2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
『企画 「いい企画」なんて存在しない』刊行記念 高瀬敦也 × 國友尚 × 小早川幸一郎トークイベント 「オリジナリティ/独自性のある企画のつくり方」(全5記事)
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高瀬敦也氏(以下、高瀬):ちょっと話がずれちゃうんですけど、私がずっと思っていることがあって、Yahoo!知恵袋が出た頃って何年でしたっけ?
國友尚氏(以下、國友):2004年。
高瀬:2004年でしょ。2004年ってインターネット黎明期ではないとはいえ、一般的にはまだそこまでじゃないですか。
國友:そうですね、個人用のフリーメールアドレスを全員持ち始めた時代じゃないですかね。
高瀬:そうか。いずれにせよ、黎明期のスーパースターがみんな一様にインターネットに触れた瞬間に「これはすごい。世の中が変わるぞ」って気付いて、それこそいろんな「企画」を立てて、事業を生み出してやられたわけじゃないですか。
私は実はずっと、それに気付けない側の人間だったんですよ。1995年ぐらいの時に、「これは世の中がもうすごいことになるぞ」という。私は「すごいことになりそうだなぁ」という漠然とした感覚はあったけど、みんなどうやってそれに気付いていたのかなって。
國友:僕はそれでいうと、まずいち利用者としてインターネットが大好きだったというのがありますかね。なので「ヤフオク!」とかに関しても、自分が「このゴミみたいな物をどうやって高く売るか」というところで利用させてもらった、いちユーザーであり熱狂的なファンでもあったので。
新しいネットサービスがどんどん出てきた時には、僕はもういろいろとりあえず使いまくっていたというのが大きなきっかけです。自分が身を置いていた世界と違う経済の流れがあるぞというのが、体感としてありましたね。
高瀬:今日のトークのテーマにも関わるなと思って、今しゃべりながら思いついたことなんですけど、「その気付きってどうやって気付くの?」って僕もよく聞かれるわけですよ。アイデアが出た時、物を作っている時、「なんでそれを思いつくの?」みたいな。それなりにいろんなロジックで説明するじゃないですか。
私は逆の立場で、その超黎明期に「インターネットの無限の可能性」に気付いてわーっと思考した人は「なんで気付いたんだろう?」と、それが最近すごく疑問なんです。
國友:テレビからネットに行った時のきっかけでいうと、高瀬さんもご存知だと思うんですけども、テレビの「ボツの企画」とか「ボツのネタ」って、もう山ほどあるんですよ。たぶん小早川さんの編集の世界も同じだと思うんですけども。そのボツのネタでも「本来は価値あるものがあるはずなのにな」というところを、ずっと課題意識としても持っていて。
たまたま僕は情報番組をやっていた時に、ボツネタばかりを集めて、とりあえずランキングにして、例えば「お勧めのお店ランキング」とか、「お取り寄せのランキング」「テレビの視聴質ランキング」といったインターネットサービスを作ったことがあったんです。
プライベートで作ったサービスなんですけど、利用者が一気に100万人くらい増えていくのを体感して。その時に、テレビの世界では狭き門でボツになって捨てられていくようなネタでも、一般の人々に届け方さえ変えれば、価値あるものとして再復活するぞと思ったんです。社会では「いらないもの」と思われているものに実は価値があって、それが利用されるというところにすごくおもしろみを感じていた、というのはありますね。
高瀬:なるほど。それがきっかけで気付きになるのはすごく合点がいくし、理解できます。
高瀬:インターネットの本質って「ニッチとニッチをつなげること」ですよね。小さなコミュニティの人が「はい、僕はここにいますよ」って手を挙げた時に気付いてもらえる世の中にした。それによっていろんなことが起きるわけですよね。
私は1998年から社会人になるわけですけど、私がもし当時そこに気付けていたら、たぶんテレビ局には入っていないんですよ。今テレビ局を辞めて独立した理由も、そこに近いですね。
いろんな企画をやりたくて、思いついたことを可視化・具現化したくて、テレビの器が一番適していたからやっていたし、楽しかった。でも途中から「あ、インターネットのほうがなんでもできるじゃん」と思った時に、テレビの中にだけにいるとどうしてもできない部分もあるから、外に出たほうがいいなと思ったんです。
小早川幸一郎氏(以下、小早川):ネットが「情報発信」を一般化したとか、大衆化したと言われていますけど、でもネットで「企画」も大衆化・一般化したというのも、あるかもしれないですよね。
高瀬:ありますね。
小早川:企画の数がものすごく増えたんじゃないですか。もしかしてね。
高瀬:すべてのものがインターネットによって民主化されてきているわけだけど、企画もそうですね。企画を思い付いても特殊な人しか外にいるたくさんの人に向けて発信はできなかったわけですからね。
國友:高瀬さんは「もしそれに気付いていたらテレビに行かずにインターネットの世界へ入っていたかも」とおっしゃっていますけど、僕は発想が逆なんですよ。それでいうと、高瀬さん企画の本の「企画力」のところに、「インプット力」という大きな項目があったと思うんです。
僕は比較的、最初は大きなところに身を投じて、まず「情報をシャワーのように浴びること」をすごく大切にしてるんですね。なので僕は、ロボットの研究のための情報を一番シャワーのように浴びられるのはテレビだろうというきっかけで、テレビの世界に入っています。
それでいうと、当時「なんで最初からインターネットベンチャーに行かないの?」と言われましたが、ヤフーに行くと王道のインターネットサービスに関しての「情報のシャワー」を浴びられるだろうという思いがあったんです。自分が次にチャレンジしようというところに対して、一番最短期間で情報をインプットできるところってどこだろうと意識して選択していたなと、すごく感じますね。
高瀬:「それがテレビだったらこうなるな」と思っているところがすごいですよね。確かにボツネタとかも含めて、テレビ局の会議ってものすごい量の情報が並べられるんですよね。それが日常。
小早川:今日視聴されている方の中には、「企画を考えているけどなかなか会社で通すことができない」ということで、そのための参考にしたいとか勉強したいという方が多いと思うんですけど。
お2人にこの話の流れでお聞きしたいんですけど、例えば高瀬さんがテレビの企画を通した時は、どういうようなポイントで企画を通していたのか。國友さんはヤフーで企画を通した時、どう通したのか。お一人ずつお聞きしたいです。
小早川:高瀬さん、代表的な番組だったり、そうじゃない番組でもけっこうなんですけどもいかがですか。
高瀬:通す、通さないの点で言えば、もう覚悟と気合と執念ですね。「気合!」みたいな感じですかね(笑)。私の記憶ではロジックじゃなかったような気がします。
小早川:会社としてそういう企画を通すためのフォーマットとか、システムみたいなのはあったんですか?
高瀬:ありましたよ。場面によって変わったりもしますし、その時の上司のスタンスによっても変わっていたんですけど、結局はもう気合みたいな感じでしたね。いろんな理屈をこねた時期もあったし、こねろと言われたこともあったけど。結局、最後は熱意というか覚悟というか。半分辞表を叩きつけるのとワンセット。
小早川:一応、会社の企画というシステムに乗っかりつつも、大暴れしながらでしたか?
高瀬:大暴れというわけでもないですけど(笑)。ウザいなと思われても、上司からしたら「そんなに言うんだったらしょうがねぇな」という感じだったと思いますよ。うっとうしいなという。
小早川:じゃあ、けっこうしつこく?
高瀬:しつこく。だって最初は絶対通らないから。「この前だめって言ったじゃん」みたいな中で、ずっとやってきた感じです。
小早川:なるほどね。でも大事ですよね。
小早川:國友さんのYahoo!知恵袋もすごく気になるんですけど。
國友:そうですね。ヤフーに限らずかもしれないですけども、この高瀬さんの本の冒頭のところに「企画とは決めることである」ってあると思うんですよ。その決めたあとに2つポイントが分かれるのかなと思っていて。
1つは高瀬さんの今の話にあったのは「もう自分でやる」と決めちゃうと。「もう周りの人がなにを言おうとも、もうやりきってやる」みたいな、泥くさい覚悟とやり抜く力みたいなところを言われていましたね。これは僕自身も、ほかの人に話して「だめだ」と言われた時に、それでも自分でもやり続けたいと思うかどうかがまず1つ目の大切なポイントかなと思っていまして。
テレビの世界だと、僕がいた1998年から2000年ぐらいって、自分でビデオカメラを回して撮った映像がテレビでも流せる、いわゆる民生機の画質がテレビに対応できたタイミングだったので。例えばドキュメンタリーで企画に「だめだ」と言われても、自分がこれはいけると思ったら、ひたすら先に撮り続ける。
要は企画へのの投資を自分自身でして、先にお金が出て行ってるんだけど「これはあとで絶対に企画でうんと言ってもらえて、お金が入ってくるから」というように、先んじた投資をしていたというのは1つあります。
これはインターネットの世界に行っても、上司や社長が「だめだ」と言っても、周りの仲間がこれはいけると思った時に「もう勝手にやろう」と。黙ってやっていたら絶対気付かないから、もう勝手に進めるというのは比較的やっていましたね。
それをテストローンチみたいなかたちである特定のユーザーに当てて、それなりにユーザーの反応がいいぞという結果を上司であったり社長に持っていった時に、今度は「これもうちょっとがんばってみようか」みたいなかたちになるので。いかに最初に社会に問えるかたちに持っていくかは、すごくポイントかなと思います。これが1つ、どっちかというと、企画というよりかはもう「自分でやりきる力」ですね。
國友:一方でもう1つのポイントとしては、自分にやり抜く意志があんまりない、とはいえみんなと一緒だったらやりたいという企画って、世の中にたぶんたくさんあって。そういった状態で「企画とは何か」みたいなところで考えたとき、高瀬さんの「企画とは決めることです」の「決める」って動詞の表現なんですけど、名詞で考えると「企画とは誰かをその気にさせるレシピ」という表現になるんじゃないかなと思います。
企画をレシピと捉えた時に、要は「最後どんなものが完成するか」というのを全員で共有していて、そのためのステップを「この手順通りにやってください。そうすればこれが完成しますから」ということの提示なんですね。「企画書」と堅苦しく考えずに、もう「レシピ」だと。
最後の完成形を見せて、手順をこのとおりにやったら多くの人が喜んでくれますよというのを見せて、社長であったり上司であったりがその気になるのが実現する企画書そのものだと思うので。「レシピです」みたいな感じで、それをいかにわかりやすくそぎ落とすかが大事なんです。
不安な方って、企画書に盛り込む傾向があるんですよ。いろんなことを盛り込むんですけども、盛り込むと手順がわからなくなるので。いかにそれをそぎ落としてわかりやすく表現するか。それをレシピのかたちと同様に捉え、企画書はツールとしてうまく使っていましたね。
高瀬:企画書って大事ですよね。
國友:大事ですね。
高瀬:自分の脳みその中にあるものを人に伝える時に、映像として伝えるうえでは企画書はすごく大事な手段ですよね。どうしても盛り込みたくなるけど、そこをぐっとこらえてシンプルにすることも本当に大事だと思いますね。
國友:そうですね。あと世の中にはけっこうマジックワードみたいなものがあって。「企画」という言葉も、本の中で高瀬さんは最初に定義をされていますけれども、多くの人が言っている「企画」って、ぜんぜん違うことを言っていたりするんですよ。アイデアのことを言っている人もいれば、場合によってはただプロジェクトが進まないことを「企画がだめなんだ」みたいなことで言っていたりもするので。
企画って「いったい御社ではどの定義で企画を捉えていますか?」「どこに課題を感じているか?」というところがすごくポイントで。けっこう「企画」というマジックワードに踊らされることがありますよね。
ここ最近だと「DX」とか「CX」とかっていう言葉も、企業によってぜんぜん違うことを言っていたりするんです。言葉の定義で抽象度が高くモヤッとしたものは、使い勝手はいいんだけどもみんなが違うイメージをしていることがあるので、まずその意識を統一するために「その言葉って何なのか」というのを、あらためて定義し直すことがすごく大切なプロセスかなと思います。
高瀬:おっしゃるとおり、曖昧な言葉だから便利でみんな使いたがるんですよね(笑)。「企画」なんてまさにそうで。だから再定義しなきゃいけないかなという話の中で、こんな本になったわけですけど。
小早川:國友さんの「企画とは何か」というのは今お話していただいたようなことですかね。
國友:そうですね。決めることはすごく大切で、決めることも2つに分かれるという点。あとは企画を「決める」みたいな動詞じゃなくて名詞であえて捉えるとすると、「人をその気にさせるレシピ」という捉え方をしていますね。
小早川:具体的に企画を考える時とかに、重宝しているパターンとか手法みたいなものってありますか?
國友:僕の場合は.......例えば高瀬さんのこの著書の表紙を見るだけでも「けっこうここに企画の要素が詰まってるな」って思うんですよ。
「『いい企画』なんて存在しない」「今みんなが欲しがっているのは企画できる人です」みたいな言葉がある時に、まずこれに対して「全否定する」という視点はすごく大切なポイントだと思うんです。
なので、「今みんなが欲しがっているのは企画できる人です」という言葉に「確かにそうだそうだ」と言う人もいると思うんですけども、これを風刺に捉えて、企業の経営者向けとか、自分が上司だけども部下にすごく優秀なエース社員がいるという人たちに対してメッセージを作るとすると、「今あなたが欲しがっているのは企画できない人です」みたいな。
そういうメッセージにすると、実は上司としては企画できない人をかわいがってやるとか、上司のさらに上の社長から見たら「中間管理職のあいつはすごくできるんだけど、部下がだめだから」みたいな感じで、企画の本ではなく自分のポジションを上げるためのおもしろい本になるかなとか。
1つの言葉があった時にそれを真逆から捉えたら、どういう価値が生まれるか。それを欲しているのはターゲットは誰なのか。誰がその企画を今度は欲しがってるのか。そこを連鎖して考えるような癖はついていますね。
小早川:真逆からということですか。
國友:真逆ですね。わかりやすいんですよ。「いい企画」と言っていたら「悪い企画」。「悪い企画なんて存在しない」って、それはそれで欲しがっている人がターゲットとしてたぶん見えてくるので。真逆にすると違うところに実はターゲットがいたりするので、そういったことを考えることが癖としてありますね。
小早川:どうですか? 高瀬さん。たまに逆に考えたりとかしたりします?
高瀬:はい。もうちょっと広げると、たぶん「逆に行く」というのは普遍的な、企画法というより「価値を生み出す方法」だから、それが企画にも順応できるんだよというお話だと思うんですけど。
私は「主語と述語を逆転させる」方法もよく使います。もともと決まっているものを入れ替えたり、逆転させたり、裏表を変えたりというのは、よくある方法論です。
國友:あと僕の癖として1つ染みついているところが、前日の僕が言った発言を一番信頼していないのは自分なんです。昨日自分が言ったことに対して、それをまた徹底的に叩き直す。もう永遠にいたちごっこで、行ったり来たりするんですよ。
結果、「いい企画なんて存在しない」「いや、悪い企画なんて存在しない」というのを行き来して、もっと振り子の幅を振って、振り切った時になにかをつかむみたいなところ。そこを自分の中ではすごく大切にしていますかね。
高瀬:(國友さんって)すごいでしょ。
小早川:そうですね。
國友:でもこれ、いろいろテレビから学んでることもすごくたくさんあって。
國友:それで言うと日本のコントって、コントを作っているコント作家からすると、多くの芸人がされているようなコントに対して「あれってコントじゃないよ」みたいなことをたぶん言うと思うんです。
コントってそもそもは、社会に対しての風刺なんですよ。風刺で終わっちゃうとただのレビュアーになっちゃうので、その風刺にしたことを多くの人が「それ、よくぞ言ってくれた」って思った後、最後に笑いに変えるんですよね。ネガティブなことを言っているんだけれども、最後はポジティブに終わるという。
これもまた実は「振り子の揺れ幅」で作っているもので。優秀なコントというのは、風刺で「よくぞそこをついてくれた」ということを、どうやって多くの人の喜びに変えるかというところまで設計しているんです。これってビジネスでも同じだと思うんですよね。
多くの人が、かゆいところに手が届くような、「俺もそこを感じたんだけれども、それつかみきれなかったんだよ」みたいなポイントの、負であったり課題であったり怒りであったりを捉えて、それを「新しい喜び」に変わるような価値に変えていく。その揺れ方はテレビもそうですし事業でもそうですし、研究の世界でもそうですし。いろんなところで共通するような法則かなと感じます。
高瀬:「揺り戻し」なんてよく言いますけど、投資の世界でもそうだし、なんの世界でもそうですよね。
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