2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:次のキーワードは、僕からお二人に投げさせていただいたんですけれども。「エンタテインメントの本質」が、今日のテーマなんですけど、エンタテインメントの領域定義はものすごく曖昧になっていて、学びの中にもエンタテインメントが入っているし、テクノロジーにもスポーツというカテゴリにも(入っています)。
スポーツも高次なエンタテインメントなんだけれども、エンタテインメント性を強く発揮していたり、ソーシャルグッドみたいに社会を良くしようというのもエンタテインメント化されていったりしています。
エンタテインメントとそうじゃないものの境界線がものすごく見えづらくなっています。そういうものを意図的に作っているサイドからすると、開放して、広げて世の中になじませていって……。時代がそれを求めているのか、そんなことに少しコメントをいただきたいなと思います。
香田哲朗氏(以下、香田):そうですね。将来的な見方をした時に、人が何にお金を払うのかという時も、たぶん、Amazon、Google的な効率エクスペンシブな世界は、ITなどでは圧倒的に高まってきていると思います。
例えばご飯だったら、吉野屋や松屋があると思うんですけど、それ以外のものって、あえて無駄金を使ってても、気持ちいいこと、楽しいことをしていく、というのがあって。エンタテインメントでも、もっと効率的な活動以外は、ぜんぶエンタテインメント化していかないとみんなが選ばないだろうな、というところ(があります)。
その両極が明確になっていると思うので、中途半端なところはぜんぶなくなっちゃってるんじゃないかなと思うんですよね。デパートなどがまさにそう。昔、買い物はけっこうエンタテインメントだったんですけど、選んで買ってほしいものが届くなら、Amazonと楽天でいいじゃん、みたいな。
もっと楽しむんだったら、よりパーソナルなブティックとかで買った方が安心じゃない? という。すごく両極化してるなと思いますね。
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。まったくその通りだと思います。今までは、研ぎ澄ましたものが、エンタテインメント。より良い小説、より良い漫画、より良い映画があったと思うんですけど、僕は最近、みんなが絶対にエンタメ化できないことをエンタテインメントにすることが一番すごいのではと思っています。
だから、キンコンの西野さんが、ハロウィンの後の渋谷区の清掃をエンタメにしたじゃないですか。あのルールチェンジは最高にすごいことだと思っています。
例えば、僕らは今、寝たきりの人にとって人生がどう映っているか、社会がどう映っているか、知ることができないじゃないですか。でも、寝たきりの人もいろいろなツールによって、自分の感情を表現できたり、物語を書くことは可能になる。だから、その人が伝える物語は、普通の人が一生懸命に想像するよりも、強度があるエンタメになる可能性もあります。
つい最近、僕はちょうど、『破天荒フェニックス』という、オンデーズという眼鏡ショップの社長・田中さんが書いた小説の編集をしました。オンデーズは社内の勤怠のシステムなどを内製化しているんですよ。それで、講演会の時に、その内製化した裏側をぜんぶ見せてもらったんです。
そしたら、遅刻がないことなどで社内ポイントが貯まるようになっているんです。その社内ポイントの使い方が、またアイディアがあふれていて。そこはすごくハイコンテクストな遊びになっているんです。
香田:昔、学校とかでもそういうのありましたよね。勝手にポイントつけて、競い合うみたいなやつ。
佐渡島:そういうものがITで普通になって、毎日意識できるようになっていたりして、日常がゲームのようになっている。よく堀江(貴文)さんや落合陽一さんが、「遊びが仕事になる」と言うじゃないですか。その通りで、仕事が遊び化する仕組みが発達していって、全員が遊びの感覚で仕事をしていくようになっていくんじゃないかなと思うんです。
司会者:なるほどね。なんだかすごく長い哲学っぽい話になっちゃうかもしれないけれど、昔は人間が命を支え合うために、食べ物をとらなきゃいけなくて、スーパーマーケットがないから自分で行って、えいっ! って大きい動物を殺して、木の実をとって、芽が出るのを待って。そういうもののために生きていたけれども、今はそれが流通でデリバリーされるようになって、人は本質的には娯楽を求めていて……。
だけど今は、娯楽を得たり、物を買うためにはお金が必要で、お金のために、仕事や社会の不都合なことを我慢しなきゃいけない。今はもう1回、テクノロジーが入ってきたことによって、すべてを娯楽化することで、もう一段階上の豊かさを手に入れられるのかなって。
そのためにエンタテインメントが境界を超えて、産業だったものが、ぐんとどんどん開いていくような、そんなような印象を受けました。最後に一言ずつコメントをいただいて、会場からも質問を受け付けたいなと思います。少しまとめ的なコメントをお二人からいただけますか。
香田:そうですね。さっきスターのことで言い忘れたんですけど。金山さんもさっきおっしゃっていたんですけれども、最近世界で生まれた一番すごいスターって、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)から出ているんです。まさにDJ。昨日、今日、明日でUltra(Japan)がやってますけど。
DJの年収って、ヨーロッパは特にすごいと思うんです。50億というのが普通にあるんで。やる人が増えて作り手が増えている中で、音楽を聴く機会が増えて、その中でスターが生まれて、世界から認められて、それでその収入になったと思います。
なので(司会の)金山さんと話していたのが、今みんながやり始めていることに注目していくと、そこから新しいスターが出てくるのかな、と思っています。それが何なんだろうなというのを、eスポーツはもうすでに顕在化しているんですけれど、次の作り手があふれる世界というのを注視していきたいな、と思いました。
佐渡島:ちょうど僕がコルクで考えていることと、香田さんの(話)がすごく本質的に近づくお話でした。ワインは、どのソムリエがどういう説明とともにコルクを抜くかがすべて。DJも、DJがどういう音楽を聞かせるかがすべてじゃないですか。
だから、クリエイターの人たちは、誰にコルクを抜かれるかによって、ワインの世の中の広がり方とか、ブランドとかすべてが変わってしまう時代が来てしまうんだろうな、と思っています。それをやる人間、ある種、そのことがストーリーのDJになっていく会社なんだということで、コルクという社名なんですよ。だからまさに、これからDJの時代だって、本当にそう思ってるんですよね。
司会者:ありがとうございます。まだ約10分くらいあるので、せっかくの機会なんで、どなたかご質問、こんな意見を聞いてほしいという方、いらっしゃったら1人、2人ぐらいかな。
どなたかいらっしゃいますか? 直接、質問を投げかけられるようなチャンスは、なかなかないですよ。あれ!? 意外とシャイですね。手を挙げていただいた方は、ここに立っていただいて。
(会場笑)
質問者1:貴重な話をありがとうございました。最後に佐渡島さんがおっしゃった、ストーリーを掲げるDJを作る会社というのは、ストーリーを掲げるDJになる人に求められる資質および、それを実際に会社として育てていく上で、具体的にやれること、方法があったら教えてください。
佐渡島:まさにそれは、悩んでいます。僕がやっていることの再現性がなかなか会社で持てないので、そこで一番苦労しているわけです。でも、ストーリーって、基本的に始まりがあって、終わりがあるじゃないですか。どこが始まりで、どこが終わりで、どこが山場で、ということを理解するためには、ストーリーを上から見ないとわからないんですよ。
引いた目で物事を見られないと、山場をコントロールできない。中に入って、具体的にこだわっちゃったら、絶対にできないんですよ。編集という行為は、何か物を見た瞬間に抽象化する。だから具体的に見ている人には、ある物事の変化が「これ、絵の具と同じだ!」と、意外と気づかないんですよ。500年単位で時代の変化を見ていると、「絵の具とこれとこれが大きい変化だ」と絵にとっての大きな変化に気づく。その視点を持つことかなと思います。
質問者1:その視点を持たせるため、具体的にやれることってなんですか?
佐渡島:時間感覚ですかね。結局、時間の感覚がないと、引いた目で見られないな、と思います。
香田:主体と客体ですね。
佐渡島:そうそう、みんな主体で考えちゃうんですよね。
香田:(客観視できる人は)歴史好きの人に多くないですか?
佐渡島:とにかく多い。歴史って絶対、引いて見ますからね。
司会者:ありがとうございます。もう1つくらい、質問ができる時間がありますよ。あと5分くらい、どなたかいらっしゃらないですか? もったいないですよ。じゃあ一番後ろの女性の方、どうぞ。
質問者2:佐渡島さんと少しお仕事をさせていただいているんですけれども、先ほどのコルクの名前の由来を私は知らなくて、驚きました。そこでちょっと思ったんですが、最近、佐渡島さんもそうですけど、例えば幻冬舎の箕輪さんなどを含め、編集者がメインになっていると思います。クリエイターよりも前に出るといったら、言い方が悪いんですけど。
クリエイターよりも主役になってくるような人たちって、だんだん見受けられるようになってきたな、と思っています。編集者が黒子であるようなことが長らくあった中で、「この人が編集したならこの本を読もう」という空気になっていくことは、良いことなのか、悪いことなのか。今後、編集者が目指していくところなのか、それとも黒子に徹していくものなのか。どのようにお考えかお聞かせいただきたいです。
佐渡島:さっきの香田さんの話で、ゲーム業界はプロデューサーがすごく重要なのに、意外と有名になってないということがありました。結局、すべてのコンテンツはプロデューサーとクリエイターの共同作業なんです。基本的には、プロデューサーがクリエイターを支える立場であるということは、世界的に変わらないんだけれども。
プロデューサーの個性がわからないと、クリエイターも組む人を決められない。だから、プロデューサーも最低限の自己開示は必要です。ただ、最終的にコンテンツを当てた時に、ほとんどのファンは誰がどう作ったかには興味を持っていない。プロデュース的なものには興味がないので、全体の5パーセントくらいはプロデューサーに(フォロワーがついて)いって、95パーセントくらいはクリエイターにいくだろうなと思ってます。
質問者2:今はけっこう作家が編集を指名できるようなところがあるんですけど、それは意外といいことなんですか?
佐渡島:いいと思います。例えば、フランス料理店を作りたい時に手伝ってもらいたい人と、中華料理店を作るのに手伝ってもらいたい人とは、種類が違うじゃないですか。
でも、今、多くのクリエイターは、「この会社」というかたちでしかいけないから、クリエイターとプロデューサーの関係って、すごく繊細なマッチングなはずなのに、めちゃくちゃ雑なお見合いショーみたい。
どっちにとっても不幸なマッチングが起きまくっているので、そこを前提でマッチングするためには、プロデューサーとクリエイターが、自分がどういう信念でどういうものを作りたいのかを、オープンにしていくのがいいだろうなと。
質問者2:ありがとうございます。
司会者:なんだか今の話、本当に……僕は昔、広告会社にいたんですけど、広告会社は陣取り合戦だから、とりあえず仕事をがばっととってきて、雑にマッチングする(笑)。
本当は、クリエイターの職能とプロデューサーの職能の繊細なマッチングが、ちゃんと開かれていて、いい出会いがあると、もっともっと世界中に感動がもらえる可能性があるんじゃないかなと、話を聞いて思いましたね。巨大化して陣取り合戦が起こると、だいたい文化が衰退していくというか、本当は出るべき産業が表に出ない感じ。ゲームとかもそうかもしれませんね。
香田:佐渡島さんの言葉を借りると、民主化が起きるのは、それがだんだん適正なかたちで市場的にダイレクトにつながってくるということが、きっと増えてくるんでしょうね。
佐渡島:極端に抽象化すると、人は人と出会うために生きているわけです。
司会者:確かに。
佐渡島:すべてのネット上のアプリ、ソーシャルゲームは、一緒に対戦する人のマッチングだし、ティンダーは男女の出会いのマッチングだし。つまり、ITによる大きな変化はマッチングの精度をあげるという、一言で全アプリが説明できるなと思ってるんですよね。
司会者:なるほど。もっといろいろなお話を聞いていたいですが、時間が来てしまったので……。今日はどうもありがとうございました。
(会場拍手)
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