サイボウズの「モチベーション創造メソッド」とは?

水野梓氏(以下、水野):まずは青野さんに、働き方・子育て・選択できる別姓についてお話しいただいたんですけれども、ここからは少しずつ青野さんに深堀りの質問をしていけたらなと思っております。

そのあとには、会場からのみなさまのご質問などを受けていただければ。ちなみに今日はいろんなテーマが大きく3つほどに分かれているんですけれど、働き方について聞きたいなと思っている方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

けっこういらっしゃいますね。子育てについて聞きたい方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

では、選択的夫婦別姓が聞きたいという方は。

(会場挙手)

同じくらいの感じですね。

青野慶久氏(以下、青野):同じくらいですね。

水野:はい。では同じくらいの感じでお伺いしていければなと思います。まずは働き方なんですけれども、先ほどもありましたようにwithnewsでは、転勤や副業などをテーマに取り上げていたんです。

私は仕事のやりがいのお話をちょっと聞きたくて。サイボウズさんの著書(『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』)の中に「モチベーション創造メソッド」というのがありますよね。

青野:はい。

水野:これはどういうメソッドなのか。それをおうかがいできればと思います。

「やる気」の3つの要素で、モチベーションをマネジメント

青野:なるほど。仕事で「モチベーションが上がった」「下がった」とか言うじゃないですか。私はよくメンバーに「青野さんの発言でモチベーションが下がりました」とか言われて、カチンとくるわけですよ。

(会場笑)

「お前の下がったモチベーションとはなんだ」というのを探求していたら、いろんな人が言われているんですけど、3つの要素があると。やる気に満ち溢れているときには3つの要素があって、1つは「やりたいこと」かどうかということですね。

自分がやりたいと思えることだったらモチベーションは上がる。それは当たり前だと。それだけじゃなくて、やりたいと思っている上に、「できること」だと思っていないといけない。「やりたいけどこれは無理」と思っていたら、モチベーションはなかなか上がらない。

手に届かないところにあると、やっぱりジャンプしたいとは思わないからね。できると思っていないと。もう1つは、「やるべきこと」という使命感を与えておかないと、人はやる気にならない。これはどちらかというと外部から与えられるものですね。

「あなたにそれをやってほしいんだ」と言われたら、なんかやる気が湧いてきたという感じです。この3つの要素が被っているところを選ぶと、とてもモチベーションが上がる。もし今モチベーションが下がっているとするならば、そのどこか、もしくは複数が欠けているんじゃないかという見方です。

英語でいうとWill、Can、Mustと言えるかもしれませんけれども、この3つの要素で分解して考えると、自分のモチベーションをある程度マネジメントできると。こういうメソッドになります。

部下のモチベーションが落ちているときに管理職にできること

水野:管理職の方からすると、スキルや部下のモチベーションを上げる頼み方のようなものがあったりするんですか。

青野:そうです。部下のモチベーションが落ちているときは、その3つのどこかが欠けているわけだから、「じゃあ本当にその人がやりたいことと一致しているんだろうか」ということを確認する。

もしくはその人が「できない」と思っているなら、「やる気が湧いてこないんだったら、こういうふうにすればできるんじゃない?」とか「じゃあこの人をヘルプでつけるからやってみない?」とか。

あとは「あなたにそれを期待しているのよ」と、やるべき感を出していく。この3つを使うと、モチベーションを上げることができるんじゃないかと。

水野:サイボウズさんは100通りの働き方ということなんですけど、副業もOKの会社ですよね。

青野:そうですね。副業OKですね。

水野:上司の確認もいらないということですが、そうなんですか?

青野:そうですね。ただ一応条件がありまして、それはサイボウズとまったく関係のないこと。サイボウズの名前も使わないし、業種的にもまったく違うところだったら勝手にやっていいよ、と。

「サイボウズの名前を使って副業します」というのは、そう言ってくれないとこっちも確認ができないので。サイボウズの資産を使わない限り、ということにはなります。

社員の副業は、会社にとってもビジネスチャンス

水野:すごくおもしろかったのが、サイボウズさんで働きながら農業をされている方がいるということで。

青野:そうですね。中村龍太ですね。彼はもともとMicrosoftで働いていて。サイボウズに転職してきてくれるというので喜んでいたら、条件があると。「副業させろ」と言うわけですよ。サイボウズは副業OKなので「いいですよ」と言ったら、今はサイボウズで4日働きながら、残りの3日間は家でニンジンを作っているという(笑)。農業をしていますね。

水野:農業にサイボウズの資産が活かせているということもあるわけなんですか?

青野:そうなんですよ。最初は「へえ、おもしろそうですね、龍太さん」といって見ていたら、自分の農地にセンサーをつけ始めましてね。照度や湿度を測って、それをサイボウズのkintoneというクラウドサービスにアップロードし始めたんです。

それによって、そのニンジンの適切な出荷時期を読めるようになったんですよ。さらにそのノウハウを全国の同じニンジン農家と共有して、みんなで出荷時期まで合わせて連携していくようになってきたんです。すごいなと。

その結果、彼は有名人になって、総務省の賞を取って、全国の農業法人が彼のところに教えを請いに来るんですよ。「龍太さん、あのクラウドを使った農業を教えてください」と。そして、彼がそれを説明すると、kintoneが売れていくんです。

(会場笑)

「ああ!」 みたいな。副業を自由にさせたら、もう自分で新しい事例を作って有名になって、勝手にお客さんを見つけてきよったと。だから、私もスイッチが入っちゃって「お前らみんな副業やれ」と。「お前は小売業行け」「不動産業行け」と、若干そういう感じになっています。

水野:もう副業することがサイボウズのためにもなっているという。

青野:そうですね。経営者はよく社員の流出を恐れたりするんですけど、むしろこのオープンイノベーションと言われている時代に、囲っちゃったほうが新しくおもしろいことができないですよね。そういうことを教えてもらいました。

日本の会社が変われない理由は、トップが変わらないから

水野:いろんな働き方、場所などがあって、100通りの働き方を上手く調整していくのは大変ではないですか?

青野:大変ですよ。もう本当に大変です。今誰がどこで働いているのかよくわからない、という感じなので、まさに情報共有のインフラが必要になってきます。今日彼はどこで何をしていて、どこまで仕事が進んでいるのか。

それを私たちのグループウェアなどを使って、常にお互いの仕事が見えるようにする。そうすると、お互いに顔は見えなくても安心ですし、いざというときに自分がやっている仕事をちょっと止めないといけないこともありますよね。

子どもが熱を出してしまったというときにも、「ここまで私がやっているので、誰かちょっと助けてもらえませんか」みたいな。こういうワークシェアのようなこともやりやすくなるわけです。ある意味、属人化させない。そういう効果も出ています。

水野:うちの会社では、転勤がちょっとマストというか。

青野:マジですか。言ってください。

水野:そうですね。私もあちこち転勤したんですけれども、日本の会社がなかなか変われない理由はどういうところにあるんでしょうか。

青野:やっぱり経営者がアホだからですね。

(会場笑)

ちょっと確信犯でアホとか言いましたけど、基本的には先ほど見ていただいたように、会社の代表は非常に大きな権限を持っています。だから、この人が腹を決めちゃえばできることです。その人がやらないから変わらない。昨年出た『ティール組織』という本があります。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

これが非常に売れたんです。新しい組織について書いてあるんですが、終盤に非常に絶望的なことが書いてありまして、「このティール組織を作るのに必要なのはトップの変化だ」と。マジか、みたいな。結局トップが変わらないとなにも変わらないんです。

「ボトムアップで変えても途中で挫折するだろう。私はお勧めしない」とか、もうはっきり書いてあるんですよ。

水野:上が変わらないと。

青野:そうです。そのトップをどうやって変えるのか。まあそういうことが必要になってきますね。

仕事と子育ての両立のコツは、「やらなくていいこと」をいかに削るか

水野:なるほど。ありがとうございます。次は、子育てのテーマに移れればなと思います。子育てなんですが、まず大変お忙しい中で子育てもやりながらということで、私が一番不思議なのは、青野さんはどんな1日を送っているんだろうと。もう青野氏が2人いるくらいの感じでお仕事をされているのか、どうされているんですか?

青野:そうですね。朝起きて子どもたちを起こして、着替えさせて、食べさせて連れて行って、会社に出社して、働いて帰って、また家事・育児をして寝る。そんな感じです。なんの回答にもなっていない(笑)。

水野:コツみたいなものはあったりするんですか?

青野:コツですか。なんでしょう、やらなくていいことはやっていないということです。私にメールを送って、返事が返ってくると思わないでください。基本返しません。よっぽどのことがないと返しませんし、いつもお世話になっております的な文言はまずつけません。

私のメールの平均行数は2行です。2行あれば十分ですよね。そんな感じです。なので、今みなさんがされている仕事の中で、「実はそんなにやらなくてもいいんじゃないか」ということがあれば、どんどん削っていったらいいと思いますね。そうするとけっこう減らせると思います。

あと、私の場合は社長業なので、やはり先ほど見ていただいたように全権限を持っているわけですけれど、移譲してしまえば他の人もできるわけです。「これぐらいのことは、もうあとよろしく」というふうに任せて。

あとはオープンに情報共有さえしておけば、その人がどう考えてなにをどこで決めたのかということは全部見えます。あとで振り返って学べますから、その情報共有のベースさえあれば思い切って任せちゃう。そういう感じですね。

育児の合間を縫って、空き時間に仕事をする

水野:例えば夜のお付き合いなどはあったりしないんですか?

青野:いやあ、僕、もう会食はまったく行かないですね。

水野:そうなんですね。それは部下などにお任せする感じで。

青野:そうですね。でも、部下も会食は嫌いだと思います(笑)。ゼロじゃないですけど、会食は相当少ない会社かもしれません。好きな人は行けばいいんですけど、好きじゃなければぜんぜんやる必要はないし、ゴルフも行かないし。

水野:もともと昭和型の「猛烈に働く」という感じだったのが、お子さんが生まれて今の働き方にチェンジしたのは、やっぱり変わらざるを得なかったということですか?

青野:今も猛烈に働いていますよ。夜12時過ぎごろまでグループウェアに書き込んでいますから。相当みんな嫌だと思いますけど(笑)。

水野:おうちでの寝かしつけなどが終わったあとに、できる仕事をするという。

青野:やっています。本当に迷惑ですよね。たぶん私が死ぬ確率が一番高いのは、歩きスマホをしながら車にはねられるというシナリオだと思います。すみません(笑)。半分冗談ですけど。なので、今も空き時間はできるだけ、働けるときは働けるようにしています。

手作り弁当は必ずしも正解ではない

水野:育休を3回取ったということで、withnewsの平成家族でも育休のケースということでちょっとご紹介させていただきました。手作り弁当の大変さとか、そういったことをご紹介させていただいたんですよ。

青野:ああ、そうですよね。

水野:そうなんです。青野さん、お料理はされますか?

青野:以前、週に1回、「パパ料理デー」というのをやっていたんですけど、無事卒業しまして、今は料理はやっていません。

水野:「パパ料理デー」はなぜ設けられたんですか?

青野:子どもの習い事の関係で、妻がいなかったり、料理を作るのが難しい曜日があったので「あなたやらない?」と言われて。僕、基本的に妻の言うことにはすべて従うタイプなので「はい!」と言ってやっていたんですけど、習い事の日が変わったりして、やる必要がなくなったので今はやっていないんです。

一昨日、私が子どものご飯を作らないといけなかったんですけれど、もう迷うことなくデリバリーにしました。

水野:じゃあ、手作りか、手作りじゃないかというのは…。

青野:そうですね。作りたい人は作ったらいいと思うんですよ。ですけど、作りたくない人は作らなくてもいいと思うんです。大事なのは、正解はないということですよ。正解があるとするならば、その人の中にしかない。だって、その人のモチベーションが上がるやりたいこととか、やれることとか、みんな違うわけじゃないですか。

そうであるならば、「これがいいやり方」というやり方は存在しないですよね。その人が自分で考えながら見つけていくしかないと思います。だからキャラ弁もいいと思いますし、アウトソースしていくのもいいと思いますし。本人がそれで幸せであるならば、それ以上のものはないと。

社会は、男性の育休の義務化をきっかけに変われるか

水野:育休を取られたということなんですけれど、最近のホットトピックとして「男性の育休の義務化」みたいな話がありますが、青野さん自身はどうお感じになりますか?

青野:「ようやく来たか」という感じですよ。私が初めて育児休暇を取ったのが9年前ですからね。そのときに日経新聞が社説で「サイボウズ青野社長を見習うべきだ」というふうに書いてくれて。「ここから育児休暇ブーム来るかな」と思ったら、シーンですよ。

だから、ようやく来たかなという感じ。でも、義務化を言わないと重い腰が上がらないのはちょっと残念ですよね。育児ってもっと楽しいものだし、本当はやりたい人がやればよくて。例えば両親が一緒に住んでいますとかだったら、本当は無理に育休を取らなくてもいいのかもしれない。

やっぱり、ここで義務化という後押しをしないと動かないところは、ちょっと残念だなと。でも、これをきっかけに社会が変わればいいなあと思います。