日本人のための「ライフシフト」とは?

豊田義博氏:パネラーのみなさん、ありがとうございました。事前にも一切打ち合わせもなく、スライドも初めて見たところからパネルディスカッションをやっていただいたので、本当にありがとうございました。

さて、このフォーラムのメインタイトルは「日本版ライフシフトの法則」と銘打っております。書籍『ライフ・シフト』は、英国発の話です。日本人の我々にとてもフィットする部分もあるし、でも、どこかでやっぱり我々自身の国の特性だとか、いろいろなことがあるよねと。そうした時に、日本人が日本社会の中でどう変わっていくことができるのか。私たちライフシフト・ジャパンは、そうしたことをベースに置きながら活動してきました。

いろいろなインタビューを行いました。一部の方々のお手元にある書籍『実践! 50歳からのライフシフト術』の中にも、22人の変身ストーリーが掲載されています。

実践! 50歳からのライフシフト術―葛藤・挫折・不安を乗り越えた22人

こうした数多くの個人のストーリーを分析する中から、4つの法則が浮かび上がってきました。一つひとつ筋書きに合わせてご説明していこうと思います。

ライフシフトの第1法則は「5つのステージを通る」。多くの人が、ここに書いてある「CURIOUSLY QUESTIONS」というところから始まって、グルッと回るようなかたちで、「BECOME A HERO」になっていく。こんなステージを通っているぞ、と順にご説明していこうと思います。

1つ目のステージは「心が騒ぐ」と名づけました。これまでのキャリアに対して、このままでいいのかという疑問とか、あるいは今後への違和感。先ほども違和感ということをパネラーのみなさんも何人か口にされていましたが、たぶん今、この違和感はすごく大切なことなのかなと。

仕事での挫折もあります。失意などもある。おそらくほぼすべての方にこのステージは訪れていると思います。ですが、私たちがお会いした方は、ここでの心の動きから逃げずに受け止めようとして「なんかこれっておかしいぞ」というかたちで、まさにそれを受け止めて、次へのアクションをし始めている。

会うべき自分は、すでに自分の中にいる

次のステージは「旅に出る」と名づけました。もちろん、文字通りの旅に出るという意味ではなく、思いついたら何かやってみようと。

違和感がある。このままでいいのか。とくにゴールは見えていない、目的地が明確に見えてるわけではないけれども、ここで何かやってみよう。あるいは、よろしくない状態だけれども、逆にその状態そのものを楽しむというか、あえてモラトリアム期間を設けていくような。立ち止まらずに前に動いて、新たな何かを獲得していくようなプロセス。

リアルに旅に出る方もやっぱりいるんですね。冒頭のインタビューの中で、旅に出る中でまさにいろいろなことを探したという方が、実は何人もいるんですよ。そんなことも含めて、こうした2つ目のステージがあるな、と。

2つ目のステージを通していろいろなイベントがある中で、「自分と出会う」という3つ目のステージが訪れます。キャリアの棚卸しなどを通して、自分自身がこういうことを思っていたんだということを自覚します。

子どもの頃の原体験に戻った上で、自分が大切にしているモノに気づく方もいました。先ほど「価値軸」という言葉を使いました。先ほどのパネルディスカッションの中でも、島田様が「パーパス(Purpose)」という言葉をお使いになられていますが、同じことを意味していると思います。

こういう価値軸と出会っていくことが、まさにこの3つ目のステージです。また、これは単なる思考じゃなくて、できごと、イベントを通して気づく(ものです)。

さらにもう1つ言うと、「自分はこういうことがやりたかったんだ」「自分の軸はこうなんだ」と気づく人のほとんどは、実はそれはまさに自分の中にあるわけです。実は今までこういうことを大切にしてたけど、それをあまり自覚していなかった。そのことに改めて気づく。会うべき自分は、すでに自分の中にいるのだと。『青い鳥』の話と同じです。

本当にやりたいことを見つけた人は、すごい勢いで学び始める

こうして「自分と出会う」というステージを経験した方は、おもしろいぐらいに学び始めます。すごい勢いで学ぶ。「学びつくす」と名づけました。

「学び」には、2つのステージがあるなと思っています。実は「旅に出る」ステージの時に学んでる方も、一部にはいるんです。とくに目的地は定まっていないんだけど、「学び」というかたちの旅に出る。

ですが、「学びつくす」ステージの方々はそうではなくて、自分自身の中に、自分の大切にしたいこと、やりたいことが見えている。そうした時に、「そこにたどり着く上で、自分に足りないものがたくさんある」と気づくわけです。そうすると、彼ら彼女らは、まさにすごい勢いで学び始めます。

大学とかスクールに通うだとか、そういう制度的な学びの場に通う方もたくさんいます。資格を取ろうという方もいらっしゃいます。

よく「日本人はあまり学ばない」と指摘されますけれども、こういう方々を見ると「それは自分自身の軸に気づいてないからだ」と。「自分の軸に気づいたら、実は学びたくなるんだ」ということが、みなさんのストーリーを通して本当によくわかりました。

もちろん学びつくす中身は、制度的な学びに限らないわけです。いろいろな人に話を聞きまくるということもありますし、試しに何かやってみることもすごく大切な学びなわけですよね。アウトプットする中で試行錯誤しながら学んでいく。

「日本人は実は学び好き」だと思います。やりたいことがあって、その時に「何が足りないぞ、どうしよう」と仮説を立てる、PDCAを回していくということが、要は学びの原点。日本人は、そういう創意工夫という部分にとても長けた部分があると思います。やはり足りないのは軸なのだということを、改めて感じます。

ほとんどの人が過去の経験・スキルを活かしながら、新しいことを始める

5つ目のステージです。今回のプレゼンテーション映像の中でも、「主人公」という言葉を使っています。「主人公になる」ということが、まさにステージの最後です。

ほとんどの方が、会社勤めをしていた時にやっていたこととはぜんぜん違うことをやります。けれども、会社勤めをしていた時のいろいろな経験や、培ってきたスキル・ノウハウはすべて役に立つと、みなさん言うんです。「どうやるか」とか、「HOW(どのように)」の部分に関しては応用が利くんです。

一方で、やはりうまくいかないことを経験する方もたくさんいらっしゃいます。先ほど和光さんがおっしゃっていましたけれども、いわゆる大企業や組織の中の論理みたいなことをベースに動いてしまったために、人がぜんぜん動かないというようなことに直面するストーリーもたくさん伺いました。

これまでの自分を活かせる部分があるんですけれども、一方でアンラーニングすべきポイントも明らかにある。この2つのことを意識しながら前に進む。

さらに、自分の時間をマネジメントすることも、とても大切なんだなと感じました。もちろん、「時間」というのは、働く時間ということだけではなく、生活時間全部を含めて、自分自身がどうあるかということにちゃんと向き合っていく。そして、自分自身を軌道に乗せていく。

この一連の5つのステージですが、あっという間に終わるわけではまったくないです。先ほど田中先生も、じわりじわりということを言われました。違和感に気づいてから10年〜15年経ってとか、実はそういうかたちで時間がかかってる方もたくさんいらっしゃいます。

ですが、違和感というもの、最初のステージの「心が騒ぐ」状態を大切にしながら、次のステージにちゃんとつなげ続けている、こうしたことがあるのだと思います。この「5つのステージを通る」という変身ストーリーは、みなさんに共通するということが見えてまいりました。

ロールプレイングゲームのように「旅の仲間」に出会う

第2法則、第3法則、第4法則は、第1法則のサイクルを回し、ステージを進めていくていく上でどういうことが大切なのかという位置づけのものです。

第2法則です。「旅の仲間と交わる」。ストーリーですので、主人公がいるだけではなく、やはりいろいろな登場人物が出てくるわけです。どうやらこの7つが主たる登場人物のようだなと。まだ過渡期かもしれませんが、そのようだなということが見えてきました。

1人目は非常に重要な役回りで、「使者」と名づけました「あなたはこういうことをすべきだよ、やらない?」という、ミッションを持ってくる登場人物です。

ですが、突然そういう話が降って湧くのでは、決してないわけですね。自分自身の興味関心とか、ビジョンを自己開示しているということがあって、こういう「使者」が訪れる。

具体的にものを言わない使者も登場します。実は人じゃないケースもあります。イベントだったり。災害に遭うとか。子どもが生まれたことから自分自身と向き合い直すとか。こうした「使者」が、初期のステージの中に登場してくるわけですね。

旅の仲間の典型的な人物には「ともだち」という名前をつけました。目的地を目指す、一緒に旅をしていくという、桃太郎でいうと、イヌ、サル、キジです。1人ではなかなかいろいろなことが実現できないという時に、自分自身の軸に共感してくれて、一緒にいろいろなことをやっていくという、そういう仲間です。

会社の中で言えば、仕事の同僚みたいな位置付けにはなるわけですけども、そういう位置付けとはやっぱり質的にも違う、距離感がぜんぜん違う。ですので、「ともだち」という言葉をあえてつけました。

でも、この主人公と「ともだち」だけでも、なかなかストーリーは前に動きませんので、「支援者」が現れます。いろいろなかたちでけしかけてくれたり、背中を押してくれたり、実際のお客さんになってくれるケースもあります。