アングラな一匹狼がありのままで生きていく方法

桜木彩佳氏(以下、桜木):今日のゲストは佐々木ののかさんです。よろしくお願いします。

佐々木ののか氏(以下、佐々木):よろしくお願いします。

桜木:今日はすごく素敵なテーマ、私たち(BONUS TRACK MEMBER’S)はこんなの書けないっていう(笑)。「アングラな一匹狼がありのままで生きていく方法」。

これが、ののかさんから来て「うわ~、これだ~!」と。

佐々木:大丈夫だったかなぁと。

桜木:いえいえ、このままいきましょうという感じでした。(スライドを指して)トピック的に、これもののかさんが挙げてくれたんですが。「最小限の人付き合いで仕事の幅を広げる」「ジャンルを越境する」「リスクヘッジをしっかりする」「礼儀正しく、約束は守る」。その心は? ということで、スライドにいってみてもいいですか?

佐々木:はーい。

「おこづかい稼ぎになればいいな」で始めた、ライター業

桜木:これは、ののかさんに事前に記入いただいたんですが。

このイベントではテンプレート的に年表というかたちで「何歳の時にこれをしていた」というふうに、ゲストさんのこれまでを辿らせていただいています。転職に悩まれている方や、フリーランスになろうかどうか考えている方など、参加いただいている皆さんの中でも様々なフェーズの方がいらっしゃると思いますので。

ののかさんの場合「この時こういうことをして、こういうことを考えていた」といった転機になったことなどを、年表を踏まえながら辿れたらと思うのですが。まず大学を卒業されて、服飾の雑貨メーカー?

佐々木:そうなんです。ずっと編集者になりたかったんですけど、文字の仕事を仕事にさせてもらえるという自信がなかったので。

桜木:受けたりはしてたんですか?

佐々木:出版社受かったんですけど(笑)。そこに入るのはやめて、ぜんぜん関係ない「ザ・昭和」みたいな会社に入社しました。しかも営業職で関係ない仕事をやっていたんですけど。入社して半年くらいでパニック障害になっちゃって。半年間休職して、2015年の5月に辞めて。

なので「ライター仕事を受け始める」って書いたんですけど、けっこう行き当たりばったりっていうか。正直に言うと「おこづかい稼ぎになればいいな」みたいな感じで始めたっていうのが、2015年ですね。

未経験から、いかに実績を作っていったか

桜木:もともと編集・ライターという仕事に興味があって、そういった事情もあって自主的に……これは受け始めるというのはどこかに、どうアタックして?

佐々木:質問にもあったんですけど、Wantedlyっていうアプリがあると思うんですけど。それが当時からあって。「会社に遊びに行くボタン」っていうのがあったんですね。なのでそれを押しまくって。Web編プロとか、ITの会社とか。

「実績あるの?」って聞かれて「ないので、無料で受けます」とか言って。「よかったら、今度使ってください」みたいな感じで。結局みなさん、お金をちょっとはくれるんですけど。そういう感じで実績を作っていった、という感じですね。

桜木:それを2016年まで、わりと続けていった感じでしょうか?

佐々木:その時はオウンドメディアの黎明期で、メディアばっかり立ち上がってライターが少なかったんですよ。だから仕事だけはすごくたくさんあって。なので(始めて)3ヶ月くらいになったら、わりとコンスタントにお金もらえるようになった感じですね。

桜木:2016年「ある記事がバズり、天真爛漫なキャラが定着する」。

佐々木:天真爛漫なキャラだと思わないと思うんですけど(笑)。当時「こんにちは。佐々木ののかです」みたいな、顔出しで若いライターでみたいな。そういう感じの記事が流行っていて、その中の1つで企画を当ててもらってですね。それで広告系の仕事がたくさん来るようになります。

その時は、2,000字から3,000字とかの記事がちょっと出るだけで10万円とかもらえて、すごく景気がよかったんですけど。

桜木:わお、すごい。

佐々木:ね~。今そんな仕事ないですけどね(笑)。

「家族と性愛」を看板にした結果、収入が激減

桜木:それが4年前ですね。そして2017年、3年前ですね。「家族と性愛」を看板にして、執筆活動を開始。映像のディレクションを始める。収入が激減。この執筆活動、文筆家と今名乗られているのも、もともと「そういうふうにしていけたら」みたいなイメージがあったんでしょうか?

佐々木:「このまま若手で」っていうふうには、いつまでもやっていけないなと、ちょっと将来に不安を感じ始めて。看板があったほうが「この人にはこの仕事頼みやすい」ってなるなと思って、なにかテーマを決めようと思って決めたという感じですね。

桜木:映像っていうのは、いきなり出てきた感じが。

佐々木:そうなんですよ。映像のディレクションは、ぜんぜんやったことなかったんですけど「これからは映像の時代だ」みたいなことを友だちが言って、引き抜いてくれて(笑)。けっこう動画が流行りはじめた、IGTVとかが出た時期にすごく流行りはじめて。

桜木:そっか、それがもう3年前なんですね。

佐々木:それでバーって。それこそIT企業の創業の時期とかって、経験なくても入れてもらえるので。そこで実績を作らせてもらったっていう感じですね。

桜木:ライター業をやっていた分(の時間)をここに当てたので、収入が減ったということなんですか?

佐々木:いや、実は「家族と性愛」を看板にしたせいで減ったんですけど。

桜木:あ~なるほど、なるほど。

佐々木:というのも、広告案件自体あんまり受けられなくなったというのもありますし。あと、これがけっこう肝なんですけど、コンプラ的に「お前の書いてるブログはどうなんだ」ってけっこう物議を醸しはじめて、広告が付かなくなっちゃったんですよ(笑)。

それでさっきの10万円みたいな仕事もぜんぜん受けられなくなって、収入が半減くらい……「駆け出しくらいかな?」くらい減っちゃって、けっこう大変でした。

ジャンルの横展開が仕事に繋がる

桜木:そしてその次、noteの『五体満足なのに不自由な身体』がよく読まれて、ハフポストさんでインタビューを開始。BLASTさんで映像のディレクションを始める。

佐々木:っていう感じですね。前年にやっていたことを引き継いで、徐々に「家族と性愛」が馴染みはじめたという感じです。

桜木:私もこのnoteで、ののかさんに出会ったかもしれないです。

佐々木:ありがとうございます。

桜木:そして去年、映画・演劇のアフタートーク登壇や、アパレル制作の仕事など専門外の仕事が増える。これはどういった経緯で? 映像とかから?

佐々木:そうですね。映画とか演劇は好きで、SNSでずっと感想をつぶやいていたんですけど。そしたらアフタートークに呼ばれるようになって。最初は無料とかで友だちのツテとかで受けていたんですけど、そしたら出てくれそうっていう感じで、けっこう声掛けてもらえるようになって。

なので、ぜんぜん違う領域の人たちと組んでる意外性みたいなところで「あ、この人なんでもやる人なんだな」っていうのが、たぶんイメージついてきたんじゃないかなって。

桜木:どんどん要素が増えてますもんね。

佐々木:そうですね。いわゆるライティングみたいなところだけだと、私は本当に食べていけないんですけど(笑)。でも結果的になんですけど、こうやってジャンルが横展開していくことによって、わりと食べられるようになっているかなっていう感じがあります。

桜木:こういうトーク、登壇みたいなものも、この頃は並行していろいろずっとやられていたんですか?

佐々木:そうですね。2019年くらいからですね。(それまでは)あんまり呼ばれてなかったです。

桜木:そして去年『愛と家族を探して』が刊行される。

愛と家族を探して

そして今に至る、という感じですね。

文筆家だが、生活の支えとなっているのはSEO

桜木:次にいってみますが、ここからがなんと、ののかさんが事前にスライドを用意してくれまして。

佐々木:ありがとうございます。

収入のお話にいきます。フリーランスで独立されたい方とか、されてすぐの方とかは収入は気になるところだと思うので、ちょっと説明します。まずほぼ私の生活の中心、ライティングなんですけども、ライティングがどういうふうに分布されているかということで。意外とですね「①生活の支えはSEO」ってなってまして。

収入の多くがSEOなんですね。一応、文筆家というかたちでやらせてもらって、エッセイとかの仕事がたくさん欲しいんですけど、実際、支えているのはSEOです。

今、コロナ禍でも需要が爆上がりしていてですね。Webの媒体でSEOがすごく伸びているところは、すごく景気が良くて。っていうのがあるので、そういうものを1個持っておくと、わりと生活しやすくなるかなっていう感じです。

「②SNSには好きなことを」っていうところで。でもSEOを書いているライターだと、みんなたぶん思ってないと思うんですけど、それを出さない。出す記事と出さない記事を、見せ方を変えるだけで、けっこうなにやってもいいというか。私、文筆家だけどSEO書いてるっていうところにプライドは別にないので(笑)。見せ方次第かな? っていうのがあります。

ただ1つ気をつけたほうがいいなと思うのは、拡散したくない記事。自分のブランディングの方向に合わない記事っていうのがあるんですけど。たまにクライアントさんで、けっこう当たり前に「これ拡散してください」とか仰る方がいるので「無記名で拡散なしでいいですか?」っていう条件は、あらかじめやっておくとトラブルがないかなっていう感じです。

桜木:なるほど。それも込みでお願いします、という。

佐々木:そうそう。それで「え、そんなつもりじゃ……」みたいなのがあるので。

仕事選びの基準となる、3つの要素

佐々木:「③お仕事選びの基準」。これは質問もいただいていたんですけど。

桜木:ありましたね。

佐々木:私の場合はですけど「金額」「やりたい度」「クライアントとの相性」のうち、2つ以上当てはまるものを受けています。例えばやりたいもの、やりたいジャンルだったら受けたいと思うんですけど。あまりに金額感とクライアントとの相性がめっちゃ悪いって考えたら、けっこうダメージ来るぞってなったりとかする……。

桜木:あ~。やりたいけどっていう。

佐々木:そうなんです。なのでSEOとかでも、金額感とクライアントとの相性、別にすごくやりたいっていうわけではないけれども、(それが)よければやるとかっていうふうに、自分の中で折り合いをつけてやってます。

桜木:明確なジャッジメントですね。私がこのシートを見せていただいて質問したいなと思っていたのが、これは金額的なパーセンテージのバランスだと思うのですが、時間配分的なバランスはどうなっているのかということです。もちろん月によるかと思いますが、SEOが大半なんだけどわりと時間はかけてないとか。どういう感じなのかなと。

佐々木:そうですね。本当にSEOがすごくありがたいのは、私、1日で4記事とか書くんですよ。2,000字、3,000字のやつとか。だからすごく……言い方が難しいんですけど……ありがたい(笑)。

桜木:うんうん。ありがたい(笑)。コスパがいいのかな(笑)。

佐々木:すごくありがたくて。ただやっぱり、文筆業でやっていきたいと思っているので、エッセイとかブックレビューとかにすごく時間かけちゃって。特にブックレビューとかは、やっぱり著者の方に失礼にあたらないかな? と思って。インタビューもそうですけど、内容の整合というよりも「受け手の気持ちが」とかっていうのを考えちゃうと、けっこう時間かかっちゃいます。

桜木:なるほど。ありがとうございます。こういう話ってあんまりされてないですよね?

佐々木:しないですねぇ。あんまり聞かれる機会がなくて。だから呼んでいただいてうれしかったです。

桜木:いやいや。ここまでお話いただけるんだと思って。ありがとうございます。