2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
Music’s Limitless Variations: Global CEO Lenzo Yoon, Big Hit Entertainment(全1記事)
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ユン・ソクジュン氏:こんにちは。Big Hit EntertainmentのグローバルCEO、ユン・ソクジュンと申します。このたびは、由緒あるSXSW2021にお招きいただきありがとうございます。SXSWは、年々その重要性と必要性を増しているように思います。時代に合わせて変化する術が模索されるからです。
産業とビジネスにも同じことが言えます。時間と距離の限界を越え、先を見据えた視野と戦略が要求されるからです。
今日は、Big Hitがこれまでどのように時代の風を読み、危機に瀕しても前を向き続けたかをお話ししようと思います。Big Hitのたどってきた道をひも解くことが、音楽業界、ひいてはK-POP業界の現状と未来への理解につながることを願ってやみません。
子どものころ、私は音楽が大好きでした。ガゼボの『アイ・ライク・ショパン』に耳を傾け、エレクトロニックミュージックをもっと知りたいと思っていました。10代から20代では、U2が多彩な手法を使ってリバイバルするさまを目の当たりにしました。
さて、ご存じの方は大勢いらっしゃると思いますが、実はかつて私自身もごく短期間ですが、プロのミュージシャンとして活動していました。何万人もの観客の前でパフォーマンスすることが、私の永遠の夢です。
20年後にその夢は叶いました。弊社のアーティスト、BTSが叶えてくれたのです。
BTSは、まずドームツアーを開催しました。次にアリーナツアー、やがてはスタジアムツアーを敢行し、グラミー賞にノミネートされました。韓国のアーティストが「21世紀のビートルズ」と呼ばれ、世界最大のミュージックアワードに参加する日が来るなど、誰が想像したでしょうか。
私を含む音楽を愛する何百万人もの人々が、かつて自分の世代のポップスを夢中になって聴いたのと同じように、今は世界中の人がK-POPを聴いています。この驚くべき変化は、どのように生じたのでしょうか。
K-POPは韓国で生まれ、30年かけて発展してきました。数多くの企業やプロデューサー、アーティストがその発展を担いました。私がBig Hitに入社した10年前、韓国の大手レーベルやアーティストたちは、グローバル市場への参入を試みていました。
Big Hitは、そういった大手のレーベルではありませんでした。多くの才能あるアーティストを抱えてはいましたが、知名度の低い弱小企業だったのです。時代は、厳しい局面を迎えつつありました。フィジカルリリース(実物のCDやDVDでの販売)はかつての勢いを失い、デジタルメディアへの転向が始まっていました。
変革以外に進む道はないと考え、私たちは試行錯誤しました。特にサービスを徹底的に見直すことにしました。うまくいっていない点と、それを改善すべき方法とを洗い出したのです。さらに見つめ直したのは、「何がウケるか」ではなく、「音楽とは人々にとって何を意味するのか」「アーティストの果たすべき役割とは何か」という点でした。
こうした根源的な問いによって、「楽曲とアーティストとは、癒しのためにある」という答えが見出されました。楽曲とアーティストを通して人々にもたらす、「安らぎ」と「癒し」こそが私たちの使命だったのです。こうして私たちは、コンテンツとファンを重要視するようになりました。BTS誕生には、このような背景があったのです。
BTSを単なる「きらめくスター」に留めるつもりはありませんでした。楽曲を通して自分たちの物語を語れるアーティストになってもらうつもりでした。また、一人ひとりのファンと同等のパートナーとして向き合い、互いを癒し合う存在にしたかったのです。
当初は、BTSをグローバルなアーティストにするつもりはまったくありませんでした。ただひたすらに、同時代の人々と調和することを大切にしていただけなのです。
BTSデビュー当時、世界はデジタル化しつつありました。新興メディアは、今後ファンの生活の中で大きな地位を占めるだろうと考えた私たちは、ここに力を入れることにしました。新しく迎えつつあるこの状況では、テレビやラジオの「ブランド」よりも「コンテンツ」が重要視されるだろうと考えたのです。
そこで私たちは、独自のコンテンツの制作を開始しました。これらのコンテンツは、アーティストとファンとを繋げる役目を果たしたのです。
今やBTSは、ショートクリップやバラエティショー、ドキュメンタリー、リアリティショーなど、多様な形で世界中の人々に愛されています。
今でこそこうした形式は、エンタメ業界においてファンとの交流でごく普通に活用されていますが、当時は私たちBig Hit独自の革新的な手法でした。事実、今日においてコンテンツ消費がもっとも多いのは、昔ながらのメディアを通してではなく、もっぱらオンラインプラットフォームです。
私たちのコンテンツは、YoutubeやSNSを通して世界中に配信されています。K-POPは、楽曲やパフォーマンス、ファッション、動画、ファンとの交流などがセットで完成形となる多角的戦略を行っています。これらのコンテンツと彼らのビジュアル的魅力によって、K-POPは世界中で愛されているのです。
K-POPファンの数は、特に2015年から2018年の間に急上昇しました。
ファンが増加するにつれ、世の関心も高まりつつあります。ライブストリーミングによって、新たな市場も開拓されつつあります。K-POPは、今この瞬間にも進化し続けています。成長のポテンシャルは無限大です。
Big Hitは変化の旗振り役となり、当初から新たなテクノロジーを取り入れてきました。しかし、決して忘れなかったことがあります。
デジタルの世界では、人は孤独で寂しく、取り残されたように感じます。人と人同士が心を通わせ、気持ちを繋げる必要性と、そう(ありたいと)願う気持ちは、より一層強くなります。
つまり私たちのテクノロジーの最大の使命とは、実は絆を深めることなのです。これがまさに、私たちが目指しているゴールです。そして新たなメディアの可能性を予見し、デジタルコンテンツの制作に着手した日々から今日に至るまで、それ(目指すべきゴール)は変わっていません。
COVID-19によって個人が孤立を余儀なくされたことにより、私たちはこの思いをさらに強めました。2020年に世界的なパンデミックが発生し、BTSはワールドツアーをキャンセルせざるをえませんでしたが、その代わりに、オンラインコンサートを開催したのです。
ARやXR他、最新のテクノロジーを駆使し、よりインパクトのあるサイトを制作しました。迫力ある映像を届けるために、マルチビューや4K技術も導入しました。
私たちが力を入れた一例として、ステージとリンクさせた自宅用ライトスティックが挙げられます。オンラインコンサート中に自宅でライトスティックを点灯すると、楽曲の音に合わせて色が変化するようシステムをプログラムしました。すると、あたかも実際に会場にいるような気分になれるのです。
さらにファンたちは、自宅や自分の部屋でコンサートを楽しんでいる自分たちの写真を、喜んでSNS上でシェアしてくれました。
技術自体は、さして難しいものではありません。しかし、コンサートに参加する喜びがファンから失われることは、断じてあってはなりません。そしてファンは、(BTSが)大好きだという気持ちを同じくする、他のファンとの連帯感も得られるのです。
コンテンツとファン―――私たちがもっとも大切にしていることです。
ファンは、音楽業界の要です。ファンの情熱は、音楽業界を前進させる推進力です。
ファンがネットワークを築くと、その力は増幅します。共にアーティストを応援し支援することで生まれた絆は、深刻な問題を解決する力にもなります。
BTSのファンは「ARMY」と呼ばれていますが、彼らを見ていると、ファンには社会や文化を変えるほどの大きな力があることがよくわかります。私たちはファンを尊重し、成長発展を共にする戦友として扱うべきなのです。
ファンのタイプは、時代によって変遷してきました。では、2020年代のファン像とはどのようなものでしょうか。
彼らは、「体感できる現場にいたい」「変革の担い手でありたい」「自分自身も成長したい」「自律心を持ち軽快かつ有能でありたい」と考えています。また、サービスとコンテンツに対して、自分たちのかける時間と労力に見合うだけの高い品質を求めています。
音楽業界は、ファンからの(高まる)要求レベルに応えるべく、変革を行っていく必要があります。変革とは、不便さを感じる点や誠実さに欠ける点を洗い出すところから始まります。
もちろん、アーティストと良質の楽曲の提供は、音楽業界において最も重要なものです。しかし等しく大切なのは、ファンが楽曲を体感する際の障壁を取り除くことや、楽曲を楽しみ体感できる新しい手段の提供です。
Big Hitが「How to Enjoy」に力を入れているのは、まさにこれが理由です。
例えば昨年、私たちは韓国語学習ツール『BTSと学ぶ韓国語(Learn Korean with BTS)』をリリースしました。
というのも、ファンが存分にアーティストのコンテンツを楽しめない理由として、言語が障壁となっていることに気づいたからです。「ファンに豊かな体験をしてもらうためのソリューション提供」は、私たちの行動理念です。
BTSのキャラクターを使った『Tiny TANE』もリリースされました。
先日は、新しく『Rhythm Hive』というゲームがリリースされました。このゲームでは、BTSや、他のK-POPグループであるTomorrow X TogetherやENHYPENの楽曲を使ったプレイができます。
すべての人にこうした体験を享受してもらうために、私たちは、グローバルなファンのプラットフォーム『Weverse』を立ち上げました。ここでは、世界中のファンが国境や言語、文化の違いを超えてコミュニケートし、つながることができます。『Weverse』は、Big Hitの全コンテンツをつなぐパイプラインです。また、世界中のファンがコンテンツ消費者であると同時にクリエイターになれる場でもあります。
こうしたコンテンツによってK-POPはさらに成長し、ますます多くの人に広まって行くことでしょう。これこそが私たちが創造する「音楽の多様性」です。
すべてのファンにとって日常的でごく身近な存在となることで、私たちは音楽の真の価値に気づくことができるでしょう。
さてここまでは、Big Hitが今日ある姿になるまでに、私たちがこれまで取ってきた選択のお話をしました。それでは、Big Hitの未来の姿はどのようなものになるでしょうか。
Big Hitのたどってきた道は、エンタメ系企業としては異例のものだと思うかもしれません。最終的なBig Hitの未来は、みなさんのライフスタイルに、音楽を基盤としたあらゆるサービスを提供することです。
Big Hitの持つ先見の明と選んで来た道は、市場を変えました。かつての私たちは、市場を占める大企業の後を追うべく、試行錯誤し全力を尽くしました。
現在、私たちは海外進出の道を進みつつあります。日本と米国において、Big Hitの存在感を増すべく準備を進めています。私たちは、これまでの成功にあぐらをかくことはしません。今まで人がやったことのないような産業やテクノロジーを創出したいと考えています。
Big HitとBTSのグローバルな成功は、「東アジアの小国の勝利」、もしくは「ニューノーマル」などと言われます。私たちのユニークでダイナミックなエネルギーを発揮できたことを誇らしく思います。
この世界は、無限の多様性から成り立っています。無限の可能性に満ちていると言い換えることもできます。
ユニークな文化は惹かれ合い、互いに影響し合います。みんなで前に進めば、時に新たな文化が生まれます。
新しく生まれてくるものは、業界や文化の垣根を超え人を進化させてくれます。私は、さらなるニューノーマルが生まれることを、新たな市場や戦略が生まれてくることを切に願います。Big Hitは、グローバルなエンタメの生態系を洗練し続けるために、挑戦を続けていきます。
ありがとうございました。
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