2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:モデラート株式会社
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軍地彩弓氏(以下、軍地):よろしくお願いいたします。本日はこういう機会をいただいて、ジェンダーについて今一度、どうなってきたかについて考えたいと思います。
私がファッションエディターとして四半世紀仕事をしてきて感じていることは、ファッションは今という時代を先に伝えていくすごい手段なのかなということです。
とくに近年、みなさまも男性・女性の役割が変わってきたと感じていらっしゃると思います。ファッションの世界はそれを、先んじて世の中に伝える役割をしていたんじゃないかということについて、一番最初に説明させていただきたいと思います。
(スライドを指して)「ジェンダーとファッション その歴史」と、時代を20世紀の頭まで巻き戻して、そこから話をしていきたいと思います。
モードのスタートは貴族的な男性のトロフィーワイフというか、男性にとっての飾り物であるという時代が、1920年代ぐらいまで長く続いていました。欧米、とくにヨーロッパではそういう時代が続いていました。
それを変えた人が、みなさんもご存じのガブリエル・シャネルです。
軍地:彼女が登場したのはは1910年代。そこから自身のブランドをスタートしてパリのショップをオープンしたのが1920年代。彼女自身が職業婦人として、デザイナーとして独立して仕事をしていました。彼女の起こした革命はいくつかあるんですけれども、その1つに「コルセットからの解放」ということがあるんですね。
男性の飾り物や見世物として、女性の体型を美しく保つためにつけていたコルセットをなくして、ジャージという伸びる素材でスーツを作った。上下セパレートにして、より動きやすいものに変えていったということです。
すぐそこにシャネルのお店があるので、みなさんもよくご存じだと思うんですけど、キルティングバッグってありますよね。ショルダーバッグです。それ以前のバッグは小さくて何も入らないような飾り物のバッグだったのを、実用的に物が入れられるショルダーバッグにした。
もともと軍人が使っていた銃を入れる袋を斜め向けにしたものを、シャネルがバッグに仕立てたところから始まっていて、シャネルが行った女性の解放の第一歩だったと言われています。
1960年代、サンローランが出てきます。これは最近映画にもなっていますけれども、彼のやったことは「男性の格好を女性にする」ということ。ハーブ・リッツなどのカメラマンと一緒に写真を撮っていますけれども、こういったパンツルックをそのままタキシードにしたり、女性が男装するようなものを作り出しました。
軍地:1960年代には、ツイッギーがミニスカートを履きました。来日したときに話題になりました。「ミニがかわいい」って私たちはすごく思うんですけれども、この当時イギリスでミニスカートを穿くことは、貞淑な女性の否定から入ったということなんですね。男性の横に立って家庭を守る存在としての女性ではなく、女性が自分たちで自由をつかみ取り、自由なスカート丈を選んでいった。それがミニスカートだったと言われています。
70年代になりますと、今度はデヴィッド・ボウイが出てきます。ボウイが『ジギー・スターダスト』というアルバムでやったのは、化粧をする男性だったんですよね。化粧する男性や着飾る男性は、80年代の日本で言うとYMOの坂本龍一さんなどもいました。このあとにQueenのフレディ・マーキュリーも出てきますけれども、彼も女性のような格好をすることで女性からも人気が出ました。それがこの時代になります。
そして、この時代に同時に起きたのがヒッピーカルチャーです。ヒッピーカルチャーの中でフラワーチルドレンという女性たちが出てきます。この時はマリファナだったり、フリーセックスだったり、より自由に音楽と一緒にファッションを楽しむと。そこでは役割とかじゃなくて、もうフリーダムを謳歌するような時代になってきます。
そのあと、とくにアメリカではワーキングウーマン……日本ではキャリアウーマンという言い方をしますけれども、男性並みに働く女性が職場に出てきます。このときに流行ったのが肩パッドが入ったジャケットや大きなヘアスタイルです。
ここでも女性は「女性を演じる」部分ってすごく大きかったと思いますね。タイトスカートとハイヒールで5番街を闊歩するような映画も出てきました。こうした時代に、働く女性の社会進出が始まっていくのです。
ちょうど日本において、機会均等法が出てきたのも80年代ですね。このように、女性が職場に進出してきます。
軍地:この頃、アルマーニは逆に「ソフトジャケット」を提案して、女性を肩パッドから解放し始めます。女性がよりしなやかに生きるのを選択し始めた時代でもあるんですけれども、その頃に日本はどうなっていたかというと、バブルですよね。最近も話題になっていたバブル時代。
女性がミニスカートを穿いて肌を露出して、景気に湧いている男性たちの横で女性を謳歌するような時代ですよね。でも、まだまだ女性は「稼ぐ男性についていく」という部分が大きかったのかなと思います。
一方、原宿や渋谷ではストリートカルチャーが始まります。「裏原」と言われているものですけれども、女の子がどんどんジーンズを穿いたりライダースを着たり、男の子のアイテムをかわいく着こなすことが流行っていきました。
2019年の今は90年代ファッションブームなんですけれども。ちょっと厚底の靴を女の子が履いてたりとか、90年代に流行ったものが今新たにリバイバルしていますが、90年代はカジュアルな時代であったと。
それが2000年代に入ると、男の子がスカートを穿くようになるんですよね。男の子も女の子が持っているものをちょっとずつファッションに加えていいんじゃないかということで、例えば女の子が持っているハイヒールなどを、「ヒールの高い靴もいいな。スカートもかわいいじゃないか」ということで、男の子が女の子のアイテムをちょいちょい着始めるということがストリートで起き始めます。
軍地:2010年代になると、LGBTQも含め、ジェンダーレスとジェンダーフリーの時代になります。女の子みたいな男の子だったり、韓流ブームもあったりで、男の子と女の子で兼用ファッションが出てきたり、ジェンダーというものが性別を超え始めます。性別がなくてもいいんじゃないか、洋服に役割はなくてもいいんじゃないかという時代に入ってきます。
この時代の中で、ちょうど2017年に「#Metoo運動」が起きた頃です。初めてクリスチャン・ディオールという大きなメゾンに女性のデザイナーが生まれました。
VALENTINOにいたマリア・グラツィア・キウリが初めてのコレクションで、「We should all be feminists」と書かれたTシャツを着るんですけれども。これはアフリカの女性詩人が書いた言葉で、この頃から#Metoo運動だったり、女性がもっと自由を求める声が生まれ始めます。
ちょうど今ミラノ、パリコレクションの時期ですが、BALENCIAGAが提案しているファッションも、女性と男性のアイテムがほぼかぶっています。(スライドを指して)ルック1は女性で、ルック2は男性です。同じスーツを男性女性、性別関係なく着こなしています。もしくは、もうジェンダーも関係ない。「ファッションは性別で分けるようなものではない」ということが、ファッションにおいて起きています。
ダイバーシティの時代から、ジェンダーの流れがインクルーシブ(包括的)になる。すべてが個人の自由という時代に、フォーカスが変わってきたというのがこれまでのファッションの流れです。ファッションを背景にしたジェンダーの流れをお伝えさせていただきました。
ここまで駆け足だったので、ここからみなさんとトークを自由にしていきたいなと思うんですけれども、スライドに今回のテーマを出していただければと思います。今回のセッションの大きなテーマである「ジェンダーバイアスを超える」というところについて、これからちょっとみなさんと話していきたいと思います。
軍地:今日は、ファッションにもいろんな流れがあって、男性・女性を分けた存在というよりは、男女に共有の価値を見出していったり、男女の対立軸だけじゃなくて、もっとフラットな軸に変えていこうという話をしたいと思うんですけれども。
みなさんが共有しているのは「パーソナルサービスを提供している」ということで、まずそれについてお話をうかがっていきたいなと思います。自己紹介を兼ねながら、まずSHEの中山さんからお話をうかがってもいいですか。
中山紗彩氏(以下、中山):よろしくお願いします。お手元のハンドアウト(事前資料)を見ながら聞いていただければと思います。
私はSHEという会社を2年前の2017年4月に創業しています。自分がSHE株式会社をつくるに至った経緯として、私は小中高一貫の女子校で育ちまして、さっきのお話であったとおり、わりとジェンダーバイアスど真ん中で育っているんですよね。本当に「嘘だろう」と思われるかもしれないですけど、高校生になるまで「女性に働くというアクションはふさわしくない」と思っていました。
軍地:そうなんですか?
中山:そうなんですよ。「女性は男性を支える存在であれ」というメッセージを強く感じる校風下で育ったがゆえに、“女性が働く”という世界観には予てから思いがあって。最近、それを昇華させるための1個の手段として、SHEをつくったところがあるかなと気づいたりしています。
一方ですごく葛藤もしていて、SHE株式会社は「女性のための」と謳って、これまで2年半やってきたんですけれど、今年の春に「Cartier Women's Initiative Awards」という世界共通の起業家のアワードに出たりした経験もあり、今自分の中では“ボーダレス”とかいうワードがしっくりくるようになっていて。、だからSHEについてもなぜ「女性だけのもの」と区切る必要があるのかと。そういうところは今、自分の中でも模索中です。
ちょうど今、新規事業を作っていて、そのもう1つのほうでは「女性のため」と限定しないようにしていて。もちろん自分は女性視点を保有していることが一つの優位性だし、周りに女性も多いから、そのインサイトを活かした事業をつくるのは得意なんですけど。そこでボーダーを引く必要がないなという見解に至っていて、答えを模索しているような日々です。
軍地:ありがとうございます。パーソナルサービスを提供するなかで、ご自身で感じている強みはなにかありますか?
中山:もちろん一人ひとりに最適化するという観点もあるんですけど、まず今までなかったミレニアル世代のインサイトや価値観に合わせるという大枠の概念としても、自分たちは新しいかたちのパーソナルサービスを作っているかなと思っています。
具体的に今提供していることの一つに、女性が自分らしい感性を活かして、時間や場所に融通を利かしながら自分らしく働けるための世界をつくるべく、「SHElikes(シーライクス)」というクリエイティブスクールがあります。
それと最近はもう1つの新規事業があって。洋服って1日15時間ぐらい着ているものですが、今はただの消費対象物として見られがちだと思うんですよね。少なくとも、それを着ることによってなりたい自分になるとか、その洋服がアニミズム的思想で自分の味方でいてくれるとか、なりたい自分に寄り添って導いてくれるような位置づけの服ってないよね、と。
ミレニアル世代の子たちとそういう話をしていくなかで、もっともっと自分らしく生きるところをゴールとしたときに、ライフスタイル領域から寄り添えるアプローチがあるんじゃないかなと思いました。つまり、「なりたい自分になる」といった価値観に寄り添うような洋服を作っているんですね。
軍地:サービスが2つおありになって、1つは女の子をエンパワーするようなスクールをやっていらっしゃるのと、もう1つは洋服を提供されているということですね。
中山:はい。そうですね。パーソナライズというところにフォーカスして話すと、基本的なサービスを提供しつつ、キャリアのほうはグループのコーチングだったり。洋服は、着ていくシーンの提案とか、その人が日々考えていることを発信して、自分の中で昇華できるようなシステムの仕組みとか。
基本的なインプットにプラスして、その人がそれをインプットした上でカスタマイズして自分の中の理想や思いと向き合って最適なアクションができるようなサポートをそれぞれしていて、そこがすごく重要だなと捉えています。
軍地:わかりました。そこはやっぱり、最終的には個人というところに帰結するのかなと思うんですけど。
中山:そうですね。自分らしい人生を実現したいと願う個人のサポートとして現状、25〜35歳の女性を主要ターゲットとして(サービスを)つくっています。
軍地:じゃあ、その女性それぞれが、どうやって生きていくかというところをコーチングされているところもあったり。
中山:はい。コーチング機能ももちろん提供しています。
軍地:次は、「シェアダイン」というサービスをされている井出さんにおうかがいしたいと思います。同じ質問になってくるんですけれども、まずは自己紹介からいただいていいですか?
井出有希氏(以下、井出):私は2000年に社会に出てから、証券会社や金融業界でずっと働いてきたあと、コンサルティング会社に入りました。そのあと2児を出産したことがきっかけで、出張料理サービスを立ち上げた過去がございます。
シェアダインは、誰もが持っているような食の悩みを、診断に基づいてこちらが提案する専門家とマッチングし、その方に実際に訪問していただくことで食の悩みを解決していくという、ホームシェフのサブスクリプションサービスです。
サービスの内容としては、例えば女性の妊娠期から生活習慣病まで、ご家庭の悩みに応じて専門家が1回3時間の訪問で12品ぐらいの食事をお作りしています。4人家族でいくと4日分のお食事、約16食分ぐらいに相当する量を1回で作っていくサービスとなっています。
サービスの価格は1回8,000円ぐらいなので、1食あたりに換算すると600円ぐらいというかたちで、非常にリーズナブルな価格でご利用しただけるようなものになっているかなと思います。
強みという意味でいくと、まずそのご利用者さんのライフステージですとか、食の課題、悩みをデータで取っているので、その方に合ったプランやシェフをこちらから提案します。実際に専門家に相談することで、解決に近いところまで導く点が、高い価値になっていると思います。
軍地:今はお料理をしないという方も多いし、今までは「親が子どもに料理を教えるのが当たり前」って思われていて。だけど、料理ができない人だったり、例えばアレルギーのあるお子さんがいたりとか、旦那さんの栄養管理ができないとか、それぞれの悩みがある。それでたぶん、これがキーだと思うんですけど、実際に家庭をシェフが訪問されるんですよね。
井出:そうなんです。出張することで、キッチンで実際にどういった調味料を使っているかなどがわかるので、「このご家庭はこういう悩みがあるし、こういう味が好きなんだな」とシェフが判断ができる。そして、ご家庭の味に近づけていくことができる。
シェアダインに登録されているシェフの方は、「同じメニューであっても、訪問するお宅によって少しずつ味が違うんです」とおっしゃいます。まさに食の悩みに応えながらその家庭に合ったものをお届けするという、パーソナライズされたところがあるサービスです。
実際にNPS(顧客ロイヤルティを測る指標)をずっと取っているのですが、9.2という高さをずっとキープしています。
軍地:すごい。
井出:継続利用モデル、サブスクのサービスはこの4月から導入したのですが、それまではずっと単発だったものの、現在はご利用者様の6割がこのサブスクを利用されています。継続的にご利用いただく方がとても多いです。
例えばお子様の離乳食を相談していた方が、成長に合わせて好き嫌いの悩みを相談するようになったり、子どもの成長に合わせたメニュー提案が「すごく楽しいです」とか「参考になります」という声をいただいております。
いわゆる子どもがいる世帯だけではなくて、ご自身の健康管理のために使われる方もいらっしゃいます。
例えば妊活していらっしゃる方ですと、妊娠しやすい体づくりをしたいから、産婦人科で指導経験があるような管理栄養士さんに相談して、その時期に必要な栄養素がたくさん摂れるようなものを相談したり作ってもらったりというかたちで、利用者が広がっているのが今の状況です。
軍地:このサービスは女性のお母さんを助けるだけじゃなくて、シングルファーザーみたいな単身者の男性とかも使えるんですよね。
井出:もちろんです。実際に自分たちの課題感からつくったサービスが、今すごく広がりを見せています。
軍地:ありがとうございます。じゃあ次に、LiBの松本さんからサービス紹介をお願いします。
松本洋介氏(以下、森本):はじめまして。株式会社LiB代表の松本と申します。お手元の資料だと下から2番目ですかね。1人だけ男性なので、わかりやすいかなと思います。
私たちは「ライフキャリアプランニング」をコンセプトに、女性に特化した転職支援サービスを展開しております。今までの転職市場は圧倒的に男性がメインの市場で、サービスの7〜8割が男性向けに作られているので、どうしても女性の方々の転職ニーズに噛み合わないんですよね。
女性のが転職する際の大きな動機として、働く面でのキャリアだけを考えているケースは非常に少なくって。自分のライフステージとか今後の働き方とかいろんなものを考えて人生設計を含め、包括的にキャリアを考えている方が圧倒的に多いんですよね。
男性みたいに、「マネジメントする人数を増やしたい」とか「お給料を上げたい」というふうにシンプルではないんですよね。どうしてもそこにひずみがありました。そこで、女性専門のサービスを作りにいったということです。
企業人事も、「女性と男性、どっちを採る?」というような議論はとっくに終わっていて、少子高齢化で働く人数が減る中で、男性という蛇口からしか水が供給できないのか、男女両方から蛇口をひねるのかといったら、どっちが強いかは明白ですので。男子校を共学にしていきたいというようなものがあるんですよね。
ただ、そのときに企業側は求職者のインサイトがわからないんです。「どうしたら女性が集まるのか」「どうしたら長期で働いてもらえるのか」とか。これはまさに時代のはざまといいますか、「女性個人と企業」というところにすごく溝があるので、そういったものをブリッジしたいと考えています。
創業は2014年で、6年目を迎え、現在の会員数は18万人、ご利用いただいた企業様も1,000社を超えています。なかなかのプラットフォームにはなってきているかなと思っています。
軍地:パーソナルな女性の働き方のサービスとして、今までの就活のあり方を変えていこうとされていると思うんですけど。一番のキーになるパーソナルサービスでいうと、なにがあるでしょうか?
松本:僕たちのコンセプトはライフキャリアプランニングで、社内だと「モードチェンジ」と言ってるんですけど。どういうライフステージで、どういう働き方で働きたいかって、本当に大きく変わるんですよね。
これは女性の転職における一番の特徴だと思うんですけれども。なので、そのシーンに合ったモードの転職のパターンをいくつか用意していて、それに合ったレジュメの書き方や企業の推薦の仕方をしています。
かつ、点の転職じゃなくて線の転職で、「将来的に子どもができたときにこう働きたいから、今こういうスキルをつけておこう」という、先を見てちゃんと設計していくことがすごく問われます。
つまり、キャリアプランニングというよりも生命保険に近いんですよね。「こういう人生を送っていきたいけど、こういうことがきっとこの先起きるよね。じゃあ、こういう保険に今のうち入っておこう」という感じの、転ばぬ先の杖発想にけっこう近いので。
なので、僕たちはライフキャリアプラニングと言っているんですけど、そういったコンセプトで設計しているところが1つあります。
松本:あとは、これはすごく根深い話なんですけど。男性はいわゆる職務経歴書のような、自分のことを売り込む書類を書くのがすごい上手なんですよ。だいたい120点ぐらいで書くんですよね。「なんか、実物よりすごいのでは」という感じが多いんです。
(一同笑)
女性の方はまったく逆の場合が多いんですよね。「そんな私、売り込むこととかありません」とか「大したことしてません」というふうに。いわゆるインポスター症候群と言われるように、自己評価が低いんです。なので、そういったところを我々がちゃんとプロとして、「いや、客観的にはこうですよ」ということを見つけていったり。
あと、言葉にできないスキルがすごく多いです。ホスピタリティがあるとか、1回決めたことをやりきるって、資格でもなんでもないじゃないですか。だけど、すごく問われるような資質なんですよね。なので、その個人が持っている資質をタグづけしていく。
企業の中で評価されている資質もあるわけですよ。簡単に言うと、活躍している社員や「うちはこういう人を採りたいんだよね」というロールモデル社員のような人がいるわけですよね。「新卒3年目の田中っぽいやつが欲しいんだよ」みたいな話があるんです。
その活躍社員を分解していくと、その会社で評価されているタグがわかるわけです。そのタグとタグをマッチしていくことを我々はカルチャーマッチと言っているんですけど、それを自動で行う「カルチャーマッチングシステム」が、うちのプロダクトの特徴です。
軍地:女性の家事に含まれているすごいスキルがあって、それが名もなき家事と言わていたりしますよね。ちょっとバズっていたりしましたけれども、そういうもの可視化していくと。すごく今どきですよね。
あとはライフステージというか、やっぱり女性は出産や育児というものがあります。結婚して出産して育児をする、そのあとには介護みたいなことがあるけど、男性の道はけっこう一本道に見える。それに比べると女性のキャリア選びのほうが、ものすごく細かな気遣いというか、先を見据えたキャリアマッチングが必要だということですよね。どちらかというと男性のためになるサービスを提供していらっしゃるんだなと思いました。
松本:ありがとうございます。
軍地:それでは次は、森本さんから「FABRIC TOKYO」について。今ちょうど、ご自身で着ていらっしゃるお洋服もFABRIC TOKYOのですよね。
森本萌乃氏(以下、森本):はい。そうです。FABRIC TOKYOはメンズオーダースーツのパーソナライズサービスを展開している会社で、プランナー・企画として入りました。
うちは一度来店して採寸してもらうと、そのデータがクラウドに保存されて、自分のサイズのスーツをいつでも買えるというかたちで、もう生業がパーソナライズとなっています。
アパレル業界は、例えば大量廃棄や在庫過多といったいろいろな問題があるんですけど、そういったなかで「パーソナライズして作れば環境にもやさしいし、自分のライフスタイルにも一番寄り添えるものだよね」ということで、「Fit Your Life」というブランドコンセプトを掲げて、「心にも体にもフィットしたスーツを」というビジョンのもとで、今展開しています。
そのFABRIC TOKYOがメンズファッションを展開しているなかで、この夏に「このメンズのパターンを使って女性にスーツを展開できないか?」という企画を、試験的に実施しました。
そこで「SOÉJU」の市原さんや軍地さんとも話していたんですけれども、「今の時代が求めるファッションのあり方って、もうジェンダーとかを超えて、圧倒的に『自分ごと』だよね。パーソナライズって大事だよね」という話のなかで、求めているものに応えられつつあるのかなというのが、この企画の感触としてあります。
軍地:表参道でされてるんですよね。
森本:そうなんです。今、関東・関西で15店舗ぐらいあるうち、表参道だけで試験的にやった企画です。
軍地:これは型が男性なので、肩のシルエットも男性ですね。今森本さんが着ていらっしゃるジャケットもちょうどそうなんですけど。裏地などを見ると、よりメンズ寄りの仕立てというのがわかると思うんですけど。着てみてどうですか?
森本:そうですね、男性もののジャケットって丈が長いんですよね。吊るしもそうなんですけど、うちのはオーダーなので丈を自分で調整できます。あとポケットが多いのと、肩パッドがきちんと入っているところ。あとシェイプがきゅっとしていて、これはゲージと言うんですけど、わりと直線的に出るのがポイントかなと。
私はふだんからこれを着ているんですけど、うちの社員はみんな、自分用にスーツを作っています。自分の性的指向とまったく関係なく、こんなに楽しくファッションを日々謳歌しているのに、それを届けられないのはちょっとおかしいよねということで、女性の社員やお客様の声を中心として、今回は試験的に実施したという感じです。
軍地:タイミング的にも、他社さんでメンズ仕立てのジャケットやオーダースーツが、この秋のトレンドとして出てきていて。私もすごくおもしろいなと思っているんですけど。今年はジャケットやパンツスーツがすごくトレンドなんですね。しかもトレンドのスーツって、先ほど私が説明したような「女が男を演じるためのスーツ」じゃなくて、男と女が共通のシルエットを着ているというのが、今年はとても顕著だなと思っています。
さっきのBALENCIAGAでお見せしたのも、男性と女性が同じシルエットの服を着ている。多少肩幅の違いとかはあるにしても、共通のシルエットや仕様でいいんだと。男性用・女性用という対峙じゃないところがすごく今どきだし、実際そのサービスを受けられるお客様も思ったよりも増えていたんですよね。
森本:そうですね。弊社からの発信も徹底して、性的指向やマイノリティ、多様性という言葉を使わずに、あくまでも「ファッションとして着たいものを着たい」という、その気持ちに寄り添うことを一貫して伝えてきました。
来てくださった方の中には、心と身体の性がちぐはぐで悩んでいる方もいらっしゃれば、ただただメンズライクなスーツを着たい人もいる。女性のスーツが嫌いだけど、単にスーツを着なきゃいけないからという理由で選ばれる方もいます。そういった、本当に着たいものを着たいというのを、選択肢として増やせたことがうれしいなという感じですね。
軍地:そこがすごく今っぽい。今まではやっぱり「女性管理職は何を着ればいいの?」って、すごく聞かれるんですよね。やっぱり男社会に女として入っていくよりも、フラットに働く同僚として入っていくほうがよくて。今は女性が男を演じる必要はないんじゃないかという流れが来ているのかなと思います。
軍地:では最後、市原さんのお話に戻りましょうか。市原さんのサービスの中で、パーソナルサービスの強みというところで感じていらっしゃることをうかがってもいいですか。
市原明日香氏(以下、市原):ありがとうございます。私は冒頭の講演で概要についてお話しさせていただいたんですけれども、実は今日お呼びした方々の、いろいろな要素がミックスされているなと思っていて。それもあって今日はお声がけしたんですけれども。
井出さんがおっしゃっていたような各家庭の冷蔵庫の中身とか、扱っている調味料がわかるからこそ、パーソナルなサービスが提供できるところは、私たちだとお客様の持ち物がわかるというところです。
本当におもしろいなと思うのが、例えばスタイリストと話していると、「シンプルな服をステキに着こなしたいんです」とおっしゃっている方が、実際クローゼットを拝見するとすごく特徴的な服をお持ちでいらっしゃったりとか。けっこうご自身がお持ちのものと自己像が実際とずれていることもあって。そのあたりをわかった上でご提案するという「機微」が、すごく強みかなと思います。
軍地:ありがとうございます。
モデラート株式会社
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