「効率か、エンタメか」の両極が求められる時代

司会者:次のキーワードは、僕からお二人に投げさせていただいたんですけれども。「エンタテインメントの本質」が、今日のテーマなんですけど、エンタテインメントの領域定義はものすごく曖昧になっていて、学びの中にもエンタテインメントが入っているし、テクノロジーにもスポーツというカテゴリにも(入っています)。

スポーツも高次なエンタテインメントなんだけれども、エンタテインメント性を強く発揮していたり、ソーシャルグッドみたいに社会を良くしようというのもエンタテインメント化されていったりしています。

エンタテインメントとそうじゃないものの境界線がものすごく見えづらくなっています。そういうものを意図的に作っているサイドからすると、開放して、広げて世の中になじませていって……。時代がそれを求めているのか、そんなことに少しコメントをいただきたいなと思います。

香田哲朗氏(以下、香田):そうですね。将来的な見方をした時に、人が何にお金を払うのかという時も、たぶん、Amazon、Google的な効率エクスペンシブな世界は、ITなどでは圧倒的に高まってきていると思います。

例えばご飯だったら、吉野屋や松屋があると思うんですけど、それ以外のものって、あえて無駄金を使ってても、気持ちいいこと、楽しいことをしていく、というのがあって。エンタテインメントでも、もっと効率的な活動以外は、ぜんぶエンタテインメント化していかないとみんなが選ばないだろうな、というところ(があります)。

その両極が明確になっていると思うので、中途半端なところはぜんぶなくなっちゃってるんじゃないかなと思うんですよね。デパートなどがまさにそう。昔、買い物はけっこうエンタテインメントだったんですけど、選んで買ってほしいものが届くなら、Amazonと楽天でいいじゃん、みたいな。

もっと楽しむんだったら、よりパーソナルなブティックとかで買った方が安心じゃない? という。すごく両極化してるなと思いますね。

一番すごいのは、エンタメにならないことを娯楽にすること

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。まったくその通りだと思います。今までは、研ぎ澄ましたものが、エンタテインメント。より良い小説、より良い漫画、より良い映画があったと思うんですけど、僕は最近、みんなが絶対にエンタメ化できないことをエンタテインメントにすることが一番すごいのではと思っています。

だから、キンコンの西野さんが、ハロウィンの後の渋谷区の清掃をエンタメにしたじゃないですか。あのルールチェンジは最高にすごいことだと思っています。

例えば、僕らは今、寝たきりの人にとって人生がどう映っているか、社会がどう映っているか、知ることができないじゃないですか。でも、寝たきりの人もいろいろなツールによって、自分の感情を表現できたり、物語を書くことは可能になる。だから、その人が伝える物語は、普通の人が一生懸命に想像するよりも、強度があるエンタメになる可能性もあります。

つい最近、僕はちょうど、『破天荒フェニックス』という、オンデーズという眼鏡ショップの社長・田中さんが書いた小説の編集をしました。オンデーズは社内の勤怠のシステムなどを内製化しているんですよ。それで、講演会の時に、その内製化した裏側をぜんぶ見せてもらったんです。

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

そしたら、遅刻がないことなどで社内ポイントが貯まるようになっているんです。その社内ポイントの使い方が、またアイディアがあふれていて。そこはすごくハイコンテクストな遊びになっているんです。

香田:昔、学校とかでもそういうのありましたよね。勝手にポイントつけて、競い合うみたいなやつ。

佐渡島:そういうものがITで普通になって、毎日意識できるようになっていたりして、日常がゲームのようになっている。よく堀江(貴文)さんや落合陽一さんが、「遊びが仕事になる」と言うじゃないですか。その通りで、仕事が遊び化する仕組みが発達していって、全員が遊びの感覚で仕事をしていくようになっていくんじゃないかなと思うんです。

作り手が増えている世界から、次のスターが誕生する

司会者:なるほどね。なんだかすごく長い哲学っぽい話になっちゃうかもしれないけれど、昔は人間が命を支え合うために、食べ物をとらなきゃいけなくて、スーパーマーケットがないから自分で行って、えいっ! って大きい動物を殺して、木の実をとって、芽が出るのを待って。そういうもののために生きていたけれども、今はそれが流通でデリバリーされるようになって、人は本質的には娯楽を求めていて……。

だけど今は、娯楽を得たり、物を買うためにはお金が必要で、お金のために、仕事や社会の不都合なことを我慢しなきゃいけない。今はもう1回、テクノロジーが入ってきたことによって、すべてを娯楽化することで、もう一段階上の豊かさを手に入れられるのかなって。

そのためにエンタテインメントが境界を超えて、産業だったものが、ぐんとどんどん開いていくような、そんなような印象を受けました。最後に一言ずつコメントをいただいて、会場からも質問を受け付けたいなと思います。少しまとめ的なコメントをお二人からいただけますか。

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。