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共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~(全10記事)

「挨拶のない組織」では生まれない、当事者意識や主体的行動 10万人分のデータ解析で分かった、乗り越えるべき“溝”の存在

創設以来、35年以上にわたって日本の組織開発をリードし、実践と研究の両面において最先端の取り組みを行ってきた、株式会社ヒューマンバリューの代表取締役社長 兼清俊光氏。同氏が登壇されたイベント「共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~」の模様を公開します。

関係の質が高いと思考が上がり、行動が上がり、よい結果に

兼清俊光氏:やっぱりこれからは「内発的に動機づいて、コラボレーションと共創を生み出していく」ということがすごく大事になるんです。じゃあすぐに変わるか? というと、変わるわけではないんです。私たちは人々が集団として活動していますから……ご存知の方も多いと思いますけど、成功循環モデルですね。

集まった人々の関係の質が高いと思考が上がり、行動が上がり、結果がよくなる。逆に悪循環もあります。このモデルは。MITのダニエル・キム氏が、1997年に『Systems Thinker』という機関誌に、ペラで1枚でモデルを載せていました。

僕は彼と98年にカンファレンスで会いまして。彼がフリップチャートに(スライドを指して)これを書いたんですね。これがすごく可能性を感じるモデルだったので、それから日本に紹介するようになりました。

2002年になった時、彼は本を1冊出していまして。ここに「Collective」という言葉が入りました。

これは「集合的」という意味です。つまりチームや集団の関係の質が非常に高くて、お互いが信頼し合っていると、気が弱かったり心配性な人もそのチームの中にいると前向きになったりアイデアが浮かんだりするんですね。

「関係・思考・行動」に存在する、5段階のレベル

ところが、非常にクリエイティビティ、主体性の高い人がいたとしても、チームの関係の質がすごく低いと、やっぱり「できない」とか「うまくいかない」とか、そういう集合的思考になってしまうんです。我々はさっきも話題に出ましたけど、1人でものごとを作るために組織にいるわけではありませんので、集団の中で共創を生み出すためには関係・思考が非常に大事ということかと思います。

この関係、思考、行動には実はレベルがありまして、それぞれ深さがあります。

サクッとご紹介すると「関係の質」レベル1は『挨拶』とか『声かけ』くらいですね。レベル5になってくると『一体感』とか『協働』『信頼』となってきます。

同様に「思考の質」も、まずは『関心を持つ』ところから始まって。物事をそのまま、困難も一応は受け止めることができて、よい側面や可能性に着目します。まず『なんとかしたい』っていうのが、レベル2ですね。レベル4、レベル5まで上がってくると『確信』とか『探求』『意味創造』という領域にきます。

「行動の質」は『笑顔』『フレンドリー』から始まっていって。レベル3くらいに上がってくると、多くの仲間たちの『主体的行動』が現れてきて、レベル4になると『ボランティア』。自律的なチームが出て、指示や命令じゃないけどこういうことは大事だと思うからちょっと考えない? という仲間が集まって、企みが始まると。

レベル5になると『自己組織化』で、企んだ取り組みがあまりにすばらしいものですから、組織の戦略とか施策になっていくという行動です。その先に来るのが『共創行動』で。共創行動というのは、すごくレベルが高い話だと思います。

「挨拶のない組織」で、共創行動が生まれるワケない

そしてこれは、横連鎖があります。

「関係の質」がレベル2まで上がると「思考の質」がレベル1に上がり。「関係の質」が3に上がると「思考の質」が2に上がって、さらに「行動の質」が1に上がるというですね。“1個ズレ”の状態になることがわかってきています。

そうすると「関係の質」がレベル5まで上がると「思考の質」レベル4「行動の質」レベル3が同時に駆動するんですけど。ここから先は“縦”に深めていくことが必要になってきて、最後は(「行動の質」レベル5の)『共創行動』まで高めていくかたちになります。

みなさんにさっきコメントで書いていただいたような「挨拶や声かけすらないような組織、集団」があった時に「関係の質」がレベル3まで上がっていないのに(「行動の質」レベル3の)「主体的行動」になるワケがない。ましてや(「行動の質」レベル5の)『共創行動』になるわけがないということで。

そういう意味で、組織を開発していく時には、自己組織化・共創行動を生み出すために、まずは「関係の質」をレベル1から丁寧に上げていって『一体感』『協働』『信頼』『越境』の領域を作っていって、自分たちで意味を見出だせるようになっての、自己組織化と共創というですね。

組織は人々の集団であって集まりですから“生き物”なので、スイッチが入って急にみんなが共創できるようになったりするものではない、ということかと思います。

10万人分のデータ解析で分かった「隔絶・溝」の存在

あと、10万人くらいのデータを機械学習で解析したら、今、線が出たところ(スライドの赤い横線部分)に段差があることがわかりました。「仲の良いチーム」というのは「関係の質」レベル3、「思考の質」レベル2、「行動の質」レベル1(をクリアすれば到達できる)というところまでいっているんです。一方で「価値を生み出せる」レベルに達するには、このキャズム(隔絶、溝)を乗り越えてないといけない、というのがわかっています。

ここは僕の勝手な思いなんですけど、Uniposさんのサービスって「関係の質」がレベル3まで、すごく上がると思うんですね。でも今、Uniposを「新しいものに少し変えていこう」みたいなのができてきているじゃないですか(注:Unipos社は現在、新機能を順次リリース中)。それが「関係の質」をレベル4とかレベル5に向かわせているんじゃないかなと思ってですね。そんな可能性があるかなと思います。

ということで、ここまで共創を生み出す組織開発について……10分程度という時間でしたので、非常にミニマムにお話させていただいたんですけど。僕からの情報の共有はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。

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