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デジタル医療の開発と、AI・ブロックチェーンの活用(全1記事)

2020.02.13

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日本の社会保障はどこまで持つのか デジタル医療とブロックチェーンに見出す活路

提供:一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)

国内外の医療機器、テクノロジー、デジタルヘルスなど、ヘルスケア関係者が一同に集まる、MedTech Week Japan 2019。初日となる11月5日、LINK-J主催による「第二回メドテックイノベーションシンポジウム&ピッチ」が開催されました。数あるセッションの中から、ヘルスケアデータの活用によって医療産業の発展に寄与する4団体の講演にフォーカス。本記事では、サスメド株式会社 代表取締役/ 医師・医学博士の上野太郎氏による講演をお届けします。「デジタル医療の開発と、AI・ブロックチェーンの活用」をテーマに、ITを活用した解決策について語りました。 ※このログは、LINK-Jの記事を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

デジタル医療の開発と、AI・ブロックチェーンの活用

上野太郎氏(以下、上野):サスメドの上野と申します。我々は、DTx(デジタルセラピューティクス ※注:デジタル技術を用いた疾病の予防、診断・治療等の医療行為を支援または実施するソフトウェアなど)を開発しているベンチャー企業です。テクノロジーを活用し、医療産業全体において効率化を図れるようにしたいと考えております。会社の理念として、持続可能な医療(Sustainable Medicine)をあげ、それを略して「サスメド」としております。

社会保障がどこまで持つのかという議論がありましたが、解決策の一つとしてITを活用することで貢献していきたいと考えております。DTxの開発部分と、AIとブロックチェーンの活用についてお話させて頂きます。

弊社の紹介ですが、生活習慣病など、行動変容によって疾患の増悪や改善に影響する領域に対して、アプリケーションでアプローチをするというところからはじめております。

デジタル医療を開発する際に、プラットフォーム(基盤)の部分を毎回開発するのは大変です。よって、開発基盤を提供することや、医薬品産業の臨床開発の在り方についても効率化に活かせるのではと考えました。

(スライドを指して)この記事では、「ブロックチェーン in クリニカルトライアル」というタイトルがついており、ブロックチェーンの活用によって臨床開発を効率化させる取り組みをしております。

データが集まってくるというのが既存医療との違いになります。その集まってきたデータをどう活用するのかというところでAIを活用することになります。医療現場でのAI活用はドメイン特有の問題がありますので、医学領域で使えるAIについてプロジェクトを進めております。政府からの支援を受けながら、会社として進めておりまして、経産省のJ-Startup等にも選んでいただいております。

メンバーですが、私の他にもう一人医師がおります。医師でありながらビッグデータの解析を行う、データサイエンティストとしても活躍しています。健康保険のビッグデータの機械学習によって学位をとっている医師です。また、機械学習やサーバサイドが強い人が必要となりまして、「KDD Cup」という機械学習の世界大会で準優勝をおさめた者がCTOとしております。

ブロックチェーン技術で、患者の「なりすまし」防止・臨床試験応用を可能に

上野:一般的にDTxというとアプリがクローズアップされますが、医療情報を扱いますので、基盤の整備が非常に重要です。DTxを開発する際にもさまざまな領域が必要となります。DTxからログのデータが集積されますので、データを活用するためのAI技術を実装することで、私たち自身の開発だけでなく、製薬企業の方々の臨床開発のところも仕組みで支援させて頂いております。

治療用アプリについては、日本では今後、市場として立ち上がってくるところですが、欧米では進んでおりまして、例えば糖尿病の治療アプリがFDAで承認され、Natureなどの姉妹誌にもDTxに関するエビデンスが公開されています。

私は睡眠障害の医療をしておりましたので、不眠症の治療に薬以外のソリューションがないことへの問題意識がありました。ベンゾジアゼピン系薬剤の処方量が多いという国連のデータがあります。

そこで、我々としては、医療機関のマンパワーを使わずに、非薬物療法による処方をすることを目指しています。ドクターが診断し、ドクターがログインのためのアカウントを処方すると、患者はスマホを使って、自宅で治療をします。

患者によってデータが生み出されていきますので、サーバに集積し、機械学習で分析させていただく形になっています。これによって医療機関の負担を軽減しながら、適切な不眠症の治療ができます。患者さんのアウトカムの最大化を目指し、医薬品との併用で最適化していきます。

一方、DTxの開発を自ら行ってきたことで、さまざまな課題に気が付きました。患者さんのアカウント管理、なりすましの問題や、得られたデータを用いた臨床試験への応用など、基盤として整備することによって他の治療アプリや臨床開発に利用することができます。

我々はブロックチェーン技術を取り入れていますので、臨床試験で得られたデータの信頼性を向上させていく部分にチャレンジしております。

ゼロからDTxを開発・構築する必要がない

上野:我々のしくみを活用することで、ゼロからDTxを開発・構築する必要がなくなります。がんセンターの方々と共同研究させていただき、この事例では、乳がん患者向けのアプリを、私どものインフラの上で開発させて頂きました。

乳がん患者さんの中で、運動レベルが高い人ほど生存期間が長いというエビデンスがあり、診療ガイドラインでも運動療法を強く推奨しています。しかし、臨床の先生方はお忙しいので、ガイドラインに書いてあるものの、運動療法を行うことができません。

よって、DTxでこの部分を構築したいという要件で、新しいアプリを作り、臨床試験をはじめています。フィットビットのウェアラブルも使わせていただきながら、治療介入を行う群と、データだけモニタリングする群とで、運動レベルの改善を見ることで、アプリを通じて提供する、という臨床試験がまさに動いております。

DTxの開発は医薬品の開発に比べてコストが安いとはいえ、ベンチャーにとって治験を回すためには億単位の資金が必要です。何にお金がかかっているかというと、モニターの頭数で一人月あたり200万円程度かかります。

規制との兼ね合いで、データの改ざんが問題となっており、法規制が厳しくなっています。特定臨床研究が規制の対象となっており、日本全体として臨床研究がやりにくくなっているというのが、先生方との共通認識となっています。

データの信頼性を守る、ブロックチェーンによる臨床開発システム

上野:私どもが開発しているのは、ブロックチェーンによる臨床開発システムです。2016年ごろから技術開発を始め、2017年に最初の論文を出させていただきました。ブロックチェーンのネットワークにデータを保有することで、データの改ざんを不能にし、耐性をもたせます。

しかし、ブロックチェーンだけでは防げない問題もあり、途中過程であるクライアントや中継サーバの脆弱性は残るため、自社で技術開発を行いました。トータルで患者さんのデータの信頼性を守るということを発表させていただいています。

ブロックチェーンを医療応用するというのは、なかなか聞き慣れないですが、海外では進んでおりまして、2018年以降、アメリカ・中国・ヨーロッパなどで急増しています。

例として、米国のUCSFの研究者が臨床試験データをブロックチェーンで管理するという内容で、「Nature Communications」に論文発表しています。FDAのホームページでINFORMEDのプロジェクトの中でもブロックチェーンを用いるところが書かれています。薬剤のトレーサビリティを守るなど、応用が始まっています。

このような仕組みをつかうことで、データの信頼性を守るところはシステムで守れると考えております。がんセンターとの共同研究は、内閣府のサンドボックス制度の中でプロジェクトを進行中です。

「ビッグデータをどう分析するのか?」問題

上野:「DTxならではのビッグデータをどう分析するのか」という問題ですが、データサイエンティストは売り手市場となっている中で、その部分を効率化していきたい。

私たち自身の課題でもあり、サイエンティストが行うさまざまな処理、前処理、レポーティングに時間がかかっているという問題がありますので、例えばエクセルデータを投げるだけでPPT(パワーポイント)のサマリがでてくるようなものを開発し、活用いただいております。

ソフトウェアのデモンストレーションを行います。アカウントログインし、エクセルのファイルをドラッグします。何を予測したいかというのを選ぶだけです。

例えば、健診データのビッグデータがある中で、保健指導の対象になるかどうか、機械学習を使って予測することにしたいと思います。パラメータを選んで分析しますと、結果がでてきます。

PPTができあがって、そのままプレゼンができるような仕組みになっています。健診の対象になるかどうかというのに対し、さまざまなパラメータをもとにサマリが出力されます。例えばデータに欠損値がある場合は、分布をみて自動的に補完され、前処理がされます。機械学習モデルで予測の評価ができ、予測性能についてもPPTに出てきます。

(スライドを指して)こちらはXGBOOSTを用いた例ですが、混同行列やROCカーブがでてきて、AUCが自動抽出されます。閾値の影響や、データの予測精度がどう変わるかなども自動的に出力されます。医学業界では、特徴量の重要度について、患者さんのリスクが高いことをどんな特徴で評価をしたのかというのが出てきます。

東北大学との共同研究の例ですが、脊髄損傷の予後予測で、脳動脈瘤再発予測などで使っていただいたり、がんセンターの乳がん患者さんの合併症予測、リスクにどういう特徴量が効いているかを調べたりできます。

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