2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中川諒氏(以下、中川):では質問タイムなんですけれども、事前にいただいている質問がいくつかあるので、それをご紹介したいと思っています。
1つ目はファッションに関わる部分なんですけど、「ファッションセンスに自信がなく、がんばっておしゃれしていると思われるのも恥ずかしいです。どうしたらいいでしょうか?」。
軍地彩弓氏(以下、軍地):「どう見せたい」ということが前提に立っちゃってますよね。でも「好きな自分でいること」が一番かっこいいと思うから、人に言われるよりも自分が着たいものを着るのが一番いいと思うんです。これは私もそうなんですけど、ニューヨークに行くといきなり楽になるんです。楽にならない?
中川:わかります。ヨガパンツで歩いてる人たくさんいます(笑)。
軍地:ヨガパンツでもぜんぜんいいし、「ちょっとお尻見えててもいいかな」みたいな。いつもだと「もう私も50代だから、お尻が見えるようなスカートとか着ちゃだめ」とか思うんですよね。実際は着ないけど(笑)、でもミニスカートでもいいかなとか、ちょっと足太くなったけど足出してみようかなとか。
そういうことができるのは、ニューヨークはみんな周りの目を気にしていないからなんですよね。気にしていないから逆にお互いを尊重しあえる感じがあって。
最近ちょっとおしゃれなマンションに引っ越して、ゴミ出しの時に着替えるようになったんです。これが「恥」の感覚だと思うんです。モチベーションになるのはいいと思うんだけど、萎縮するように恥を使わないほうがいいと思うんです。
「恥」から逸脱したほうが、メリットが大きいんです。みんながこう萎縮している時に、逆に恥をかこうと思って逸脱している人は存在が1,000分の1ぐらいになって、より独自性が出てくるので。
中川:確かに。
軍地:だから、それは「やってみなはれ」ですね(笑)。でもこれは、意外と言われないよね。
中川:試しにやってみたら意外とうまくいくということですよね。確かに質問者のこの方はきっと「周りからどう見られるかを意識されている」ということなんでしょうね。
中川:続いてもファッションに関する質問です。「自分の服装を変えることに、恥ずかしさや抵抗があります。自分らしいファッションをする時に意識していることを教えてください」。
軍地:好きなもの身につけることです。さっきの質問に近いんですけど、「自分らしさ」というところにすごく悩んじゃったりするかもしれないけど、お気に入りを見つける作業だけでいいんです。
「人から見てどう思われるか」を気にしてやっていたら、誰かのInstagramに載っているコーディネートをトレースしていけばいいのであって。「着こなしていること」が楽しくなれば、恥はどこかへ置いていっちゃうので。
アクセサリー1個でもいいんですけど、好きなものを身につけているだけで楽しめるというか、「明日は何着よう」ということを考えて楽しむ。ファッションって、人のためにするんじゃなくて、根本的には自分のためなんですよ。
ユニクロのようなファストファッションのTシャツがかっこいいと思えばそれでもいいと思うし、それが自分にとって心地いいかどうかですよね。私も最近「心地いい」というキーワードをすごく言うようになったんです。例えば「古着でも気持ちいい」とかね。
軍地:さっき、中川さんが言っていた「新しくないとかっこいいと思えない」って、昔私もそういう強迫観念がありました。
中川:特に雑誌の仕事をされていたら、そうですよね。
軍地:ファッション誌は新しいトレンドを作って過去を否定する仕事なので。だけど最近、10年前に買った服をどう着ようかとずっと考えてたりするのが楽しくなってきたので。
逆に時代性なんて今だからこそ受け入れられることもありますよ。1990年代の服を持ってきたら「軍地さん、その服かっこいいですね。これいつのですか?」って、1990年代ってかっこいいと思われるとか、「恥」の概念も変わってきている。そんな固定的な「かっこいい」なんて誰も持っていないから、やったもん勝ちなんですよ。
中川:確かに。自分が満足すればいいんじゃないかということですよね。
軍地:周りの目を気にするよりも自分の心地よさを取るほうがいいと思います。
中川:ありがとうございます。
軍地:今日もいろいろな人と話していたんですけど、「新しくなきゃいけない」とか、「高いものじゃないとおしゃれと言えない」とか、ハイブランドがいろんな価値観を否定しちゃってるじゃないですか。グッチとバレンシアガのコラボなんて、昔は恥ずかしかったんです。
中川:(笑)。
軍地:「それってブランドとしてどうなんだ?」みたいなことがあったけど、でも今はそれも「ありだよね」と。そうやってブランドが言っちゃっているのであれば、私たちはブランドを盲信的に信じるよりは、自分にとっていいと思うものを、「今これがいい」と思えばそれを着ればいいと思うんだよね。
中川:編集として見るということですよね。いろんなブランドを自分自身が編集していくというか。
軍地:まあそんなに細かく考えなくてもいいと思うけど、自分が今、「これがいいな」と思えば、それを着ちゃえばいいじゃんという、もう少し軽い感じかな。
中川:ありがとうございます。もう1個、チャットでいただいている質問なんですけど。「ユニクロやGUは、極端な表現をすると『恥をかく確率が低いブランド』という価値があるような気がするのですが、軍地さんはどう思いますか?」。
いわゆるファストファッションは、恥をかく確率が低いブランドという価値があるんじゃないかということですね。
軍地:ユニクロとGUは、不特定多数の人がたくさん着ているから逸脱しにくい。でもユニクロってすごく独創的ですけどね。ユニクロって服を「ライフウェア」というパーツにしたんです。柳井正さんがすごいのは、ファッションを個人個人ではなくパーツにしたことです。
「全身ユニクロにしなさい」とユニクロが言っているわけじゃなくて、古着と組み合わせてもいいし、「1つのパーツとしてユニクロを使ってください」ということです。GUはもっと「トレンドと言われるものを安く買えること」に重点を置いているので、彼らは無個性になることを提案しているブランドじゃないんです。でも着る側が無個性に着ちゃっていたりすることは多いですね。
私も、それこそマンションの話で、JWアンダーソンのユニクロコラボを着ていたら、(エレベーターが)チーン鳴って出てきた人がまったく同じやつを着ていて、「うわっ」と思って。その時はちょっと恥ずかしいと思った。
だから、「自分らしさ」なく着ちゃうことは恥ずかしいかもとは思うんだけれども、例えばそこに1つスカーフをつけたり、斜めがけのバッグをつけるだけでも、自分っぽくなるのかなと思います。彼らがやっていることは「無個性を作り出す」ということではない。私たちの使い方次第だと思いますね。
軍地:ただ、確かに今日も「同じ型のユニクロのワンピースだな」という人を3人見たりしました。でも、それは彼らにとっての安心感なんだよね。
中川:そうですよね。着る側の「恥」の捉え方によって、それが恥ずかしいのか恥ずかしくないのか変わるということですよね。
軍地:そう。さっき言ったコードとモードで言うと、今はコード的なほうが安心する人もいるんですよね。それはその人の価値観だから否定もしないんだけれども、もったいないなと思っちゃうんですよね。「せっかく一人ひとり違っていい個性を持って生まれてきたのに、なんで誰かと同じにしちゃうのかな」とは思うけど。
中川:どっちが心地いいかということなんでしょうね。モードにいるのが心地いいのか、コードにいるのが心地いいのか。
軍地:この間のオリンピックとパラリンピックを観て、今はパラリンピックを観るのにハマっているんですけど、例えば水泳の自由形は、手がない人、両腕がない人、足が短い人、全部バラバラの個性だけど、みんな同じレーンを泳ぐじゃないですか。その時は泳ぎ方もぜんぜん違ってよくて。そのほうが自由に見えたんです。
開会式も、パラリンピックのほうがおもしろかった 自由なことと不自由なことが逆転しやすいというか、不自由であるからゆえに自由になれたりするし、自由であるがゆえに自分を「こうしなきゃいけない」と縛りつけてしまうこともあって、特にオリンピックは「こうあらねばならぬ」とガンガン言う外野が多すぎてああなっちゃったと思うんです。電通さんもいろんなアレがあったでしょうけど。
中川:(笑)。
軍地:でもそう思うと、「不自由の自由」もあるなと思って。例えば「1,000円以内でファッションをやりなさい」とか、制限があるほうがファッションって実はすごくおもしろくなるんです。
中川:確かに。いろんな柄を取り入れたりしますもんね。
軍地:そうそう。そういうこともちょっと思いましたね。だから、「ユニクロだからおしゃれじゃない」ではなくて、個性を活かすことができるのに、活かさないのはもったいないなと思うぐらいかな。
中川:なるほど、ありがとうございます。あと2つ質問がありまして、1つは「『人前で話すこと』など、恥ずかしいと思っていたけどやってみたらそうでもなかったことは何ですか? 何が原因だったと思いますか?」。
やってみたらそうでもなかったこと。僕はインスタライブですね。この本が出る前日に、初めて1人で1時間、自分の部屋でインスタライブをやってみたんです(笑)。やっぱり「誰も観なかったらどうしよう」って恥ずかしいじゃないですか。
軍地:刻々と人数が表示されるからね(笑)。
中川:そう(笑)。誰も観ていないスマホに向かってずっとしゃべっているみたい。恥ずかしいかなと思ったんですけど、意外と始めてみると(そうでもなくて)、もちろんそんなにたくさん観てくれるわけじゃないんですけどね。でもやってよかったなと思っています。
インスタライブに対しての自分の心理的ハードルがなくなったし、それで「たくさん観てもらえなくてもいいじゃん」という気持ちになれたことが、けっこう大きかったと思っていて。
だからさっきの内的恥・外的恥で言うと、僕は外的恥が強いタイプなんですけど、周りからどう見られるかなんて気にしていたら本当に何もできないなと。自分の本の宣伝をするためにやってみて思ったことではありましたね。
中川:軍地さんはなにかありますか?
軍地:私が過去にすごくあがってしゃべれなくて、喉カラカラになってしまったのは、某自動車メーカーで「女性のマーケティング」についてしゃべらなきゃいけなかった時です。役員クラスに向けた講演なので、みんな60代以上のおじさんで、10人ぐらいしかいないんですけど、会場に着いたらみんなこうやって腕組みをしていたんです。
要は「聞いてやるぞ」みたいなおじさんたち。こっちの言葉が届かない人にしゃべるので、ものすごく焦って。実像と自分の理想像がすごく乖離していて、緊張で喉がカラカラになったことがありました。
オーディエンスの中に自分の話を聞いてくれる人が1人いると(話せるんです)。今の話は対面だけど、例えばリモートの講演がすごくやりづらいのは、「この人たちは聞いているのかな?」と思ってしまって、しゃべれなくなるんです。リアルな場で対面でやるんだったら、1人でもいいから聞いてくれて、ちょっとでもうなずく人を見つけて、その人に対してしゃべるようになったら恥ずかしくなくなった。
中川:1人いるだけでも安心しますよね。
軍地:要は不特定多数の前で話す時、「誰に伝えているかわからない」というのは、自分のゴールが見えないんです。そういう時は大きなゴールと自分の自意識で悩んで、頭の中が混乱して緊張してあがるんだけど、「この人のためにしゃべっている」と思えば、言葉が出やすくなるんです。
さっき「この距離で言ったことで通じているんだったら、みんなにも通じるんじゃない?」と言ってくれた友だちがすごく救いだったと言ったんですけど、だから「何がゴールか」と思うことで、この人を笑わせることだったりとか、意外と自分の目に見えるゴールを設定したほうが、しゃべる時に楽になりましたね。
軍地:でも、私最初がテレビだったから……。
中川:そうですよね。テレビなんか、まさに視聴者が見えない世界じゃないですか。
軍地:以前『グッディ!』の生放送で4年半コメンテーターをやっていたんですけど、最初ゲストで呼んでいただいた時に、本当にいきなり素手で行って、矢面に立たされて質問に答えるという、めっちゃあがってもよかった場面だったのに、なぜかあがらなかったの。
私、いまだに収録のほうがあがるんです。こういうライブのほうがあがらないの。収録だと「こう見せよう」という自意識があるんだけど、ライブは来たものに対して返せばいいので、意外とそのほうが楽なんです。
中川:心の事前準備がいらないんですね。
軍地:そう。その奥に何万人もいると思ったらたぶんあがると思うんだけど、カメラの向こうのディレクターの顔だけ見ていると楽になったんですよね。あとちょっとコツがあって、私は頭の中でワルツを踊るんです。
中川:ツータンタンって?
軍地:そうそう。今、足元は映っていないけど、私はテレビでこう机に手をついてコメントをする時に、足でずっと『スケーターズ・ワルツ』を、つまり3拍子を数えているんです。それをやるとあがらないんです。
中川:気持ちが落ち着くんですか?
軍地:落ち着くんです。
中川:おもしろい(笑)。
軍地:タンタンタンターンってたまにちょっと踊って(笑)、あがりそうな時は机の下で3拍子を刻んでいます。
中川:自分の中の、守られた空間にいられる感じなんですかね。
軍地:あと脈拍がコントロールできるので。おすすめです(笑)。
中川:そうですね、今度やってみます(笑)。
軍地:あがりそうなプレゼンってあるじゃないですか。「これ、なんか向こうの反応がなぁ……」って時は、『スケーターズ・ワルツ』です。
中川:今度やってみて報告しますね。
軍地:(笑)、ありがとうございます。
中川:最後は本に関する質問ですね。「外的恥と内的恥の両面があるハイブリッド型の私は、本書をどのように活用していけばいいか、具体的にお伺いしたいです」ということなんですけど。
軍地:みんな100パーセントハイブリッドじゃない?
中川:本の中では「外的恥を感じやすいタイプの人は、内的恥を感じにくい」という話にはなっているんですけど、ただ実際は僕も両面あると思っていて。それもさっきのモードとコードの話じゃないけど、外的恥を感じている時期と内的恥を感じている時期が行ったり来たりするんだと思うんです。
だから今自分の感じている恥がどっちの恥で、それに対してはどう向き合ったらいいのかを、逐一感じながら分析して向き合っていくことが大事なのかなと思っています。
軍地:感情って因数分解したほうがいいと思っていて。「これは自分の自我だな」とか、「これは自分の自我を殺してもやらなきゃいけないことなのか?」とか。もしくは、「外から言われていることって、どうでもよくね?」と、自分を説得していくとか。
自分で「恥」の中身を因数分解していって、解決できることとできないことにわける。よく思うんだけど、解決できるようにしていけば「恥」って克服できるじゃないですか。「●●ができなかった」という時は、できるようになれば克服できる。そう考えていけるといいのかなと思います。
例えば上司から言われる理不尽なことが自分の恥の原因だったら、上司を変えればいいし、その上司から離れればいい。そうやって解決策が出てくると思うんです。もし恥で悩むんだったら、そうやって因数分解すればいいいと思いました。
中川:ありがとうございます。時間が15分ぐらいオーバーしちゃいました(笑)。楽しくて、いっぱい話しちゃいましたね(笑)。
軍地:ごめんなさい(笑)。
中川:いえいえ、ありがとうございます。最後、エンディングということで、ご本のあらためて紹介をしようかと思います。あらためまして、『いくつになっても恥をかける人になる』という本をディスカヴァー・トゥエンティワンさんから出しました。
「恥」ってみんなが思うネガティブな感情だけど、それをポジティブに捉え直すためにはどうしたらいいかということを、考え抜いて書いた本です。「恥はチャンスの目印になる」とか「迷ったら恥ずかしいほうを選んでみよう」とか、読むと背中を押してもらえるような本になったんじゃないかなと思っています。
軍地:本をパッと開けた時に、必要な言葉が来ますよね。50の実践できる方法とか。
中川:ありがとうございます。編集者の千葉さんと、恥と汗をいっぱいかいて作り上げました。よかったら手に取っていただければと思っています。今日はお付き合いいただきありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。
軍地:またね。Twitterに感想ください。
中川:「#恥をかける人」で感想をお願いします。そのためにTシャツ作ったので(笑)。
軍地:ユニクロで作ってきました(笑)。
中川:よろしくお願いします。ありがとうございました。
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