2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
The Insect That Thrives in Antarctica(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:翅(はね)のないハエの一種、「ナンキョクユスリカ」は、文字通り地球上で一番“クール”な昆虫です。これには議論の余地もありません。なぜならナンキョクユスリカは、地球上でもっとも極限の寒冷地である南極に生息する、唯一の昆虫だからです。南極で生きることは容易ではありませんが、ナンキョクユスリカは、さまざまな工夫により、極寒の大陸でうまく生き延びています。
普通に考えて、南極は生息地としては最悪です。平均気温は氷点下を優に超え、冷たく乾燥した強風で、あっという間に干からびてしまいます。爬虫類同様に冷血動物であり(注;原ママ)、生きるためには外気の暖かさを必要とし、そうでない場合は行動ができなくなる昆虫にとって、特に厳しい環境と言えるでしょう。
その上、南極は地球上でもオゾン層が極めて薄い地域であり、紫外線が地上に降り注いでいます。そのためDNAの変異を起こしやすく、昆虫にとっては危険です。
住まいとしては決して選びたくない環境ですが、ナンキョクユスリカにとっては天国です。ナンキョクユスリカは、南極に3,000万年以上も前から生息し、その過程で南極に適応するべく、さまざまな進化を遂げています。
まず、ナンキョクユスリカは「飛べないハエ」です。南極の強風が相手では役に立たないため、翅すら持っていません。これには利点があり、体温が大量に放出されてしまう翅が無いナンキョクユスリカは、わずかな体温を失わずに済みます。
さらにナンキョクユスリカは、身を寄せ合い、南極の極寒の乾燥した風で水分を失うことを防ぎます。その様は、いささかかわいらしく思えるほどです。とはいえ、南極にいることには変わりがないため、体温を保つ手段は限られており、極寒の寒さと付き合っていく手段が肝要となってきます。
他の昆虫と同様、ナンキョクユスリカは、体液が凍っても生きていられます。これは、コールドハードニングという作用によるもので、南極では日常である体内細胞の凍害を、体内の特別な化学物質により防ぎます。また、紫外線や極寒などのストレス下で、体内のたんぱく質が形状を保てなくなった時などにこれを修正する、「熱ショックタンパク質」も体内に持っており、その機能を保全します。
ナンキョクユスリカはさらに、独特のライフサイクルで、一年のうちの極寒の時期を乗り切ります。ナンキョクユスリカの成虫の寿命はわずか10日ほどですが、2年間を幼虫の形態で過ごします。
そのため、2回の夏をエサ取りにフル活用することができ、十分に栄養を補給して繁殖に備えます。時期が来ると、ナンキョクユスリカは一斉に羽化してつがいを見つけ、交尾するのです。
このようなライフスタイルの話を聞いても、南極での暮らしがパラダイスとは到底思えませんが、ナンキョクユスリカの生存戦略は、非常にうまく適応を遂げています。事実、わずか体長5ミリメートルのこの昆虫は、南極大陸最大の陸生生物です。念のため言及しますが、ペンギンは正確には海生生物なので、勘定には入りません。
さらに驚くべきことに、ナンキョクユスリカは、こういった生存戦略を、昆虫の中で最小のゲノムで成し遂げています。つまり、そのゲノムは、それほど複雑なものではないのです。事実、こうした進化適応により、ナンキョクユスリカは極限状況をうまく生き延びていますが、実は同様のメカニズムを、他の昆虫もすでに持っているのです。
他の昆虫も持つ生存機能の活用が巧みなのか、それとも、もっと他に特徴があるのかといった、ナンキョクユスリカのこのユニークさの理由を、科学者たちは今も研究し続けています。
いずれにせよ、この奇妙で頑丈な昆虫について知れば知るほど、南極全体の生態系はさらに解明されていくでしょう。
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