2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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――コロナウイルス蔓延後の、生命保険業界全体の動向について。コロナウイルスで「こういうところが業界全体のダメージだった」や「むしろここが追い風になった」といった部分について、お伺いできればと思います。
森亮介氏(以下、森):はい。生命保険業界は120~130年ぐらいの歴史があり、長らく保険の専門知識のある営業職員の方々が、対面で販売をするかたちで歴史を積み上げてきました。
しかし、このようなコロナ禍の中で「そもそもお客様と会うことができない」となると、営業活動がなかなか難しくなると。そのようなことが生命保険業界では顕著に起きていたと思います。これは業界全体が受けた大きなチャレンジ、困難であったと思います。
当社は12年前に「オンラインの生命保険のビジネス」を始めました。当社以外にも、直接お客様とお会いしなくても加入ができる非対面型の生命保険会社が数社あります。そういった会社にとっては比較的、追い風になったのではないかと思います。
――100年間ぐらいずっと、保険外交員の方が対面でお話されてというのが基本のかたちだったと思うんですけども。ネットで契約できる保険の会社というのは、全体の何パーセントぐらいになるんでしょうか。
森:今、日本には生命保険会社が42社ありますが、オンラインに特化した生命保険会社は、アクサダイレクト生命さんと当社の2社だと認識しています。
――たったの2社。
森:加えてマルチチャネル戦略として、いくつかの販売チャネルを設けている生命保険会社さんもあり、その中で(事業の)一環としてオンラインの販売をはじめたという会社さんも、一定数いらっしゃいますね。10社程度でしょうか。
――ではやはり、大半は対面式の販売形態になっているのが、業界全体の慣習。
森:ええ。100年近く続いた、この業界の基本スタイルだったのかなと思っています。
――インターネットが社会に浸透してから、もうけっこうな年数が経つかなと思います。それでも42社中、完全にネットで事業を行なっていらっしゃるのは2社ということで。かなり少数派かなと思うんですけれど。
森:はい。
――(多くは)なぜ、対面をメインに続けていらっしゃるのかというのが、すごく気になるところで。それにはどういった背景があるのでしょうか?
森:「生命保険は複雑で、難しい」。これが、お客様の生命保険に対する一般的なイメージであったのでないでしょうか。ゆえに、お客様ご自身で生命保険を選び、加入するということに、難しさを感じていらっしゃったかもしれません。また、業界側も「だからこそ専門家と会って、きちんとコンサルテーションをして、お客様に合わせてカスタマイズをした保険に入っていただく方がいいですよ」というメッセージを、これまで発信してきたと思っています。
――そんな中で御社は、ネットで「買える」……あ、いえ「契約できる」という形ですね。ただ、いまお話いただいたみたいに「難しいところを丁寧にご説明して」というところが必要な部分もあると思うんですけど、それはユーザーさんによって変わるという感じでしょうか? つまり「自分で決めたい派」と「全部説明してほしい派」に分かれるというか。
森:おっしゃるとおりです。お客様のニーズは本当にさまざまですから「自身で決めたい」という方もいらっしゃれば「難しいことはある程度、自分の時間を使わずに、詳しい人から教えてもらうほうがいい」という方もいらっしゃる。これは、どちらが良い悪いではないと思っています。
――はい。
森:当社が大切にしているのは、お客様ご自身が「ネットで買う」という感覚です。100年超続いてきた従来のビジネスモデルというのは、ある種、対面で人が「売る」モデルだったと思っています。一方「買う」というのは「ご自身の判断で、納得して買う」ということです。
保険に限らず世の中の商品には、確かにわかりにくいものも多くあります。一方、当社の出発点は「商品は、もっとシンプルに作れないものだろうか?」というところにあります。もし商品をシンプルに作ることができ、かつお客様とのタッチポイントであるウェブサイトなどにおいて現代のお客様の求めるストレスフリーな滑らかさを実現できれば「自分で調べて、自分で納得して、保険を買う」というお客さまも、きっと多くいると心底信じています。
保険は超長期の商品のため、加入から5年後、10年後に「あれ? 私はどんな保険に入っていただろうか」となる場合や、あるいは、友人から「今、どういう保険に入ってるの?」と聞かれた際に、ご自身で説明できない人もいらっしゃるのではないでしょうか。
この点は、ご自身で調べて納得して「買った」か「売られた」かというところで、だいぶ違ってくると考えています。
当社は現代のお客様、とくに若年層の方は「売られる」体験より「自分で買う」体験のほうが心地よいのではと考えています。そのようなお客様のニーズに応え続けていくことが当社の究極的な目標でして、ネット(オンライン)はあくまで手段でしかありません。
――「売られる」よりも「買う」ほうが心地いい、納得感がある。それって、メディアの変遷にも関係しているのかなと、思っていまして。
森:おっしゃるとおりですね。
――インターネットが出てくる前のメディアって、新聞・テレビ・ラジオ・本。当時は、メディアの側が「これが流行ってるんだよ!」と言えば、ユーザーが「あぁ、これが流行ってるんだな」と思うようなかたちで「情報の受け手」だったと思います。
でもいまはネットが台頭してきて「自分から情報を取りに行く」というかたちに、メディアとの付き合い方が変わったと思うんですけども、そういうところも加味されての「ネットの保険」という事業のかたちなんでしょうか?
森:はい。メディアの役割や、お客様がメディアをどう見てるかというところは、大きく変化してきていると当社も認識しています。選択の手段がこれだけ多くなってくると、お客様からするとインターネットも数多くある情報の一部ですから。その中でさらに、自分に本当に必要な情報を取捨選択することを、無意識にやっているんだと思いますね。そういう時代に合わせた「顧客体験」というところが企業にも求められているのだと思います。
――御社に関わる記事で「契約者の多くが、スマホ経由で契約する」という情報を拝見しました。最初はPC向けのネットでスタートしたサービスが、もう今はどんどんスマホに移り変わっていって。これがさらに今後、どうなっていくかという見通しはお持ちでしょうか?
森:当社も最初は、スマホを使って保険のご契約を求められるお客様が、これほど多くなるとは思っていませんでした。当社が開業したのは2008年で、当時はまだスマホが日本に入ってきたばかりの頃でした。
パソコンの大きなスクリーンとキーボードがあれば、生命保険をオンラインでという確信はありましたが、これがスマホの出現で大きく変化しました。今では大多数の方がスマホを手にし、その上で金融も含めたさまざまな取引ができるようになった。これは、目を見張る「お客様の行動様式の変化」です。
当社の事業においても、ウェブサイトを訪れるお客様の大多数は、スマホからいらっしゃっています。「パソコンの延長線上にスマホがある」という考え方は違っていて、パソコンでのビジネスとスマホでのビジネスとは全くの別物として、ウェブサイト上の動線・体験を全てゼロから設計し直すというところに、当社も過去5年間ぐらいは注力し、やっと乗り越えてきたところです。
「今後なにが起こるか」という点については、正直申し上げると、当社に当てる力はないと思っています。それを当てるのがより上手な方は、世の中にたくさんいると思うのですが、とくに技術を当てるのは難しいですよね。テクノロジーばかりは「いつごろ」「どの規模で」起こるかというのは、当てられないので。
当社がやるべきことは「変化が起こった後に、その変化に迅速に対応する」ことだと考えています。インターネットサービスの企業さんはみなさん「当然だよね」と思われるかもしれませんが、金融機関にとっては重厚なシステムを保持していたり、さまざまな規制等があったりする中で、ゴムボートのような軽快な舵取りは簡単には行えません。
大きな豪華客船のようなゆっくりとした動きしかできない中で当社は、現在の規模や、ネットビジネスである特性を活かし、ゴムボートのような機動的な舵取りを取っていけるかどうかに意識を特化しています。
――このコロナでいろんな企業が、変化を受け入れざるを得ない状況になっています。例えば半年前までほとんど誰も知らなかったZoomも、今では誰もが「Zoom! Zoom!」と言っていて。そういうかたちで、御社が今回のコロナから「変えていかないといけない」と思われたことは、なにかありますでしょうか。
森:お客様の変化への対応、そしてお客様へのサービスを支える従業員への意識は大きいですね。従来はオンラインで生命保険を求められる方は、全体感で見るとごく一部に限られていました。当社は、その限られたお客様の期待に応えていくことに注力していました。
それが今回を機に、お客様の目線が、生命保険に限らずさまざまな領域で「オンラインで済ませられるものはオンラインで」と変化してきました。そのため、当社が向き合うお客様のタイプが、急速に多様化してきていると思います。
当社のお客様は若年層の方が多いのですが、直近は、若年層ばかりではなく、さまざまな年代の方々がライフネット生命のウェブサイトにアクセスして生命保険の検討をされるケースが増えてきています。このことに、当社も適応していなかければなりません。
加えて、こういった環境下で、お客様への安定的なサービス提供を支えてくれている従業員に対して、きちんと就労環境を整えていくことは重要な要素だと捉えています。現状、オフィス出社率を低く抑えられていることなどを考えると、ある程度できている方かもしれませんが、我慢しつつ在宅勤務をしているメンバーも、いろいろと不安を抱えながらオフィス出社をしているメンバーもいます。彼らが気持ちよく働け、高いパフォーマンスを発揮するための就労環境の整備は、経営陣の重要な役割です。
――ありがとうございます。いま労働環境のお話が出ましたが、オフィスや働き方などについての御社の風土についてお伺いしたいです。生命保険の企業なので日本的な「古き良き」なのか、ネットを主戦場とされている企業なので先進的なベンチャーっぽさがあるのか。
森:少なくとも生命保険会社っぽい風土ではないと思います。最近、人事のプロファイル見ていておもしろいなと思ったのは、当社の社員の9割超は中途社員で構成されているのですが、その60パーセントは、生命保険業界の外側から来た人間なんですね。
――そうなんですね!
森:当社は生命保険会社ですが、ある種、インターネットの会社でもあります。当社の競争力というのは、インターネットサービス企業のようなスピード感であるとか、フレキシビリティにあります。そういったところがさまざまな人事施策であったり、風土に現れているのではないかと思います。若いスタッフも多いですしね。
――平均年齢はおいくつぐらいなんですか?
森:平均年齢で見ると30代後半ですが、分布図で見ると、若いところに集まっています。
――ほかの生命保険会社さんって、やっぱりもっと高かったりするんですか?
森:どうでしょうか。ほかの生命保険会社さんは新卒を多く採用されていらっしゃいますので、一概に比較はしづらいですね。当社においては、一様に若年層のメンバーも業務を引っ張ってくれています。お客様と近い年齢層の社員が、商品・サービスを考え、創出していると思います。
また、当社は従業員が160人ほどで、大きな生命保険会社であれば、一つの「部」ないしは「課」の規模でしょうか(笑)。当社の生命保険のサービス、入口から出口までの全てのプロセスを、この160人の社員で賄うことができています。ゆえにオフィスもここ(東京)だけで、支店も営業所もありません。そういった点は、保険会社らしくないところかもしれませんね。
――ありがとうございます。今回のコロナで変更になった、会社の制度や働き方はございますでしょうか? 例えば、在宅勤務がOKになったりとか。
森:在宅勤務については、従来から一定のニーズがある従業員には認めていましたが、今回、社員の安全・健康を守る、それによってサービスを持続するために、大きくポリシーを緩和しながら、在宅勤務をかなり広範囲に認めていきました。また最近では、巷でもよく言われていますが、交通費を定期券代から実費精算に切り替えるというようなこともすでに行っており、それ以外にも社員への手当て等も行ってきました。
――それに対して、みなさんの評判はいかがですか? さきほども「我慢しながら在宅勤務されてる方もいらっしゃる」というお話でしたが。3月の末ぐらい、緊急事態宣言が出たあたりから、基本的には在宅という感じでしょうか?
森: 4月・5月はかなり高い在宅勤務率でした。政府が「80パーセント」と発信されていましたが、たまたま同じぐらいの結果になって。6月以降になって緊急事態宣言が終わってからは、徐々に出社率も増えてはいますが。
出社人数が少ない中、当社はこの4月・5月・6月の累計(2020年度第1四半期)の新契約業績が四半期単位で過去最高となりました。
これだけ低い出社率でも過去最高業績を創出できたことは、当社の手応えとして大きな自信になりました。今後、おそらくコロナが完全に落ち着いても元(出社前提の働き方)には戻さない、戻れないでしょうね。
先日、社員に働き方に関するアンケートを取ったのですが、部の業務によって、あるいは自宅の家庭環境だとか、プライベートの事情によってさまざまですが、週5日出社したいというメンバーはごく少数でした。
――そうなんですね。
森:大事なのは、出社と在宅の組み合わせですよね。従業員の業務と個人の事情はさまざまです。週1回ぐらいは在宅したいという人もいますし、週1回ぐらい出社したいという人もいるので。今後は、従業員が自分の就労形態を選んでいく。自分が「この頻度が一番パフォーマンスを出せます」「会社に一番貢献できます」というものを、会社が認めてサポートしてあげるようにしていかなければなりません。
――ありがとうございます。御社内について、さきほど9割が中途入社の方だと伺いましたが、面接や研修というのはどのようにされていたのでしょうか?
森:中途採用はもう年明けぐらいから、100パーセント、オンラインです。
――え、すべてオンラインでやってらっしゃるんですか!?
森:はい。最初は違和感もありましたが、いまは全く違和感はありませんね。関東近県以外の方も気軽に応募してくださるようになりましたし、時間の調整もお互いにしやすくなりました。
これはただの笑い話ですが、いざ入社されて初めてオフィスでお会いしたら「思ったより身長が高いですね!」といったこともありました(笑)。
(一同笑)
――いや、ありますよね。だって、PCの画面越しで面接されてるから(笑)。
森:従来よりも幅広い候補者の方々とお会いできるようになったということで、採用はオンラインで問題なくできますね。
――それは応募率とか、そういった数字に現れたりしているのでしょうか?
森:数は増えていると思います。当社としても、より手軽に「とりあえず会って話してみようか」となるケースも多くなってきました。お会いできる方の裾野は、明確に広がったと思います。
――採用は問題ないとしても、新しい方の研修ってどうされているんですか? それもやっぱり、オンラインですか?
森:オンラインでやっています。
――すごい!
森:この4月に2名、新卒が入社しました。彼らは入社する前から、とても不安な思いを持ちながら2月・3月を過ごしていました。4月の入社式は新卒と経営陣でマスクをつけてオフィスでやりましたが、その後は、オンラインでの研修がずっと続いています。1~2週間に1回ぐらいで、オフィスに来たりしていますけれども。
――ではもう基本的に、PC上での研修がメイン。
森:そうなんです。私、今36才でまだ若い方だと思っていたのですが、彼らと話していてギャップを感じたのは、こちらが「せっかくオフィスで働くことを楽しみに入社してくれたのに、コロナのためにオンライン研修ばかりになってしまい、本当に申し訳ない」ということをビデオ会議で話したら、新卒の彼らは「え? ぜんぜん問題ないですよ!」というリアクションでした(笑)。
(一同笑)
「ぜんぜん違和感ないです。むしろみなさん、きちんと教えてくれるし、トレーナーではないスタッフからも『大丈夫?』『困ってない?』って声をかけてくださるので、なんていい会社なんだと思って!」ということを言われて(笑)。確かに従来の生活環境とは違いますが、若い人は前向きに捉えているんだなと実感した次第です。
――すごいですね。もし私が新卒で入った会社で研修がオンラインだったら「マジか……」ってなると思います(笑)。
森:そうですよね。専門知識を身に着けることはオンラインでも問題ないと思のですが、仕事は1人ですべてのことができるものではありませんので。「どの部署の誰々さんがこの業務については詳しい」といった情報は、在籍期間が長いスタッフ同士であればお互いのことがわかっているのでオンラインでも大丈夫ですが、最近入った新卒や中途メンバーには、他部門とのコミュニケーションに関して少なからず苦労をかけてしまっているかもしれないですね。
――なにかツールとかは使っていらっしゃるんですか? 例えばSlackとかビジネスチャット的なものとか。あとは社員の方のプロフィールが見えたりとか。いろいろ各社さんやっていらっしゃると思うんですけども。
森:そうですね。社内のSNS、企業版Facebook「Workplace」というのがあり、やりとりが活発です。その中では、これまでは業界情報の共有であったり、部門ごとの情報発信等が多かったのですが、最近は「with、ないしはafterコロナ時代をどう生きていくか」という雑談チャットスレッドができていて、社員みんながそこで、困ってることを吐き出したりあったりしています。「こういうツール使ってみたら便利だったよ」というようなことを共有しあったりしていますが、みんながそういうところで緩やかに繋がって、支えあっているのかなとは思いますね。
――「雑談が大事」って、やっぱりみなさんおっしゃいますね。
森:そうですよね。いかにそういう「オフィシャルではない非公式な会話量」をきちんと確保していくか、というところはとても大事だと思います。社員の中でも、SNSを使ったり、ビデオで話したりとかいうようなことを活発にしていて、オンライン上のやり取り増えていますね。
――社員のみなさんがやり取りしていらっしゃる雑談チャンネルに、例えば森社長がいきなり入っていかれたりとか、そういうのはあるんですか?
森:めちゃめちゃ、やってます!
(一同笑)
――新卒の方とか、すごく緊張されそうですね(笑)。
森:いえいえ(笑)。そういう意味では、これも「ライフネット生命の風土」なのかもしれませんが、経営陣と社員の距離がものすごく近いんですよ。私が一社員としてライフネット生命に入ったときから、ずっと変わっていないものだと思いますが、お互いが絡み合うところは、昔も今もあんまり変わらないですね。
――トップダウンではなく、ボトムアップ的な風土なんでしょうか?
森:領域によるかもしれませんが、大きくいうとそうですね。社員の人たちがいろいろと見つけてきて「このツール、うちでも使いたいんだけどいいかな?」ということを提案して、それが導入に至ったものもあるんですよ。
――かなり風通しがいいんですね。
森:それ自体は本当に、当社の組織の強みだと思います。
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