治療を受けても約半数が亡くなるエボラ出血熱

ハンク・グリーン氏:史上2番目に最悪とされるエボラ出血熱の大流行により、これまでのところ1,800人が亡くなっています。しかし、最前線の医師たちの手には、新たな武器があります。正確には武器は2つです。コンゴ共和国で行われた治験により、エボラ出血熱の新しい治療法が2種類開発されたのです。

エボラ出血熱の患者のうち、4分の1の人が治療を受けることができずに亡くなっています。これはかなりの人数ですね。しかしもっと恐ろしいことに、治療を受けてもなお、亡くなる人がいるのです。エボラ出血熱の標準的な治療法は、ZMappという治療薬の投与です。しかしZMappを投与しても、平均死亡率が49パーセント程度に下がるに過ぎません。

そこで2018年11月に、何種類かの新薬の治験が始まりました。1つは「Remdesivir(レムデシビル)」という抗ウイルス薬です。

この薬は、ウィルスが増殖する際に使うたんぱく質を抑制します。他の2つは、抗体でウィルスを攻撃するものです。免疫システムにより作り出されたたんぱく質が、病変する前の病原体に取りつき、破壊します。

抗体による治療は、うまく病原体に取りつけることができれば、たいへん有効なのです。エボラ出血熱の治療で難しい点は、病原体が形を変えて免疫システムから逃れてしまうため、恒常的に有効な働きをする抗体を得ることが難しいことです。

エボラ出血熱の致死率を劇的に下げる、2種の新薬

そこで、ある製薬会社が、動物モデルにより3つの抗体を開発し、それらを組み合わせて「REGN-EB3」、略称「EB3」という新薬を開発しました。

別の研究者たちは、生きた人間から治療法を探りました。研究者たちは、90年代のエボラ大流行から生還した人々の抗体をクローン化することに成功し、「mAb114」と名付けました。

治験では、ZMappとこれら3種の新薬とを、過去9か月ほどで発生した患者700人近くに投与し、比較検討しました。残念なことに、抗ウイルス薬はあまり効果がありませんでした。

しかし、抗体の方は、劇的な効果を上げました。一種類の抗体を1回投与した場合、致死率は34パーセントに下がりました。

さらに、「EB3」を混合した薬を1回投与すると、致死率はなんと29パーセントにまで下がったのです。

さらに大きな勝利が得られました。この薬を発病3日以内の患者に投与したところ、89パーセントから94パーセントが生還したのです。

その絶大な効果に、研究者たちは、今後すべての患者が治療を受けられるようにと、治験を中止したほどでした。今後は医師たちは「EB3」と「mAb114」だけを用いて比較検討する治験を行う予定とのことで、この2種の新薬は、被験者以外にも投与が可能になります。

世界では今なお結核が脅威である理由

さて、致死率が高くとも、治すことができるようになってきた病は、エボラ出血熱だけではありません。つい先週も、アメリカ食品医薬品局、略称FDAが、多剤耐性結核菌の新薬を承認しました。これは新薬を、もっとも必要とされる場へ届ける最初のステップです。結核は、バクテリアによる肺の感染症です。ワクチンや抗生剤による治療が確立されてから、長い年月が経っていますが、世界ではいまだに1,000万人もの人々が結核にかかっています。

ある系統の菌は、通常の治療に耐性を持ってしまったことにより、致死率が飛躍的に上昇してしまいました。多剤耐性結核に罹患すると、多くの人は、診断を受けることすら間に合わずに死んでしまいます。首尾よく治療を受けられたとしても、生存率はわずか34パーセントです。

さらに治療には、2年間にわたり、1日40錠もの錠剤を服用する必要があり、甚大な副作用を伴います。もっとシンプルで、効能の高いオプションが求められます。

しかし、新たな抗生剤の開発には、莫大な資金がかかります。そのような投資を引き受けようという企業は、なかなかありません。結核にかかるのは、大部分が貧しい人々であり、高価な薬を買うことができないためです。

しかしありがたいことに、NPO団体であるTB Allianceが、名乗りを上げてくれました。TB Allianceの資金援助により、新しい抗生剤はFDAの認可を受けることができ、「プレトマニド」という新薬が誕生したのです。プレトマニドの治験は2015年に開始され、他の抗生剤2種と併用することにより、半年以内に90パーセントもの患者が回復しました。しかも服用する薬は、1日に5錠で済むのです。

この圧倒的な成功により、「3種類の薬品による治療法」は、FDAの承認が確定したのです。FDAが認可した医薬品は、たいていは国際的な機関にも続いて承認されます。

とはいえ、前途は多難です。結核が蔓延しているのは、世界でも貧しい地域です。新抗生剤は、所得の低い人でも手が出る価格帯に設定する必要があります。志の高いNPOであっても、資金は無尽蔵ではありません。製薬会社から、リーズナブルな価格での提供の合意を得なければならないのです。その交渉は、今まさに進捗中であり、今の私たちには祈ることしかできません。