位置情報の概念を変えるMapBox

孫正義氏(以下、孫):もう1つ会社を紹介しましょう。MapBoxのCEO、Ericです。

(会場拍手)

Eric Gundersen氏:AIは本当に我々の周りにあります。我々の周りにあるというのは、要するに物理的に私たちの周りにあるということです。

重要になってくるのが位置だと思います。ロケーションの情報です。我々の周りといったらロケーション。

これはピストンです。1世紀にわたって産業界の一番根幹にあるのはピストンでした。

我々が人間から馬車、蒸気機関車、そしてエンジン車に進化することによって、我々の能力は上がりました。そしてまた距離も伸びました。我々はよりたくさんの場所に行くことができるようになったわけです。

つまりピストンによって我々は常にイノベーションを起こすことができました。ピストンが世界の中心にあったんです。何十億も動いて、実際に都市をつくってきた。そしていろんなものを運んできました。エンジンがうなり、世界はそれに伴って進んできたわけです。

このグローバルな変化は、さらにスピードを増しています。このライブロケーションの時代にようこそ。

産業の基本的な単位はピストンではありません。センサーなんです。例えば携帯電話、車、そして我々の家にセンサーはついています。私が車を運転しているわけではなく、実際に車の、そしてまた道路からのライブロケーションデータが車を前に進めています。

産業の時代は変わってきています。ピストンがうなって、例えば10個のピストンを動かせば、本当に10倍のパワーが出ました。

しかし、今はこういった栓形で増える時代ではなくなっています。ライブロケーションの時代は、センサーなんです。センサーがリアルタイムの物流だけの真実を知らせてくれます。このAIを使って、たくさんのデータを使って。これこそが新しい時代の幕開けだと言っていいでしょう。

ライブロケーションは、ネットワーク効果です。これによって、デベロッパーの方たちにいろんな力を提供し、センサーを分散し、そしてまたプラットフォームにデータをフィードバックしてくれます。

今120万人以上の開発者が我々のプラットフォーム上で開発をしてくださっています。彼らのアプリケーションの中でAPIとかSDK、コードを使ってくださっているわけです。

すでに4億人以上のマンスリーアクティブユーザーがいます。ユーザーというのは、単に使っているというだけでなく、匿名化をした集約したデータの75億マイル分のデータを我々に戻してくれるんです。

緯度、経度、そしてタイムスタンプ、高度。これによって新しい道路がわかります。道路の状況、ライブの状況がわかります。この都市の全体の鼓動を示すわけです。

MapBoxは、ライブロケーションプラットフォームです。営みとともに呼吸し、成長し、広がっていくものなんです。そしてまた、もしこういった営みの鼓動がなければ、地図というのは単に静的なもの、死んだも同然です。マップによって繋がり、動きのシンフォニーが生まれます。さまざまな人の交流、学習です。

どうしてMapBoxを始めたのか

このフロンティアという話をするにあたっては、そもそもこのミッションを私がどう始めたのかをお話しさせてください。

MapBoxを始めたのは、我々が探索している場所が地図になかったからなんです。今後の森林伐採のモニタリングをする、あるいはナイジェリアのマラリアを追跡して、どこに診療所を建てればいいのか、衛星画像を使ってパキスタンの洪水の状況を見なきゃいけない。

私が初めて2009年にアフガニスタンのカブールに行った時、その時の地図は南部からのジャラーラーバード、そして環状道路、交差点のみでした。

つまり、どうやって投票所をマッピングすればいいのかがわからなかったわけです。ということで、私たちはそれをつくり始めました。そしてその地図を世界にオープンにしたんです。

これは生きている地図だと言えます。つまり、人間の活動のマップなわけです。すべての移動、すべての荷物の移動、そしてその思い出の共有。すべてが繋がっています。

実際、これによってユーザーがどう変わるのか、どう移動するのかは変わっていきます。これはデジタルの世界と物流世界の融合なんです。

誰かがどこかに行く……どこにデートに行くのかではなくて、世界のあらゆる都市で、スナップチャットを見て、実際に何が起きているのか、今どこに友人がいるのかを、見ることができるんです。

例えば、私がどこを走ったのかということだけではなく、3DやARを使って、今どこに行こうとしているのかを共有するわけです。

FacebookがAIやこのグラフを活用する最近のお客さまです。そしてさらに、例えばコーヒーとかディナーをどこに食べに行くのかということまで決められる。このように、今自分たちが何に興味があって、友人が何に興味があるのかをもとに、ライブのマップをつくっているわけです。

このマップのパワーですが、ストーリーを提起してくれます。これまでは、こういったことはエリートとか政府、あるいは軍にすべて握られていました。それを私たちが変えています。我々がマップをすべてつくれるわけです。

これは非常に大きなオポチュニティだと思います。そして大きな責任も担っていると思います。

膨大なデータから「真実」が見える

コミュニティはすでに4億人以上のマンスリーアクティブユーザーです。そして、それぞれのユニークなデータをつくっています。それこそが真実なんです。

真実は今より主観的になっています。人間としてどういうツールを使うのか、そしてそこでどう基本的な真実を突き詰めていくのか。

センサーの時代に、客観的な真実は私たちの手が届く範囲にあります。真実はそこにあるんです。1ヶ月当たり70億マイル分のデータを私たちは集めていますが、そこに真実があるわけです。

それをどうやって人間だけでなくマシーンにも使ってもらうのか、自動運転車にどう使ってもらうのか。今どこにいるのかということだけではなく、ある程度の確信度でどこにいるのかがわかるようになるわけです。

AIがそのオポチュニティをつくってくれます。ライブデータのプラットフォーム、ニューラルネットワークをエッジでデバイス上に走らせます。

それがすべて真実につながります。マシンを使って、もう一度すばらしい真実を作り変えるわけです。実際に道路・車、そういったものが真実の上に作られるわけです。同時に、グローバルにこのライブマップを作っていくことができます。それをすべてエッジで情報収集するわけです。GPSをさらに拡張しています。

これは非常にパワフルなセンサーだと思います。今世界にある、最もパワフルなセンサーです。例えば、自動運転車で、セマンティックマップを使って、実際のロケーションを見ていきます。これがセマンティックのセグメンテーションです。そして、ARを使って実際に道路の特徴はどうなっているのか、道路や人、車をトラッキングしています。これが、デベロッパーに使っていただけるようにオープンになっています。

Vision SDK。これはスマホ・カメラ・自動車を一緒にして、デベロッパーがドライビング体験をすべてコントロールできるようになっています。非常にパワフルなセンサーがカメラに付いてて、実はカメラをセンサーにしているわけです。単純にどういうコンテクストかということだけではなく、実際のデータでもって、何が車に起きているのか、どういったデータを収集してクラウドに戻すべきなのかを考えています。

今はこれ、車の中で起きていること。実際にこのキーノートの後に、このエキシビジョンホールでデモをお見せしています。未来に向けてのインフラも作っています。いろんな階層のデータ、そしてその動きです。人とかマシンの動きだけではありません。すべての動きを私たちはマップにしていきます。

孫さんのビジョン。それから、我々の創業者のビジョン。こういったビジョンが組み合わさることによって、もう本当に、非常にすばらしい力が生まれると思います。これが未来のペースを作っていくわけです。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

中立で競合しないMapBoxの可能性

:MapBoxはGPS、そしてAIの力で、あらゆる街中のデータを集めて、そしてそれをFacebookやSnapなど、いろんな会社にAPIを公開して、中立なプラットフォームとして、各社がそこにどんどんデータを足していくと。そういう意味では、ロケーションベースのAIプラットフォームだと思います。

これから非常に重要な役割を、さらに果たしていくと思います。もちろん、GoogleはGoogle マップを持っているわけです。でも、Googleと競合しているFacebook、Snap、いろんな他の会社は、Googleのマップを使いたくはないわけです。なぜなら、そこにAPIを使って、データをどんどん提供していくと、Googleに自分のお客のデータを全部吸い取られるからです。

そういう意味では、中立で競合しないMapBoxをプラットフォームとして、各社がそこのロケーションベースのAIのデータを集めていく。ここにMapBoxの価値があると、私は思うわけです。データはそれぞれの企業、顧客、サービスでどんどん集まります。

みなさん、自分でiPhone、あるいはAndroid phone、あるいはタブレット、PCを使っている。Amazonのクラウド、Alibabaのクラウド、Google、Facebookなどいろんなものを使っている。