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新ブライダル集客戦略 〜媒体依存の集客モデルからの脱却〜第1章(全4記事)

『ファンベース』の佐藤尚之氏が説く、“二度と会わないかもしれないお客さま”もファンにすべき理由

2019年6月18日、日本最大級の花嫁コミュニティmaricuruが主催するイベント「新ブライダル集客戦略 〜媒体依存の集客モデルからの脱却」が開催されました。晩婚化や少子化の影響で、結婚式数が減少し、行き過ぎたギフト券合戦で見込みが低いお客様ばかりが来館するなど、集客戦略の転換を迫られているブライダル業界。そんななか、結婚式準備や式場探しの情報収集に利用されているのが「Instagram」。本イベントでは、アンバサダー (ファン) 花嫁のInstagram発信による新規集客や、Instagramマーケティングを活用した集客方法を業界のキーマンをゲストに迎え、徹底解説していきます。本パートでは、『ファンベース』著者の佐藤尚之氏が、大量の商品やサービスがあふれるなかで、選ばれるカギとなる3つのポイントを紹介しました。

価値観が近い家族や友人が信頼される時代

佐藤尚之氏(以下、佐藤):(情報が届かないことに対して)どうすればいいのかというと、今日はウエディング業界やブライダル業界に少し近づけてお話ししますが、ファンベース的な見方から伝えることです。ポイントは3つかなと思います。

「ホモフィリー」「機能価値より情緒価値」「Through the Community」。それぞれあんまり聞かない言葉だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんので、一つひとつ簡単にご説明したいと思います。

「ホモフィリー」は、今お見せした図にかなり近い話なんですけれども、家族や友人が一番信頼できる情報源であるということ。みなさんに家族や友人の顔を思い出してほしいんですけれど、やっぱりそんなに情報通じゃないし、すごくセンスがいいわけでもないと思うんです。

情報通でもなく目利きでもない家族や友人が、どうして信頼されるのか。ちょっと前の時代は、今よりもっとメディアは信頼されていましたが、今は家族や友人が信頼されるんです。なぜかというと、友人や家族は価値観が近い人だからです。

情報も商品も多すぎて選べない時代に、我々が何を羅針盤にしてものを選んでいるか、買っているかというと、価値観が近い人が選んだものを買っているんです。

価値観が近い友人が気に入った式場や、友人がファンになったホテルといったものは、自分もそうなる可能性が高い。そういう観点をみんなが信用するというか、そこに頼って生きているんですね。

日本語では昔から「類は友を呼ぶ」という言葉がありますよね。これは非常に正しいことだと思います。これは何を言っているかというと「友は同類だ」という意味です。類は友を呼ぶ。つまり友は同類だという意味です。価値観が同じ、同類であると。

その同類が選んだ式場やゲストハウスは自分も気に入る可能性が高い。このことをざっくりホモフィーといいます。同じような属性や価値感を持つ人とつながろうとする人間の傾向は、(スライドを指して)ちょっと難しく書いてあるんですけど、簡単に言うと我々は多様な人と付き合っているように見えて、似た人としか付き合っていない傾向があるという話です。

価値観が近い友人からのオススメが最強であるワケ

とくに情報も商品も多かったりすると、みんなが似た人と付き合っていきます。時代や社会が伸びているときには、いろんな人と付き合おうという方向に行くんです。今はどんどん閉じていますよね。似た人と付き合っています。同質性とも言います。日本語で言うと類は友を呼ぶ。似たもの同士とか、わかりやすい言葉ですね。

人は似た者同士の相手に親近感を持ちやすい。これは当たり前です。また、似た者同士の相手から影響を受けやすい。先ほども情報がめちゃめちゃ多いということがありましたが、さらに超成熟市場で、日本ほど商品が揃ってクオリティも高い国はないと思います。

過剰に多すぎるこの時代では、価値感が近い友人からのオススメが最強なんですね。結婚の話に寄せると生々しいので映画の話にしますけど、例えばインドアカデミー賞最多16部門を独占した『きっと、うまくいく』という映画を観た方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

いい映画ですよね。(会場に向かって)泣きませんでした? 泣きますか? すいません、強制的に言ってしまって。素晴らしい映画なんですけど、これが例えば自分のタイムラインに流れてきたり、ポスターやCMで見たとして、観にいきますか? 観に行かないですよね。『きっと、うまくいく』。「インド映画? 踊るんじゃないの?」と思いますよね。踊るんですけど。

(会場笑)

なんですけど、やっぱり観ないですよね。でも、(スライドを指して)これは僕の友人ですけど、その友人が2回目の投稿で「インド映画の『きっと、うまくいく』マジ泣けます」「インド版あまちゃんと思う」「感動した」「5回くらい泣く」という話を書いている。要するにホモフィーなわけです。

まったく似通っているわけじゃありませんけど、ある種の価値観が近いから友人なんです。そういう友人が「絶対おもしろいよ」と言う。ごまんとある映画のなかで(自分で選んで)2時間を費やすのは大変です。

「ファン」が新規のお客様を連れてくる

そんななかで「じゃあこれ観てみようかな」と動くのは、友人が言ったからなんです。そうじゃないと動かない。最近では『カメラを止めるな!』。これも予算の少ない安ホラーですよね。知っている役者は誰も出ていないような。

そういう映画観に行くはずがないんですけど、友人たちが大騒ぎしていたので観に行ったらば、やっぱり。つまり同質なやつらがみんな「これおもしろいよ!」「俺もホラー嫌いなんだけど、観に行ったほうがいいよ!」と、すごい勢いで薦めてきて。

それで重い腰を上げて行ったら、最高でした。『ボヘミアンラプソディ』もみなさんご存知だと思いますけど、クイーンは僕が中2のときにデビューしているんですよ。だから、ここでフレディ・マーキュリーのパチもんみたいなものは観たくないんです。

(会場笑)

クイーンのイメージが壊れるかもしれないし。だから絶対に観るまいと思っていたんですけど、周りのホモフィーたちが「大丈夫!」「ぜったい感動するし、そんなパチもんじゃないから」みたいな。

そんな感じで言われて、「ほ〜」と思って観に行ったら、やっぱり最高でした。最近では『アベンジャーズ』もそうです。これは1から予習するのが大変なんですけど、全部予習して観にいきました。これも友人たちが言ったからです。

なので、情報や商品が溢れかえるこの時代には、価値観の近い友人・家族からのオススメは最強なんです。その上、例えば式場・ホテル・ゲストハウスのファンから友人に熱心に薦める。

この人が「ここがすごく好きなんだ」とすごく好きになった人ならば、そこには熱量があります。つまり価値観が近い上、熱意を持って人に「これ、絶対いいよ」と積極的に薦めてくれるとなると、最強中の最強になる。

つまり、目の前のお客さまをちゃんとファンにすること。1回ごとに通りすぎていく人たちで、もう二度と会うことはないかもしれないけれど、その方々をファンにしていくと、その周りにいる人たちにすごく影響を与えるんですね。ファンは、情報を伝えるのが難しい新規の顧客を増やしてくれるんです。

超成熟市場では、差別化ポイントがすぐに陳腐化する

なぜファンが大事なのか。次はそこにちょっと近い話をします。「機能価値より情緒価値」。これはなにかというと、超成熟市場の話です。超成熟市場はUSPが陳腐化するんですね。USPは、ユニークセリングプロポジション。簡単に言うと、差別化ポイントです。

「ほかの式場さんと、うちはここが違う」「ほかのホテルとは、うちはここが違う」という商品特徴がありますよね。その特徴は陳腐化してしまうんです。(スライドを指して)例えば、これは12年前に発明されたiPhoneの初代、初号機です。

これはもう、先端技術が全部詰まっている大発明だと思うんです。50年のなかに1本と言われています。でも、こんなにイノベーティブな商品ですら、たった数年で他社に追随されたわけですよね。スマホとしてほぼ真似されてアンドロイドが出てきた。

そして普通になって、陳腐化して、今や売上げでも世界的にiPhoneは追い抜かれています。つまり、先行商品は商品特徴USPです。USPが優れていればいるほど、後発に研究されて真似される。その上に研究されるから付加価値をつけられて、安くされて陳腐化する。

例えば、あるゲストハウスがすごく流行っていると。すると我々がそこに偵察に行って、どこがいいのかを調べて、いわば真似していくわけです。いいところをちゃんと取り入れたりする。そういうふうに後発にすぐやられてしまう。

だから、我々やみなさまがすごくいい商品特徴を持って、どんどんやって、新しいサービスを開発したとしても、すぐに追いつかれてしまう時代なんです。つまり、みなさんのUSPもすぐに普通になってしまう。

どんな新機能も、共感・愛着・信頼には敵わない

もう1つの例だと、「30分で届くドミノピザ」。当時は大ビックリというか、もうめちゃめちゃビックリしました。「え!? 今家から電話して30分でアツアツのピザが玄関に届くわけ?」と、発売時は驚いたわけです。当時は圧倒的なUSPです。でもピザーラ、ピザハット、サルヴァトーレも「30分で届く」と、次々に出ました。

つまり、すぐに追随されてシリーズ化されて、いろんな味が出されて、安くされて陳腐していくわけです。ドミノピザは最初は売上げが増えたと思うんです。一瞬はすごい発明をしたから。

それで新規顧客が増えたと思いますけど、でも、その貴重な機会に「30分で届くから買ったんじゃなくて、俺はここが好きで買ったんだ」「ドミノピザが好きなんだ」というふうに、感情でファンにしておかないといけない。

それがないと、ピザーラ、ピザハットなど後発で研究したものが出てきたときに負けてしまうわけです。機能価値などがすぐに陳腐化してしまうのが、なんでもクオリティが高い超成熟市場の問題点です。

今までは広告にしても、タイアップ記事にしても、自分たちの特長であるUSPをコピー化してビジュアルを作ってやっていくわけですよね。でも、そんなものはすぐに陳腐化するんです。そうじゃなくて、感情をつけていかないと。

つまり機能価値じゃなくて、情緒価値をつけていかないといけないんです。やっぱり共感、愛着、信頼とかそういったものですね。そういったものをつけていきましょう。

だからこそ、感情で好きな人がファンです。ファンは機能で好きになるのではなく、感情で好きになります。その人たちを作ると、その人たちが周りに言いたくなる。アンバサダープログラムもそうだと思いますが、そういうふうになっていくのが大事なんですね。

機能や特長はコピーできても、情緒はコピーできない

『ファンベース』の本では、これを3つの観点から(考えて)、共感・愛着・信頼を作っていったほうがいいんじゃないですか、と。要するに情緒価値である感情をつけるという話です。そのためのいろんな施策を書きました。

ファンベース (ちくま新書)

今日はそのお話をする時間はありませんが、そういう感情を、ちゃんと物事にまとわせましょう。みなさんも式場やゲストハウス、ホテルなどに、単なる機能以外にも情緒をちゃんとつけていきましょう。これが大事です。

そして、共感・愛着を作ったならば、それをよりアップグレードしていく。共感を熱狂に変えていく。愛着を持ったならば、もう唯一無二の「私は本当にこれじゃないとダメなの」と。

あとは信頼を持ったら、それをより応援にまで結びつくような施策も作っていく。機能価値はすぐに真似されます。機能価値はコピーできるけど、情緒価値は感情なのでコピーできない。そこをちゃんと作らなきゃいけません。「作らなきゃいけない」と言うと偉そうでよすね、ごめんなさい。

だけど、作らないと戦えない。機能や特長はすぐに追いつかれる。なので、みなさんは情緒価値を作っていかないといけない。(今回のお話だと)情緒価値を持っているのは、1回そこで式を挙げたファンたちです。

つまり花嫁たちなんですけれども、その方々に機能として「きれいだったね」という話ではなく、感情で好きになってもらう。そしてそれを周りに発信してもらう。そこが非常に大事ですよ、という意味です。

自分と何らかのつながりのある人は150~500人くらいいる

3つ目は「Through the Community」。これはなにか。例えば、結婚前の人の話だと思ってください。(スライドを指して)人はだいたいこういうつながりを持っています。これは強い紐帯と弱い紐帯で、「ストロングタイズ」と「ウィークタイズ」と言ったりします。

だいたい15人から2、30人が強いつながりで、弱いつながりが150人から500人ぐらいと言われています。社交的な人で500人くらいですね。

150人くらいは弱いつながりで(つながって)いると言われています。これは「トライブ」と言われたりしますけど、それぞれにつながりがあります。例えば、おいしいものを食べるのが好きなつながり。高校時代のバレー部のつながり。もしくは〇〇のつながりとか、人はそれぞれにつながりを持っているんです。

それは意外と重なっていないと言われています。みなさんもたぶん、いろんなつながりを持っていると思います。飲み友達とか、ゴルフ友達とか。

そして、結婚した方々が結婚前の方々に、なにかしら「あそこよかったわよ」と言ってもらいたいと思われていますよね。ここで、だいたいこの人たちがこう言って影響を与えておしまいと考えるのが一般的な考えです。

要するに口コミというのは誰かが誰かに言って、影響を受けて、式場を選んでくれた。よかったね、という話なんです。でも、それじゃダメなんですね。

コミュニティは商売の場ではなく、情報を広める通り道

(スライドを指して)これは、AWSというAmazonのWebサービスをすごく成功させた、小島さんという方が作ったスライドをそのまま貼っています。つまり、「これよかったよ」「AmazonWebサービス、すごくいいよ」というものを、あるコミュニティ、つながり、グループに言ったんですね。

ここで、「じゃあ、AmazonのWebサービスを入れてみよう」と(そのグループの人たちが)入ってくるのではなく、「Don’t Sell to the Community」。この方々に売るとか考えちゃダメですよ、という話なんです。

そうじゃなくて、この方が友人たちに言ったことを……例えば結婚前の、ちょっと結婚を考えている自分のグループのつながりがあるのであれば、その人たちに言ったりする。すると「〇〇から聞いたけど、こうらしいわよ」「いい情報があった」となって、それが周りの人に影響を与えていく。これが「Through the Community」です。

その方々にここ(コミュニティ)で商売しようとするのではなく、この人たちを取り込もうとするのでもなく、この方々がそれぞれにつながりを外に持っているんですね。この方々が言いたくなるように、ここを設計しないといけない。そうじゃないと広がらないんです。

(スライドを指して)なので、この方々と花嫁さんがつながりを持っている。そして、このつながりの中の方々は、また別に外側につながりを持っているんです。そして、その方は、さらに外側につながりを持っている。

ここで式場を選ぶなどの商売が起こるのではなく、この情報がコミュニティの外側に出ていくように、ほかの人に言いたくなるように設計をする。それが「Through the Community」なんです。

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