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ライフシフト・ジャパン設立1周年記念フォーラム/「日本版ライフシフトの法則」のご紹介(全1記事)

日本人の国民性と『ライフ・シフト』にはギャップがある 「日本版ライフシフトの法則」

2018年12月4日、ライフシフト・ジャパン株式会社の設立1周年記念&『実践!50歳からのライフシフト術』の出版記念イベントが開催されました。「人生100年時代」に突入した日本で、一人でも多くの人が「人生100年時代」をワクワクしながら生きていける社会づくりを目指すライフシフト・ジャパン。本パートでは、ライフシフト・ジャパン取締役の豊田義博氏が登壇し「日本版ライフシフトの法則」と題して、日本人の国民性に合ったライフシフトのストーリーを紹介します。

日本人のための「ライフシフト」とは?

豊田義博氏:パネラーのみなさん、ありがとうございました。事前にも一切打ち合わせもなく、スライドも初めて見たところからパネルディスカッションをやっていただいたので、本当にありがとうございました。

さて、このフォーラムのメインタイトルは「日本版ライフシフトの法則」と銘打っております。書籍『ライフ・シフト』は、英国発の話です。日本人の我々にとてもフィットする部分もあるし、でも、どこかでやっぱり我々自身の国の特性だとか、いろいろなことがあるよねと。そうした時に、日本人が日本社会の中でどう変わっていくことができるのか。私たちライフシフト・ジャパンは、そうしたことをベースに置きながら活動してきました。

いろいろなインタビューを行いました。一部の方々のお手元にある書籍『実践! 50歳からのライフシフト術』の中にも、22人の変身ストーリーが掲載されています。

実践! 50歳からのライフシフト術―葛藤・挫折・不安を乗り越えた22人

こうした数多くの個人のストーリーを分析する中から、4つの法則が浮かび上がってきました。一つひとつ筋書きに合わせてご説明していこうと思います。

ライフシフトの第1法則は「5つのステージを通る」。多くの人が、ここに書いてある「CURIOUSLY QUESTIONS」というところから始まって、グルッと回るようなかたちで、「BECOME A HERO」になっていく。こんなステージを通っているぞ、と順にご説明していこうと思います。

1つ目のステージは「心が騒ぐ」と名づけました。これまでのキャリアに対して、このままでいいのかという疑問とか、あるいは今後への違和感。先ほども違和感ということをパネラーのみなさんも何人か口にされていましたが、たぶん今、この違和感はすごく大切なことなのかなと。

仕事での挫折もあります。失意などもある。おそらくほぼすべての方にこのステージは訪れていると思います。ですが、私たちがお会いした方は、ここでの心の動きから逃げずに受け止めようとして「なんかこれっておかしいぞ」というかたちで、まさにそれを受け止めて、次へのアクションをし始めている。

会うべき自分は、すでに自分の中にいる

次のステージは「旅に出る」と名づけました。もちろん、文字通りの旅に出るという意味ではなく、思いついたら何かやってみようと。

違和感がある。このままでいいのか。とくにゴールは見えていない、目的地が明確に見えてるわけではないけれども、ここで何かやってみよう。あるいは、よろしくない状態だけれども、逆にその状態そのものを楽しむというか、あえてモラトリアム期間を設けていくような。立ち止まらずに前に動いて、新たな何かを獲得していくようなプロセス。

リアルに旅に出る方もやっぱりいるんですね。冒頭のインタビューの中で、旅に出る中でまさにいろいろなことを探したという方が、実は何人もいるんですよ。そんなことも含めて、こうした2つ目のステージがあるな、と。

2つ目のステージを通していろいろなイベントがある中で、「自分と出会う」という3つ目のステージが訪れます。キャリアの棚卸しなどを通して、自分自身がこういうことを思っていたんだということを自覚します。

子どもの頃の原体験に戻った上で、自分が大切にしているモノに気づく方もいました。先ほど「価値軸」という言葉を使いました。先ほどのパネルディスカッションの中でも、島田様が「パーパス(Purpose)」という言葉をお使いになられていますが、同じことを意味していると思います。

こういう価値軸と出会っていくことが、まさにこの3つ目のステージです。また、これは単なる思考じゃなくて、できごと、イベントを通して気づく(ものです)。

さらにもう1つ言うと、「自分はこういうことがやりたかったんだ」「自分の軸はこうなんだ」と気づく人のほとんどは、実はそれはまさに自分の中にあるわけです。実は今までこういうことを大切にしてたけど、それをあまり自覚していなかった。そのことに改めて気づく。会うべき自分は、すでに自分の中にいるのだと。『青い鳥』の話と同じです。

本当にやりたいことを見つけた人は、すごい勢いで学び始める

こうして「自分と出会う」というステージを経験した方は、おもしろいぐらいに学び始めます。すごい勢いで学ぶ。「学びつくす」と名づけました。

「学び」には、2つのステージがあるなと思っています。実は「旅に出る」ステージの時に学んでる方も、一部にはいるんです。とくに目的地は定まっていないんだけど、「学び」というかたちの旅に出る。

ですが、「学びつくす」ステージの方々はそうではなくて、自分自身の中に、自分の大切にしたいこと、やりたいことが見えている。そうした時に、「そこにたどり着く上で、自分に足りないものがたくさんある」と気づくわけです。そうすると、彼ら彼女らは、まさにすごい勢いで学び始めます。

大学とかスクールに通うだとか、そういう制度的な学びの場に通う方もたくさんいます。資格を取ろうという方もいらっしゃいます。

よく「日本人はあまり学ばない」と指摘されますけれども、こういう方々を見ると「それは自分自身の軸に気づいてないからだ」と。「自分の軸に気づいたら、実は学びたくなるんだ」ということが、みなさんのストーリーを通して本当によくわかりました。

もちろん学びつくす中身は、制度的な学びに限らないわけです。いろいろな人に話を聞きまくるということもありますし、試しに何かやってみることもすごく大切な学びなわけですよね。アウトプットする中で試行錯誤しながら学んでいく。

「日本人は実は学び好き」だと思います。やりたいことがあって、その時に「何が足りないぞ、どうしよう」と仮説を立てる、PDCAを回していくということが、要は学びの原点。日本人は、そういう創意工夫という部分にとても長けた部分があると思います。やはり足りないのは軸なのだということを、改めて感じます。

ほとんどの人が過去の経験・スキルを活かしながら、新しいことを始める

5つ目のステージです。今回のプレゼンテーション映像の中でも、「主人公」という言葉を使っています。「主人公になる」ということが、まさにステージの最後です。

ほとんどの方が、会社勤めをしていた時にやっていたこととはぜんぜん違うことをやります。けれども、会社勤めをしていた時のいろいろな経験や、培ってきたスキル・ノウハウはすべて役に立つと、みなさん言うんです。「どうやるか」とか、「HOW(どのように)」の部分に関しては応用が利くんです。

一方で、やはりうまくいかないことを経験する方もたくさんいらっしゃいます。先ほど和光さんがおっしゃっていましたけれども、いわゆる大企業や組織の中の論理みたいなことをベースに動いてしまったために、人がぜんぜん動かないというようなことに直面するストーリーもたくさん伺いました。

これまでの自分を活かせる部分があるんですけれども、一方でアンラーニングすべきポイントも明らかにある。この2つのことを意識しながら前に進む。

さらに、自分の時間をマネジメントすることも、とても大切なんだなと感じました。もちろん、「時間」というのは、働く時間ということだけではなく、生活時間全部を含めて、自分自身がどうあるかということにちゃんと向き合っていく。そして、自分自身を軌道に乗せていく。

この一連の5つのステージですが、あっという間に終わるわけではまったくないです。先ほど田中先生も、じわりじわりということを言われました。違和感に気づいてから10年〜15年経ってとか、実はそういうかたちで時間がかかってる方もたくさんいらっしゃいます。

ですが、違和感というもの、最初のステージの「心が騒ぐ」状態を大切にしながら、次のステージにちゃんとつなげ続けている、こうしたことがあるのだと思います。この「5つのステージを通る」という変身ストーリーは、みなさんに共通するということが見えてまいりました。

ロールプレイングゲームのように「旅の仲間」に出会う

第2法則、第3法則、第4法則は、第1法則のサイクルを回し、ステージを進めていくていく上でどういうことが大切なのかという位置づけのものです。

第2法則です。「旅の仲間と交わる」。ストーリーですので、主人公がいるだけではなく、やはりいろいろな登場人物が出てくるわけです。どうやらこの7つが主たる登場人物のようだなと。まだ過渡期かもしれませんが、そのようだなということが見えてきました。

1人目は非常に重要な役回りで、「使者」と名づけました「あなたはこういうことをすべきだよ、やらない?」という、ミッションを持ってくる登場人物です。

ですが、突然そういう話が降って湧くのでは、決してないわけですね。自分自身の興味関心とか、ビジョンを自己開示しているということがあって、こういう「使者」が訪れる。

具体的にものを言わない使者も登場します。実は人じゃないケースもあります。イベントだったり。災害に遭うとか。子どもが生まれたことから自分自身と向き合い直すとか。こうした「使者」が、初期のステージの中に登場してくるわけですね。

旅の仲間の典型的な人物には「ともだち」という名前をつけました。目的地を目指す、一緒に旅をしていくという、桃太郎でいうと、イヌ、サル、キジです。1人ではなかなかいろいろなことが実現できないという時に、自分自身の軸に共感してくれて、一緒にいろいろなことをやっていくという、そういう仲間です。

会社の中で言えば、仕事の同僚みたいな位置付けにはなるわけですけども、そういう位置付けとはやっぱり質的にも違う、距離感がぜんぜん違う。ですので、「ともだち」という言葉をあえてつけました。

でも、この主人公と「ともだち」だけでも、なかなかストーリーは前に動きませんので、「支援者」が現れます。いろいろなかたちでけしかけてくれたり、背中を押してくれたり、実際のお客さんになってくれるケースもあります。

師・預言者・寄贈者・門番たちと出会うことでストーリーが進む

「師」も出てきます。ステージが始まる前にすでにいるというケースもありますが、ステージが始まってから登場して、「そうか、そういうことが大切なんだ」という気づきを与えてくれる。ものの考え方や、あるべき方向性を指し示す、師のような存在。

「預言者」という役回りもいます。今までのような働き方、生き方ではなくて、「もっとこういう考え方を大切にした方が、こういうことをしたほうがいいぞ」というようなことを、何らかのかたちで伝えてくれる人ですね。これは近しい人じゃなくて、例えばある講演へ行った時に、登壇者が語ったというケースにも当てはまることもありますし、書籍であるケースもあります。

プレゼントをくれるような「寄贈者」も登場します。「学びつくす」とか「主人公になる」というステージの中で、「こういうことをやってみたらいいんじゃないの?」というようなサジェスチョンをくださる、そういう方が登場してきます。

「門番」も登場するんですね。代表的には、男性が何かをする時の「嫁ブロック」みたいなものとイメージしていただければいいと思うんですけども。会社からの引き留めということもあります。自分がやりたいことを「やめたほうがいい」って、否定してかかる。ですが、逆にこうした存在が、改めて自分自身の中の軸を再確認させてくれる役回りになります。

家庭の中で反目があっても、対話を重ねていく中で、「門番」が「支援者」に変わってくる。あるいは「ともだち」に変わっていく。そんな役回りを演じています。

こうした旅の仲間と交わるということで、先ほどの第1法則、「5つのステージを通る」ということが促進されていくわけです。1人ではストーリーは前に動きません。

ライフシフトを実践している50代に共通する「3つの軸」

3つ目の法則です。「自分の価値軸に気づく」と付けました。最初のプレゼンテーションで大野から、『実践! 50歳からのライフシフト術』の中では8つの価値軸が紹介されているというお話をさせていただきました。50歳からのライフシフトという22名のインタビューの中から見えてきたのが、この8つだったということです。もう少し広くいろいろな方々のライフシフトを見ている中で、この軸は大きく3つに分けることができるかなと。

1つ目の軸は、「社会価値」と名づけました。社会に貢献、世の中の役に立ちたいというような動機というか、そういう軸であったり、あるいはもっとリアルなかたちで、ここにいる誰かのためというような、先ほど宮城さんの話にもありました社会起業家など、そういうような人たちに近い志ですね。

好きを仕事に、あるいは地域のために何かを生み出す。社会に対して自分自身はどういうふうになりたいか、ありたいかというようなことに、自分の中で気づいていく。こういう価値軸が1つ。

二つ目は「個性価値」と名づけました。自分の中にある志向、価値観、あるいは能力、そうしたものを何らかのかたちで活かしたい、では、どこにフォーカスをするか。一番多いのは、自分の持ってる価値観かもしれませんし、夢中になれるというものっていうのは、自分の持ってる動機とか欲求とかっていうものです。経験、能力を活かすということが軸になる方もいらっしゃいます。

「自由自在に」という個性価値もある。自分の裁量でいろいろなことをやりたいと。縛られるのではなく、自分自身がやりたかったことがベースとしてあると。何らかの「責任を果たしたい」、いい意味で何かを背負いたい、そういうものが自分自身の中にある人もいる。「仲間とともに」といを大切にしている人もいる。

この2つは、仕事において価値観ですけれども、「生活価値」もあります。「家族とともに」ということを大切にしたい、「仕事も生活も」全体を見ようと、「好きな場所で」「自分の時間」、「変わり続ける」ですとか、「親に寄り添う」というようなことも、昨今の世の中でいうと非常に大切ですね。

今3つの価値軸、なおかつそれを6つにわけて、18のレパートリーを提示いたしました。実際は、どれか1つが誰かの価値軸なっているというよりは、いくつかのものがご本人の中の拠り所となっているように思います。

一人ひとりの価値軸というのは、まさに人それぞれの固有のものなんだろうなというふうに思います。

柔軟に変化できる人が持っている10の資産

最後の法則は、先ほどよりご説明をしています「変身資産を活かす」というものです。10の変身資産があります。先ほどはあまり説明しませんでしたので、いくつかの部分を少しご説明したいと思います。

「とにかくやってみる」、英語の「JUST DO IT」、先ほど和光さんにご指摘いただいた、「アンラーン」、学んだことを捨てられるかということ。「違和感を大切にしている」ということが、まさに第1ステージから第2ステージに移れるかどうか。違和感そのものは持っていても、どうしてもやり過ごしてしまうという方が正直少なからずいると思っています。ですから、そうした、ある種の人には当たり前のことですけど、こうしたこともすごく大切になってきます。

「みんなと同じじゃなくても平気なこと」っていうのも、とても大切なファクターだなと思います。ややステレオタイプな言い方になりますけど、日本人ってどうしてもみんなと同じであることの方がセーフティーだ、という意識が非常に強い。

これは、先ほど田中先生が話されていた就活においても非常に根強く、本人のキャリアの本来的なあり方を阻むということがたくさんあると思います。ですが、こうした意識を本人が持てているということが、1歩2歩とステージを前に進める際のドライブになると思います。

「3つ以上のコミュニティに所属している」と「有意義に公私混同している」はつながるものです。先ほど仕事以外の生活という、ちょっと雑駁な言い方をしましたけど、仕事以外でもいろいろなライフロールを人は持っているわけですよね。地域活動の中で自分自身の立ち位置を確認する、あるいは家庭のなか、趣味とかスポーツ活動とかそういうことも含めて、いろいろなフィールドが、それぞれ一人ひとりの中にあると思うんですね。

どこか一点に長けているというのではなく、仕事もある程度大切にしつつも、いくつかのコミュニティに属しながら、その中で自分の価値を発揮しているという人たちほど、いろいろな意味でいい展望を持ち、自分自身を前向きに進めていく力があるのだと思います。

多くの人が、自分の本当の資産や特性に気づいていない

「自分についてよく知っていること」。これもとても当たり前のことかもしれませんが、多くの方々は、実は自分のことがよくわかっていない。先ほど言ったように、自分の軸そのものに気づいていない方もたくさんいます。こうしたことに気づいて、先ほど島田さんのご指摘にもあった、あまり意識していないところを意識して、それを高めなきゃということも、すごく大切なことだなと思います。

もちろん我々がお会いした方々が、これ全部を持ってるわけじゃないです。なおかつ、多くの方がこういったものをすごく高いレベルで持ってるわけでもないです。自分の中のレパートリーで、相対的に何が使えるかということを意識して、カードを切っていきながら前に動き始める。

田中先生がおっしゃったことの繰り返しになりますが、そうしていくと、ステージが前に進んでいく中で、いろいろなことが可能になって広がっていくと思います。

この「自分についてよく知っている」という変身資産、自分はこういうことは不得意、こういうことは得意だよ、こういう特性を持ってるぞということを自分なりに自覚しているということが大切だと思います。そういったことを活かしながら、前に進んでいくということで「THEORY OF LIFE SHIFT」という、4つの法則が見えてきました。

私の話はこれで以上になります。ありがとうございます。

(会場拍手)

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