目を細めると、なぜか物がよく見えるようになる理由

ハンク・グリーン氏:何かがイマイチぼんやりした見え方をする時なんかに、目を細めたりしますよね。無意識のうちにしているときもあるでしょう。でも、視界を狭くすれば何かがよく見えるようになるというのは妙な話です。まつげだって視界に入って来るでしょうに。

とは言え、目を細めると言う動作を自然としてしまうのにはちゃんと根拠があるらしいのです。

目を細めると焦点が合うようになるのですが、それはあなたが予測している理由ではないでしょう。像がぼやけるのは、検眼士(視機能の専門家)の言うところの屈折異常によるものが多いと言われています。あなたの目には、脳に見えたものの情報を伝える、眼球の後ろに存在する特殊な神経組織の層である網膜に、正確に集光ができていないということなのです。 

屈折異常が起こる原因はたくさんありますが、結局のところ、あなたの目の状態によるのです。

本の中の気に入った挿絵や遠くの方にある文字を良く見ようとするとき、眼筋は縮んだり伸びたりして、あなたの目の状態を少し変えるのです。とりわけ湾曲している透明な円盤状のレンズであり、網膜に映像を投影する働きのある水晶体を微調整します。そうして光は見ようとしている映像を解像する中心窩に送られ、焦点が合います。

目を細めるという行為は、すなわち、あなたの目に入って来る光を意図的に調節し、光が入るように直しているのではないだろうか、と思われるのではないでしょうか?

その通りです。しかしながら、そのことが黒板に書かれた今日のおすすめを横目で見る助けになっているのではなさそうです。

むしろ、目を細めることの本当の意義は瞳孔への光を制限することにあるのです。目を細めることによって眩しい光を軽減し、光線がレンズの中心に直接差し込まないようにすることにより、中心窩へと光が送り込まれるのです。

目を細めなくても物がよく見える「ピンホールメガネ」

実は眼筋を動かさなくても、このような小さな穴を通して何かを見ると、同じ効果が得られます。

実際けっこうよく見えるんですよ。眼鏡を外してしまいましょうか。テレプロンプター(電子的にセリフを表示する装置)は読めるでしょうか? 読めないですね。でも、いい線いってますよ。

もしこの方法が上手くいかなかったとしたら、それはあなたの視力に何か問題があるのかもしれません。実際、眼科医は似たような方法を用いて検査を行いますから。

もし視覚に何らかの問題が見られたとしたら、それは屈折異常といった部類から来るものでしょう。

眼科医はピンホールオクルーダーを用いた時、用いなかった時の両方で、視力検査表を見るように促すでしょうが、その時に一番小さな文字の羅列を読むのにピンホールオクルーダーが役に立ったのなら、眼鏡やコンタクトレンズは有効でしょう。

ところで、あなたはどこかで、ファッショナブルとも言える、オクルーダーを目にしたことはないでしょうか。ピンホールメガネ、と呼ばれている物です。

もう補正レンズなんていりません、ちっちゃい穴から世界を見ればいいんです、というのがこの眼鏡の売りで、物がはっきりと見えるだけでなく、そのうち視力回復も望めるのだとか。

とは言っても、ピンホールサングラスを処方されても困ってしまうでしょうね。実際、ピンホールメガネをかけていれば、メガネなしでも見えるようになるくらい視力が回復するという具体的な証拠はありません。

ピンホール眼鏡をかけていると焦点深度が改善され、遠くのものは見えやすくなりますが、他方の力は弱くなってしまうのです。それらは奥行きの知覚であったり、コントラストであったり、周辺視野といった、どれも大切な力です。

また、ある調査によると、ピンホール眼鏡を用いたテストの試験段階で見過ごせない不快症状が表れたのだとか。視界を狭めると物の見え方が違ってくるとは言え、常にその状態ではやはり不都合だということですね。

私たちが常に眼を細めていたりしないのもそのためなのでしょう。不快だし、感じも悪いですからね。