女性視点だから気づけたサービスのポイント

軍地彩弓氏(以下、軍地):それでは次の議題に移っていこうかなと思います。みなさんのサービス内容を聞いていると、女性視点から始まっているなと思うんですけれども。

さっきから話には出ていますが「女性視点だったからこそ、こういうことに気づけた」というものについて伺っていけたらと思います。では井出さんから。

井出有希氏(以下、井出):まさに、自分の子どもが食事をなかなか食べてくれないとか、そもそも子どもが生まれて初めて料理で悩むようなところから始めたサービスだったので。そういう意味では、「自分ごと」であったからこそ、わかったニーズだったと思います。

創業者はもう1人いて、2人ともそういった背景があったために、最初は子育て支援サービスで、ほぼ9割以上の利用者の方が小さい子どもがいる方でした。

ところが、だんだん事業が進んでいってサブスクを導入したりしていくと、「妻が糖尿病を患っていて、今度退院する。病院と同じようなメニューを作っていただけますか」ですとか、「僕は筋トレしているんです。カロリー計算つきで糖質オフメニューを作ってください」という利用者が出てきていて。

最近はさらにヘルスケア寄りで、生活習慣病や「腎臓病の食事を作ってくださる方はいらっしゃいますか?」といった需要が出てきているんだなということをすごく感じています。

あともう一つは、今までの日本だと「子どもがいて、パパとママがいる」というのがいわゆる一般的な家族のあり方でしたが、現代では、お2人で住んでいるシニアの方や単身の方、あとはパパと子ども、ママと子どもだけみたいな家庭もどんどん増えています。

家族構成がすごく変わっていて、これまで当たり前のように言われていた「家族の健康や食卓は母親が担っていく時代」ではもうなくなっています。そういう役割を社会に解き放っていくことが必要で、それによってみんなが助かって、さらに豊かな社会になるのじゃないかなと思っています。

軍地:おもしろいですね。最初はママ支援から始まったものが家族支援になったり、その家族のあり方ももっと多様になってきていることで、個人向けのサービスができるようになっていったと。でも、あくまでも最初にお子さんを持っているママの視点があったからこそ、そういうことが広がっていったのかなと理解できます。

女性が活躍できる職場は、ジェンダーを問わずに活躍できる職場と同義

軍地:松本さんのお仕事的には、さきほどの女性の働き方の変化が複雑であるから、より女性に寄り添ったということでしたが、今度は逆に男性の就活のやり方も変わってきていたりするんですか?

松本洋介氏(以下、松本):そうですね。働き方というところでいくと、まず僕たち自身が実践しないとなんの説得力もないので。「隗より始めよ」じゃないですけれども、まず自社で実践しようと思っていて。

弊社には組織のコンセプトがあるんですよね。「女性が活躍しやすい環境はジェンダーを問わず活躍しやすい環境である」という言葉を掲げているんです。

例えば子どもがいる社員が、「子どもを迎えに行かないといけない」とか「急に熱が出たからオフィスに行けない」というような時間や場所の制約って、もうやむを得ないことじゃないですか。

それがきっかけで働きづらいとか、パフォーマンスが下がるとか、オポチュニティが奪われることはあっちゃいけないと思うんですよね。なので、我々はそういったものを全部撤廃しているんです。

今年の2月に僕の父が亡くなったんですけれども、その前の2年間は闘病しながら働いてたんですよね。なので、誰かを支えながら働く瞬間って、誰でもほぼ一緒なんですよね。それが子どもなのか親なのかの違いであって、今後も高齢化社会などを考えていくと、たぶんほとんどみんなが同じ壁にぶつかる。

あと、うちの人事責任者は男性なんですけれども、男性が育休を取ったり「子どもともっと時間を過ごしたい」「オンオフを切り分けて仕事がしたい」というふうに価値観も変化してきている。その中で、今まで女性の悩みと言われていたものは、ほぼ男女の悩みになってきているんですよね。

軍地:そうですよね。

松本:女性が活躍しやすい環境は、男性女性というジェンダーを問わず活躍しやすい環境であることを、僕たちが実践して示していくことによって広げていくのが役割だと思っています。

個人の価値観が先にインクルージョンし始めている

軍地:そうですよね。例えば育休についても、最近は変わってきているとはいえ、「子育ては女性が担うもの」という認識がまだあります。先日話題になった、小泉進次郎さんが育休を取る最初の大臣になるか、という話も出ています。介護についても、女性ばかりが担うのか、となりがちです。育児も介護も、本来は男性も女性もお互いに機会はあります。

松本:実は、ということですよね。

軍地:はい。ライフシーンが同じようにあるんだということを顕在化し、それによって仕事のやり方を変えていくことが、お互いにとって働きやすい環境になる。誰かが担いきれないことを誰かが補完するようなことが、もっと循環的にできるように目指していくといいですね。

松本:まさにまさに。これはめちゃくちゃおもしろくて、個人の価値観のほうが早くインクルージョンし始めているなと思うんですよね。

軍地:そうですよね。

松本:「ジェンダーバイアス」という言葉を使うと、女性のイメージが出てくると思うんですけれども、実はぜんぜん違っていて。男性側にもそういうバイアスがあって、「稼がなきゃいけない」とか「支えなきゃいけない」とか。子どもの頃から言われてきた「男らしさ」とかが、やっぱりあるわけですよね。それが跳ね返ってきて、違う面で「女らしさ」になったりするんですけど。

最近、肩の荷が下りてきているじゃないですけれども、こうやって交わってきているので。本当に個人の価値観がインクルージョンし始めていて、そこに制度や成功モデルが追いついていないんですよね。そこがおもしろいんですけど。だんだんそっちの流れになるのはもう目に見えているというか。

軍地:おもしろいですよね。

スーツという鎧を脱いだ男性が、その先どうやってファッションで自己表現していくか

軍地:市原さんは今の流れで言うと、パーソナルサービスをファッションで進められていて、なにかそこで気づきみたいなものってありますか?

市原明日香氏(以下、市原):私も「女性の服装の悩みを解決しよう」ということで最初に始めたんですけれども。

さっきお話にもありましたように、管理職になったときにちょっと部下から憧れられたいとか。とはいえ、あまりカチッとしすぎていてもいけないという悩みって女性特有なのかなと思っていたのですが、実際にこのサービスをやってみると男性からの問い合わせも思ったより増えておりまして。

軍地:そうなんですね。

市原:しかも海外に住んでいらっしゃる男性などからも「男性向けのサービスも予定はあるんですか?」というお問い合わせもありまして。こういう課題って、あんまり女性とか男性は関係ないのかなと感じているところもありますね。

軍地:そうですよね。実は今のスーツの着用人口って、全体的には下がっているんですね。スーツを着なきゃいけないシーンも減ってきている。でも、やはりオフィス街では同じようなスーツを着ているサラリーマンは変わらずにいらっしゃる。

そんなときに思うのは、「スーツを着ている方は、そのスーツを脱いだときに何を着るのかな」と。自由になったときに何を着るのかな。「鎧を脱ぐ」というんですかね、スーツを脱いだ先で、男性も実はファッションでの自己表現に悩み始めていたりするんじゃないかと。

「女性だからファッションに悩む。男性はスーツだからいい」ということではなくて、男性でも、ファッションでどう自分を自己表現していくかという問題を抱えていたりする。ここ数年、ファッションにおいては「男女の差はない」と思っております。

市原:そうですね。本当にもう、なりたい自分や作りたいライフスタイルに寄ってくるのかなと感じるところですね。

軍地:みなさんのお話を聞いていると、男性もなかなか窮屈な鎧を着ていらっしゃるのかなと。

キャビンアテンダントがパンツルックを選べるようになるという衝撃

軍地:森本さんは、この点についてどう思われますか?

森本萌乃氏(以下、森本):私が初めてFABRIC TOKYOのメンズスーツを作ったときに、男性がこんなにズボン(のウエスト)を締めて、こんなに重いものを肩に乗せて、毎日当たり前に出社していることを始めて実感として持てて。それがすごくよかったなと思っています。

私自身も、性別でいうと男性10人・女性1人みたいな打ち合わせがけっこうあるんですけど。これを着ていくと、なんだか勝手に認めてもらえた気持ちになって、すごく前向きに打ち合わせに参加できる気がします(笑)。

一方で、メンズの服を着ることによって、自分は意外と華奢なんだなとか、小さいんだなという女性性も感じられて、それがすごく気持ちよかったり。なんだかもうファッションって、たぶんコスプレでしかないなと感じましたね。

今回の企画をしていて、私たちがメンズ(の服)を提供することで、女性に向けて扉を大きく広げることはできたんですけれども。逆にさっきもおっしゃっていたみたいに、スカートを履きたい男性や、もうちょっと女性らしいファッションを好む男性もいらっしゃるじゃないですか。なので、これから女性のメーカーさんやブランドが男性に向けて取り組むことが増えていったらいいなと思っていますね。

軍地:今年は男性向け化粧品がけっこう出てきたりするなかで、エポックメイクだなと思ったことがあって。今年はJALの制服が変わったんですね。JALの制服で何が一番変わったのか。デザイナーの方が変わったのもそうなんですけれども、CAさんがパンツスタイルを選べるようになったんですね。

今は学校でもそうですよね。学校の制服も女の子はセーラー服だったり、スカートを選ばなきゃいけなかったのが、男女のスタイルのどっちでも選べる。男の子でスカートを穿き始める子は学校ではなかなかいないかもしれないんですけど。少なくとも女の子がスカートかパンツか、どちらかを選べるようになったのはすごい前進だなと思います。

ジャック・マーが引退するときに女性起業家イベントをやって、そのときに言っていた言葉があります。とくに日本の社会について研究していたのが、日本の会議に行くとだいたいおじさんばっかりで、いないのは若者と女性。ジャック・マーはもともとECからスタートしているんですけど、そのEC事業で、彼は職場に女性を37パーセント以上入れようと努力していました。

中国って、女性がすごく活躍する社会ですよね。その理由として、女性のほうがコミュニケーション能力が高かったり、いろいろな消費者ニーズに気づきやすい面がある。そういう女性のいい部分を、より会社に取り込むために女性を活躍させる。それはジェンダーバイアスがどうのこうのというよりも、会社の利益として女性の能力を活かしていくんだと言ったのがとても印象的だったんです。