2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
リンクをコピー
記事をブックマーク
ニコラス・ヴォイシュニック氏(以下、ニコ):こんにちは、TOAの創始者のニコです。ユヴァル・ノア・ハラリ教授、ならびにメイム・ビアリク博士と共に本日のLeaps Talkを開催できたことが、ドキドキでもあり光栄な気持ちでもあります。
私には思いつかないようなお二人のインスパイアマインドは、長文のイントロダクションが必要でしょう。本日の対談を実現してくれた、South by Southwest Online、Leaps by Bayerのインパクト投資部門には感謝します。
それではメイムさん。あなたがギーグな世界に踏み込んでくださってから、私はずっとあなたの作品の大ファンです。『ビッグバン・セオリー』(アメリカで人気を博したコメディドラマ)、それからポッドキャストの連載『Mayim Bialik’s Breakdown』も、大変楽しませてもらっています。
メイム氏はほとんど前例のないことを成し遂げました。ベストセラー作家になり、受賞俳優になり、ニューロサイエンスの博士号を持っている人でもあります。テレビコメディとサイエンスの、2つの世界を行ったり来たりしていますね。2つの世界のあいだには、私の知らないようなびっくりする共通点があったりするのでしょうか。
メイム・ビアリク氏(以下、メイム):ラブリーな紹介をありがとうございます(笑)。お二人と一緒にここにいられることが、本当に光栄です。
(共通点として)はっきりしていることで、大学と大学院を合わせた12年間のアカデミックな生活で良かったと思うのは、誰も私の外見を気にしなかったことです。もちろん、家父長制はどこでも付いて回りますが。
女性科学者として明らかに異なる問題はいくつかありましたが、私の見ている限りでは、大部分はとてもプライベートな過ごし方ができました。これが科学者としてのキャリアの中で、自身で作り出せたもっとも大事なことです。
とはいえびっくりするのは、「エゴ」がどこにでも存在することです。学術界、特に科学界には、私が接しているような強力なプロデューサータイプの性格の人がいることや、たくさんのエゴがあることを知って、多くの人は非常に驚いていると思います。地位のために無理やり操作する行為も多いです。
実際のところ、神経精神医学を専門にしていた神経科学者としては、「どの分野にも問題のある人がいる」ことを知っておくのは、いいことだと思います。「科学者だから」あるいは「大金持ちで成功したプロデューサータイプだから」といって、それを免れることはできません。
ニコ:ユヴァルさんは『Sapiens』『Homo Deus』『21 Lessons for the 21st Century』といった著者の中で未来を模索する一方で、我々の過去についておもしろい洞察をシェアしてくださいました。これらの本の成功は目を見張るものがあったし、『Sapiens』のグラフィックノベルもリリースされましたね。
世界で最も卓越した作家の一人としてあなたのことをいろいろ調べていて、驚くべきことがありました。あなたは小説よりもテレビがお好きだとおっしゃっていましたが、これはどうしてでしょうか?
ユヴァル・ノア・ハラリ氏(以下、ユヴァル):もちろん小説も読みますよ。でも、テレビを観ている時間のほうが好きです。基本的に人間はストーリーテリングな動物で、ストーリーを考えるんです。テレビはストーリを作ったり伝えたりする優れたツールなので、おそらく我々の時代のもっとも強力なツールですね。
また、ライターやクリエイターとしての私の使命は、できるかぎり幅広いオーディエンスにリーチすることです。テレビは小説よりもそれがしやすいですし。
メイム:(笑)。
ユヴァル:少なくとも自分自身では、(小説よりもテレビが好きという)自分の好みに驚きませんね。
ニコ:(ユヴァル氏の作品には)コメディの要素も入ってると思います。
ユヴァル:確かに、コメディの要素はありますね。特に「権力」について書きたいなら、ユーモアほど権力を揺るがすものはないです。ユーモアは、権力に対抗するもっとも効果的な「武器」でもあります。
ニコ:ここからは「変化」について、お二人と話していきたいと思います。パンデミックを通じて、私たちは日々多くの変化を経験しています。お二人に聞きたいのは、「生きている間には変わらないと思うこと」です。メイムさんから。
メイム:いろいろあります。これは議論を呼ぶかもしれませんが、人間同士のつながりについて考えてみました。
人間は(環境に)適応するようにできていて、自然発生的な突然変異を起こして、信じられない進化を遂げるようにできています。哺乳類・霊長類・ホモ・サピエンスとしては、テクノロジーに頼らない「人と人との交流」が、かけがえのないものだと思います。とはいえ、私が完全に間違っている可能性もあります。
ユヴァル:私もまず最初にそれを思い浮かべましたし、絶対にそうだと思いますよ。人間はまだまだハグをしたい。エイズがセックスを殺さなかったように、COVID-19もハグを殺さない。コロナ禍が終わったあともハグをするし、それは不変のことです。
ニコ:ユヴァルさん。これまでは革新的なアイデアを導入する時は、驚きと同時にしばしば拒絶や恐れを伴うものでした。あなたの本の中で繰り返し出てくるように、人類がいつも頼りにしている一つのアイデアは「変化」です。不思議なのは、それでもなお私たちが変化や革新を恐れるのか。
ユヴァル:まず、新しいことを学びなおすことは簡単ではないですし、不便です。そしてしばしば、危ないことでもあります。バイオロジーを見てみると、突然変異の99パーセントは悪いもので、物事をよりよくするのは極めて非常に低いパーセンテージです。たいていのスタートアップは失敗します。
歴史上の革命を見ても、少なくとも過激な革命はほとんどの場合、最初は幸福よりも不幸をもたらすものです。穏健な革命の方が、うまくいくことが多いのです。人間は、世界を完全に再思考したり再発明することができないんです。
メイム:(笑)。
ユヴァル:あまりに多くのことを急速に変えようと試みるとき、それは常に災難です。18世紀後半のアメリカ革命と1917年のボリシェヴィキ革命と比較すると、アメリカ革命のほうが随分とよかったんです。それは、あまり多くのことを変えようとしなかったからです。
歴史の広い範囲で特に一般の人々を見たときに、今日私たちが祝福している大きな革命の多くは、後になってみると一般人の生活を改善するものではありませんでした。もっとも大きな例として、狩猟採集生活から農業生活への転換が起きた農業革命があります。これは、王様や大神官などにとっては良いアイデアですが。
メイム:(笑)。
ユヴァル:一般の農民にとっては、生活が非常に困難なものとなりました。古代エジプトや中世中国の平均的な農民は、古代の狩猟採集民よりもはるかに過酷な労働をしていました。(古代の狩猟採集民は)その代わりに食事の内容が悪くなり、飢餓に苦しむようになった。
歴史上の伝染病や疫病のほとんどは、農業から始まっています。これは、狩猟生活の頃にはまったく気にしなくてよかったことです。それに加えて、農業に伴って生じた社会的・政治的不平等にも対処しなければなりませんでした。
もしも農業革命の始まりに生きていて、これらの新しいガジェットに不安を感じているのなら、それは絶対に正しいことです。
ニコ:メイムさん。脳が新規のアイデアを処理したり受け入れたりするのが困難なのは、なぜでしょうか。新しい発想や技術的革新、考えを変えるようなものは思いつきますか?
メイム:そうですね。ユヴァルさんの回答を神経科学的に説明しようと思います。繰り返しになりますが、私たちの脳は非常に順応性が高く、学習したり新しい経験を取り入れるように仕向けられていますが、最終的には「もっとも抵抗の少ない道を求める」ということです。
非常に単純化された「快楽原則」という概念は、私たちが世界を理解する方法に当てはまります。個人の反応を見ればわかると思いますが、これも非常に多様です。新しい技術を12歳の私と15歳の私に渡すのとでは、まったく違う反応が返ってくるでしょうね。
私の父はアメリカ人一世で生粋のニューヨーカーでしたが、インターネットが普及し始めた頃に私と当時の夫と話をしていて、「インターネットはみんなが考えているような流行にはならないだろう」と言っていました(笑)。
(一同笑)
メイム:父は6年前に亡くなりました。この6年間で世界がどれだけ変わったかを知ることは完全に父の心を揺さぶるだろうと思っていたので、ちょうど良いタイミングでした。笑い話のようですが、本当の話なんですよね。
メイム:ユヴァルさんと同い年の私は1975年生まれで、質素な家庭で育ちました。私が16歳、兄弟が20歳になるまではバスルームが1つの家を借りていました。お金もなかったし、電子レンジを初めて見たのは1986年ごろで、そんなものを知りもしなかったです。
裕福な友だちの家に行ったときのことを覚えています。私は1970年代〜1980年代のマグネットプログラム(さまざまな人種を受け入れる学校のプログラム)のように、より良い地域にある学校にバスで通っていました。彼女はマグカップに水を入れて、電子レンジに入れる方法を教えてくれました(笑)。
一同:(笑)。
メイム:「この話をするために、彼女は別の惑星から降りてきたのではないか」と思うほどで、お湯を作ってホットココアを作りました。私は家に帰って、アメリカ人一世の両親に「さっき起こったこと、信じられないんだけどさ」と言いました。電子レンジや食洗機を手に入れるまで、何年もかかりました。
これはおかしな例ですが、一方でこれは多くの人が持っている考え方だと思います。特に技術革新の分野にいない人でも、新しいことを経験していると、それがどれほど驚異的なことかがわかります。
母にはVenmo(個人間送金アプリ)が何かを教えました。英語を学ぶこと以外に、彼女にとってVenmo以上にエキサイティングなことがあるかどうかはわかりません。
(次回へ続きます)
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2024.11.20
「元エースの管理職」が若手営業を育てる時に陥りがちな罠 順調なチーム・苦戦するチームの違いから見る、育成のポイント
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.15
好きなことで起業、赤字を膨らませても引くに引けない理由 倒産リスクが一気に高まる、起業でありがちな失敗