「会社」という概念自体が実は幻想にすぎない
質問者2:北野さんに質問です。
北野唯我氏(以下、北野):あっ、大丈夫です、どうぞ。
質問者2:質問をしたいことが2つあります。
尾原和啓氏(以下、尾原):いいですねぇ〜。
質問者2:僕も4月から新社会人として大きな会社に入るのですが、今のお話を聞いていると、大きな会社の新規事業をやりたいと思えてきました。でも、そうした大きな会社の新規事業もまた、大きな会社の中での倍率が高くなっていっているものではないかと思いまして。
尾原:おっしゃる通り!
質問者2:そこに飛び込むのはかなり難しいものなのではないのでしょうか、というのが1つ目の質問です。
あともう1つの質問が、「圧倒的な量は質に変わる」とおっしゃっていましたが、量を圧倒的にこなすためには、お金がかかるのではないかと思いまして、そのあたりを質問したいです。
北野:では、1つ目からいきます。それはおそらく競争倍率が激しく厳しいと思いますが、前提としていちばん重要なのは、会社という概念が本当は実存しないということを理解することが、実はいちばん重要だと思っています。
例えば今、会社……会社と言っちゃったけど、役員をやっていると、現場のメンバーとしゃべるときに、絶対「うちの会社はさぁ」などと言うんですよ。「うちの会社はこうなんだよ」と言っちゃうのだけど、「その『会社』とは例えばどういうこと?」というように言えば「いや、○○さんと、△△さんと、××さんと」。「それはでも、チームの話だよね」となる。そうして言っていくと、実は会社というのは幻想なんですよね。
会社を選ぶよりも、事業を選ぶことのほうが重要
北野:その「会社」というものがあると思っちゃうことによって、生まれている苦しみが、僕はもうむちゃくちゃでかいと思っています。
実際にデータで見ていてもすごくおもしろいのですが、例えば「うちの会社はさぁ」とネガティブなことをいうメンバーが存在しているのは、とある事業部なんですよね。それで、その事業部のスコアや満足度はめっちゃ低いんですよ。
でも、他の事業部はめっちゃよかったりするんですよ。それは今、データで……経営的に言うと、データで見える時代になってきているんですよ。
だから、重要なのは、実は会社じゃなくて事業なんですよね。どうしてかというと、そもそも会社の生まれは、プロジェクトですよね。そういうのも、もともとはたぶんコロンブスがエリザベスに対して、「俺、ちょっと旅に出るぜ」というような。それで「お金出してよ。その代わりレベニューシェアするよ」というようなところから株式会社が生まれてきたのだと思います。
尾原:世知辛いな(笑)。
北野:そう、それはプロジェクトなんですよね。目的があって、何かやりたいことがあって、契約があるというものなので。そのプロジェクトを実行するのが事業であり、事業部であり、それがどんどんどんどん大きくなっていったから経理、広報といったファンクションが生まれてきているのです。
だから重要なのは、まず大きな会社ではなくて、自分が入る事業のほうがめっちゃ大事。僕はなにか「大きな会社」や「大企業」という概念というものは本当は嘘だと思っています。大きな会社の中でも、この事業は伸びて、新規事業で伸びそうなところもある。
別に僕はなにか、もうすでにある程度の売上規模や利益が出ている会社、事業部にいちばん最初に入ることが必ずしもマイナスだとは思っていません。いつも言っているのは、『転職の思考法』にも書いたのですが、専門性や、ビジネスの作法といった、そういったものを身につけるためには、別にそういうところに入ってもいいと思いますよ。