南相馬市に誕生した、国内屈指の先進的な工場

飯野英城氏(以下、飯野):ただいまご紹介にあずかりました、ロボコム・アンド・エフエイコムの飯野です。本日は本当にお忙しい中、この南相馬工場までご臨席いただきまして、誠にありがとうございます。まずは簡単に、南相馬工場のコンセプトと技術的な概要をご説明いたします。

この南相馬工場のコンセプトは、「変種変量に対応するデジタルファクトリー」です。「デジタルファクトリー」というのは、このロボコム・アンド・エフエイコムが、勝手に作った言葉なんですが、デジタル上で動かしたものがそのままリアルで動くような、デジタル主導で動かすファクトリーということで、デジタルファクトリーと言っています。

特徴は大きく3つあります。1つはカーボンニュートラルを実現するエネルギーマネジメントということで、この工場はSiemens(シーメンス)と提携し、最新のエネルギー管理システムを導入しております。

もちろんゴミの排出量であったり、1個1個の加工機がどのくらいの量の電気を電気を使って、どのくらいの量の水を使っているかというところも、すべて管理できるシステムとなっております。

2つ目は、販売から生産設備までが連動した生産ラインシステム。要は販売からそのまま設計、製造実行システム、そして加工機、ロボットまでが連動していくといったシステム構成になっております。

そして3つ目は、そういったシステムを動かすために、生産を停止させない工場のネットワークセキュリティになっております。

最近、やはりいろいろなところでネットワークセキュリティの事故が起こっております。もし攻撃されたとしても、最小限で被害を収められるようなネットワークセキュリティの構成になっております。

徹底したエネルギー管理とバーチャル上でのシミュレーション

飯野:全体の概要です。左上に太陽光発電があり、施設として1個1個の電灯の電流まですべて管理しております。そして、ゴミの廃棄物の処理といったものが全部管理されております。

下側の左下に行くと、生産側のPLCといったロボットなどを動かす専用コントローラー。そして、真ん中は何を使ったかを管理する、ユーティリティ管理。そして加工機、無線機器といったものがあります。

右側に行きますと販売管理、AIの見積もり管理から、実際の生産管理に入ってきます。

CAM(コンピュータ支援製造)やCAE(「モノ作り」​における研究・開発工程において、試作品によるテストや実験の代わりに、コンピュータ上の試作品を用いてシミュレーションし分析する技術)、BOP(製品を組み立てる時の部品ごとのプロセスフロー)と言われるプロセス工程の管理ですね。

そういったところから、最適な生産順をシミュレーションで計算して、最終的には製造実行系のシステムに渡されると。それが左側のリアルのところですね。こういったものを動かしていくかたちになります。

そして、もう一方で、右真ん中ぐらいにあるBOPから出されたものから設備設計し、その後に製造のプロセスシミュレーションを行います。ロボットの動きをシミュレーションして、さらにまた左下のロボットシステムに転送していく。

右側がバーチャル、左側がリアル。これらがバーチャル上に全部実行されたものが、リアルで動いていくと。これをロボコム・アンド・エフエイコムでは、「デジタルファクトリー」と言っています。

稼働すればするほど“工場が良くなる”仕組み

飯野:さらにこれらを動かすにあたって、ネットワークが必要になってきます。やはりこのネットワークが脆弱だと、いろんな攻撃をされたら工場が停止してしまいます。ですので、ここはSiemensのセキュリティ機器をフルに使って、コアやセルを守っています。防御方法についてはあとで細かく説明いたします。

そして真ん中には、日本の中で標準のいろんな機器をつなぐためのインフラみたいなかたちでORiN協議会というものがありまして、これがエネルギーのProfibusというプロトコルであったり、あとはBACnetというビル監視系のプロトコルであったり、Modbusといったユーティリティなどを管理するようなプロトコルを、一元管理してつなぐことができます。

そのつながったデータが、右上のデータクラウドにどんどん保存されて、最終的にはいろんな人が見やすいデータになっていきます。そして、溜めたデータをまた製造系の実行系のシステムに戻して、PDCAを回していくような工場になります。

ですので、動かせば動かすほど、工場がどんどん良くなっていくかたちになります。それを「デジタルファクトリー」というふうに言っています。

ということで、このあと金谷が細かい説明をします。そこでどういうエネルギー管理をしているのか、どういうセキュリティをしているのか。そしてまた、自動加工ラインがどうなっているのかをご説明すると思いますので、よろしくお願いします。以上となります。

(会場拍手)

5つのエリアで構成された、ハイテク加工工場

司会者:金谷さん、よろしくお願いいたします。

金谷智昭氏(以下、金谷):ロボコム・アンド・エフエイコムの金谷でございます。本日はみなさま、ご来場いただきましてありがとうございます。それでは、私から施設の概要をご説明させていただきたいと思います。

この南相馬工場は、敷地面積が約1万坪ございます。3万平米ですね。1つは今、こちらにございます、加工工場。そして事務所と本館ですね。エンジニアの育成センターは、35名収容可能な設備になっております。

こちらの加工工場は、レイアウトは大きく5つに構成されております。全自動24時間稼働を可能にしたロボット自動加工エリア。大物の加工エリア。小物の加工エリア。3Dプリンタ。そしてQC(品質管理)。こういったエリアで構成されています。

ちょっと見にくいかと思いますので割愛いたしますが、5軸を中心としたマシニングセンタ。NC旋盤、3Dプリンタ。そして、QC管理としまして三次元測定機などの測定器関係、あと放電加工機といった加工機。総額で約10億円程度の投資金額となっております。

それでは、コンセプト・特徴をご説明したいと思います。詳細は館内をご覧いただきながらご説明いたしますので、ここではさらりとご説明します。

まずはエネルギーマネジメントシステム。こちらは飯野からお話がありましたように、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みということで、240キロワットの自家消費型太陽光発電システムを設置しております。

そして、電気自動車の充電ステーションの2基の導入。エネルギー消費原単位管理(一定量の生産物を作るのに必要なエネルギーを管理すること)。どこの工場内でも原単位管理は行っていますが、製品一つひとつの究極の原単位管理を実現しております。

そして、産業廃棄物の自動計量システム。将来は、蓄電池システムと再エネルギー電気の購入に取り組んでいきたいなと思っております。

私ども、カーボンニュートラルに向けた取り組みとしましては、すでに屋根での発電を開始しております。事務所棟にも50キロワットの太陽光発電システムを増設する予定ですし、この裏には太陽光の蓄電システムも今後導入する予定でございます。

やはり加工機があるので、アルミや鉄の切粉といわれるものが出ます。そこで切粉が満タンになりましたよと検知して、自動的にAGV(無人搬送車)が回収しに行って、自動的に計量して廃棄をする。こういったものも、SIMカードを搭載してクラウド上に自動的に上がるような自動計量システムを導入いたします。

原単位管理は、館内をご覧いただきながらご説明したいと思います。

堅牢なネットワークセキュリティ環境

金谷:そして、最先端のネットワークセキュリティ。こちらは飯野からお話がありましたように、Siemens製を全面的に導入しています。デジタルの環境とロボットの環境をつなぐためには、ネットワークが非常に必要になってくるんですけれども、一般的な日本の製造業のネットワークは非常に脆弱と言われております。

私どもはSiemensさまと技術提携しまして、オフィス側、生産側のネットワークを強固かつ、冗長化(システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、平時からバックアップとして予備装置を配置し運用)して、非常に堅牢なシステムを開発しております。こちらは館内をご覧いただきながらご説明したいと思います。

そして私どもは、DX実現に向けた変種変量・短納期の生産に対応したい。そういった工場にしたいと思っております。こちらはAI見積もりからPLMのシステム、そしてデジタルシミュレーション。そして、それを元にした自動加工を一貫して実現する。こういった工場になっております。

詳細は、もうちょっと大きいプロジェクターでご説明させていただきます。

こちらは、昨年、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のサプライチェーン強靭化にかかる技術実証事業の採択を受けまして、現在開発をしております。2021年のものづくり白書にコラム掲載をいただいております。

24時間稼働で、人が介助せずに完成品が仕上がる全自動設備

金谷:続きまして、私どもTeam Cross FAは、デジタルシミュレーション技術を非常に多く活用しております。こちらも展望デッキでご説明しますが、私どもはこのロボットシステム、加工の自動化のラインを開発する時に、こういったデジタル環境を通じて開発しております。詳細は、デモで実際にご覧いただきながらご説明したいと思います。

そして、こちらは24時間稼働を実現した全自動自動加工ラインになります。加工したい材料をセットして、デジタル上で生産序列を(組んで)、受注データを元にして来たものをロボットが運んで、ロボットとAGVが運んで、5軸のマシンセンタに投入していくと。

加工が終わったら、三次元測定器で自動測定をして自動倉庫に戻す。そして、人間がまったく介助せず完成品が仕上がっている。こういったコンセプトになります。こちらはデモでご覧いただきたいと思います。

あと、こちらの奥では事務所の1階にスマラボ南相馬をオープンいたしております。アパレル分野、食品工場の分野、あとは物流分野ですね。そういった、さまざまな分野に対するロボットシステムを導入しております。

あとはいろんな工場では、いろんな組み立て、いろんな検査、いろんな部品を供給する。こういったさまざまな用途がありますので、マルチ組み立て、マルチピッキング、マルチ検査といったような、マルチな動きをするシステムの展示もしております。こちらは後ほどご覧いただきたいと思います。

では、館内をご案内いたしますので、詳細はその際よろしくお願いいたします。私からは以上でございます。

(会場拍手)

(工場見学終了)

工場の技術をすべてオープンにし、日本のモノ作りを底上げ

飯野:本日はお忙しい中、このロボコム・アンド・エフエイコムの南相馬工場(の開所式)にご臨席いただきまして、誠にありがとうございます。

ロボコム・アンド・エフエイコムは、やはりロボットシステムインテグレータの後方支援をすることを目的に作った会社でして。この南相馬工場を使って、全国のFAロボットシステムインテグレータの方たちを支援していけるような会社作りをしていけたらいいな、と思っています。

この南相馬工場は、技術をすべてオープンにいたします。特に製造業の中小企業の方々、みなさま方に見に来ていただいて、工場のモデルとしていただけたら、すごくありがたいなと思っております。

そして、いろいろなネットワークセキュリティから、エネルギーマネジメント、そして、自動化ラインをどんどん真似していただいて、いろんな自動化の役に立てたらいいなと思っております。

最後になりますが、この南相馬工場を基点にして、今までご支援いただいた南相馬を盛り上げて、みなさまに少しでも恩を返せるよう精進していきたいと思います。本日は誠にありがとうございました。

(会場拍手)