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~山田 理氏 × 倉貫 義人氏 スペシャルトークイベント~ #最軽量への道標(全6記事)

「選択できない人」は、いつか誰かのせいにしてしまう 自立するための第一歩

『最軽量のマネジメント』著者の山田理氏と『管理ゼロで成果はあがる』『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』著者の倉貫義人氏による対談が開催されました。これからの時代のマネジメントを考えるうえで大切なこと、必要なマインドセットなどを、それぞれの知見を交えて語ります。本パートでは、一人ひとりが自立することの重要性について語りました。

「質問責任」と「説明責任」

西舘聖哉氏(以下、西舘):やっぱり「(経営層に)どうにかしてほしいんです」というコメントもあるので。そこから個人が自立していくことが、とくに「セルフマネジメント」なんていう言葉もだいぶ浸透してきて、そういう話題も挙がっているので。

そこで個人で立つためには、まず何からやったほうがいいでしょうか? せっかくこの話題が出たので、「依存していたな」と自覚したときにやるべきことで、おすすめなことってなにかありますか。「今こういうことやっておくといいよ」って。

山田理氏(以下、山田):本で書いてるところで言うと、さっきの倉貫さんの話と一緒かな。「聞く」ことや「言う」こととか、自分がなにかやりたいことを「こういうことをやりたい」というふうに(発信する)。

最軽量のマネジメント(サイボウズ式ブックス)

今だったら……まぁうちの会社(サイボウズ)みたいに、誰でもみんな社外のSNSで「お前、それまずは上司に言えよ」というところが、いきなり世界中に発信されたりするような特殊な会社は別だけど。

(一同笑)

社内でもなんでもいいから、一応自分の思っていることは、やっぱり言葉にして見える化する。上司とかクローズドなところで、もしくは自分1人で閉じていたら絶対ダメだし、上司だけでもダメだし。一応みんなが見えるところ、アクセスできる状態で「自分はこんなふうに思う」と発信しておくことが1つ。

そういう中でなにか「どうなのかな」と思ったら、やっぱり聞いてみる。「どうしてなんですか」と聞いてみることは、すごくシンプルだけれども、すごく大事なことだから。説明責任、質問責任。聞きたかったら質問するという責任はあなたにあるし、聞かれたほうは説明するという責任があるし。お互いに責任を果たしましょう、みたいな。

そうじゃないと、こんなふうに800人とか900人が全員理解するまで1個1個の意思決定を説明すると、「説明するのに1年以上かかりますよ」という感じになるから。やっぱり、できたらそれを見える化しておくし、ある程度の通知はするけど「聞きたい人が聞いて」というふうにしておかないと、会社って回っていかないところもありますしね。

自分の価値を棚卸するための転職活動

倉貫義人氏(以下、倉貫):そうですね。自立するためにできることって、なんとなくずっと考えてみたんですけど。僕らは経営者なのでアレですけど、「どうにかしてほしい」というのをやめて。自分で自立することを考えたときに、第一歩目はたぶん「転職活動を始める」だと思いますよ。

転職しろってことじゃなくて、転職活動を1回やってみるだけで。自分の価値が会社の中だと部長なのか課長なのかって評価されているけど、外に出たら「自分の価値はどれくらいなのか」ということを考えなきゃいけなくなる。

独立するでもいいし、転職するでもいいけど、「今の会社を辞めるとしたらどうするんだろうか」ということを考え始めるのがまず第一歩で。自分の価値だったり、自分のできることを棚卸ししないと、次のところにもアピールできない。

それで、自分がこの会社で5年やったのか、8年やったか、10年やった中で、何をやってきたのか、どんなスキルを持っているのかを棚卸しすると「やべぇ」と思う人もいるだろうし、「まあそこそこがんばってこれたな」という人もいるかもしれないけど。

つまり、会社の評価じゃなくて、世の中の評価で自分のキャリアを考えるというところがあって。それを考えた上で「いや、今の会社は俺、なかなか経験を積ませてもらって、スキルもあって、これから先もやれそうなので」と今の会社を選ぶ。

1回転職するつもりでいろいろ選んだ上で「転職しない」というのは、自分の会社をもう一度選び直したということになるだけなので。転職活動を始めてみるというのは1つあるのかなと。

会社が潰れても食いっぱぐれないようにする責任

倉貫:サイボウズさんで言うと、エンジニアの給与は世の中の評価で決める、みたいな。

山田:全員ですね、サイボウズの全社員。

倉貫:あっ、全社員そうなんですか。転職するとしたら自分にはどういう市場価値があるのかで、社員の給与が決まってくるというのは、もう自立を促しまくるというか、めちゃくちゃ自立しないといけない感は出てくるし。山田さんの本の最後に書いてましたけど、入社されたみなさんに「早くサイボウズを辞められるようになってください」って。

山田:そうそう(笑)。入社式に言いますからね。

西舘:ヤバいですよね(笑)。

倉貫:僕らの会社も言うんですよ。入社式じゃないんだけど、入社する前に。うちの会社は人数少ないし、別に上場してるわけでもないから。私がめちゃくちゃ給料をもらっていて、私の1人の力でやっているような会社じゃないから、なにかあったときに「俺がお前らを守る」とか言えないから「潰れるときは一緒に潰れようね」と言う(笑)。

その代わり、社員をなんとか守るのが責任じゃなくて、僕は入社前にみんなに言っているのは「会社が潰れても、どこに行っても活躍できる人材にすることのほうが会社としての責任だろうなと思っているので、まぁ潰れたらごめんな」と言って入ってもらっているので。まさしく山田さんが入社式で言うのと同じようなことなのかな、とは思って。

山田:そうですね。本当に僕らが果たせる責任は、会社が潰れたときに食いっぱぐれないようにするところ。それが、やっぱり採用した責任だと思うし。例えば、そこでできることが副業。僕もそうだと思うから、副業もサイボウズはOKにしているし。「1回辞めて、6年以内だったら戻ってきていいよ」というようなところもあるし。だからこそチャンスというか。

市場価値というのも、社内を見るんじゃなくて、やっぱり社外を見ることによって、どうやったらほかの会社で働けるか、ほかの会社っていくらもらえるのか、というような視点を提供していく。そして、いろんな選択肢を持った人たちが「それでもサイボウズで働くわ」と言ってくれたら、それがまさに経営というか。僕らもそれは勝負だと思っているから。

なんか囲い込んで、いかに社畜に育て上げるかというのは、少なくとも僕らは無理だし、今これからの時代はとくに合ってないような気がするんで。

倉貫:社員を囲い込んじゃうと、会社の力も弱くなるんですよね。

山田:そうだと思うんですよね、これからとくに。

倉貫:どこででも活躍できるような人が、あえて自分たちの会社を選んでくれている、という状態が一番望ましいですね。

「会社がおかしいな」と思ったときの3つの選択肢

山田:人数が増えてきていろいろなメンバーとかが出てくると、「自立」という言葉のニュアンスって……僕らも自分たちのカルチャーの中の1つの言葉に「自立」を入れているんですけど、独立していく強さというよりは、ちゃんと自分自身がそこを選択しているという。

さっきどなたか書かれてたけど、会社って「なにかおかしいな」と思ったときに、会社に合わせて自分が染まるのか、会社を改革するのか、もしくは働く場所を変えるのか、少なくとも3つの選択肢あるよ、と。この3つの選択肢のうち、あなたはどれを選んでそこにいますか、と常に選択肢を用意して。

僕は、別にその中で「しょうがないからいる」でもいいと思う。でも、それを選択しているということがすごく大事で。何が言いたいかって、本当の自立は「自分がそこを選んでいる」ということをちゃんと意識して受け入れてるということであって。1人で外で飯食っていける、ということでもないかなと思うんですよね。

倉貫:そうです、そうです。まさしく僕もそう思いますね。

山田:まさに自分を理解して、自分の人生を自分で選んでる、その感じがまずは主体性を生むし、それがいいのかなって。「会社に居続けてぶら下がりまくったる!」って、僕はぜんぜんOKだと思うし、それで(笑)。めっちゃ前向きやん、って思う。

(一同笑)

西舘:じゃあそういう意味で言うと、一番最後にコメントをいただいた「逆に副業を促しても、してくれないエンジニアはどうしましょう」というのは、もうそこだけで働くと決めたならそれはそれでOKっていうことですね。

山田:僕はもうぜんぜんOKだと思いますけど。

倉貫:そうですね、それが本人の選択かどうかというところなんだろうなとは思いますね。

西舘:そうですね、そこは大事ですね。

自分で選択する訓練をしないと、いつか誰かのせいにしてしまう

倉貫:それを「誰かがそう言っているので自分は副業しません」なのか、逆に「言われたから副業します」なのか。そういうところがあったら、なにかあったときに、いつか誰かのせいにしちゃいますよね。「あの人がそう言ったので」となるので、あくまで自分で選択をしてもらうと。

でも、「自分で選択する」って、やっぱり訓練がいることだなと思っていて。よく(言われている)「自分で考えろ」とか「自分で考えなきゃいけない」「自分で選択しなきゃいけない」というところが、学生とか若い人のほうができている。会社に長くいるうちに、それができなくなってくる人もけっこう多いなと思っています。僕は、会社としてはそうならないようにしなきゃいけないな、とは思っていて。

それで、最初のザツダンに戻りますけど、僕らの会社は振り返りのときに、年に1回キャリア相談みたいなことをするんですね。本人はどういうキャリアでいきたいのかという話を聞いて「それだったらこういう仕事をしたらいいんじゃない」と言って、社内で見つかった仕事をやってもらう、みたいな。

本人がやりたいことと会社がやってほしいことをうまくすり合わせたら、やっぱり本人のパフォーマンスが出るので。そこを確認して最終的には本人に選んでもらうということをしているんですね。

サイボウズさんはけっこう人数も多い中で、みなさんが自分で考える力を身につけるようにするために、なにか会社としてやってらっしゃることってあるんですか?

ルールが決まっていないからこその厳しさ

山田:いやぁー……いろいろあるのかもしれないですけれど、意識的にはなにかなぁ。僕らは、議論するというのも「自立と議論」という言葉を風土の1つに掲げてやっていたり。

でも、さっき言ってたみたいに、やりたいことを自分で選択していくために、やっぱり自立ということを考えないといけなかったりするし。あとは、いろんなところでいろいろ考えさせているのかもしれない。

「市場価値」と言っている時点で、自分で「給料がいくらほしい」と言わないといけないから。「なぜこの給料なのか、それをもらうためには何をしたらいいのか」も、やっぱり自動的に考えないといけなくなってくるし。

働き方の選択1つとっても、どういう働き方でやるのかを自分で考えないと。サイボウズはある意味、厳しい会社かもしれない。選択肢があまりにも多いんですよ。ルールが決まっていないから、ある意味、自分ですべてをデザインできたりするし、行きたい部署も自分で言えるんですよ。

逆にそれを受けた側の部署の部長とかとしゃべるんですよね。ドラフト会議じゃないけど、キャリアコネクト会議みたいな。それで、片側は「なぜそれを受け入れないのか」「なぜ自分は行きたいのか」というところもやるので。

人事部の人事異動を待っていることはあんまりなくて、自分が「行きたい」と言わない限りは行けない。そのへんで常に考えさせられている感じはあるかもしれないですね。

社員の思考力を奪うのは選択肢のない環境

倉貫:そうですね。今聞いていて思ったのは、サイボウズさんは、働き方も報酬も部署も、会社の制度としては「選択肢を用意する」という考え方なんですね。

山田:本当にそうなんですよね。

倉貫:選択肢を用意すると、主導権は会社じゃなくて社員になるんですよね。そうなったら社員は、自分で選ぶしかない。そして、自分で選んだら主体的にならざるを得ない。そりゃ自立しますよね、という話なので。その選択肢を用意してこなかったことが、考える力を失わせたところがあるのかもしれないですね。ほかの会社で言うと。

僕も講演などで「管理ゼロで成果が上がりますよ」という話をすると、「いいですね、さすが御社ですね」と言っていただいて、まあそれはうれしいんですけど。

「いや、うちの会社は管理ゼロにして考えさせても、考えるやつがいないからな」「自分で動けないんですよね」と言う方がたまにいらっしゃるんですけど。

でも、それは若いうちから指示・命令をして選択肢を与えずに、会社に言われた仕事だけをずっと5年10年やってきたら、そりゃいきなり「自分の頭で考えろ」と言われても考えられなくなるなという。環境の問題ってすごくあるなと思っていて。だから選択肢を用意することは、すごく良いマネジメントのスタイルだという感じがしますね。

情報公開と説明責任を果たすことが「管理ゼロ」につながる

山田:いやぁ、それも結局諦めたというか。だって「これやれ」と言ったら、全部説明していかないといけないし、納得させないといけない。すごく面倒くさいんですよね。「それはなぜダメなのか」を言わないといけないと思うと。

だから、もうどんどん言って、選択肢も「やりたいんだったらじゃあやり、自分で考えて」と言って、やれる方法を一緒に考えていってあげるとか。

質問も、さっき言ったみたいに「質問したかったらして、説明はするから」って。「質問してくれへんかったらわかれへんやん」って。いちいち「大丈夫? 大丈夫?」って全員に聞いていくのもめんどくさいんですよね。

だからマネジメント的にも、結局はもう全部情報を公開するというか。ある程度、情報公開して説明するという責任だけを果たしておけば、意外とそれがたぶん「管理ゼロ」というところにつながるんだと思うんです。選択肢ってぜんぜん用意できると思うんですよね。どっちにしたって、自助作用が働くから。

西舘:今、サイボウズの方が「質問責任という言葉があるのも、自分で考えて行動する意識づけになっている気がします」と(コメントを)書いてくれてて。

山田:まさにそうですね。

西舘:社員側からも「聞いていいんだよ」となっている風土がちゃんとあると、やっぱり「質問しよう」という意識が働くってことですね。

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