スタートアップは特許取得まで平均2.5ヶ月
特許庁が始めた「スーパー早期審査」のポイント

Session6 会社に眠る知的財産を覚醒せよ! #3/5

IVS 2018 Winter Kanazawa
に開催

2018年12月17日~19日、石川県立音楽堂にて「Infinity Ventures Summit 2018 Winter Kanazawa」が開催されました。19日のセッション「会社に眠る知的財産を覚醒せよ!」には、特許庁長官・宗像直子氏、iPLAB Startups中畑稔氏、エアロネクスト田路圭輔氏、FiNC Technologies溝口勇児氏が登壇。Drone Fund General Partner千葉功太郎氏をモデレーターに、特許などの知的財産の重要性や可能性について語り合いました。本記事では、冒頭の自己紹介パートを中心にお送りします。

特許の「スーパー早期審査」とは何か

千葉功太郎氏(以下、千葉):(特許の)早期審査ならぬ、さらに早いやつを作りましたというネタを入手しまして。宗像さんから発表があると聞きました。

宗像直子氏(以下、宗像):確かに10年ぐらい前は、審査請求してから特許査定が下りるまで2年半とかそのぐらいかかっていました。だけど、そのあとものすごくがんばりまして、実は4年ぐらい前に世界最速になりました。

千葉:世界最速って、どれぐらいの期間ですか?

宗像:1年2ヶ月で特許が取れます。

千葉:1年2ヶ月が世界最速。

宗像:でも、確かにこれでも、1年とか1年半の資金調達サイクルからすると間に合わないので、早期審査よりもさらに早い「スーパー早期審査」というのを、2018年の7月からスタートアップのみなさま向けに始めました。

千葉:スーパー早期審査?

宗像:はい。

千葉:なんだか、キャリアのメニューみたいですね。

宗像:ははは(笑)。そういう名前です。スーパー早期審査を使うと、最初に審査官が「これだといけます」「ダメです」という一次審査結果をご連絡するまで、20日ぐらいしかかかりません。

千葉:20日。

宗像:そして最終的に特許が取れるかどうか決まるのが、もう1〜2ヶ月後、2.5ヶ月くらいですね。これは平均なので、あまりにも膨大にスーパー早期審査の出願がきてしまうと、処理オーバーになってちょっと延びる可能性もあるんですけども。でも中畑さんには「ひと月で取れてびっくりしました」と言っていただけました。

千葉:これはネタじゃなくて、本当にもう運用されているんですか?

宗像:7月9日からやっています。

千葉:7月?

宗像:はい。去年の暮れから「こういうのができないか?」とずっと言っていたんですけれど、やっぱり「20日で返事をします」というのは、審査官にも相当な覚悟がいります。管理体制も取らなきゃいけないので、半年ぐらいたって「やるやる詐欺じゃないか?」となりかけた時に、ようやく始められました。

千葉:7月から、このスーパー早期審査にどのくらいきていますか?

宗像:今、足元では40件きています。

スタートアップを対象とした審査

千葉:単純に業務改善として興味があるんですけれど、もともと3年かかっていたものを1年3ヶ月にして、さらにそれを20日にするというのは異様な業務改善ですが、なにをやられたんですか?

宗像:これは、まず毎年100人ずつ任期付きの審査官を採用して、5年間で500人増やしたんです。

千葉:採用を。完全に人海戦術、かつスタートアップですね。

宗像:そうですね(笑)。

千葉:(笑)。すごいですね。

宗像:スーパー早期を使った場合、一次審査結果が通知されるまで20日ですが、出願したあと、実際に審査を始めるための審査請求という手続には出願から3年の猶予期間があります。

商品の種類によっては、「遅くてもいい」という人もいますので、審査請求まで時間をかけることもできます。一方で、早く権利を取りたい人は、即、審査請求します。早く権利がほしい人を優先的に審査することは、組み方次第である程度できるんです。

千葉:これは、誰でも使えるんですか?

宗像:スタートアップであれば大丈夫です。

千葉:「スタートアップ」の範囲は?

宗像:創業から10年以内。

千葉:10年以内がスタートアップ。ずいぶん大ぶりですね。じゃあ、先ほどのコロプラ社もまだ10年だから、スタートアップ?

宗像:申請が増えてきたら、5年とかにしようかなぁ、みたいな(笑)。

千葉:(笑)。じゃあ、つまりここの会場にいるほとんどの人は対象ということですよね?

宗像:はい。

千葉:おぉ〜。ありがとうございます。

絶対に使ったほうがいい

溝口勇児氏(以下、溝口):ちなみに、先ほど「私たちも今年の年末には(特許取得件数が)52件に」みたいな話をしましたけど、実は半年前までは16件だったんですよ。たぶん、私たちが一番このスーパー早期審査の恩恵を受けていて、もう本当に宗像さんには頭が上がらなくて。今日は最初に直立不動でご挨拶しました。本当にありがとうございます。

千葉:申請は、スーパー早期審査の「のし」を付けて、宗像さんのところに書類を持っていくんですか? 違うか(笑)。なんだか、窓口のイメージがわからないんですよ。会場にいるみなさんは、どこからどうすればスーパー早期審査にたどり着けるのでしょうか?

中畑稔氏(以下、中畑):「スーパー早期審査をしてください」という申請をするんですよ。

千葉:その申請は難しいんですか?

中畑:いや、これはガイドラインが出ていますので、自分でもできてしまいます。特許庁のページにいくと、「スーパー早期審査を受けたい人は、こういうのを出してください」と項目が丁寧に書かれているんですよ。料金も「お高いんじゃないですか?」と思いますよね。

千葉:はい。高そう。

中畑:費用は、どんな感じになっているんですか?

千葉:なんだか通販番組みたいになってきましたね(笑)。

宗像:ファストトラックにするための特別料金はないんです。タダです。

中畑:タダなんですよ。

宗像:もともとの出願料や審査請求料はありますけど、早くしてもらうための追加料金はなしです。

千葉:それは……。

宗像:これもね、あまりに申請が増えて私たちがオーバーフローしたら、料金もどうしようかなと考えるかもしれませんけれど、今のところはタダでございます。

千葉:じゃあ、将来は続けられるかわからないけれど、とりあえずここの会場にいるみなさんは、現状は使いたい放題なわけですね?

宗像:はい。今は。

千葉:絶対に、使ったほうが良さそうな気がします。先ほど料金の話があったので、ちょっと続けていきたいんですけれど、料金に関してはすごく気になっていて。

特許取得と特許ビジネスはぜんぜん違う

千葉:特許は、1件あたり数十万円のイメージですよね。あるいはPCT(特許協力条約)で、エアロネクストさんも国際特許を意識していると思います。先ほどのプレゼンで「特許をすごく出願しています」というお話だったんですけれど、コストに関してはどういうふうに見られているんですか?

田路圭輔氏(以下、田路):そうですね。特許についていつも僕が話すのは、「特許を取るのと、特許を使ってビジネスをするのは、ぜんぜん違う」ということなんです。

特許を使うことで象徴的なのは、ライセンスのビジネスですよね。ライセンスできる特許は、特許の中でもケタ違いに重要です。とくに、ポートフォリオの考え方が大事なんですよ。

こういうところで言う話じゃないんですけれど、よく「特許を1件取った!」と喜んでいる人と会うと、「ぜんぜんわかってないな」と思うんです。特許をざっくり言うと、人に使ってもらうためには、100ぐらいの特許を取るようにすることが1つのライセンスの目安です。

千葉:100! FiNCですら、まだ半分ということですか?

田路:感覚的にはそうです。でも、100件の特許を取るには、ものすごくお金がかかるじゃないですか。

千葉:1件につき、いくらかかるんですか?

田路:ざっくり言うと、権利化までに100万円くらいかかると思うんです。だから、100件となると1億円くらい。

千葉:あぁ〜、なるほど。

田路:スタートアップで1億円のキャッシュとなると、やっぱりそこになんらかの発明が必要だということになるんですよね。

国際特許はコストセービングが難しい領域

田路:そこでエアロネクストのアプローチとして、実は特許の内製化をやっているんです。僕はCEOという役割なんですけど、うちの会社は「CIPO」という専門の経営職があって、それを中畑さんに務めてもらっているんです。

これは僕がエアロネクストをやる時から決めていて、CIPOの機能を入れることで、特許を内製化してスピードアップしていく。そこで、特許の製造コストを劇的に下げていくというアプローチをとっています。

千葉:IPは、インターネットプロトコルでしたっけ?

(会場笑)

アホな言い方(笑)。

中畑:インテレクチュアルプロパティです。

千葉:インテレクチュアルプロパティ。舌噛みますね。つまり、「知的財産」ですよね?

中畑:そうです。

千葉:すいません、バカな質問をしました(笑)。チーフIPオフィサーの役割。そして、特許のコストが100件で1億円。じゃあ、もし国際特許を出そうとすると、国の選び方や数はどうしているんですか?

田路:国際特許は、コストセービングが難しい領域です。基本はPCTという出願をして、自分たちが「グローバル戦略で重要なマーケットだ」と思うところに網をかけていくやり方をしていくんですけど、そこで国内移行を戦略的に選ぶようなやり方をします。

千葉:さらにコストダウンの必要性に関して、今日はまたしても長官からいいネタをもらってきました。先ほどスーパー早期審査に対しては無料であるというお話でしたが、さらにお安いプランがある?

宗像:はい。

千葉:テレビ通販的に聞きましたが(笑)。

宗像:特許庁には、「スタートアップ料金」というものがございまして。

千葉:あるんですね?

宗像:料金が通常の3分の1になっております。

千葉:(料金を表示したスライドを指して)これね、さっきもらったんですよ。

「自称スタートアップ」でも審査できる

宗像:弁理士さんの費用とかは入っていないので、純粋に特許庁にお支払いいただく金額になります。

千葉:印紙を貼るやつですか?

宗像:はい。

千葉:あぁ〜。「取得証明書類不要」ということは、面倒なことはしなくてもいい?

宗像:そうなんです。でも実はこれ、今は書類がいります。

千葉:あぁ、いるんだ。

宗像:これは面倒ですよね。これでは使われないなということで、来年の4月から書類をいらなくする予定です。「スタートアップなので3分の1」と一言書類に書いていただければ、それをご信頼申し上げて、スタートアップであることの証明書類を求めないことにしました。

千葉:スタートアップの範囲は、10年以内?

宗像:そうです。

千葉:他にはどんな要件があるんですか?

宗像:資本金3億円以下であれば、もう大丈夫です。

千葉:じゃあ、「自称スタートアップ」でもいける感じなんですか?

宗像:いけますね。

千葉:おぉ!

宗像:ただ、嘘の申請をなさると、ただではすみませんよ、ということになります。あと、大企業の子会社は、なしです(注:単独の大企業が株式総数、または出資総額の1/2以上に相当する株式又は出資金を有していないこと、および、複数の大企業が株式総数または出資総額の2/3以上に相当する株式、または出資金を有していないこと)。

千葉:いわゆる、IVSに参加されてるような、独立系で起業家が会社を作ってがんばっていて、「資金調達お願いします」という人たちなら大丈夫?

宗像:はい。大丈夫でございます。

千葉:だそうです。つまり、スーパー早期審査は今のところまだ無料で、早い者勝ち。リソースがパンパンになったら変わる可能性があるので急いでくださいということと、スタートアップなら手数料も3分の1ということですね。僕もこの話は知らなかったんですけれど、相当アグレッシブですよね。

宗像:はい。できるかどうか心配ですけど。

千葉:(笑)。シード・アーリーから知的財産を意識したほうがいいし、僕は投資家なので、投資家の目線からいくと、やっぱり早いうちからそこに手をつけてほしいんですよね。

例えば、投資する時に必ず資金使途の計画を作ると思うんですけど、そこにぜひ「特許関連費用」を。堂々と投資家のプレゼンの中で見せてもいいんじゃないかなと思っています。

逆に、知財の費用がゼロ円の資金調達で「3億円資金調達します」「1億円資金調達します」というのは、若干怪しく見えてしまいます。これからの時代は、CIPOを置くことはまだどうなるかわかりませんが、少なくともCEOとして、そこまで意識することが重要なんじゃないかなと思います。

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IVS(Infinity Ventures Summit)

IT業界の一流企業の経営者や経営幹部が一同に会し、ディスカッションやスピーチが行なわれる豪華イベント。普段は見ることのできないクローズドな経営者同士の会話や経営裏話など、日本のIT業界の最先端情報がここに集まっています。

IVSは、主に経営者向けに行なわれる通常のイベントのほか、学生向けに行なわれるワークショップも年に数回開催されています。ログミーでは、公式メディアパートナーとしてその中の人気セッションを全文書き起こし、全部で400記事以上のコンテンツをご覧いただけます。

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