2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
リンクをコピー
記事をブックマーク
佐藤尚之氏(以下、佐藤):こんにちは。はじめまして、佐藤と申します。今から30~40分ほどお時間をいただきまして、ファンベースというお話をさせていただきたいと思います。
今ご紹介いただきましたように、『ファンベース』という本を、去年の2月に出しまして。昨日増刷になったのですが、じわじわ売れている感じです。
僕はずっと電通という会社で、いわゆる新規のお客さまを取っていくとか、広告で人を動かそうとすることをやってきたんですね。自分の自己紹介的に言うと、電通という会社に25年以上いました。
今は独立してやっているんですけど、電通ではクリエイティブのところで、いろんな雑誌や新聞、テレビ広告、ネット、ソーシャルメディアなど、ほぼすべての媒体メディアをやったかなと思っています。
それを含めて「コミュニケーションデザイン」という、コミュニケーション全体を構築する仕事をやっております。ですので、新規のお客さんを取るということに関しては、もうずっとやってきたものですから、詳しいというか。そこのプロではあったんですね。
ですが、今は逆にそっちは難しい。ファンもしくは経験をした方からの口コミとかじゃないとほぼ伝わらない時代になっているという思いがあって、今はファンベースという方法をやっているところです。
ちなみに、もうちょっとだけ自己紹介があります。自分のサイトをずっとやっていて、ネットは1995年からやっています。まだYahoo!もGoogleもなかった時代からやっていますので、相当詳しいことは詳しいです。
それでも、今はほとんどネットで伝わるかというと、なかなか難しい。本当に生の声じゃないと伝わっていかない部分があるなと実感をしています。
あとは自分でこういうサービス(ジバラン~自腹覆面レストランガイド~)を立ち上げてやっていたり、本も書いたりしたんですけど、本業では3冊です。今申し上げたとおり、新規のお客さんを取っていくようなことの方法論を書いています。
そういうことを散々やったあげくに、今はファンたちを大事にする、既存のお客さまが大事だという方法になりました。今日はそのお話をしたいと思います。
本当にいろんな観点からお話しできるんですけど、今日はブライダル業界やウエディング業界に近づけてお話をさせていただけたらなと思っています。
ファンベースとは何かと言いますと、ファンを大事にすることだとわかると思います。なんですけど、それをベースにして売上げを上げていきましょう、というやり方です。
これはいろんな消費財や車、飲み物などにもだいたい当てはまる考え方なんですけど、ウエディング業界にも当てはまると思っています。新規のお客さまよりも既存のお客さま。既存のお客さまというのは、結婚された方ですね。そこで式を挙げたり、披露宴をされた方です。
その方々よりも、もう一歩行って、ファンを大事にすべきだろうという考え方ですね。ただ、ご存知のとおりというかモヤっとされるとおり、結婚は一生にほぼ1回ですよね。
なかには何回もされる方もいらっしゃいますけど、同じ式場を使うとか、同じことをやる方はあんまりいないと思います。そういう意味で1回ですね。みなさんはたぶん通り過ぎていくお客さまであろうと。
つまり新規のお客さまを、新規の顧客をつかまえるほうが大事なんです。もちろん今来てくださっているお客さまにもいい体験をしていただきたいけど、そのなかでファンにまでなってもらう必要があるのか、という話だと思います。
ですが、新規のお客さまの集客がこんなに難しい時代はないです。もう25年30年、33年間やっていますけど、こんなに難しい時代ないと思っています。今日のお話としてはとくに、広告とかタイアップ記事とか、そういったものはほとんど効かなくなってきているんじゃないかと。
もちろんそれで見てくれる人はいます。いますけれども、打率はどんどん下がっているし、みなさんそんなに簡単に読んですぐに申し込みをするかというと、なかなかそうもいかないだろうと。
そういうのが現状であることを、3つの観点から簡単にお話ししたいと思います。社会性などの部分もあると思いますので、パパッといきたいと思いますが、1つ目は「情報が多すぎる」こと。
もちろん自分にとっては「結婚する」と決めていて、式場とか披露宴の会場とか、そういったものを探すときには自分が親身というか切迫した話ですので、ちゃんと探しに行きますよね。
それにしても多すぎて探せないのが今であるというお話を簡単に説明します。今『ファンベース』という本が最新刊で、この一つ前に『明日のプランニング』という本を書いたんですけど、そのなかで「情報“砂の一粒”時代」という造語をつくりました。
つまり、今の生活者は異次元の情報に囲まれているんです。我々送り手側は「いい情報であれば届くだろう」と思いがちなんですけど、ほぼ届かないと思った方がいい。すぐに忘れてしまうのが今です。
(スライドを指して)これはインターネット上に普通に転がっているグラフですけれども、例えばこのケーブペインティング、いわゆる洞窟絵ですね。洞窟絵は人類が情報を残した最古の例です。洞窟に動物という情報の絵を残して。あれが人類最古の情報の例なんです。
そこから時系列で、横軸です。縦軸は情報量。ライティング、書くことが発明されて、ペーパーが発明されて、プリンティングが発明されて、人類は延々と情報を積み重ねて来ているんですけど、この何万年間に積み重ねた情報量の合計よりも、2000年・2001年・2002年の3年間で世の中に流れた情報のほうが多かったという図です。跳ね上がっているわけです。
これはほとんどアナログの情報量なので、例えば世界中にある図書館に積み重なった情報量もここにぜんぶ入っているわけです。それでもそれをたった3年で抜いてしまう。2003年までにこんなに抜いたという話ですよ。
この時点で「もう世の中に流れている量の99.996パーセントの情報は人々にスルーされますよ」と。みなさん、すごくいい企画を出したとか、そういうふうにしても、ほぼスルーされていく。0.004パーセント、10万出して4しか情報は伝わらないと言われていました。
(スライドを指して)この後、もっとひどいことが起こります。先ほど2003年でこんなになっていましたよね。赤い点がちょっと小さくて申し訳ないのですが、この赤い点が2006年なんですね。(グラフの1点を指して)ここは2003年から1年くらいしか経っていないんです。
なぜそんなことになったかというと、ずっと紙みたいに薄いんですけど、この後、情報量がこんなに上がるからです。今我々は、本当にもう人類が誰も経験したことのない情報量に囲まれているんですね。
(スライドを指して)2007年にはそれまでに書かれた書籍、情報量合計の約300万倍になります。たった1年間でそうなったんです。2011年にはその1万倍の1.8ゼタバイト。2011年は今から7年前、8年前です。そして1年間に1.8ゼタバイト。
これどういう量かというと、だいたい1ゼタバイトが世界中の砂浜の(砂の)数だそうです。無限です。無限中の無限ですね。湘南海岸の砂粒の数でも無限だと思うじゃないですか。
なんですけど、それが世界中です。アフリカ大陸、ユーラシア大陸、北米、南米大陸、全部の砂浜の砂の数が1ゼタバイト。それが2020年には35ゼタバイトになっている。つまり世界中の砂浜が今の35倍になって、そのうちの1粒が1バイトみたいな。そのぐらいの情報量に囲まれているのが今なんですね。
それだけ情報がいっぱいやって来ると、我々もなかなか受け止めきれない。送り手側はすごく大事に思っているので「届くだろう」と思うんですけど、受け手側に立つと本当にわからない。
マーケティングでは「それをちょっといい動画にして、ストーリーとかをつけて送ったりすると意外と届くんじゃないか」と言われたりしますけど、届くわけもないですよね。
例えばYouTubeだけでも、1分間に400時間分の動画がアップされます。これを1日分見終わるのには65年かかります。つまり1日で65年分の動画が毎日毎日アップされているわけですね。そのなかで自分たちが作ったいい動画が相手に届くかというと、ほとんどが無理です。
これはYouTubeだけでの話です。それ以外にもTikTok、Netflix、映画やテレビがあるとなると、もうなかなか見てくれない。情報が多すぎて、みんな本当にうんざりしているのが今です。人類史上、誰も経験したことのない情報量なんです。
昔は情報がありがたかったし、探してくるというか、探せばなにかしらに行き着いて「よかった」と思うことが起きたんですけど、今は本当に「うざい」と思ってしまうんですね。
検索したら手に入るけれど、検索もほとんど無理です。例えば「結婚式場 東京 おしゃれ」とやっても、600万件出てきます。この600万件も、アルゴリズムでいろいろと変わりますけれど、一般的な東京のおしゃれさですよね。
つまり自分が求める立地にぴったりの、おしゃれな式場を探すのはほぼ無理です。(それが検索の)上のほうに来るとは限らないし、600万件すべて見るわけにもいかない。つまり今みたいに情報が多すぎると、検索が不便なんです。
みんな「検索は便利」と言いますけど、ウソです。自分の価値観に合うような式場やハウスを選ぼうとすると、検索は基本的に不便です。かといって雑誌に載っているような広告記事はというと、「いろいろときれいごとになっているよね」みたいな話はバレているんです。広告的なものはとっくにバレている。
とくにSNS時代になってから、だいたいみんな裏側を読んじゃうのでバレている。つまり、本当に自分にぴったりないいところはわからないんです。送り手側としては伝えたいことがあって、ここを選んでほしいわけですよ。でもそういったことがほとんど届きにくくなっている。ここは我々プロでもなめている人がいます。
情報が多すぎて、基本的には圧倒的に絶望したほうがいいぐらい情報は伝わらないし、一瞬しか見てくれないし、見てくれたとしても、すぐに通り過ぎてしまうんです。一般的な商材で興味関心のないものであればとくにそうですね。興味関心がある式場やホテルだとしても、情報が多すぎて何を選んでいいか本当にわからない。
(2つ目として)しかも超成熟市場です。超成熟市場というのは、物が多くてどれもクオリティが高いことです。そうなると選び放題なわけです。ゲストハウスも、式場も、ホテルも選び放題なのは幸せだと思いがちですけど、選ぶ方からすると基本的に選べなくなってしまうのが超成熟市場です。
これには「ジャムの実験」という有名なやつがあります。あるスーパーで品揃えを豊富にすると売上げ伸びることを証明しようとして、ジャムを24種類置いたのと6種類に絞ったのと、両方を比べたんです。
スーパーとしては24種類を並べた方が売れるに決まっていると思ったらまったく逆で、24種類の売り場では3パーセントの人が買った。6種類の売り場では30パーセント。10倍も違ったんですね。つまり選択肢が多いと、人は選ぶのに悩んでしまう。失敗したくないから(選んだものが)いいのかわからなくなってきて自信を失って、選ぶのをやめてしまう。
超成熟市場とは選べない時代。そういう市場なんです。失敗したくないけど、どれが一番いいかわからないし、目移りしてしまうし、決められない。情報も商品も多くて、どれもクオリティが高いからほとんど選べない。
どれを選んでいいか、みんな本当にわからなくなっているんです。だから「お得なチケット」みたいな、「こっちよりこっちのほうが得する」「お得だからいいか」みたいになっていってしまったりする。それは消耗戦ですよね。どんどん安くしていって。そういうのが起こると思います。
3つ目はメディア、媒体ですね。そういったものも、今流行りのインフルエンサーなども信用されていない。これもデータできちんと出ています。
(スライドを指して)これはニールセンですけど、信頼できる情報源として知人・友人が90パーセント。あとはテレビ・新聞・雑誌、これぐらいしか信用されていなかったりする。検索結果ですらこんな感じだったりします。
(スライドを指して)もう一個お見せすると、これは世界で一番大きなエデルマンというPR会社が出したものです。さっきのデータは日本でしたが、これも日本です。家族や友人が一番信頼できる情報源と。専門家やCEOやジャーナリストよりも、圧倒的に家族や友人なんです。
みなさんたぶんお気づきだと思いますけど、有名人。有名人に言ってもらっても信頼感はないんです。オンライン上のインフルエンサー、これもぜんぜん信頼されていない。結局家族や友人なんです。
つまり、メディアやインフルエンサーは、我々が思うよりも信用されていないのが今です。本当に届かない。どうしていいかわからないのが今の状況かなと僕自身は思っています。
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2024.11.20
「元エースの管理職」が若手営業を育てる時に陥りがちな罠 順調なチーム・苦戦するチームの違いから見る、育成のポイント
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.15
好きなことで起業、赤字を膨らませても引くに引けない理由 倒産リスクが一気に高まる、起業でありがちな失敗