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ジェンダーバイアスを超えていくパーソナルサービスの新潮流(全2記事)

2019.11.08

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「働くこと」のジェンダーギャップを無くし、次世代にバトンを渡すーー女性の権利を解放してきた先人の成果と我々の役割

提供:モデラート株式会社

2019年9月20日、ポーラ銀座ビルにて、パーソナルスタイリングサービス「SOÉJU(ソージュ)」を運営するモデラート株式会社の主催によるイベント「ジェンダーバイアスを超えていくパーソナルサービスの新潮流」が開催されました。アートとパーソナルサービスのコラボレーションによるイベント“BLESS THE DIFFERENCE.”に合わせて行われたこのトークセッションには、自分らしい多様な生き方を、さまざまな形で応援するサービスの経営者やプランナーが登壇。本記事では、女性視点で始まったサービスが、やがてジェンダーを超えて個人を尊重したものに変わっていくという、世の中の流れについて語った後半パートを中心にお送りします。

女性視点だから気づけたサービスのポイント

軍地彩弓氏(以下、軍地):それでは次の議題に移っていこうかなと思います。みなさんのサービス内容を聞いていると、女性視点から始まっているなと思うんですけれども。

さっきから話には出ていますが「女性視点だったからこそ、こういうことに気づけた」というものについて伺っていけたらと思います。では井出さんから。

井出有希氏(以下、井出):まさに、自分の子どもが食事をなかなか食べてくれないとか、そもそも子どもが生まれて初めて料理で悩むようなところから始めたサービスだったので。そういう意味では、「自分ごと」であったからこそ、わかったニーズだったと思います。

創業者はもう1人いて、2人ともそういった背景があったために、最初は子育て支援サービスで、ほぼ9割以上の利用者の方が小さい子どもがいる方でした。

ところが、だんだん事業が進んでいってサブスクを導入したりしていくと、「妻が糖尿病を患っていて、今度退院する。病院と同じようなメニューを作っていただけますか」ですとか、「僕は筋トレしているんです。カロリー計算つきで糖質オフメニューを作ってください」という利用者が出てきていて。

最近はさらにヘルスケア寄りで、生活習慣病や「腎臓病の食事を作ってくださる方はいらっしゃいますか?」といった需要が出てきているんだなということをすごく感じています。

あともう一つは、今までの日本だと「子どもがいて、パパとママがいる」というのがいわゆる一般的な家族のあり方でしたが、現代では、お2人で住んでいるシニアの方や単身の方、あとはパパと子ども、ママと子どもだけみたいな家庭もどんどん増えています。

家族構成がすごく変わっていて、これまで当たり前のように言われていた「家族の健康や食卓は母親が担っていく時代」ではもうなくなっています。そういう役割を社会に解き放っていくことが必要で、それによってみんなが助かって、さらに豊かな社会になるのじゃないかなと思っています。

軍地:おもしろいですね。最初はママ支援から始まったものが家族支援になったり、その家族のあり方ももっと多様になってきていることで、個人向けのサービスができるようになっていったと。でも、あくまでも最初にお子さんを持っているママの視点があったからこそ、そういうことが広がっていったのかなと理解できます。

女性が活躍できる職場は、ジェンダーを問わずに活躍できる職場と同義

軍地:松本さんのお仕事的には、さきほどの女性の働き方の変化が複雑であるから、より女性に寄り添ったということでしたが、今度は逆に男性の就活のやり方も変わってきていたりするんですか?

松本洋介氏(以下、松本):そうですね。働き方というところでいくと、まず僕たち自身が実践しないとなんの説得力もないので。「隗より始めよ」じゃないですけれども、まず自社で実践しようと思っていて。

弊社には組織のコンセプトがあるんですよね。「女性が活躍しやすい環境はジェンダーを問わず活躍しやすい環境である」という言葉を掲げているんです。

例えば子どもがいる社員が、「子どもを迎えに行かないといけない」とか「急に熱が出たからオフィスに行けない」というような時間や場所の制約って、もうやむを得ないことじゃないですか。

それがきっかけで働きづらいとか、パフォーマンスが下がるとか、オポチュニティが奪われることはあっちゃいけないと思うんですよね。なので、我々はそういったものを全部撤廃しているんです。

今年の2月に僕の父が亡くなったんですけれども、その前の2年間は闘病しながら働いてたんですよね。なので、誰かを支えながら働く瞬間って、誰でもほぼ一緒なんですよね。それが子どもなのか親なのかの違いであって、今後も高齢化社会などを考えていくと、たぶんほとんどみんなが同じ壁にぶつかる。

あと、うちの人事責任者は男性なんですけれども、男性が育休を取ったり「子どもともっと時間を過ごしたい」「オンオフを切り分けて仕事がしたい」というふうに価値観も変化してきている。その中で、今まで女性の悩みと言われていたものは、ほぼ男女の悩みになってきているんですよね。

軍地:そうですよね。

松本:女性が活躍しやすい環境は、男性女性というジェンダーを問わず活躍しやすい環境であることを、僕たちが実践して示していくことによって広げていくのが役割だと思っています。

個人の価値観が先にインクルージョンし始めている

軍地:そうですよね。例えば育休についても、最近は変わってきているとはいえ、「子育ては女性が担うもの」という認識がまだあります。先日話題になった、小泉進次郎さんが育休を取る最初の大臣になるか、という話も出ています。介護についても、女性ばかりが担うのか、となりがちです。育児も介護も、本来は男性も女性もお互いに機会はあります。

松本:実は、ということですよね。

軍地:はい。ライフシーンが同じようにあるんだということを顕在化し、それによって仕事のやり方を変えていくことが、お互いにとって働きやすい環境になる。誰かが担いきれないことを誰かが補完するようなことが、もっと循環的にできるように目指していくといいですね。

松本:まさにまさに。これはめちゃくちゃおもしろくて、個人の価値観のほうが早くインクルージョンし始めているなと思うんですよね。

軍地:そうですよね。

松本:「ジェンダーバイアス」という言葉を使うと、女性のイメージが出てくると思うんですけれども、実はぜんぜん違っていて。男性側にもそういうバイアスがあって、「稼がなきゃいけない」とか「支えなきゃいけない」とか。子どもの頃から言われてきた「男らしさ」とかが、やっぱりあるわけですよね。それが跳ね返ってきて、違う面で「女らしさ」になったりするんですけど。

最近、肩の荷が下りてきているじゃないですけれども、こうやって交わってきているので。本当に個人の価値観がインクルージョンし始めていて、そこに制度や成功モデルが追いついていないんですよね。そこがおもしろいんですけど。だんだんそっちの流れになるのはもう目に見えているというか。

軍地:おもしろいですよね。

スーツという鎧を脱いだ男性が、その先どうやってファッションで自己表現していくか

軍地:市原さんは今の流れで言うと、パーソナルサービスをファッションで進められていて、なにかそこで気づきみたいなものってありますか?

市原明日香氏(以下、市原):私も「女性の服装の悩みを解決しよう」ということで最初に始めたんですけれども。

さっきお話にもありましたように、管理職になったときにちょっと部下から憧れられたいとか。とはいえ、あまりカチッとしすぎていてもいけないという悩みって女性特有なのかなと思っていたのですが、実際にこのサービスをやってみると男性からの問い合わせも思ったより増えておりまして。

軍地:そうなんですね。

市原:しかも海外に住んでいらっしゃる男性などからも「男性向けのサービスも予定はあるんですか?」というお問い合わせもありまして。こういう課題って、あんまり女性とか男性は関係ないのかなと感じているところもありますね。

軍地:そうですよね。実は今のスーツの着用人口って、全体的には下がっているんですね。スーツを着なきゃいけないシーンも減ってきている。でも、やはりオフィス街では同じようなスーツを着ているサラリーマンは変わらずにいらっしゃる。

そんなときに思うのは、「スーツを着ている方は、そのスーツを脱いだときに何を着るのかな」と。自由になったときに何を着るのかな。「鎧を脱ぐ」というんですかね、スーツを脱いだ先で、男性も実はファッションでの自己表現に悩み始めていたりするんじゃないかと。

「女性だからファッションに悩む。男性はスーツだからいい」ということではなくて、男性でも、ファッションでどう自分を自己表現していくかという問題を抱えていたりする。ここ数年、ファッションにおいては「男女の差はない」と思っております。

市原:そうですね。本当にもう、なりたい自分や作りたいライフスタイルに寄ってくるのかなと感じるところですね。

軍地:みなさんのお話を聞いていると、男性もなかなか窮屈な鎧を着ていらっしゃるのかなと。

キャビンアテンダントがパンツルックを選べるようになるという衝撃

軍地:森本さんは、この点についてどう思われますか?

森本萌乃氏(以下、森本):私が初めてFABRIC TOKYOのメンズスーツを作ったときに、男性がこんなにズボン(のウエスト)を締めて、こんなに重いものを肩に乗せて、毎日当たり前に出社していることを始めて実感として持てて。それがすごくよかったなと思っています。

私自身も、性別でいうと男性10人・女性1人みたいな打ち合わせがけっこうあるんですけど。これを着ていくと、なんだか勝手に認めてもらえた気持ちになって、すごく前向きに打ち合わせに参加できる気がします(笑)。

一方で、メンズの服を着ることによって、自分は意外と華奢なんだなとか、小さいんだなという女性性も感じられて、それがすごく気持ちよかったり。なんだかもうファッションって、たぶんコスプレでしかないなと感じましたね。

今回の企画をしていて、私たちがメンズ(の服)を提供することで、女性に向けて扉を大きく広げることはできたんですけれども。逆にさっきもおっしゃっていたみたいに、スカートを履きたい男性や、もうちょっと女性らしいファッションを好む男性もいらっしゃるじゃないですか。なので、これから女性のメーカーさんやブランドが男性に向けて取り組むことが増えていったらいいなと思っていますね。

軍地:今年は男性向け化粧品がけっこう出てきたりするなかで、エポックメイクだなと思ったことがあって。今年はJALの制服が変わったんですね。JALの制服で何が一番変わったのか。デザイナーの方が変わったのもそうなんですけれども、CAさんがパンツスタイルを選べるようになったんですね。

今は学校でもそうですよね。学校の制服も女の子はセーラー服だったり、スカートを選ばなきゃいけなかったのが、男女のスタイルのどっちでも選べる。男の子でスカートを穿き始める子は学校ではなかなかいないかもしれないんですけど。少なくとも女の子がスカートかパンツか、どちらかを選べるようになったのはすごい前進だなと思います。

ジャック・マーが引退するときに女性起業家イベントをやって、そのときに言っていた言葉があります。とくに日本の社会について研究していたのが、日本の会議に行くとだいたいおじさんばっかりで、いないのは若者と女性。ジャック・マーはもともとECからスタートしているんですけど、そのEC事業で、彼は職場に女性を37パーセント以上入れようと努力していました。

中国って、女性がすごく活躍する社会ですよね。その理由として、女性のほうがコミュニケーション能力が高かったり、いろいろな消費者ニーズに気づきやすい面がある。そういう女性のいい部分を、より会社に取り込むために女性を活躍させる。それはジェンダーバイアスがどうのこうのというよりも、会社の利益として女性の能力を活かしていくんだと言ったのがとても印象的だったんです。

ミレニアル世代が考える「活躍する女性」のイメージ

軍地:今日お話をうかがって「なるほどな」と思うところなんですけれども、次は「自分ごと」で始めたサービスをどうやって「世の中ごと」にしていくか。これを本日最後のテーマにしたいと思います。

中山さんのサービスからおうかがいしたいんですけれども、女性のポテンシャルをどんどん上げていらっしゃると思うんですね。そういうなかで、そのサービスがより「世の中ごと」として広まっていくためのポイントって、なにかあると思いますか?

中山紗彩氏(以下、中山):あり得るアプローチとして"ロールモデルを増やしていくこと"かなと思っています。

軍地:そうですよね。

中山:この2〜3年でも、すごく生き方が変わっている時代だと思うんです。いろんな文脈がありつつ、その背景にあるのはやっぱりロールモデルが身近に感じられるようになったからかなと考えています。

今までの概念として「活躍する女性=管理職」で、家庭やライフスタイルを犠牲にするような選択肢しかなかったと思うんです。そうじゃなくて、もっと肩の力が抜けてというか、活躍するとかお金稼ぐとか、上に上がるということではなく、単純になにか作り出したり自分の好きなことをやったり、目の前の人を幸せにする手段として働きたいというインサイトが生まれたりしているように思います。

でも、それをやっている人って、やっぱりライフスタイルにもポジティブなオーラが出ている人たちが多いと思っていて。そういうロールモデルがSNSなどで身近に感じられるようになっているからこそ、ミレニアル世代には「肩の力を抜いて自分の心に向き合って、解決したい課題や幸せにしたい人に向き合って仕事をするんだ」という”新しい仕事像"が生まれてきているのかなと思っています。

軍地:そうですね。私たちが思う以上に……私はもう50代ですけれども、20代の子とお話しすると、男の子も女の子もすでにもうジェンダーの壁がないですよね。

中山:そう、すごくそう思います。

今ごろジェンダーレスの会話をしている日本人のリテラシーの問題

軍地:中山さんはよく、日本女性のポテンシャルによく触れていらっしゃると思うんですけど、世界のビジネスシーンから見た日本女性のポテンシャルはどういうところにあると思います?

中山:すごく悪い言葉で言うと、たぶん日本人って、美意識というかリテラシーがまだまだ「成熟していない」んですよね。

軍地:低い?

中山:そう。ただ決して悪い意味でそう言っているのではなくだからポテンシャルがあると思っていて。

軍地:なるほど。

中山:例えばグローバルで見ると、”ジェンダーレス”のようなキーワードって、もう5〜10年ぐらい前に会話し終えられたもので。それが(日本では)今ようやくなされている現状な訳で。

軍地:ジェンダーバイアスが先進国で一番下ぐらいですからね。

中山:そうですね。だからこそポテンシャルがあるし、これからはそういうマスメディアや経済界の操作によって価値観が形成されるのではなく、自分たちの目で見たものを自分たちの頭で考えて、感じて、作り上げていける時代になっている。だからこそ、ここからのリカバリーが効くなと思っていて。そういう意味ではこの現状はネガティブではないですね。ジェンダーランキングによると日本は149国中111位とかでしたっけ?

軍地:110位になりました。韓国が下にいるのかな。去年から1ランクだけ上がったんです。

中山:そうですね。そういうことはある意味、恥ずべきところだとは捉えつつ。でも、ポテンシャルがあることをポジティブに捉えてちゃんと向き合っていけば、ポテンシャルは存在しているなと捉えています。

軍地:なるほど、ありがとうございます。

家庭に入り、埋もれてしまった資格やスキルを活かしたい

軍地:じゃあこの流れで、井出さんはいかがでしょう?

井出:今ちょっと勇気づけられたところがあって。やっぱり私たちのサービスって、人がお家に入らせてもらってお料理をするものなので、まだまだ「人に作ってもらう=罪悪感」というところが、どうしても固定観念としてはあるなと思っています。

軍地:ありますよね。

井出:こういうパーソナライズされたサービスを利用することで、栄養の知識も増えたり、新しい料理法が増えたり、なにより食卓をみんなで楽しく囲んだコミュニケーションが生まれるようないい面を自社でも発信していっています。

さらには利用シーンです。妊娠を意識した体づくりをしている方や、生活習慣病や糖尿病に向き合っていらっしゃるご家庭が、こういうかたちで専門家に相談していますよ、など。

アクティブシニアの方でも、夫婦お2人になるとなかなか新しいお料理を作らなくなってきたりします。「健康を考えると手作りの方がよい、そして自分では作らないお料理を楽しみたい、といった方にご利用いただいています」というふうに、ご利用シーンをなるべくたくさん発信して、もっと世の中に「専門家の方に気軽に相談できる・頼める世界って、すごくいいことなんだよ」という文化を作っていきたいと思っています。

軍地:常識を変えていくには事例しかない、というところかなと思います。

井出:ええ。さらにユーザー側だけではなくて働き手側のほうで、日本は栄養士さんや管理栄養士さんという資格を持っているにもかかわらず、なにかしらの理由でご家庭に入られ、スキル・知識が眠っているケースが多いです。私たちのサービスだと、1回3時間の仕事で、最初は気軽に始められる面もあります。

女子栄養大学出版部の方や、老舗の専門学校である食糧学院さんと連携し、1回ご家庭に入られたような方たち、専門的なプロフェッショナルな方たちにアプローチして、「家庭に出張して食の課題に向き合って解決する働き方もありますよ」ということも、合わせて今やっていっているところです。

軍地:そういうかたちでサービスが広がっていくのがいいですよね。

我々には「働くこと」のジェンダーギャップをなくす役割がある

軍地:次は松本さんのご意見もおうかがいしたいんですけれども。

松本:はい。どうやって「世の中ごと」に広げていけるのかはすごく大事なテーマだと思っています。例えば学業でいくと、僕は2003年に会社に入って、今は40歳なんですけれども、僕の時はまだ短大に行く女性の同級生が多かったんですね。でも今はほとんどの短大が潰れて、四大になっていますよね。

これが親世代だともっとそうで、「勉強できる男の子は四大にいくけど、女の子は高校で十分ね」という話が普通にあったりしました。四大に進学して就活するのが当たり前になったのは、実はめちゃめちゃ最近なんですよね。やっと学業のジェンダーギャップが消えてきたわけじゃないですか。もっと遡れば、選挙権にも差があったわけで。

そういうのって、その時代の方々が1個1個やっつけてきてるんですよね。なので僕たちは、長い目で見たときにどういう時代の役目を担っているかと言うと、この「働く」というところとか「自己実現」というテーマに対して、ジェンダーギャップを残すんじゃなくて、ちゃんと解消した上で次の世代にバトンを渡すという役割があると思うんですよね。

そういう意味では、先ほど出ていたロールモデルはやっぱりすごく大事で。僕たちも3年前から『Forbes Japan』さんのお力を借りて、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」という、活躍している女性個人の方と、女性の活躍を推進できる企業を表彰するというアワードを大々的にやっているんですよね。

しかもそれは、なんとなく下駄を履かせるようなものじゃなくて、本当に女性の方が戦力として活躍して、事業の成長や利益創出に貢献できるかを測るアワードなんです。もう毎年1,000社ぐらいのエントリーが来ている日本最大規模の女性を表彰するアワードになりました。

そういった「時代を変えていく役割」を認識した上での発信とか、ロールモデルにスポットライトを当てていくことは、本来はなくても回るのが理想なんですけれども、時代の役目として必要なんじゃないかって、まず思っています。

ジェンダーについて女性「だけ」が集まってしまうことの問題

松本:もう1つは、1人だけ男性の登壇者としてここにいるんですけれど、ずっと個人的に思うことがあります。ジェンダーの話をするときって、どうしてもママとか、女性の方が集まったりすることが多いんですよね。それはよくないなとずっと思っていて。結論から言うと、当事者の「種類を増やす」ということがすごく大事だと思うんです。

僕がインタビューで毎回聞かれる質問が、「なぜ男性の松本さんがこのテーマを?」ということで。もう百発百中で聞かれるんですよ。その質問には「うん、なるほど」と思うんですけど、僕からすると女性の活躍や女性の働きやすさって、当事者テーマなんです。

というのも、僕は8歳の頃に両親が離婚しているんですよ。離婚した理由はもう明確に「母が働きすぎた」ということなんです。めちゃめちゃ仕事が好きな母で、父は事業をやっていたんですけれど、「もっと支えてくれや」ということを言う親父で。そこが噛み合わなかったので、結果的に別れることになった。

僕は男兄弟3人だったんですけれど、母が働きたいということだったので、全員が父側についたんですよ。そうなると、父側からしか情報が入ってこないんですよね。子どもの頃は「お母さんはお前たちより仕事を取ったよ」と言われてきたんですよ。

なので僕は、子どもの頃は女性が働くのは家庭が壊れることだとか、子どもが粗末にされるのは悪だと思っていたんです。でも、社会に出てみたら女性も当たり前に勉強をがんばっているし、就活もしてるし、キャリアを積んでる。それを性別だけでどうこう言われるのって、普通に嫌だよなと気づきはじめて。そこで「もしかしたら、うちの母は生まれた時代を間違えたのかな?」「けっこう当たり前のことを言ってたよな」と思うようになって。

そういう意味では、僕はこのテーマでめちゃめちゃ実害を食らってる当事者なんですよね。母が違う世代であれば、きっと僕みたいな思いをした子どももいなかったし、もっと明るい家庭になっていたかもしれない。

なので、「女性の話は女性だけで」という時代はもう終わったと思っていて。いろんな当事者を入れていくことによって“世の中ごとにしていくことが、すごく大事なんじゃないかなと僕は思っていますけれどね。

軍地:すごい染みますね(笑)。

(一同笑)

本当に男性と女性もなくて、すべてのジェンダーというところですよね。課題を出して、新しい社会のルールづくりの事例を作って、どんどんしなやかになって、みんなが肯定する時代になればいいのかなと思います。

フェミニスト、ジェンダーレス、ユニセックス……みんな「言葉が悪い」

軍地:まさにミレニアル世代の森本さんは「世の中ごと」に関してどう見えていますか?

森本:私が最近思っているのは、言葉が悪いなということで。私もこういう企画をやってきて、今回のような言葉を発信してみたときに「フェミニストですね」と言われたりするんです。フェミニストの本来の意味は「性差別をしない」ということらしいんですよ。そうであれば「あっ、はい、性差別しないです」という感じなんですけど。

でも、「フェミ」と言ってしまうとなんだか言葉が強いし、ジェンダーレスというのもジェンダーありきのレスだし、ユニセックスもセックスありきのユニじゃないですか。言葉が悪いなとすごく思っていて。

そういう言葉も、さっきのみんなの話じゃないけど、事例が増えていくことで新しい言葉が生まれるとか、そういう未来にすごく期待しています。

アパレルでいくと、男性パターン・女性パターンなんて言われています。女性でよく、スーツの前の閉め方が「女の子は左が上なのに、男性の型で作っていいんですか?」と言われるんですけど、それも歴史をひも解くと、女の人は服を着せてもらう対象だったから、閉めやすいように左前だっただけなんですよね。

軍地:へえ。

森本:そう。だから、ぜんぜん常識とかじゃないんですよ。礼儀とかでもないんです。その時代にやりやすかったからそうなっているだけで。そういうことがちょっとずつ変わっていくようになって、男性パターン・女性パターンという言い方も変わればいいなと。言葉がちょっと悪いなと思います。

軍地:男女という対立じゃなくて、もう人同士という時代の流れになっていけばいいと。言葉をもっとフラットになっていって。

森本:そうですね。

軍地:男女社会参画とかそういうことでわざわざ課題にするよりも、「それが当たり前だよね」という社会ができていくのが一番いいのかなということですよね。

森本:そう思います。

個人個人がギャップを感じない社会が一番の理想

軍地:最後に市原さんはどうですか? 

市原:今森本さんにおっしゃっていただいたことが、まさに今回のイベントの思いのすべてなんですけれども。言葉にしてしまった時点で、もうなんか限られてしまうんですよね。

今回のイベントを企画した時、「なぜスタートアップのファッション企業がアートをやるの?」って不思議がられたんです。でも、アートでないと伝わらないもの、感じ取っていただけないものがあるんじゃないかなと思っているので、こういうお話ができてすごくうれしいです。

軍地:話がなかなか尽きなくて。私たちも先ほど裏で話していたとき、「でも、やっぱり女子は姫扱いされるとうれしいよね」といった話も出てきて。そういった男女を超える・超えないという話よりも、フラットな社会になっていけばいいのかなと思います。

ボーダレスと言われているなかで、私たちがギャップを感じない社会が一番理想的なのかなと思いますね。それは確かに、男女という区別じゃなくても、人として、個人として、その人の着たいものを着る、生きたいように生きる、やりたい仕事をするという時代に変化していけばいいのかなと思っています。

みなさんも今回のこのお話を聞いて、男性も女性も関係なく、近くの方とこういう話をしていただけたらなと思います。解はないと思うんですけれども、こうやって男の人の荷を下ろせばいいし、女の人も家のことをなんでもやらなきゃいけないという荷を下ろしていくということが、みんなのハッピーになるし、次の世代にとっても生きやすい社会なのかなと、今回の司会をさせていただいて感じました。

今回はこのあとインスタレーションを見ていただくんですけれども、まさにこういう課題について、みなさんとこれからも続けて継続的に話し合っていけるようなかたちになればいいなと思っています。

今回はご来場いただきまして、ありがとうございました。登壇のみなさま、ありがとうございました。

(会場拍手)

ダイバーシティとインクルージョンを看板に掲げる渋谷区

市原:実は今日、どうしてもコメントいただきたい方がいらっしゃっていまして。

軍地:はい。今日は渋谷区から来ていただいているんですけど、ちょっとご紹介させてください。

市原:今日はちょっとパーソナルサービスというカテゴリーに当てはまらなかったので、ご登壇いただけなかったんですけれど、ジェンダーの話題のときには必ずなにかおっしゃっていただきたい方です。

永田龍太郎さんという方なんですけれども、もともと前職で同僚だった関係もありまして。いまは渋谷区でダイバーシティの推進をされていまして、このエリアに関してはなんでも語れる方だと思うので、最後にコメントをいただきたいなと思います。

永田龍太郎氏(以下、永田):すみません。突然何者かと思われた方も多いと思うのですが。ルイ・ヴィトン時代に市原さんとは同僚でした。その後、GAPでマーケティングの仕事をして、LGBT周りのことをやっていたこともあって、いま渋谷区で男女平等・ダイバーシティ推進担当課長として、ジェンダーの多様性と平等について、さまざまなかたちで啓発推進をやっております。

コメントと言われても難しいんですけれども、実は今日ご登壇されているみなさまは全員渋谷区を拠点にビジネスをされていらっしゃるのでびっくりしました。渋谷区は、ダイバーシティとインクルージョンを看板として掲げております。こういったかたちでさまざまな視点から「ちがいをちからに変える」お取り組みをされていらっしゃる企業様がいらっしゃるのは本当にありがたいなと思っております。

お話をおうかがいしてちょっといくつか感じたことがあります。やはり女性視点と言いつつも、時代的にすべての人が尊重されるようなサービスのありようだとか、ジェンダーみたいなものが、女性に軸足がありがちなところから広がりつつあるなとひしひしと感じました。

そういったなかで、先ほどあった制服のお話ですね。それはすべての人に性表現の自由があるという人権の話につながっていて。そのチョイスが(LGBTに限らず)どの方にもあることがサービスの設計の段階から組み込まれていっているのは、本当にすごいなと思います。

ポケモンの新作から始まる、子どもたちの性認識の変化

永田:ただ、そういったサービスがあることが、実際にニーズのある方にどういうふうに伝わっていくかというところ、このアウトリーチが実はとても難しいです。学校の制服問題だったりもそうです。「(ニーズのある人が)手を挙げられる状態になるかどうか」というところが、次のステップではないかなと思っています。

そういったなかでは、民間の事業者ですけれども、みずほ銀行さんはメガバンクのなかで唯一、3年前から同性カップルでも住宅ローンが組める対応を始めていらっしゃいます。企業として代々木公園で毎年GWに開催されているLGBTパレードにブース出展しているので、やはり渋谷支店に多くお問い合わせが入ってきて、お店のみなさんも、そういったお問い合わせがあったら「ああ、そうですね」という感じで普通に接客されている空間ができているそうです。

より広い方々にメッセージや姿勢が伝わっていくことで、さらにニーズが掘り起こされていって、かつそういったニーズのある人がいることがくっきり見えていくことがあります。それが、地域社会のなかで一歩一歩「いろいろな人がいるよね」と意識を変えていくことにつながるんじゃないのかなと思います。

最後に、実はお洋服のジェンダーの話なのですが、『Pokémon GO』では、数年前からプレイヤーを男女ではなくスタイルから選ぶ方式になっています。今度のポケモンでも、自分がどうしたいか、服からなにから全部を選ぶような仕様に変わったらしいと聞いています。これは、子どもたちにおいて、相当違う意識のありようが育っていくんじゃないのかなと思っていたりします。……という感じでよろしいでしょうか?

市原:ありがとうございます。

永田:ありがとうございます。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございます。それでは以上にて、アートとパーソナルを融合させました期間限定イベント「BLESS THE DIFFERENCE. 記者発表会」を終了とさせていただきます。本日はお忙しいなか、みなさまお越しいただきまして、誠にありがとうございました。

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