交通費・出張費を原資とした、在宅ワークへの補助

小笠原治氏(以下、小笠原):このセッションだけ、司会が池澤あやかではないんですが。これは彼女の休憩のためで、みなさんに会わせたくなかったわけではありません(笑)。

今日のこのセッションは「働き方のNew Norm」ということで。「会社と従業員のみなさんとの関係って、これからどうなっていくのかな?」という中で、ネット業界は全体的に早かったとは思うんですけども、オンラインでも仕事ができる環境を提供していくということを軸に考えてみたいと思います。

まずヌーラボさんに関しては、交通費や出張費を原資にしながらオンライワーク・在宅ワークができるように、従業員の方々を支えるような施策をやられていたと思うので。軽くそこにも触れながら、自己紹介していただければと思います。橋本さんお願いします。

橋本正徳氏(以下、橋本):株式会社ヌーラボの橋本正徳といいます。プロジェクト管理ツールのBacklogがうちのヒット商品ではあるので、そちらのほうで知ってる方は知ってるかなと思います。

先々週くらいかな? 15万円支給というのを発表させていただきました。「ただお金を支給しますよ」じゃなくて、その原資となるものも共有することによって、ちょっとしたメッセージを絡めてて。お金の使い方が今後、会社として変わると思うので。事務所じゃなくて、どちらかというと各個人宅の設備だとかに変わったりとかしていくと思うので。そういうメッセージを含めてリリースさせてもらいました。

小笠原:ありがとうございます。今まで会社に設備としてかかっていたものが、従業員の家だったりリモートワークする場所に、そういうお金に変わるかもしれないですもんね。

橋本:そうですね。あと、うちの人事も今日は参加します。

小笠原:そうだそうだ。それを支えているメンバーも入ってくれているので。Angelaさん、そういう橋本っちゃんの発想にメンバーとして付き合っていく大変さを(笑)。

安立沙耶佳氏(以下、安立):ありがとうございます。ヌーラボで人事をしております、安立と申します。Angelaと呼ばれています。今回の施策は「やろうやろう」と決めてはいたんですけど、少し時間が経ってしまいました。ただ、実際に動き出してから3〜4日でプレスリリースまで漕ぎ着けたので、会社としてはとても早めに意思決定できたかなと思っています。

人事としては福利厚生って、あればあるほど確かにいいかもしれないのですが、ちゃんと原資や目的を明記できたのは今回よかったなと思っているところです。よろしくお願いします。

小笠原:ありがとうございます。あとは橋本っちゃんのヘルプをお願いします(笑)。

安立:はい(笑)。

橋本:ありがとうございます。

「今は生産性が落ちてもいい」の真意

小笠原:じゃあ次はBASEの鶴岡さん、鶴ちゃんですが。僕、今回このセッションをやりたいなと思った「会社と従業員の関係」みたいなところって、わりとこの一言に尽きるなぁと思っていて。「今は生産性が落ちてもいい」なんて上場会社の社長で言える人いるの!? って、この記事を見たときにすごく思って。

かつ、ものすごく鶴ちゃんっぽいんですよね。ちゃんと先のことも見ながら、そして今も見ながら。で、現実的なことが書かれてる。すごくいいなぁと思ったので、お声がけさせていただいたんですが。軽く自己紹介をお願いいたします。

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):BASE株式会社の鶴岡と申します。今、創業して7年ちょっとくらいで。Eコマースプラットフォーム「BASE(ベイス)」という、誰でも簡単にネットショップを作れるサービスを運営しています。世の中と同じように今は「Work From Home」って言うんですか、みんな家から働いている状態です。

「生産性が落ちてもいいよね」っていうのはたしかにインタビューで言ったんですけど。「数字を出さなくてもいい」というわけではなくて、中長期にしっかりとサービスを伸ばすためには、この状況下をフルでがんばりぬくことがゴールではないというか。単純なWork From Homeではないですし。世の中もこういう状況で、僕自身も初めて家でこんなに働くみたいな経験をして。それだけならまだしも外にも出られないみたいなストレスもある中で、やっぱり精神的にくるものもあるなぁと思います。

あと、どうしても働く時間でしか評価ができなくなっていくというか。長く働くという意思決定を取りやすくなっていっちゃうなと、なんとなく感じてきてたりもしたので。短期的な成果は追求しなくていいですと。つらくなったらすぐ上司に言ってくださいねと。それが一番、中長期の成果を出すうえでは大事なことなのかなぁというのもあり、そういうメッセージを全社に出していますね。

小笠原:そうですよね。あくまで経営者なんだからやっぱり中長期。中長期のためならある程度は短期捨てられるっていうのがあるじゃないですか。

鶴岡:そうですね。

小笠原:でもなかなかそれができる経営者がいないっていうのもたしかなので。このメッセージはすごくいいなぁと思って見てました。

鶴岡:あくまでも「中長期を見すえて」っていうところですね。

客先の従業員のことまで考えた取り組み

小笠原:ありがとうございます。じゃあ次はスマレジ、山本博士さん。いつもヒロシと呼んでしまっているので山本さんと言うのがちょっと気持ち悪くて(笑)。フルネームで山本博士さんと言っちゃいますが(笑)。

山本博士氏(以下、山本):ヒロシで大丈夫ですよ(笑)。

小笠原:スマレジさんも2月の後半にはもう「新型コロナウイルス拡大防止対策について」みたいなことを始められてましたけど。ここは今日出てるみなさん、もちろん、さくらインターネットも出してたりするんです。やっぱりみんなやってますし、これからの従業員のことを考えているっていうのもあるんですけど。

僕すごくいいなと思ったのが、スマレジのお客さんでもテレワークが行われていて。そのシステム利用についてわかりやすくヘルプサイトとか、それこそダウングレードも含めて提案してるってなかなか、客先の従業員のことまで考えるってパッとは動けないと思うんですけど。これすごくいいなぁと思って見てました。それで今日は声を掛けさせていただいたというかたちになります。ついこの前ですかね、上場されたばっかりだと思いますけど。軽く自己紹介をお願いします。

山本:ありがとうございます。株式会社スマレジの山本と言います。iPadを使ってお店のレジアプリを実現しようということで、飲食店さんや小売店さん向けのレジとかバックヤードを含めた業務システムを提供しているIT会社です。

今回の件でいくと、例えばインバウンド系の店舗さんだったり飲食店さんが、かなり早い段階から売上が落ちてきたりお客さんが減ったりしていたので、けっこう敏感には感じていました。

僕たちのサービスは、みなさんのお仕事に役立つようなツールを提供しています。そういった意味でレジのアプリだけじゃなくて、例えば勤怠管理だったり給与計算とかも一緒にできるようになっている。そういうサービスも提供しています。

それなら僕たちで「こういう使い方できますよ」とか「リモートやるんだったらこういうふうにタイムカード使ってくださいね」といった案内を、まずやっていこうということで。そういう取り組みをご案内したという流れになります。

僕たちの会社自体はソフトウェア会社と言いつつも、営業部隊やカスタマーサポートのコールセンターも、全部を社内で抱えています。ソフトウェアエンジニアだけじゃなくていろんな業種の人がいて。リモート化していく中での段階とかばらつきもあったので、そのへんも今日お話できたらなと思っております。よろしくお願いします。

小笠原:ありがとうございます。コールセンターとか持ってたらすごいですよね。

山本:コールセンターのほうがやりすかったですね。リモートは。

小笠原:あ、本当ですか。へ~。コールセンターって、言ったら飛沫感染の集まりみたいになっちゃうじゃないですか。さっさと変えていかないとですよね。

山本:そうですね(笑)。さっさとばらけたほうが。

在宅ワークにおける「ソロワーク」問題

小笠原:ありがとうございます。じゃあ最初話したいなと思っていたのが、やっぱりリモートワークしていると、とくに在宅ってなってしまうとソロワークになることが多いと思うんですよね。ふだん僕らはわりと会議が多いと思いますけど、一般的に働いている人で1日中会議なんてあんまりなくて。そのほかの時間、周りにワイワイ人がいたのが急に家で1人だったり、ソロワークになってしまっているような気がしてるんですけど。社内でそういう話って出たりします? なにか対策してます?

橋本:うちは社内で「さみしい」とかっていう話があって。一旦ZOOMかな、ZOOMじゃないや、ハングアウトかな?

安立:Google Meet?

橋本:うん、Google Meetで常時接続をやってみたらしいんですけど。それはそれでちょっと仕事しにくかったっていうので(笑)。今は朝会、夕会みたいなのがビデオで行われているみたいな。

小笠原:うちのさくらインターネットのTellus(テルース)っていう衛星データを扱ってるチームは、朝会やったりしてるみたいですね。

橋本:そういうのを聞きますね。

鶴岡:たしかに現場同士のコミュニケーションがなくなるからランチ会をやったりとか、そういうのはけっこうしてますけどね。

小笠原:朝会、ランチ会みたいに集まる時間を決めて同じことをするみたいな感じで、コミュニケーションを図る感じですね。

鶴岡:やっぱり何気ない雑談ってすごく大事だったんだな、っていうのはありますよね。

山本:人もそうなんですけど、ツールを統一したんです。上場準備に合わせてっていうところもあったんですけど、いろいろ試した結果G Suite……Googleドライブ系で全部統一しようってなって。

そうするとなんでも共同編集できるとか。統合されてるんでチャットで社内でグループ作れたりとかすぐばらしたりとか、即興でチーム作ったりとか。ちょっとした会話がチャットでできて、それがドライブのファイルと紐付いてたりとかして。まずそのベースがあって、共同作業がしやすいっていうのがけっこう大きかったかなと思いました。

小笠原:ほ~。たしかにね。セッション5でも大学の話をするんですけど。今、うちの大学で僕がやってるクロステックデザインコースっていうところで、2年前からSlackとG SuiteとZOOMは当たり前にしてたので、今その環境を全学に広げてますね。一気に3000人、先生入れて4000人ちょい(笑)。大学でZOOMアカウントをフルで払い出して。なかなかですよね。

山本:サービスがめっちゃ儲かりますね(笑)。

小笠原:うちの学校からインターン取るとき、ヒロシのところは楽ですよ。環境ほぼ一緒っていう(笑)。

山本:ぜひ来てください。

小笠原:オンラインインターンとかも出てくるのかもしれないなぁ、と思いながら。そのときのツールって共通化は大事ですよね。

山本:そうですよね。非ITの会社さんとかでいくと、たぶんまだまだそういうのは進んでないと思ってて。僕たちだったらわりと当たり前というか、そういうのを使って当たり前なんですけど。そうじゃないところは早く試してほしいなぁと思います。

テレワークに対する、管理職と一般職の意見の差異

小笠原:そうですね。これはみなさんになんですけど、あしたのチームさんがテレワークをして管理職が感じたこと、一般職の人が感じたことっていうアンケートを取ってて。

管理職の1位は「通勤時間がないからスキルアップの時間が持てる」こと。なんかそれっぽい。うんうん、そんな感じねなんですけど。2番目が「人とのコミュニケーションがなくさみしい」。3番が「仕事態度に緊張感がなくなった」。そういう上司いそうだな、みたいな感じなんですね。

一般社員の1番は「人間関係のストレスがなく気楽」。2番が「仕事態度に緊張感がなくなった」。3番が「通勤時間がなくてスキルアップ」。なので「さみしい」が入ってないんですよね。3番までに。

ネットとかツールにネイティブな人たちが取れてるコミュニケーションと、今、急に在宅だからそれを使わなくちゃいけなくなった人たちで、だいぶ違うのかなっていう。あと年齢もあると思うんですけど。今、御三方の会社ではそういうギャップってあんまり感じないですか? 鶴ちゃんところは若いよね。全体的に。

鶴岡:そうですね。まあでもやっぱりそれぞれの課題はありますね。やっぱりご家族が……とくに東京とかだと、福岡とかはわからないですけど、やっぱり家のスペースの問題もあって。パートナーとお子さんが全員家にいる状況でリモートしてるのは、けっこう大変なんだろうなとか。

僕も含めて単身の人は、それはそれで本当に人との接触がなくなっちゃうメンバーもいっぱいいると思うので。ミーティングがいっぱいあれば別ですけど、エンジニアとかは淡々とお仕事しないといけないし。そういった意味ではメンタル面はいろいろ、立場によっても状況が違ってますよね。なにかしらは課題はあるんだろうなと思っています。。

上司のポジションの人が心配されているのも、まあ管理する人はもちろんそうなりますよね(笑)。今まで管理をしている側なので、ITとかだとそんなにまだあれですけど。たしかに自分のチームの働き方をふだん見ているような方々はそれが見えなくなる不安感があるっていうのは、まあわからなくもないですよね。

小笠原:そうですよね。マネージメントって人と接する……あれ技術職だと思ってて。

鶴岡:はいはいはい。

小笠原:「人と接して、いかにその人の成長を促していくか」っていう技術職だと思っているんですけど。それがフェイスtoフェイスでできたときと、急にオンラインでそれやれって言われたときに(笑)。

鶴岡:そうですよね。ぜんぜん違いますよね。必要な技術が。

小笠原:ネット系の企業の場合は、コミュニケーションツールとしてテキストベースのSlackやTeams、Typetalk、Chatworkなどがベースにあって、業界的にも慣れはあると思うんですけど、いわゆるフェイスtoフェイスが一番大事な職種の場合とかだと、やっぱり表情とか、表情の変化とかね。そこまでは、今のこういうツールではぜんぜん再現できてないし。声の質やトーンとかもやっぱりちょっと変わって聞こえるし。まだまだ技術的にやれるところはありそうですよね。

鶴岡:たしかに。それこそITとかはふだんチャットベースだし、Zoomとかハングアウトとか使うことは今までもあったんですけど。中には社内ですら電話でやりとりしてるとか、メールでやりとりしてるって会社もいっぱいあって。そういった会社が一気にリモートになっていると思うと、本当に尊敬しますよね。みんなIT業界の比じゃないくらい苦労してやられているんだろうな、と思いますけどね。

小笠原:だってあれですよ。2月の頭くらいから俺もうフルリモートになってて。2月、3月はZOOMの使用時間、あれコンパネで見られるので。どれくらいだ? 3000分っていうと? 50時間? とかだったんですけど。4月はもう今、18,000分とかきてるんですよ(笑)。

鶴岡:基本ずっとZoomやってますもんね。

営業マンに仕事がない

小笠原:ずーっとつないでる感じで。なんかZOOMの中の人みたいになってきたと思いながら(笑)。ヒロシのところは営業の人もいるから、けっこう年齢幅とかマネジメントとか課題になりません?

山本:マネジメントは、オンラインの出退勤ツール「スマレジ・タイムカード」の中で「何に何時間かけたか」をタグ付けして、全体でプロジェクトを作って管理している部署もあります。やっていないところは、これを機に社内のサービスを使ってみるみたいなところもありました。けっこうみんな試行錯誤かなと思います。

純粋にコロナとか自粛という以前に、僕たちってショールームがあって。でも今はショールームを閉めていて。そうすると営業マンがまず仕事があんまりないと。お客さんが来ないので(笑)。

小笠原:そうっすよね。

山本:入社してきて間もない人が「ショールーム閉まりました。新規案件があんまりありません。自宅で仕事してください」「……何するんですか!?」みたいな。だから営業マンが一番不安なんじゃないかなと思うんです。

小笠原:僕ね、別の会社で同じように不安を言われたので、いわゆるスキルアップ系のやつをバーっと並べたり、コーディングの初歩みたいなやつとかいろんなものを集めて「仕事だと思ってこれやってください。どれか」みたいなことをやってますね(笑)。

山本:なるほど。ソフトウェア開発とかITエンジニアの人とかは、在宅に変わっても仕事が山ほどあります。仕事がある分には不安はあんまりないと思うんですよね。やるかやらへんか、気が乗るか乗らないかっていうのは、また環境によって変わってくるとは思うんですけど。

営業の仕事で、本来やりたかった仕事が舞い込んでこない、提案にすら行けない。そういった、また違った意味の不安を和らげるために、例えば社内ラジオを作ってみたりとか。今までやってなかったんですけどやってみました。

社員に対して理念を押し付けるのも嫌だったので、苦手だなぁと思ってたんですけど。さすがに今の状態でテレワークでバラバラになって……僕たちは15期目の会社なんですけど、入社2年未満の人が半分以上なんですよね。今は団結しようよみたいな話をみんなに持っていったほうが、わりとまとまりやすいというか。逆にみんなモチベーションが上がりやすいのかなと考えました。

小笠原:こういうときに不謹慎かもしれないですけど、スマレジっていう会社が子どもみたいなところから青年くらいになるのかもしれないですね、もしかしたら。そういうことで、急に団結できたりするかもしれないですね。

山本:うまくいってるときはわざわざ伝えたりしないんですけどね。

小笠原:橋本っちゃんのところはアレですか。社歴けっこうあって、長く働いてる人が多い感じで。新しい人がどうしていいかわからないっていうのは、新卒とか以外はあんまりない感じですか?

橋本:そうですね。新卒採用はほぼゼロに近いくらいやってないので。そこのジェネレーションギャップみたいなのはないですね。職種によるギャップも……管理部くらいかな。あるとしたら(笑)。どうだろう? Angelaどう思います?

安立:管理部はまだ紙の業務がゼロではないので、難しさは残っています。もともと拠点が6つある会社なので、ドキュメンテーションがすごく大事でした。ある程度の慣れが感じられる会社かなぁとは思います。

今だからこそ「やれることをやる」

小笠原:分散化してるからとか、オンラインかどうかじゃなくて。あ~、そうやって思うと「withコロナ」って言葉が強すぎるのかもしれないですけど。ただスペイン風邪って、3波来てるんですよね。2波目が一番人死んでるんですよね。……ぐらいは過去から学ぼうよっていう話で。紙の業務が多いとそれだけWFHできない可能性が高いのに。

今回のコロナで、来年ワクチンができようが今年できようが。アレを日本人に潤沢に打とうと思ったら、6000万本とか8000万本以上要るわけでしょ。それを量産できる体制になるには、やっぱり時間がかかるよねとか。世界中で見たら10億本とか20億本とかの量産体制が必要とか。薬みたいな話で言うと、なんだかんだ言ってまだあると思うんですよね。こういう状態。

橋本:う~ん。そうですよね。

小笠原:そのときに慌てるよりは今みたいなドキュメンテーションだったり、ある程度カルチャーを合わせていくだったり、団結の機会にするだったり。やれることはあるからこれを機会にリモートワーク、オンラインワークの基準としてこれくらいやっといたら、例えば「緊急事態宣言のときにみんなが一番分散化した状態、在宅になってもやっていけるよ。経済止めなくて済むよ」って。

ただまあこれは、飲食とか物販とかリアル店舗には当てはまらないので。その話はちょっとawabarオンラインのほうでできたらいいなぁとは思うんですけど(笑)。

橋本:僕らみたいなナレッジワーカー、知的労働者みたいな人ってそれぞれの頭の中がサーチできないといけないんですよね。アイデアとアイデアを融合させるから。サーチして見つけて、アイデアとアイデアを掛け合わせて新しいものを作るんですけど。

言ってみたらこれは今、1つの機会がやってきているのだと思います。みんな無理にでもドキュメンテーション書かないといけないし、言語化しないといけないんですよ。そうするとみんなのアイデアとかがサーチャブルになるので。アイデアが結合しやすい状態になる。そう、Backlogを使っていればね(笑)。

小笠原:そこで宣伝?(笑)。

(一同笑)

橋本:うはは(笑)。でもそういうことだと思います。これを1つの機会と捉えてもいいかなと思います。

小笠原:今いくら嘆いて怯えたりとかしても、その先に明るい未来があるわけじゃないし。今のうちにやれること考えたいですよね。

橋本:うん。

「何か起きる前提」で、普段から考えておく

小笠原:例えば鶴ちゃんのところだと。このあと「緊急事態宣言終わりました。出社してもオッケーですよ」となったときに、来年、もしまたコロナの波が来るとして、どんなことやっとこうかなとかあります?

鶴岡:いや、どうなんですかね。BASEの場合は幸いにも、例えばお客様に営業に行ってサービスを使ってもらうようなモデルではないので。どっちかと言うとWork From Homeに向いてるタイプの業態ではあると思うので。今回とかドタバタして、3月4月みんなで一気に全社でやっていこうって取り組んだんですけど。

こういうのって良くも悪くも機会がないとできなかったので。「この水準の全員でのリモートワーク、できるんだな」っていうのは、今回ある程度わかりましたし。一方で、良くも悪くもリアルじゃないとできないことっていうのも、徐々にわかってきたかなっていうのもあるので。

状況がある程度抑制されたあとも、こういう働き方をこういう事態が訪れるたびに都度対処するのではなくて。こういうのが起こる前提でもろもろ通常から設計を織り込んでいくんだろうな、っていう感じはしますけどね。

小笠原:いいですね。ベタだけど嫌なことはチャンスに変える。例えばそれでオフィスの意味が変わることで、変な話、今みたいなオフィスじゃなくていいかもしれないじゃないですか。

鶴岡:良くも悪くも、未来が読めないじゃないですか。もっと時間がかかるよねって言う人ももちろんいるし。可能性論としては、もしかすると来年とか今までどおりに戻ってる可能性もゼロではないし。

小笠原:うん。あります、あります。

鶴岡:アクションを取りやすくしておく構造にしておくのは、けっこう大事かなというか。身軽にしておくっていうのは、今できることなのかなと思いますけどね。

小笠原:その結果としてオフィス。もし今みたいなのを構えなかったら、ぜんぜん利益出るもんね。正直言うと(笑)。

橋本:本当そうなんですよ。

鶴岡:固定費に対する考え方は劇的に変わりましたよね。世の中で。

小笠原:ですよね。そういう意味では、この前のセッションでもありましたけど分散オフィスみたいな、小さい場所がたくさんあるっていうのも1つかもしれないし。みんなが集まれる場所を1つ持っておくっていうのも1つかもしれないし。そういうのもあるかもしれないですね。

仕事と生活の境界線があいまいになる

小笠原:じゃあ時間になったので。最後に、さっき鶴ちゃんにした質問とほぼほぼ一緒っちゃ一緒なんですけど。「これから企業が従業員との関係を考えるときに、こういう新しい基準があるんじゃないかな?」って、もし思いつくものがあれば。じゃあヒロシからお願いしていいですか?

山本:いくつかあったんですけど。1つは……う~ん。忘れちゃった(笑)。

小笠原:そんなことある!?(笑)。

山本:リモートの場合、仕事と生活の境界線があいまいになると思うんです。例えば朝起きて、まず洗濯機を回してから仕事して。洗濯が上がってきたら1回仕事やめて、洗濯干してまた仕事してみたいな。出勤、休憩、復帰とかっていう概念より、もっと細かなスパンで仕事と生活が密接に関わっているほうが、生活しやすいに決まってると思うので。

仕事の時間単位での「何時に来て、何時まではずっと仕事で拘束する」って考え方よりも「お家で仕事するんだったらそういう境界線があいまいですよね」という前提で、評価とか付き合い方を考えてあげたほうがいいのかなと思います。

もう一方で、自粛が開放されたときに、やっぱりオフィスに行ったほうが仕事がしやすくなることもたくさんあると思います。その両方が許容できるというか、選択肢が1個増えたんじゃないかなと。それを許容できるような仕組みができていったらいいなと思いますね。

雇用主と雇傭者の間に起きる、2段階の変化

小笠原:そうですね。働くと暮らすっていうのを、どうなめらかに過ごさせてあげるかっていう基準みたいなのができるといいですよね。ありがとうございます。じゃあ橋本っちゃんなにか新しい基準みたいなものって、思いつくものはありますか?

橋本:新しい基準かどうかはわからないんですけど。これからは、働く環境や雇用主と雇用者の関係性、そういうものの中で2段階くらい変化が起きると思います。最初の1段階目の変化は、今まさに起こっているんですけど。

「人を怪しむマネジメント」「信用してないマネジメント」から「信用を前提とするマネジメント」に、今まさに変化していると思います。労働基準法とかが追いついてない部分があるので、そこらへんは早く信用を基準とするルールに変えていったほうがいいなと思います。

小笠原:信用基準、いいですね。

橋本:2段階目の変化がたぶんもうちょっとあとだと思うんですけど、今度はそもそも人を信用する、信用しないの判断というのがなくなってくると思います。トラストレスというのでしょうか。

小笠原:トラストレスですね。

橋本:そんな感じで、そもそも人は信用するものであるというか。そういうものが担保される仕組みができあがると思っているので、あとはその流れに身を任せてプロダクトをリリースしていくだけかなと思います。

小笠原:いいですね。「トラストレスを実現する基準がお互いの関係値の中にある仕組み」というのは、すごくいいですよね。ありがとうございます。最後、鶴ちゃん。なにかあるでしょうか?

鶴岡:今、山本さんと橋本さんが言ってくださったことには完全に同意です。大元として今回ほど命、メンバーの命に対して考えることってなかった……もちろん考えてないことはないですけど。「生きていく安全性をこんなに考えたことなかったな」っていう意味では、サービスに影響が出るとか会社の数字がどうこうなる前にメンバーの安全性とか。

それこそ今回のように「生きる死ぬ」みたいな話まで出てくると、やっぱりこれ以上に大切なものはないという意味で、会社としては働き方とかマネジメントとかもあるんですけど。そもそも雇用させていただいている側として、働いてくれているメンバーのセイフティーネットをしっかり担っていくことを基準にしながら、いろいろ意思決定していくのがいいのかなと思いました。

小笠原:経営側の意思決定の新しい基準、みたいなのができるかもしれないですね。

鶴岡:当たり前ですけど命とか生命とかって、当たり前すぎてそんなに考えなかったと思うんですけど。「すべての意思決定はそこだよな」っていう気はしましたね。

小笠原:わかりました。正直、新型コロナの致死率とか見ながら「騒ぎすぎ」とか「自粛しすぎ」とか、いろんな話があると思いますし。実際、自粛しすぎなときもありましたけど。今はそれが適正ではないから増えているかも知れないので。やっぱり基準としては、増やさないかたちを企業側が考えられたらみんなそういうふうに生きられますもんね。

ありがとうございます。やっぱりみんなすごく考えてるなと思いながら、聞かせていただいたんですけど。ちょっと時間を超えてしまいましたが、今日は「働き方のNew Norm」として主に経営者が考えるかたちというのをお話いただきました。今日はありがとうございました!

一同:ありがとうございました。