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なぜ従業員のココロは会社から離れるのか? 「マイナス感情最小化」のすすめ(全8記事)

「パレートの法則」が成り立つのは一部の会社だけ 優秀な人材の離職が組織全体にもたらす影響

社員の離職・心身の不調・モチベーションの低下・ぶら下がり社員の増加・ハラスメントなどは、多くが個々の社員の「マイナス感情の蓄積」によってもたらされています。なぜ「マイナス感情」が発生し、蓄積していってしまうのか。そのプロセスから具体的な対策までを、株式会社エリクシア代表取締役で産業医の上村紀夫氏が語りました。本パートでは、パレートの法則の意外な盲点と働き方改革の本当の目的について解説します。

「パレートの法則」で見落とされていること

上村紀夫氏(以下、上村):パレートの法則はみなさんご存じでしょうか。働きアリの法則、2:6:2。この2:6:2の法則は、上の2が抜けても新しく2ができるから2:6:2が形成される。これは〇か×か。

参加者:〇です。

上村:〇。おっしゃるとおり、〇なんです。なんですけど、よくよく考えてみましょうということです。優秀な働きアリがいなくなると、普通とぶら下がりが残ります。そして普通の部分の一部が優秀となります。となると、普通の人の一部が優秀化して、ぶら下がりの一部が普通化するというものですね。現実はどうですか? 

もしなったとしても、これは平均ラインが落ちていませんか? つまり、パレートの法則が1つ見逃している点はなにかというと、これです。相対的に2:6:2。絶対的にはどうなのか。

つまり組織の中で見た時はそのまま(2:6:2)なんですけど、冷静に客観的に見てこの会社はどうなっているかというと、2:6:2のままベースラインが落ちていくんです。ですので、2:6:2の法則は確かに成り立つんですけど、ベースラインは落ちるんですね。

パレートの法則の神話に引っ張られると、これ(組織平均点)がどんどん落ちていくので、優秀な人材が抜けていくと2が生まれるというのは、よっぽどポテンシャルを持った人たちを抱えられている会社さんだけです。普通の会社さんは絶対にベースラインが落ちますので、気をつけていただくといいかなという話です。

働き方改革の本当の目的は、労働時間の削減ではない

今日の結論だけ言います。ステップやパラダイスの話をしましたけど、これからの働き方改革で真に目指すものはなにかということを、みなさんにちょっと考えていただくといいかなと思います。

実際に働き方改革は、労働時間を減らすためにやっているわけではありません。なにを目的にしているのかを考えましょう。この働き方改革の実現会議があった平成29年3月28日に首相がなにを言っているか。

「日本の働くということに対する考え方そのものに手をつける改革」。普通にさらっと読んじゃいません? ですけど、これは今後起こってくるであろう流れをちょっと示しています。

1つめは、実は弁護士会等で今ぼちぼち検討が進んでいますけれども、「解雇の金銭解決制度」がちょっと進んでいるみたいですね。どういうかたちになるかはわかりませんけど。

2つめ、これはもう出ていますね。「副業や兼業の解禁」。これも当然ありますね。3つめは「雇用類似の働き方」。これは、みなさん聞いたことがありますか? 雇用類似といのは、この領域でしょっちゅう使われる言葉です。雇用類似なので、これは雇用ではない。つまり個人事業主化ですね。

ですので、雇用・直接雇用というかたちを止めましょうという流れを、ちょっと模索する風潮になっているんじゃないかというのが、もっぱらの噂です。

そうなってくると、今のメンバーシップ型から最終的にはプラットフォーム型になる。最終的に「ここに働く場所を与えるけど、それぞれ関与する人は個人事業主」みたいになるんじゃないかと言われています。これを目指す可能性がある。

これからの日本企業の在り方はどう変わるか

ですが、これからの組織戦略を考えると、日本旧来のかたちでいうとメンバーシップ型から、たぶんなにかを挟んでプラットフォーム型になると思うんですよ。

それの頻度は、年次的には我々……若い方がいらっしゃるので、(今日参加している中にも)関与してしまう方がいらっしゃるかもしれません。よく言われているのが、昭和世代がいなくなるあたりで、これが終わるんじゃないかと言われています。

ですが、そういったプラットフォーム型をいきなり目指すというのは難しくて、実際には間に1個挟みます。

これがジョブ型とよく言われるんですけど、いわゆる業務が明確になっている欧米型の労働じゃないかと言っていた方がいらっしゃるんですが、今はちょっと違った流れになっています。

そういったところでプラットフォームは生まれないので、おそらくなんですけど、ここで出てくるのが、たぶんステップ型だと思います。ステップ型とジョブ型の組み合わせが起こるのではないかと思っています。

先ほど言った「この会社はいいけど卒業していく」パターン、簡単に言うと、リクルートさんなんかはわかりやすいですね。リクルートさんは完全にステップ型なんですけど、ああいうところで育った方が今度は個人事業主化する。それでプラットフォームで働く。

そうかたちで、ある程度個人事業主を生み出すステップと、それを生かすプラットフォームに分かれる可能性がある。どっちになりたいかを選択していくのが会社の動きになるんじゃないかと見ています。

パラダイスではなくステップ型を目指せ

ということで、僕は今の段階で言うと、もし採用に困られている会社さん、もしくは定着に困られている会社さんがあったら、パラダイス化を目指すというよりは、ステップ型を目指していただいたほうがいいと思います。

卒業しても好きでいてもらうという会社を目指すために、このピラミッドを極力バランス良くすべて上げることを目的にしていただいたほうがいい。ぶら下がりを起こすので、「働きやすさ」だけ求めるのは止めたほうがいいです。

自分たちができるのは、同業他社は触れないしプライベートも触れない。だとすると、自社のピラミッドをどうやってバランス良く上げていくかが今後のポイントになっていく。実際の手に関しては、これだけでたぶん5時間ぐらい話すことになるので、ちょっと止めておきます。

ということで、(スライドを指して)すみません、最後のこれは飛ばします。やりたかったんだけど。

従業員意識捜査は、調査することだけを目的にすると無駄になります。目的をはっきりと持って労働価値を計れないと無理です。なので、ちゃんと労働価値が計れる検査かどうかをチェックしてください。

最終的にプロによる詳細分析がないと意味がありません。その分析がないと、ただの測定が目的になってしまうので本当に意味がないし、もったいない。20パーセントぐらいしか活用ができていません。

いろいろあったんですけど、こういうのもあります。プロによる詳細分析があると、自社データだけではなくて、他者の傾向とか専門知識とか、あとは具体的な施策が得られることがあります。2次分析をしないと、本当に活かせるデータは5分の1くらいになるというのが私の感覚値です。

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