。

尾原:だから、イヌ・ライオンでやってきている人たちからすると、これって逆に居心地悪いのかな? 

仲山:たぶん。わかんないですけど。

尾原:やっぱり「同調圧力をかけない」って、すごいわかる。僕自身がトラ型だから、同調圧力かけられるのはもちろん嫌だけど、かけるのも嫌なんですよね。

仲山:かけるのも嫌ですよね。自分がマネージャーになった時に「上から言われたんだからさ、やろうよ」とは言わないってことですよね。

尾原:もう、そんなの言ったら絶対に思考停止にさせてしまうから。あと、ここも僕一番響いて。「金銭的報酬や地位でつろうとしない」っていうの。つられんのも嫌だけど、つるのなんてもっと嫌。

仲山:つるのも嫌ですよね。あと、社内で新しいサービスが立ち上がる時に、社員みんなで「販促キャンペーンやるぞ!」とかって、一番売った人とかお客さん獲得してきた人にボーナスあげるみたいな社内キャンペーンがあるじゃないですか。僕、あれをやられたほうがやる気がなくなっちゃう。

尾原:逆に「そうなんだ。じゃあがんばれば?」って。

仲山:そうなんですよね。自分がよいと思ったら言われなくても勧めるので、ああいう動機づけのされ方は居心地良くないなって。

尾原:でも逆に言うと、こういうルールに違和感を感じない人がいるとしたら、その人たちってイヌだったりライオン型な可能性がある。ネコ型と仕事しようと思ったら、こういうことに気をつけながら仕事していかなきゃってことなんですね。

仲山:そうですね。なので「(自分は)イヌだな」と思う人のこの本『「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』の使い方としては、ネコというものを理解して、「こういうふうに付き合えば、お互いストレスなく良い感じにやっていけるってことだな」と受け取ってもらえると、とても嬉しいです。

尾原:ですよね。イヌ型にもネコ型にも、組織にとっては大事なフェーズがあるわけだから。

10項目から成る「ネコ度チェック」

尾原:ちなみに、仲山さんがいろんな人と話してみた中で、みんなイヌ型・ネコ型(のどちらかに)100パーセント(寄っている)って感じなんですか? それとも、ある程度はグラデーションがあるんですか?

僕は完全に、もう生まれた時からネコで。おかげさまで「自分の使命とはなんだ?」みたいなことをずっと問い続けながら生きてきて、1職目からマッキンゼーっていう「トラじゃなかったら出ていきなさい」っていう会社だったので。だから、わりとトラしかイメージできなくて。ブレンド型もあるもんなんですか?

仲山:たぶん、人によっては「『ネコ度チェック』の個数が5、6個でした。私はどっちなんでしょうか?」みたいな人もいて。

尾原:そうだ、ネコ度チェックが手元になくて。ぜひ画面共有していただけると(ありがたいです)。

仲山:画面共有して良いですか?

尾原:はい。ぜひ見てる方もネコ度チェックしてみて「おっ!」「なんか響くことがある」ってなるなら、この本がヒントになるかもです。

(コメントを指して)いきなり「10個全部でした」って言ってる人がいる(笑)。

仲山:「10個全部でした」とか「9個でした」っていう人がいっぱいいる中で、「自分はイヌでした」って人も、もちろんいるんです。「5個とか6個だとどうなんですか?」と聞かれたんですが、そこは自分で決めたら良いんじゃないですかと思っていて(笑)。

あとは「イヌの皮をかぶったネコ」として長年やってきたことにより、自分がどっちだかわからなくなってしまっているパターンもあり得ます。なので「もしかしたら自分はネコなのかもしれない」という問いが立つだけでも意味があるかな、という気はします。

もしイヌの人だとしても、当てはまる項目があったとしたら、今のまんまの働き方をずっと続けていくと、どっかで……。

尾原:モヤモヤが。

仲山:そう、負荷がかかっているので。

尾原:外に表現できないからストレスが内側に溜まっちゃう。

仲山:「どこかで体に良くないことになる可能性がありますね」という捉え方をしていただけると良いと思っています。

仲山:さっき尾原っちが言っていた、10番の「同調圧力をかける」のもキライ、に当てはまっていたらネコかトラです。自分が部下の時はイヌもネコも「あの上司、同調圧力かけてくるから嫌だよね」って文句を言うと思うんです。それなのに、自分が上司側になったら「社長が言ってます」と言うタイプの人はイヌですね。イヌ確定。

尾原:ただ、もともとの性格もあるのと、さっき言った「イヌの皮をかぶったネコ」みたいに、昭和96年の会社の中で「イヌでやりきった成功体験」がある可能性のほうが高いから。どうしたって、自分が上司になった時に、イヌ型としての成功体験を基にリピートしたくなっちゃいますもんね。

仲山:そうですよね。

尾原:今、実際に目の前にある仕事がイヌ型で勝ちきれるものなのか? そうじゃなくてトラとネコでやったほうが、新しい使命だとか、新しい成功パターンを組み直せるのか? ここを見極める。

ネコからトラになるために大事な「足し算」と「引き算」

仲山:ここで聞かれていないことをしゃべっても良いですか?

尾原:ぜひぜひ。

仲山:僕、前から「加減乗除」(「ネコからトラへー働き方の4ステージ」)の話をしているんですけど。

ネコからトラになるためには、やっぱりこの「足し算」と「引き算」をちゃんとやるのが大事だと思っていて。足し算のステージって、どっちかというと「言われたことをきっちり、好き嫌い言わずにやってみる」ステージなんですね。

この4つ(①加・②減・③乗・④除)のステージに、この4つ(イヌ・ネコ・ライオン・トラ)の動物を当てはめるとどうなると思いますか?

尾原:①加ステージはイヌが強いですよね。とりあえず、苦手なことだろうがなんだろうがやりきりましょうという。

一方で、②減ステージは「自分が何にときめくのか?」とか「何を求められているのか?」みたいなところに忠実でいなきゃいけないから。イヌだと逆に「やらなきゃいけないことのほうが多くて」と言って、減らせないですよね。

仲山:減らせないですよね。なので「自己中心的利他」はネコの得意技なので、②減ステージはネコなんです。

尾原:③乗ステージと④除ステージ。③は磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせる……これちょっと難しくて。やっぱり仲間作りが好きっていうと、一見ライオンに見えるけど。まあでもそっか、③ライオン、④トラってことですかね?

仲山:僕が考えたのは、(スライドの回答を指して)これです。

尾原:あっ、ずるーい!(笑)。

仲山:(笑)。トラとライオンは両方、③乗ステージです。トラの人は社外の人と強み同士を掛け合わせて、プロジェクトベースで働いていく感じ。ライオンは、社内の掛け合わせが上手なイメージがなんとなくある。

尾原:そうですね。

仲山:そして④除ステージは「寅さん」の寅です。

尾原:フーテンの寅さんで「もう居場所なんて関係ねえ」みたいな。

仲山:自由すぎる感じ。「もう牙とか爪もどうでも良くない?」みたいな域に達している感じ。

尾原:ただ、その人が自分の「魂のごちそう」に基づいて動いていると、なぜか周りがパタパタって動いて、良いように何かが動き始めちゃう。

仲山:まさに。これは本には載っていない話なんです。

尾原:でも、これは納得感すごいある。イヌとしての成功体験を積んでいると、②の「減らすことで強みに集中」していったり「減らすことで余計に『何でお客さまから感謝されているのか?』」っていうところに、敏感になるって確かにそうかもしれない。

僕は最初っからネコ・トラだったから、まったくここにアレ(壁)がないんですけれども。普通の人って意外と①加ステージから②減ステージにいくことにこそ、壁があるのかもしれないですね。

仲山:そうですね。「ずっと足し続けて定年を迎えるパターン」はけっこうありそうです。

尾原:だからこそ、そこに敏感になるためには、一度は「自分の中にいるネコみたいなもの」に敏感になって、考え直すことが大事なのかもしれないですね。

仲山:そうですね。そんな気がします。

ネコ・トラしかいない組織は、チームビルディングが大事

尾原:これ、ちなみに出版好調なんですか?

仲山:おかげさまで、出版5日目に増刷が決まりました。

尾原:おお! 表紙がちょっと、あざとかわいいのがずるい。まあ僕らにとってはおなじみの表紙の絵ですけれども。あと、ネコっていう表現が女性層にも来る感じがするんですよね。

仲山:ネコすごいですね。

尾原:僕、この「水曜日のネコ」(ヤッホーブルーイングのビール)を用意してあります。

仲山:ありがとうございます。僕はヤッホーブルーイングのエア社員1号なので。

尾原:1号なんだ。

仲山:はい。ここに名刺があるんですけど。ヤッホーブルーイング「エア社員1号」って書いてあります。

尾原:だからある種、「よなよなエール」(ヤッホーブルーイングの商品)って、まさにトラ型でうまくやっていて。やっぱり「自分たちがなんでビールで喜ばれるのか?」みたいな使命に忠実で、しかもそれを社員みんなで「魂のごちそう」としてがんばろうみたいな会社ですもんね。

仲山:そうですね。ネコとかトラしかいない組織は、お互いにすり合わせをすること、チームビルディングが大事です。みんなが自分勝手にやっているとどうにもならないので。

尾原:逆にバラバラになっちゃうから。

仲山:そう。なので逆に言うと、ちゃんとすり合わせをした結果として「自分たちはこういう約束事で動こうね」という規律とか秩序みたいなものがしっかりしていないと、パフォーマンスが出ないってことです。

尾原:なので、イヌの良さ・ネコの良さみたいなことを理解しつつですね。とはいえ、変化の時代です。昭和96年式に、イヌ型で突っ走る勝ち方もあるけど、上司が目の前にいない時代の今、ネコになるか、ゆくゆくはトラに向かって(欲しい)。

最終的には、なりたい人がいるかどうかは置いといて、僕とか仲山さんみたいなフーテンの寅さんへどう向かうのかっていうヒント満載の本なので。ぜひ、読んでいただければ。

仲山:ありがとうございます。

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