2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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中川諒氏(以下、中川):どちらかと言うと、今「ファッションと恥」の関係性みたいな話をしたんですけど、より軍地さんの経験やキャリアも含めた、経験で変わっていく「恥」というお話をしたくて。
僕、最近よく思っているのが「老害」とか、「さよなら、おっさん」じゃないけど、「おっさん」っていう言葉を使っている若い人たちも、いつかそういう存在になるんだよ、と。
僕は今33歳なんですけれども、やっぱり社内の打ち合わせとかでも、先輩としての仕事もあれば、後輩としての仕事もある状況なんです。それがだんだん、きっと先輩としての仕事も増えていって。
その時にやっぱり、ずっと「老害」とか「おっさん」を否定しているままではいられなくなると思う。これは誰にも逆らえない、歳を取るということだから。それで、『いくつになっても恥をかける人になる』というタイトルになっていった、という経緯があるんです。
軍地彩弓氏(以下、軍地):なるほど。
中川:さっきの「内的恥」「外的恥」も、成長段階によって変化すると思っていて。何かを始めた時、ある程度できるようになった時、誰よりも先輩になった時みたいな、そういうフェーズによって変わっていくものかなと思っていて。
中川:軍地さんの記事をいろいろ拝見したんですけれども。
軍地:そうなんですか(笑)。
中川:そう(笑)。その中で、「私はダサい自分がすごい嫌だったから、いろんな人にリサーチして回った」みたいな話があって。
軍地:はい、そうです、そうです。よく読んでいますね。
中川:ファッションの仕事ってターゲット層と自分との、年齢と感覚の差みたいなのって、広がっていく一方じゃないですか。雑誌でもなんでもそうだと思うんですけど。
僕も「SNS、TikTokで流行るものを考えてください」と言われた時に、僕とTikTokを好きな人の感覚が、どんどん広がっているわけで。その現実がある中で、軍地さんは、どうやってそういう「恥」と向き合っていらっしゃるのかお聞きしたかったんです。
軍地:(笑)。恥というか、私の場合は女性誌の中でも、けっこう若めの女性誌をずっとやっていたんです。もう30年以上、女性誌という中にがっつりいるので、目の前をその時代の10代から20代前半の人たちが、ずっと通り過ぎていくわけですよ。私の前を通り過ぎる子どもたち、みたいな(笑)。
中川:どんどん大人になっていく、みたいな(笑)。
軍地:私はずっと定点でいるけど、その時代の20代とずっと会話をしているわけです。同窓会にいくと、結構みんな同世代で固まっていて。コミュニティも考え方も。
中川:はい(笑)。
軍地:私は若い人とずっと付き合っている。若い人の言語、持っているものとかを、おもしろいから吸収して。今も、TGC(東京ガールズコレクション)のお仕事をしていて、ちょうど今週末なんですよ。そこでメタバース(仮想空間)の話をしているんです。50代の私たちのコミュニティではあまり使わない言葉を、20代の子たちとしゃべることで、どんどん自分が勝手にアップデートされるという環境を作っていて。
自分も、もう相当なおっさんだと思うの。おばさんというより、おっさんだと思っていて。
(一同笑)
軍地:ただ1個だけ、「若者の否定はしない」はベースに置いています。そういう格好悪い大人になるということが、一番の自分の「恥」として認識しているんです。
やっぱり今起きている日本のいろんな問題って、成長をストップした人たちが起こしていると思っているんです。自分のアップデートができていない。例えば、オリンピックの話もそうだし、今のワクチンの問題とか。
中川:(笑)。
軍地:その渋谷のワクチンの話も、対話すれば解決策があったと思うんです。電車に乗っていれば若い子たちの会話が聞こえてきて、ワクチンが打てなくて困っていることくらいわかるのに、そことの接続点を切っちゃって、自分たちの小さいコミュニティで、周りに似たような同族しかいない中で生きている。そうすると、すごく老けるし、若者を否定しちゃうと思うんです。
私はずっと雑誌の編集者という性(さが)のため、「新しいものは正しい」ってずっと生きてきちゃっているので。ちょっと前に「パタゴニア」のポップアップストアを見てきたんだけど、あそこは過去を否定しない。
中川:古着を売っているところ?
軍地:そう、リメイクをしているんです。過去のものをアップサイクル(創造的再利用)している。それは過去を否定しないことなので、それも新しいんですよ。過去のものを売っていることが新しいので。
なので、常に今あるものの中で新しいものに目を向けるということが、まず1つと。「恥」という点で言うと、新しいものを否定する自分は「格好悪い」っていうのがベースにあるので。なので、私は比較的そこのおじさん化はしないように、マインドセットはしていますね。
中川:ルール化しているということなんですね、なるほど。
中川:この本を書いた後に、感想を直接いただくことが増えまして。けっこう医療関係者の方々からSNS経由でお返事をもらうことが多くて。
軍地:へえ、おもしろい。
中川:看護師さんとか、お医者さんとか。「医療業界は恥の多い人が多い」とみんなおっしゃっていて。それで、「恥が大きいからこそ、医療ミスとか医療問題が起きているんじゃないかと思っているんです」という感想をけっこうもらうんですよ。
軍地:ほお。
中川:それは僕が想像するに、「尊敬されようとする」という行動が、恥の原因になっていると思っていて。
軍地:それはお医者さんの上下関係とか、看護婦さんの中の上下関係で起きているという?
中川:たぶんそれもありますし、いわゆる「患者さんたちから尊敬されなければいけない」という感情が、そういう状況を生み出しちゃっているんじゃないかな、と思っているんですよね。
軍地:なるほど。
中川:そう。だから例えば、自分がTGCの仕事をするとして、なんでも知っている人として行くのではなくて、若い人と対話するという気持ちで行けば、そこは「恥」の考え方も変わるかもしれないし。
軍地:そう、そこなんですよね。そこなんですよ。絶対自分より向こうのほうが、おもしろいことを考えていると思うんですよ。それで取材対象者っていろいろじゃないですか。私、ずっと取材をしているので「0歳児から100歳の人まで、対等にしゃべれる」というのが特技だとよく言っているんです。インタビュアーでもあるので、相手のことに興味を持つのがベースにある。
軍地:さっきのパタゴニアの人としゃべりこんだ後に、ラフォーレでフェムテック(女性の健康課題をテクノロジーで解決すること)をやっている女の子たちに会って、ジェンダーの話とか、「ウーマナイザー(女性向けの性的玩具)」についての話をずっとしてたんです。
20代の子でも、60代のパタゴニアのリペアをやっている女性でも、話すスタンスは全部一緒です。要は、相手に興味を持つということ。この本にも「知らないことを聞く大切さ」みたいに書いてあったけど、自分にとっては、それがおもしろいんですよね。知らないから、知識を得ることがおもしろい。それはどんな人であれ、自分と違うんだったら私はしゃべれる。
例えばコンビニの前に座ってお酒飲んでいる、「え、お家に帰ったほうがいいんじゃない?」という人でも。ちょっと怖いのは嫌だけど。
中川:(笑)。
軍地:「なんでコンビニの前にいるのかな?」とか興味を持つ。この本にもすごく「他者に対して興味を持つ」と書いてあったと思うんだけど、そこで恥が1つ克服しやすくなるというか。「知らないんです」ということを前提にすると、楽になるんですよ。それで向こうから期待されて、「いや軍地さんだから、なんでも知っていますよね」って言われると、逆に「え、知ってないけど」。
(一同笑)
軍地:先に降参しちゃう。「知らないから教えて?」と。
中川:なるほど。そこが一番大きなところなんでしょうね、きっと。
軍地:おじさんたちは「知らないから教えて」って、菅さんとかたぶん言えないんだと思うの。だから自分だけで決めて、自爆しちゃうんだと思うのね。「どうやったら僕、よく見えますか?」って聞けばいいと思う。それを一言言えるか言えないかで、良いおじさん化するか老害化するかって、すごくあって。
それを老害のおじさんに聞くと、守っているんですよね。「自分の権威」や、「尊敬される自分」を守ろうとしている人が、一番脆いって思っていて。でも、その脆い人たちが脆いって気付いてくれないから、みんなで脆い泥舟に乗らされているみたいなのが、今の日本だと思うんだけど。ごめんなさい、今すごく日本について考えることが多いので。
中川:(笑)。
軍地:だから私、海外の人としゃべっているほうが楽なのは、「こう思われたら嫌かも」みたいなのがないじゃないですか。
中川:でもそれ、すごくわかります。
軍地:例えば、海外の人はメールのやり取りがものすごくストレート。「いついつまでにこれをやってね」「これがミッションだよ」みたいなのが、ぽんぽんと書いてあって。ちょっと話がずれちゃうかも。私人生で1回だけ、外資系の会社に就職しているんですよ。コンデナストという会社に。
中川:はい、コンデナスト。
軍地:その時に、英語で会議をしなきゃいけないんで。それで、なんちゃって英語はできるけど、そんな会議の英語なんて、と思ったの。
中川:しかもクリエイティブを英語でやるって、また違う能力ですものね。
軍地:そう。またリテール(小売り)の、エクセルの数字を見ながらのしゃべりもあるから。あ、ごめん。こんな話、していいのかな?
中川:大丈夫です。
軍地:(笑)。『ViVi』の時は講談社という、すごくドメスティックな会社でフリーランスで働いていて。そこから、いきなりインターナショナルに来て。
中川:だいぶカルチャーショックですよね。
軍地:カルチャーショックだし、「え、英語しゃべれないけど」みたいなので入ったんですけれども、最初のミッションは2つ。「英語を習いなさい」と「痩せろ」と言われまして(笑)。
中川:ええ。
軍地:「痩せろ」は、要はファッション業界って、やっぱりサンプルが入らないと難しくて。
中川:ああ。
軍地:その2つがミッションで「Gaba」に……。
中川:英会話の教室。
軍地:英会話の教室に入ってそれで会議があって、イギリスの本国と、香港の本社から来た人たちとしゃべる時に、一応通訳さんはいるけど、私は「自分でなんとか、自分がやりたい雑誌について英語でしゃべろう」と思って、拙いながら、めちゃくちゃしゃべったの。もう文法も駄目で、いろいろみんなが助けてくれるんだけど。でも最後に、イギリスの社長が、「言いたいことはわかる」って言ってくれて。
(一同笑)
軍地:「お前が偉いのは、英語でしゃべろうとする努力だ」って言われて。他の部署の人たちは、英語を間違えたくないから通訳を介する人も多くて。
海外の人たちの中で英語でしゃべるっていう、そこは私にとって、超「恥」だったと思うんです。当時タイムズスクエアに、まだコンデナストのアメリカ本社があった時に、みなさんが観ている『プラダを着た悪魔』の舞台になったあの場所で、国際会議がありまして。
中川:あの場所ですよね。
軍地:あの場所(笑)。今はもう場所移っちゃったんですけど、その当時まだタイムズスクエアというところにあったんですよ。
中川:へえ。
軍地:『ファッションが教えてくれること』でも出てくる、あのビルなんです。私は『GLAMOUR』という雑誌の日本版編集長になるはずだったので。国際会議で、テーブルに各国の旗が立っていて、その日本の旗が立っているところに座って(笑)。
中川:首脳会議みたいな(笑)。
軍地:首脳会議みたいになって。しかも通訳入れられないし。そこで「いや、これはちっちゃくなっていよう」と思ったんですがネットでデジタル出版することについて、日本がすごく研究していたから、「彩弓、君の意見は?」って言われ、めちゃくちゃな英語だったけどなんとか答えたという。
中川:ああ回ってきた、みたいな(笑)。
軍地:私の一番の恥は、あそこだったかも(笑)。それでも、やっぱり恥をかいても逃げるよりは良い。逃げる恥のほうがたぶん、将来のことを考えると、人生にマイナスだったと思うんですけど。「恥をかくほうを取って、今がある」みたいなところがあるので、「取れる恥は取りに行け」とは、ちょっと思うかな。話ずれちゃったかな。
中川:いえいえ、大丈夫です。
軍地:でも、そういう「恥を取って今がある」みたいな、恥をかくことを取らざるを得なかったというか。
中川:僕も恥を乗り越える上で、必要だと思っているのが、「アビリティよりメンタリティ」という考え方なんですけれども。
軍地:さすがコピーライターですね。
(一同笑)
中川:要するに、「能力よりも意識のほうが大事だ」「姿勢のほうが大事だ」と思っていて。
軍地:そうですね、そうそう。
中川:例えば、「今日、こうやってお話をする回を設けます」という時に、じゃあ、僕がぺらぺらしゃべれるかどうかというのを考えていたら、永遠に軍地さんにお願いできないわけで。でもそれは、「軍地さんと『ファッションと恥』の話をしたい」という気持ちからお願いをすれば、多少僕が下手っぴでも受けてくれるだろうという。
軍地:ぜんぜん、ぜんぜん(笑)。
中川:そういうマインドになっていないと、やっぱりいつまで経っても、僕の知っている軍地さん、無名の中川諒という、その差は埋まらないから。だから、さっきおっしゃったみたいな、「流暢にしゃべれなくても、英語でコミュニケーションを取ろうとしている姿勢が伝わって、みんなが話を聞いてくれるようになる」とか、そういうのってやっぱり大事だなと思いますよね。
軍地:そうですね。だから、要は「恥」って、やっぱりコミュニケーションのことだと思うんですよね。自分が恥だと思っていることが、人から見ると「え、ぜんぜんそんなの恥ずかしくないよ」とか。いや、さすがに裸で歩いたら、みんなも「それは恥だ」って言うけど。
中川:(笑)。
軍地:意外と自分が「恥ずかしい」と思っていても、他者から見て「え、それはぜんぜん恥ずかしくない」「別に格好いいけど」みたいなことが多い。「自分が意識した恥がすべて恥」と思い込まないほうがいいのかも。すごくそう思いました。
中川:そうですよね。最近、この本をテーマに、企業向けのワークショップをやったりしているんですけど。
軍地:すごい。
中川:それで、最後にワークシートに1分間ずつ記入して発表してもらうというのをやっているんですよ。そうすると、みんな恥ずかしいと思っていることがそれぞれ違っていて、「え、そんなことで恥ずかしいと思っているの?」みたいなリアクションも、周りからあったりとか。
軍地:そうそう。
中川:そのリアクションをその人が知ることも大事だし、逆に「他の人はこういうことが恥ずかしいと思っていて、これが原因なんだ」みたいなのをお互いに知ることができるんですね。
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