クラウドサインのインサイドセールス事例

司会者:ご発表いただきますのは、弁護士ドットコム株式会社執行役員、クラウドサイン事業部長の橘大地様となります。橘様、どうぞご登壇よろしくお願いいたします。みなさま、拍手でお迎えください。

(会場拍手)

橘大地氏:先に自己紹介をさせていただければと思います。私は、弁護士ドットコムという会社の執行役員をやっております。前職は法律事務所に勤務していた弁護士でございます。3年前にクラウドサインというクラウド契約サービスが立ち上がり、同事業を担当しています。

(会社としては)弁護士ドットコムという、困っている人と弁護士を繋げるメディアプラットフォームをやっておりますが、メディアプラットフォームである「弁護士ドットコム」の顧客先とクラウドサービスである「クラウドサイン」の顧客先は異なり、一から法人営業部門を立ち上げてやってきたという歴史がございます。

クラウドサインはSalesTechサービス

今回ご紹介するのはクラウドサインというサービスです。紙とハンコで契約締結していたところを、クラウドで契約締結するというサービスを展開しております。

こちらがクラウドサインのセールスプロセスになっています。マーケティングのリード獲得のところは、例えばSNS広告やGoogleを活用したリスティング広告を活用します。そうして獲得したリードを、Marketoや、国産でしたらシャノンさんが提供するMAツールを活用し、Salesforceでリード管理をして営業活動するというプロセスです。

スライド下がセールスになっています。もしかしたら、今日来ていただいている方のなかでも、一部の方は、営業はいまだに電話で行い、汗をかいて営業して、エクセルで管理して、AヨミBヨミをして、最後の申込書の受注処理は紙で申込書を回収するという、レガシーなセールスプロセスでやられているかと思います。

最近は、インサイドセールスの活用とともに、セールスに関してもテクノロジーが発展しております。これが現在の弊社のセールスプロセスになっています。

リスト作成とアポ獲得までは、いままでどおりマーケティングツールを活用しながら、ウェブ商談でベルフェイスを活用し、フェーズを管理して、最後のフェーズでクラウドサインを使って申込書を(回収して)受注するというような、SalesTechサービスでも活用いただけます。

クラウドサインの導入企業は、リリースして3年で3万社を超えております。これからクラウドサインの営業課題をみなさんに共有させていただくんですけれども、まずはどんなプロダクトなのかをご理解いただきたいと思っております。

もちろん、営業の申込書の受注で使うサービスなので、特徴としてはどんな業種の企業でもご活用いただけます。(導入企業は)一番大きいところですと、社員数が10万人を超えるような大企業から、1人で法律事務所を経営されているという方まで、さまざまいらっしゃいます。クラウドサインは、いろんな従業員数の企業や、いろんな業種の企業に営業活動にご活用いただいております。

2つの営業課題があった

これから営業の課題を共有させていただいて、インサイドセールスでどうやって解決したかというところをお話しします。クラウドサインという我々のプロダクトにおいて、こういう課題があり、それを解決しましたというストーリーをお聞きいただければと思います。

これが2つの営業課題になっています。少し専門用語も使っておりますので、次のスライド以降で説明させていただきます。

MarketoなどのMAツールは当然ながらマーケティングの予算を活用してマーケティングの方が使うサービスです。ベルフェイスも、事業部門の予算でセールスが実際に使うサービスです。

クラウドサインの特徴の1つなんですけれども、実際にクラウドサインを使うのはセールスで、申込書(の回収)に使います。しかし、営業が角印で申込書を受注処理したものを、法務部に内緒で勝手に進めるというのはおよそ考えられず、決裁者の1人は法務になります。

人事労務部門が雇用契約で使うなど、営業先はセールスに限らないんですけれども、その場合でも、人事が営業先で決裁者は法務となります。決裁者が複数存在する商材は、複数回訪問しなければいけません。

また、フェーズが複数発生してしまうので、事業部門はOKだけど法務はNGということもあったりしてリードタイムも長く、複数回の訪問で移動時間も長くかかってしまいます。専門用語でいうとCAC(カスタマーアクイジションコスト)といって、1顧客あたりの獲得コストが高くなってしまう傾向にある経営上の課題がありました。

もう1つ、ACV(アニュアルコントラクトバリュー)というのは年間の発注金額の略です。先ほどの内容は1顧客あたりの獲得コストなんですけれども、それに対してどれくらいの収益を得られるかというところで、クラウドサインの固定費用は月に1万円だけです。ですので、ACVは固定費用だけを見た場合、12万円となります。

その一方で、1件契約締結すると100円いただくという、従量費用のプライシングにしております。SaaSビジネスは積み上げ型が多く、経営が安定するといわわれますが、我々の場合は固定費用だけだと年間12万円で、従量費用は若干のボラティリティがあります。

例えば、4月の大量入社時期だと雇用契約が倍増するとか、予算消化時期の3月だと申込書件数が増大するなどがあり、経営にボラティリティが生じる傾向にあるという課題があります。

SaaSビジネス、サブスクリプションビジネスというのは、LTVという顧客単価と獲得数あたりのコストであるCACをどうバランスさせるかが経営課題とされます。それをコントロールするのがまさに営業戦略だと私は考えております。

インサイドセールス発足の理由

これをどう解決したかというのが、まさにインサイドセールス発足の理由になります。まず先ほどのとおり、決裁者が法務を挟むのでリードタイムが長くCACが高くなる傾向があります。これはみなさんの想像どおりかと思います。

(スライドの)左がフィールドセールスの場合ですね。移動と打ち合わせとで3~4時間経ってしまうところ、右のベルフェイスを活用した場合、商談が4回できるため、1顧客あたりの獲得コストを下げることができます。これは、インサイドセールスのテクノロジーがなければできなかったことです。

2つ目が、先ほどのお話のとおり、ACVでボラティリティがあるところです。どうやってLTVを上げるかという営業戦略を取る必要があります。これが、我々がいまやっている営業チャネルのプロセスのお話です。

もっともLTVが低いところですと、なかなか獲得のコストをかけることが難しいです。例えば、月1万円ですので12万円を獲得するのにいくらくらいコストをかけますか? という話です。我々は、いわゆるフリーミアム方式を採用しました。

最初からお金がかかってしまうものだと営業で説明しなければいけないんですけれども、我々はそもそもプロダクトをフリーミアムにして、獲得体験を営業コストをかけずにテクノロジーで実現して、「あ、これはいいな」と思ってもらったら自動的に有料化します。

ですので、営業戦略とプロダクト戦略は表裏一体で、営業コストがかけにくいならフリーミアムにする。あるいは14日間や30日間のお試しにするといった戦略を取りました。これは顧客体験としても良いと判断しています。営業コストをかければ顧客のためになるものでもありません。

LTVが高い企業と中くらいの企業ということで、クラウドサインでは契約締結件数が多いところと中くらいのところをセグメンテーションして、訪問営業とインサイドセールスのウェブ商談とで区分けしました。

ですので、ボラティリティが高いながらも、営業コストのCACもボラティリティに連動するようなかたちで、獲得コストを連動して動かす「ユニットエコノミクス」で、顧客獲得の経済性を上げております。

SalesTechを活用して効率化

インサイドセールスの課題解決としては、どれくらい収益を上げられるのかというところで、常にLTVを意識しながら、CACでコストをどれくらいかけるかを判断する司令塔の役割を担っています。これが実現できたのは、まさに(スライドの)下にあるSalesTechが発展したからです。

もちろん、これまでも電話やFAXでマーケティング(施策)を打ったり、従来と同様、テクノロジーも十分に活用していたんですけれども、訪問営業と変わらない体験価値を顧客に伝えながら商談ができるというのは、まさにベルフェイス誕生以降だと思っております。

我々も扱っている商材がクラウドサインですので、最後の申込書(の回収)にどれくらいコストをかけますかという点では、けっこう根深い問題があるなと私自身は感じております。

当然ながら、みなさんベルフェイスのユーザーですので、ベルフェイスの申込書では、すでにクラウドサインで(契約を)締結しましたというお客様も多いかと思います。多くのSalesTech企業の申込書がクラウドサイン化しています。

例えば、飲食店向けのメディア営業企業でも(クラウドサインを)使われています。飲食店向けの営業がどうなっているかというと、夜中の12時に営業が店長のところへ行き、申込書を現地で回収して受注処理をすることもあると聞いていました。

ほかの会社さんでも、土日に申込書を回収したり、受注が決まっているけど月末に申込書を回収していないからインセンティブを付けられない(といったこともあるようです)。私自身も、営業の方が来られて「(申込書を)取りに行きますので、ハンコだけ押してください!」といわれます。

我々は、例えば極端な話で、年末の12月31日に受注した企業もあります。クラウドサインを活用してスマートフォンで締結していただいて、年末でも受注処理ができました。営業改革の業務フローも変わらず、ハンコをもらうのではなくクラウドサインで申し込み(の契約)を結ぶ。それだけでリードタイムが短くなるなど、要するにCACが下がる施策としてご活用いただけます。

独自の分業体制を構築

(注:株式会社ビズリーチ 茂野氏作成図より引用)

最後に、クラウドサインの組織について発表させてください。(スライドを指して)これがよくいわれるインサイドセールスの組織の3つで、このあと登壇していただく(株式会社ビズリーチの)茂野さんの図をそのままコピーして使っています。

Salesforceが発案して、最近よくいわれるもので、今月『THE MODEL』という本も出るんですけれども、『THE MODEL』(の考え方)に適しているのが、この分業モデルとなってます。

なにかといいますと、(スライドを指して)この分業体制ですね。リード獲得はマーケが行い、アポ獲得までをインサイドセールスが行い、フィールドセールスにアポをパスして、フィールドセールスがクロージングすると。

『THE MODEL』の考え方は、マーケは徹底的に質のいいリード……「クオリファイドリード」というんですけれども、質のいいリードをインサイドセールスに送り、インサイドセールスは商談化率を徹底的に追う。

目標が分業化しているので、メリットとしてはわかりやすく生産性が上がる。教育コストも低い。教えることが1つなので、シンプルですよね。採用対象も多いので、SaaSビジネスは分業モデルが一般的といわれています。

これも考え方次第で、分業が適している場合もありますし、ほかのモデルが適している場合もあるかと思いますが、これは我々のストーリーが前提です。

(注:株式会社ビズリーチ 茂野氏作成図より引用)

我々は、インサイドセールスは混合モデルを採用しました。メリットとしては、いわゆるインサイドセールスの役割が向上するので人材の流動性が高まったり、退職率が低くなったり、責任範囲が広くなってインサイドセールスが活躍しやすくなるといったところです。

なぜそうしたかについてです。いまの分業体制は、顧客セグメントを分け、ミドルマーケット層とエンタープライズ層への仕組みを変える必要性を学習しました。

LTVでどれだけコストをかけられますかということで、ミドルマーケット層以下のところは、実際に複数回会って関係構築したり、クロージングに行かなくても受注ができ、顧客にもご満足いただけるという判断がつきましたので、インサイドセールスには、アポ獲得までではなく、クロージングまでを担っていただくという分業体制にしました。

エンタープライズ層は、何度も訪問するということが前提になりますが、それだけコストをかけられるLTVが存在しますので、関係性を築けるクロージングはフィールドセールスに送るという分業体制にしました。

インサイドセールスを取り入れた効果

その結果、少し抽象的なんですけれども、先ほどのとおり顧客セグメント、LTVを計測しながら、かけられるコストをバランス化させるという体制を築くことができました。これが、私がインサイドセールスとフィールドセールスを複数回行ったり来たりしながら獲得した、インサイドセールスの役割だと思っています。

『THE MODEL』型ですと、「商談化率を追うのがインサイドセールスですよ」と(いう考え方です)。それは、どの目標を追うかという副次的なものだと考えています。

あとは、外勤か内勤かですね。これも考え方次第で、場合によっては先ほどのとおり、エンタープライズ層でも1回目は訪問するけれど、2回目以降はベルフェイスを活用してウェブ商談をするなど……別にそれは、フィールドセールスだろうが便利であればウェブ商談を使うべきでしょうし、(外勤か内勤かは)あまり本質ではないと考えております。

この考え方というのは、あくまでクラウドサインにとって(よいということで)こうしました、というだけのお話です。みなさんの商材のLTVがどれくらいかによって、もしかしたら全部訪問営業するのがいい可能性もあります。場合によっては、全部ウェブ商談に踏み切る考え方もあると思います。

まずやるべきは、みなさんの取り扱うプロダクトに向き合って、それでどれくらい契約を獲得できて、どれくらいコストをかれられるかという経営判断のもとで、どれくらいのリソースを営業戦略にかけるかという判断が、次に出てくるようになると考えております。

クラウドサインからは以上です。こうした戦略を(推進するために)インサイドセールスとして、社員や学生インターンも募集しております。ぜひご応募いただければと思います。私からは以上となります。

司会者:橘様、お話ありがとうございました。

(会場拍手)