2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:アストラゼネカ株式会社
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劉雷氏(以下、劉):ここからは、フリーディスカッションに入りたいと思います。冒頭、(アストラゼネカ代表取締役社長の)ステファンから「i2.JP」の立ち上げ、およびその構想、目指したい方向性のご紹介がございました。これに対して、私が持って帰る宿題でもありますが、みなさまのご期待を、ぜひお聞かせいただきたいと思っております。まず石飛さまからお願いいたします。
石飛恵美氏(以下、石飛):ヘルスケアで大企業さんが「i2.JP」のようなイノベーション・プラットフォームを作られるというのは、本当に素晴らしいです。いろいろなイノベーションハブをつなぐ私たちの出口になるような場の1つかと思っております。スタートアップのみなさんも素晴らしい商品を作られているんですけれども、日本はヘルスケアの規制が本当に厳しく、参入障壁が大きいということで、なかなか外に出していけない。
そういうところで、私たちが(スタートアップと)大企業さんのネットワークとプラットフォームをつなぐことで、世の中や患者さんに良い商品を早く届けられるようになります。素晴らしいネットワークだと感じていますので、今後ともアストラゼネカさんを始め、こういったイノベーションハブとしっかりコミュニケーションを取りながら、一つひとつ実績を出せるような活動が一緒にできたらいいなと思っております。
劉:ありがとうございます。規制などに関しては、のちほどぜひディスカッションで深掘りできればと思います。続きまして、同じ質問を木幡さまにもお答えいただければと思います。
木幡巌氏(以下、木幡):我々もふだん地域で医工連携をやっておりまして、このようなかたちで大企業さんと一緒に仕事をすることに関して、医療と工業の部分での課題でもありますが、やはり相互理解が非常に重要ではないかなと思っております。
大企業と中小企業では、意思決定のプロセスや考え方にギャップがあるのではないかと思います。そういう意味では、非常にコミュニケーションが重要だと思いますし、事業に関しては将来像をイメージしながら、一緒にやっていければと思っております。
中小やベンチャー企業の立場から申し上げますと、大企業さんと連携する時、やはり我々には不安感がありますね。我々の技術やノウハウも、大企業さんに飲み込まれてしまうんじゃないかといったところは、よく言われるのではないかなと思うんですけれども。そういったところを初期の段階で払拭することは重要であると考えております。
劉:ありがとうございます。ちなみに、今やっている取り組みのコミュニケーションは、100点満点だとしたら何点ぐらいでしょうか(笑)。
木幡:今は非常に頻度良くコミュニケーションをさせていただいていますので、かなり点数は高いと思っております(笑)。ありがとうございます。
劉:ありがとうございます。私もオープンイノベーションをやっていく上で、重要なのは「人」だと思っています。今、アストラゼネカには、6名の「オープンイノベーション担当」がいますが、みなさんいろいろな業界を経験していて、スタートアップ経験者もいます。クロスボーダーの言語が話せる・翻訳者になれるような越境人材がいることが、我々の強みの1つかなと思っています。ぜひ引き続きよろしくお願いします。
では米津さま、お願いします。
米津雅史氏(以下、米津):はい、ありがとうございます。やはり今の話にもありましたけれども、私どもも非常に期待するのは、まさにこの未曾有のコロナ禍で、お一人お一人の健康意識、医療に対する思いも非常に高まっているのではないかと思います。そういう意味では、データをなるべく共用・共有しながら、新しいイノベーションにつなげていくことが大事だと思っています。
まさに「i2.JP」の取り組みは、グローバルに展開するための非常に大きな仕掛けになるんじゃないかなと思います。劉さんもおっしゃいましたように、「オープンイノベーションは人が大事だ」と思います。私どもの場合は地方自治体でもございますので、地域の課題を解決するようなかたちで、かつ世界に羽ばたける目線を持ちながら、具体的な取り組みとして、一つひとつの目線合わせや、いろいろな障壁を越えていける、非常に大きなきっかけとして期待しているところでございます。
劉:ありがとうございます。すでに世界に15ヶ所のネットワークハブがあり、「i2.JP」が16ヶ所目となります。アストラゼネカとしては今後もさらに増やしていきたいと考えております。
ぜひこのネットワークを活用していただきたいと思いますし、実は……期待値コントロールという意味でも、私はまだすべてのハブのみなさんと友達になれていないです(笑)。なので、これは私の宿題ということで、みなさんとツーカーになりながら、我々アストラゼネカジャパンの「i2.JP」が、インバンド・アウトバンドのゲートウェイにいち早くなれるように尽力いたします。
では比木さま、お願いいたします。
比木武氏(以下、比木):はい、ありがとうございます。医療に携わっている立場からしますと、我々はPHR(パーソナルヘルスレコード)のサービスをやっていますけれども、単体のPHRサービスだとどうしても医療の中で、システムとして入れないことがあります。患者さんだけがアプリで管理されていてもダメですし、病院・医療機関の先生に見ていただくことも大事ですし、医薬品と組み合わせることも当然大事です。
やはり、サービス単位ではなくてエコシステムとして見ていかなければいけない。今回の「i2.JP」のような取り組みの中で、エコシステムとして立ち上がっていくようなカタリスト(触媒)になっていただくと、大変ありがたいと思っています。
ステファン社長が「多様性」と「パートナーシップ」という話をされていたように、単体のサービス・プロダクトというよりは全体のシステムとして、より良い医療を実現するために、我々のビジネスとしても一国民としても、ぜひパートナーシップができるようにリードいただければと願っています。
劉:ありがとうございます。おっしゃるとおり、第一段としてはWelbyさんとはアストラゼネカの肺がん治療薬を使っていらっしゃる患者さん向けのアプリ「T-ダイアリー」を一緒にリリースさせていただいて、今まさしくバージョンアップ中ですが、これをエコシステム化するために、活用の範囲を一緒にどんどん広げているところでございます。
必ずしも2者間である必要はなく、マルチステークホルダーでタッグを組んで、ぜひ一緒にやっていきたいと思っております。ありがとうございます。では最後に宮田先生、お願いいたします。
宮田裕章氏(以下、宮田):こういった発表をする時に、どうしても自社のアピールが先行してしまうんですけれども(笑)。今回はそうではなくて、いろいろなネットワークとのつながりを示していることは、すごくいいなと思いました。
やはりもう、すべてを独占して行っていく時代ではなくなってきていると。「多様性」の中でこそイノベーションは生まれますし、それによってインクルージョンも実現できるんですよね。なので今回、まさにこういった多様なネットワークを作っていくと。
さらに、今までは日本の企業が日本の国民を相手にサービスを展開していくことが理想とされてきたんですけれども、もうそんな時代ではなくて、海外展開を考えた時にも、アストラゼネカさんが持っているようなグローバルなネットワークも必要ですし、あるいは一企業で完結するような時代でもなく、やはりヘルスケアは行政や公共のデータを活用してこそ、成果を把握でき、バリューを伸ばすことができる。
まさに今までの囲い込みを越えて、本当にオープンイノベーションに挑戦しているということを、私自身もご一緒させていただきながら感じています。こういった機会をこれからどんどん作っていく中で、取り組みをさらに広げていっていただけると、可能性も広がるなと感じています。
劉:ありがとうございます、大変心強いですね。例えばウェルビーイングの実現には、今日も「データ」という単語がけっこうキーワードとして出てきました。引き続き宮田先生にぜひ、日本の今の公共データの使用の現状や、取り除くべきボトルネック、あるべき将来像、To beについてお聞かせいただければと思います。
宮田:やはり日本は今このコロナ禍で、非常に大きな課題として「デジタルにおいては後進国であった」ということが確認されたと思います。FAXを使っているとか、あるいはOECDの37ヶ国のランキングでも、遠隔教育は37番目だったりですね。ここからいかにデジタルを使うか、データを使うか。
今まではバリューを示しながらITやデータを使うことが、文化としてあまり根付いていなかったんですよね。今回も、患者さんの体験として「エクスペリエンス」という言葉が出てきましたが、ここから先はデータを使って、人々のエクスペリエンスと連動しながら、どういう豊かさを実現していくのか。
ここを軸にしながら、いろいろな企業や行政・アカデミアがつながっていく。「エクスペリエンスを軸にしながらつながっていく」ということが、データやデジタルにはすごく必要なのかなと思っています。
劉:ありがとうございます。PHRもデータが命になってきますので、同じくデータ活用の視点でぜひ、比木さまにもコメントをいただきたいなと思っています。
比木:実は私どもWelbyも、宮田先生の「PeOPLe」に入っているんですけれども、もはや企業1社が単体でやれるものではないところもございますし、連合でやれるような技術的なインフラやコストも含めて、社会基盤が整ってきた時代だと思います。
PHRの立場からしますと、患者さん個人がご自身のデータを管理できるプラットフォームではあるんですけれども、患者さんがそのデータを何に使うかというと、やはり主治医の先生に見ていただくことで初めて価値が出たりしますし、あるいは、データを地域ごとにまとめて地域の疫学データに使っていただいたりと、目的に応じていろいろな使い方が可能になるエコシステムを作ることが非常に大事かなと思っています。
そのために、個人情報の管理や同意の取得、適正使用など、いくつか論点があるんですけれども、徐々に整理されつつあるのかなと思っています。残念ながら、まだ世界に遅れている部分もありますが、逆にこれからの伸びしろとも捉えていますので、ぜひ一緒にがんばっていきたいなと思っております。
劉:ありがとうございます。規制とデータ使用といった、個人情報保護の視点をいくつか挙げていただきました。こちらの質問は米津さま宛てですけれども、仮に東京でこういったチャレンジングなものをやっていく、データをどんどん活用していくところで、東京都はどういうふうにその背中を押していくというイメージでしょうか。
米津:やはり私どもは大事な視点としては、今みなさまからもお話がありましたように、1つの主体が抱え込んでいくのではなく、さまざまな価値あるものをどう結びつけていくのか。そのためには私ども広域自治体としては、やっぱり大きな役割があるのかなと思います。
1つはもちろん、まさに地域のみなさまとともに、これをどう展開していくのか。さらに、そこで得られた共通の課題や改善点、良かった点を広めていく。いろいろなところとご一緒させていただくきっかけ作りは、非常に大事なのかなとも思います。
そういう意味では、私どももウェルネスの向上に向けたデータの活用について、試行錯誤している部分もございます。宮田先生をはじめ、アカデミアの先生がたにもご指導いただく機会を多くいただきながら、進めていきたいと思っています。
劉:ありがとうございます。「i2.JP.net」のページにも掲げていますが、今すごくきれいなビッグビジョンがいろいろなところで描かれています。
ただ、それは一足飛びでは実現できませんので、まずThink Big, Small Startから。そして、ここにカッコでFail Firstが入るんですけれども、最後にScale Fastすることを、我々もオープンイノベーションのプロセスとして、まさしく実施しているところです。今のデータ活用は、おそらく小さく始めて、成功例をどんどん作って、それを重ねていくことが大事ではないかと思いました。ぜひその点、一緒にやらせていただきたいと思います。
劉:改めまして、日本は最近の競争ランキングでは少し下がっていると諸所で報告されてはいますが、私は依然として技術力のとても高い国だと認識しています。この質問は、ぜひ木幡さまにお答えいただきたいのですが、例えば工業用の製品をずっと作っていらっしゃって、それを医療用にコンバートした時のきっかけと障壁についてご経験を共有いただけますでしょうか。
木幡:はい。私どもが工業分野から医療分野に取り組んだのは、実は先代の社長だった私の母が肺がんで亡くなったことが、直接的なきっかけにもなりました。あとは「我々の測定技術が医療の分野でも活かせるのではないか」というところ。医療分野は今までまったく知識も経験もない分野でしたので、そこに参入していくには、正直かなりいろいろなハードルがあったことは事実です。
ただそういった中で、我々のような小規模な企業がそうした取り組みができたのは、本当にいろいろな行政支援や後押しをしていただいたことが大きいと思っております。
あと、医工連携と医療の場合はどうしても医療従事の先生がたとご一緒していかないといけないんですけれども、やはりなかなか相互理解が難しいところはあります。理想は近い距離感で、多くのコミュニケーションを取って、同じ目的に向かって本当の意味でのパートナーとして連携していくことが、非常に重要ではないかと感じております。
劉:ありがとうございます。OIHさんがかなり積極的に支援されていると伺いましたけれども、少し具体的な話を石飛さまからお願いできますでしょうか。
石飛:OIHではイベントを通じて、いろいろな大企業の方々・VCさんとつながせていただいているんですけれども。みなさまのコメントにもあったように、やはりつなぐことは、組織だけではなくて個々の「人」が一番重要だなと、私もずっと感じておりました。
スタートアップからもよく、「ライトパーソン(適切な人)になかなか会えない」と言われるのですが、このような素晴らしいネットワークの中で、私たちも企業さんの中でも「どこに振っていいのかわからない」「誰につなげていいのかわからない」ということが課題でした。それがイノベーションハブでも企業さん側でも、大きな課題なのかなと感じていました。
そこは本当に個人レベルというか、担当者の人たちの「情熱」というか。本当に適切な時期に適切な人をおつなぎすることが課題となっています。ただ、イベントやこういったネットワークでの活動を通して、みなさんとコミュニケーションを取りながら、ライトパーソンにしっかりつないでいく。ライトパーソンに向かってイベントも告知していく。そこはみなさんとコミュニケーションを取りながら、今後も進めていければと思っております。
劉:ありがとうございます。どちらかというとアストラゼネカは日本においては、エコシステムとしてはまったくの新参者でございまして、みなさんがすでに形成されているところに、有機的に融合していくわけです。実は社内でディスカッションしている時に、「どうしてこの活動をやるんだ」という話になりました。
1つはもちろん「患者さん・社会に貢献したい」。「じゃあ何をやるんだ」という話になった時に、ネットワークを作って、まさしく「会うべき人に会うべきタイミングで、なるべく早く会えるようなネットワーク機会を創出しましょう」ということでしたので。ぜひそれをイベントなどいろいろなかたちで、みなさまと実現していきたいと思っています。
劉:残り時間が短くなってきましたので、最後の質問です。実は私もスタートアップに在籍しておりました。今は東京にも大阪にも、全国津々浦々でたくさんのスタートアップさんが出てきていますが、具体的に彼らが海外に行く時に本当に困っていること、あるいは逆に海外のスタートアップさんが日本に入ってきた時に、現実的に困っていること。それに対して我々ができること。この視点で、米津さまと石飛さまに順番にお答えいただければと思います。また、木幡さまも今後もし海外進出をお考えでしたら、我々に期待していることをお話しいただければと思います。では米津さまからお願いいたします。
米津:はい。アウトバウンド・インバウンドにそれぞれ課題があると思っています。私どもも東京を開かれた街にしていこうということで、海外のみなさまが活動しやすくするために取り組んでいます。もちろん言語や手続き面の壁もあり、なかなか一筋縄ではいきませんけれども、寄り添うようなかたちでしっかりサポートしていくことが、我々にも求められています。
また新しいビジネスを行うにあたっては、やはりパートナーの方を見つけてくることが非常に大事なキーになってくるのかなと思います。私どももいろいろなスタートアップの方々とお話をする時に、この厳しい状況下にあっても「もう目線は最初から世界なんだ」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
そのためにはやはり、今回立ち上げられたネットワークも含めて、アクセスが容易にできるような環境は整ってきているな、と思います。私どももそうした取り組みをしっかり後押しできるようにしていきたいと思っています。
劉:ありがとうございます。石飛さま、ぜひお願いいたします。
石飛:先ほどと話がかぶってしまうんですけれども、私たちも常にパートナー企業さま、スタートアップとのコミュニケーションを大切にしながら、適切なところに適切なタイミングでおつなぎする。
その上で情報収集し、ネットワークを拡大し、大企業さまやスタートアップなど、いろいろな行政機関の方々とお話しながら、みなさまの出口になるようなネットワークを拡大して、海外・国内のスタートアップからお問い合わせがあった時に、あまり時間をムダにしないように、素早くおつなぎさせていただけるような機関に、これからもますますなっていかないといけないなと感じております。
劉:ありがとうございます。木幡さま、お願いいたします。
木幡:はい。グローバルネットワークに関しては、大変強い期待がございます。特に我々がやっております呼吸リハビリの呼吸器疾患分野は、初期の自覚症状がなく、見つかった時の重症度が高い病気です。疾患としては、世界的にも非常に上位にきています。特に中国やインドでは呼吸器の疾患も非常に大きな社会課題になっておりますので、そういったところにアプローチできることに関しては、大変期待しております。よろしくお願いいたします。
劉:具体的なお話をありがとうございます。ぜひ今やっているプロジェクトと並行して、具現化に向けてコミュニケーションを始めさせていただきたいと思います。
本当でしたらもう1~2時間ぐらいお話できそうな感じではありますが(笑)。後ろ髪を引かれる気持ちを抑えつつ、パネルディスカッションはここでクローズとさせていただきます。このあとはQ&Aとなります。
司会者:ここからは質疑応答ということで、パネリストのみなさまにお伺いしてみたいと思います。また、社長のヴォックスストラムも参加いたします。
それではまず1つ目は、弊社社長のヴォックスストラムへの質問になります。「今回のコロナ禍の中で、人と人との接触が制限され、リアルな場そのものも少なくなっていく動きもありますが、オープンイノベーションでは、リアルな場でのコミュニケーションがとても大事だと指摘されています。この点についてどのようにお考えでしょうか」。
ステファン・ヴォックスストラム氏(以下、ヴォックスストラム):もちろん、コロナ禍ではさまざまな課題があります。コロナの影響によるものは一時的であることを願っていますが、「会わない」ということは難しいことだと感じます。やはり実際に会ってコラボレーションして、一緒にブレストをして、新しいソリューションを見つけることが一番だとは思います。
物理的に近いところにいると、予想外のことが起きるんです。例えばコーヒーを淹れに行った時に会った人との立ち話から問題について話し合えたり、こんなふうに新しいアイデアが閃いたりします。それがデジタルになると、もう少し計画的になってしまうわけですね。
テクノロジーは最近非常に良くなってきていますので、ブレイクアウトルームを作って議論するなど、そういったかたちでリアルに足りない部分を補うことも、少しずつできるようになっていると思います。
この状態が永遠に続かないこと、なるべく早く収束することを願っておりますけれども、コロナ禍においてもできることはあります。従って、イノベーションをやめてはいけないと思うのです。フィジカルで会えないからといってイノベーションを止めない、とにかく続ける。そして与えられた機会を最大限活用する。もちろんこういった機会はリアルとバーチャルの両方にあります。
司会者:ありがとうございました。2つ目の質問はぜひ宮田先生にお答えいただきたいと思っております。「日本政府のデジタル革命と規制緩和で、イノベーションが不可欠になってきています。政府・行政などとの連携をどのように進めていけばいいと思われますか?」。
宮田:今、デジタル庁として政府が主に議論しているのは、いわゆる「官のシステムの一元化」というところもあるんですけれども、ただやはり最も重要なのはそれだけではなくて、いわゆるデジタルという選択肢を手に入れたことによって、どういう社会を作るのか。このデザインが今、デジタル革命における最も重要な問いなんですよね。今日で言えばこのエクスペリエンスということなんですが。
例えば今までは一律にモノを配っていたのが、デジタルの力でいわゆるダイバーシティ&インクルージョン、誰も取り残さないところを目指せるようになってきたと。その上で行政のデータ、特に医療に関しては死亡や予後などのデータを行政データとつなげば把握できるんですよね。
PHR側で持っているエクスペリエンスと行政データをつなぐことによって、大きな価値が出せる。これは企業のイノベーションだけではなく、患者さんに寄り添っていくという意味においてもすごく大きな価値になってくるので、このデータ連携ですね。
マイナポータルでこの2年の中で、とりあえずお薬と検診から始まるんですが、その先にある、カルテやさまざまな情報との連携を加速させていくことがすごく大事だと思います。まさに今日いらっしゃっている大阪市さんや東京都さんといった地方行政の中で具体的なイノベーションの実例を作っていくことが、その先のビジョンを作ることになるかなと思います。
司会者:ありがとうございました。3問目も社長のヴォックスストラムへの質問になります。「『i2.JP』に参画すると、アストラゼネカという会社の枠を越えてインキュベーションの機会が得られるのでしょうか?」という質問がございます。
ヴォックスストラム:はい、まったくそのとおりです。アストラゼネカという枠を大きく越えて考える必要があります。「i2.JP」は、アストラゼネカのソリューションを推進するためのものではなく、医療を変革するためのプラットフォームです。より大きな大義があるわけです。
そして、「i2.JP」にご参加いただく場合には、アストラゼネカとコラボレーションをしなくてもよいわけです。ほかのパートナーさんと連携していただくことによって、さらにプラットフォームは強化されていきます。
排他的になってしまうとおもしろくありません。より大きく、どういった方向にでもコラボレーションが機能するようにすれば、さらに大きな価値を提供できますし、よりたくさんのイノベーションを作ることを狙ったプラットフォームです。それによって医療は変革できると確信しております。
司会者:ありがとうございました。質疑応答は以上で終了させていただきます。ではパネリストのみなさま、本日は長い時間、本当にありがとうございました。
(会場拍手)
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