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なぜ従業員のココロは会社から離れるのか? 「マイナス感情最小化」のすすめ(全8記事)

組織にとって「不必要な多様性」もある 採用で失敗する企業が見落としがちなこと

社員の離職・心身の不調・モチベーションの低下・ぶら下がり社員の増加・ハラスメントなどは、多くが個々の社員の「マイナス感情の蓄積」によってもたらされています。なぜ「マイナス感情」が発生し、蓄積していってしまうのか。そのプロセスから具体的な対策までを、株式会社エリクシア代表取締役で産業医の上村紀夫氏が語りました。本パートでは、組織における“本来のダイバーシティ”と、マイナス感情に対処するための3つのカテゴリーについて紹介しました。

「個人の不満」がたった1人の問題とは限らない

上村紀夫氏(以下、上村):じゃあミクロシフトに関しては影響が小さいから放っておいてもいいのか。ミクロシフトは放っておいてもいいと思われます? なぜだめだと思います? (会場を指して)もしよかったら。

参加者1:不満の原因になる。

上村:不満の原因になる。確かにマイナス感情の原因にはなります。でも「それは個別だから、1人だったらいいじゃないですか」という話になると思うんです。1人だったら大丈夫なのかという話ですが、このミクロシフトは根底にマクロシフトが動いている可能性があります。

例えば先ほどの話だと、昔から育児は絶対にあったと思うんです。ですが、これが核家族化とか、あとは(夫婦が)両方とも働くのが当たり前みたいなかたちになってから、ますますこの流れが強くなっていると思うんですね。働きながら育てるという流れですね。

ですので、もし根底にマクロシフトがある場合にはこのミクロシフトを放っておくとえらい目に遭います。ミクロシフトは個別に起こりますが、それを放置していいものかどうかをちゃんと考えないと、会社さんによってはけっこうはまることがあります。ちょっと難しい話ですね。

ご回答ありがとうございます。では、労働価値の変化に会社が適応できない場合にはどうなるか。先ほどから言っているように、マイナス感情の蓄積においてマクロシフトの場合は明らかにだめです。

まず採用はものすごく苦戦しますね。あとは離職の増加。入り口がだめになって、出口もだめになる。もう業務継続性が難しくなるというやつですね。あとは当然組織活性にも影響が出ます。あとでお話ししますけど、組織としての勢いも下がってきます。

労働価値のミスマッチを防ぐ方法

一方、ミクロシフトに適用できない場合はどうなるのか。これはもちろんピンポイントで起こりますが、意外と個人活性の低下……これも後でお話ししますが、これが回り回って組織活動の低下を起こすことがあるので、マクロもミクロも両方とも対応しなきゃだめです。

マクロシフトへの対応はとくに重要になります。今はいろんな働き方に関する情報を、みなさんもたぶんキャッチされようとしていると思うんですけど、キャッチすることは重要だと思っております。

ですが、実際に一人ひとり異なる労働価値を完全に満たすのは無理です。例えば、この中で採用をされている方もいらっしゃると思いますが、採用はもちろん労働価値が近い方ではないと、最終的に苦労します。

なので、求める人物像を明確にするとか、労働価値のミスマッチに関知するダイバーシティのバランスが必要になってきます。これは次のスライドで見せます。

あとは既存の従業員との労働価値の合わせ方はどうするのか。ここで初めて関与してくるのがビジョン共有とかですね。最近はテーマにパーパス(共有)という言葉が出ています。あとはコミュニケーションが重要になってきます。

これは理想論に近いんじゃないかとなるんですけど、これは理想論ではなくて、本当にやらないとまずいんですね。なぜまずいかのお話をします。

採用ではなぜ文化マッチングが重要なのか

まず採用の話です。文化マッチングを重要視しましょうというのが、採用の世界ではけっこう言われていると思います。なぜ文化マッチングが重要なのか。

(スライドを指して)僕はけっこう2軸が好きなので、これもまた横軸・縦軸が出てきます。横軸には「スキル・経験・思考法の違い」を挙げている。右に来れば来るほどダイバーシティが大きく、「みんなと違う」というやつですね。縦軸には「労働価値の違い」。なぜ働くのかという意識の違いですね。

もちろん、本来求めるダイバーシティはどこか、会社さんにとって一番楽で効果的なダイバーシティはどこかというと、ここ(横軸「スキル・経験・思考法の違い」大・縦軸「労働価値の違い」小)です。当たり前ですよね。

スキルや経験値が違うけど労働価値の違いが少ない。いわゆる文化マッチングが行われている状態ですね。この状態が本来求めるダイバーシティです。

もしくはダイバーシティを求めないという作戦もあります(横軸「スキル・経験・思考法の違い」小・縦軸「労働価値の違い」小)。私が見ている感じだと、20人~30人ぐらいまでの規模ではむしろダイバーシティを求めないほうが活性が高い傾向があります。

なので、ダイバーシティがすべてOKというものではないということですね。そういった思考を持って低ダイバーシティを貫く会社さんも戦略としては当然ありだと思います。

会社のサイズ感や領域にあったダイバーシティを求めるべき

問題はここですね。すべて違う(横軸「スキル・経験・思考法の違い」大・縦軸「労働価値の違い」大)。ここは諸刃です。そして、ここ(横軸「スキル・経験・思考法の違い」小・縦軸「労働価値の違い」大)は不要です。

諸刃とはなにかというと、思考法がぜんぜん違うけどダイバーシティということで、労働価値の違う人を雇ってしまうことですね。「雰囲気が違うからいいね」みたいな感じの博打採用です。

諸刃に関しては失敗しやすいですが、ポジション的におもしろいなと思ってやるのはありだと思います。ただ、全部の型に当てはめるとたぶん組織は死にます。ですので、博打を打ってもいい領域かそうじゃないかを考えたうえでこの博打を打ったほうがいいです。

一番左の不必要なダイバーシティ。これに関しては正直、こういう会社さんは多いです。ダイバーシティを採用の失敗理由にしているケースが多いんですけども、そもそもダイバーシティの求め方が間違っている。

ダイバーシティとしてなにを求めたいのか。考え方が違うだけじゃなく、実際に働く目的がまったく違う人を採用してしまうとえらい目に遭うので、ちゃんと求めるべきダイバーシティはどこなのかの整理をしっかりしたうえで、ダイバーシティを出す。もしくは出さないという作戦も(会社の)サイズ感によっては十分にありです。

そういったことを意識していただくと、わりと上手くいきます。実際に弊社のお客さまでもそこを意識して、諸刃の剣をたまにかざして失敗しながら、上手にダイバーシティをとりながらやっていらっしゃる会社さんも中にはあります。

マイナス感情が蓄積するとどうなるか?

一方、既存のほうは、みなさんよく聞かれるビジョン・ミッションの話です。会社が向かう先はどこなのかについて、定期的にコミュニケーションをとることが重要になります。「会社はここへ向かっているんだよ」ということですね。

たぶんみんな思いが違うと思いますが、「向かう先だけ一緒」というところでつなぎ合わせる作業をする。ですが、価値観のギャップが大きければ大きいほど、ここで言っているオレンジの部分が長くなりますので、そのぶん合わせづらいというか、方向が合わなくなる。ベクトルが合いづらいという現象が起こります。

異なる価値観の方々が同じ方向を向くためにはこういったものが必要になりますよ、ということです。基礎的な話で、ここまで来てだんだん飽きてきているとは思うので、ちょっと刺激を入れますね。

じゃあマイナス感情が蓄積してきたらどうなるかというお話をします。(スライドを指して)先ほどから申し上げているみたいに、ここですね。会社が提供できるレベルと従業員が求めるレベルが乖離すると、そこでマイナス感情が起こりやすくなりますというお話でした。いいですね? 

(スライドを指して)このマイナス感情はなにが起こって、どういうふうになって、どういう影響があるのかというのを端的にまとめたのが、このスライドです。まず、労働価値のミスマッチが起こります。その後になにが起こるか。先ほどから言っているように、マイナス感情の蓄積が起こります。ここまではいいですね。

そうなると、個人活性を1回扱います。つまり、エンゲージメントとちょっと近いんですけれども、「やる気を持ってしっかり仕事をしよう」という個人活性が落ちます。

ここで出てくるのがこいつ。問題行動、離職、ぶら下がり、メンタル不調。「メンタル不調をここに入れるの?」と思われますけれども、メンタル不調もけっこうここから起こります。

一方でこれが蓄積して個人を超えて、集団で蓄積しだすとどうなるのか。そうなると組織活性が下がると言いますけど、定着率が低下し、ハラスメントが起こりやすい状況になりますね。あと雰囲気の悪化、生産性の低下。こういったことが起こります。

離職とメンタルヘルスは別問題とは限らない

スタート地点はどこだという話なんですけれども、ポイントはマイナス感情の蓄積なんですよ。離職の話とメンタルヘルスの話を別々に扱っている会社さんがけっこう多いんですけれども、それはすごくもったいないです。一緒に考えたほうがいいケースが多いです。もちろんすべてではないですけど。

メンタルダウン系はこういったことを考えたほうがいいよという話なんですけれども、それ以外の人、双極性障害とか統合失調症とかはぜんぜん別の話なので難しいですが。

基本的にはマイナス感情の蓄積によっていろんな……とくに労務関係を担当されている方に関していうと、頭の痛い話は大抵ここから起こっています。

では、このマイナス感情の蓄積をどうやって外そうかな? というのがこれからのテーマになりますね。マイナス感情が蓄積すると、いろんなところにマイナスがたまっていきます。

人事制度に不満があるとか、給与が低いとか、あとは成長実感の低さ。この頃はよく言いますね。あとは居場所がない。別名「存在承認が満たされない」というやつですね。帰属意識が低いなんていうのも挙げられます。

そういったいろんなマイナス感情がたまっていって、そこがいろいろと問題を起こします。ただ、これはけっこうばらけたり「結局関連性がない」という話になりやすいと思うので、ちょっとまとめました。

マイナス感情に対処する3つのカテゴリー

ばらけすぎて対策が出づらいので、全体像がつかみにくい。そこで実際に弊社でいろいろ経験した中でのデータを持っています。だいたい100社以上やらせていただいているデータがあるのと、あとは産業医として実際に1対1でお話を聞いているのと、あとはコンサルとして人事の方といろいろお話をさせていただいていることですね。

そのデータでいろいろ突き合わせをして、なにが起こっているのかを分解したところ、どうもマイナス感情の対処は3つのカテゴリーに集まっているということがわかりました。これを「個人活性」と弊社では呼んでいます。

個人活性は「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」です。当たり前のことを並べられたなとは思うんですけれども、何周か回ってここにたどり着きました。

最近のテーマとしてよくあるワークエンゲージメント。このワークエンゲージメントが難しい理由は、定義が安定していない・定義が難しいからなんです。

人によっては働きがいについてワークエンゲージメントという言葉を使う人がいらっしゃいます。これの全体を指してワークエンゲージメントと呼ぶ方もいらっしゃいます。定義がふらつくので、ワークエンゲージメントという言葉でいろんなものを引っ張るのは難しいです。

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