「タンパク質危機」の解決策はハエや蚕
昆虫食スタートアップたちが提示する地球の救済策

「タンパク質関連Tech」Meetup #1/2

「タンパク質関連Tech」Meetup
に開催
2018年9月6日、深刻な食糧危機に紐づく「タンパク質危機」の解決を目指して、専門のスタートアップや大手企業、研究者らが一堂に会し、「タンパク質関連Tech」Meetupが、コワーキングスペース「docks」で開催されました。「タンパク質関連テクノロジー最前線」では注目のスタートアップがプロジェクトを発表。本パートではムスカとエリーが昆虫食の可能性について詳らかにしました。

テクノロジーでタンパク質を生成する

流郷綾乃氏(以下、流郷):株式会社ムスカ・暫定CEOの流郷綾乃と申します。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

さっそくですが、私たちMUSCAがなにをしているか、どんな会社か。こちらです。

(スライドに『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐が映し出される)

みなさん、ご存じでしょうか? (参加者が)パラパラとしか笑ってくれないというね(笑)。有名な大佐のお手伝いをしているわけではないんですけれども。ちょっと笑ってくれない感じですね……。

(会場笑)

私たちMUSCAは、ひと言で言えば、ある昆虫を扱っている会社でございます。みなさん、この昆虫が何かわかりますか?

ハエなんですが、正式名称をイエバエと言いまして、学名では「Musca domestica」と言います。私たちの社名は、あの有名な大佐から取っているのではなくて、学名から取っています。

かわいいイエバエちゃんは、私たちの事業の中心であります。私たちのイエバエちゃんたちは、普通とはひと味違っておりまして、この図を見ていただければよくわかるかと思うんですが、優秀な個体だけを選別しております。

交配を重ねて品種改良を行っているんですね。それもなんと45年1,100世代という品種改良を行っております。私たちMUSCAは45年1,100世代の品種改良を重ねたイエバエの種を保有していると思ってください。

いわばスーパーエリートと言われるイエバエを私たちは「サラブレッド」などと言っています。基本的な仕組みは非常にシンプルです。生ゴミ・畜産糞尿などの有機廃棄物を用意します。その上に私たちイエバエちゃんたちの卵をパラパラと撒くんですね。そして、容器を部屋に入れて1週間放置します。

幼虫の本能を利用した効率的システム

流郷:放置するだけで、大きく育ったイエバエの幼虫と、幼虫の排泄物が有機肥料となっております。つまり幼虫のほうが餌になるんです。100%バイオマス・リサイクルシステムが完成しているということですね。

もう少し詳しく説明したいと思います。イエバエの卵がおからみたいだなと思う方がいると思います。専用のトレーがありまして、有機廃棄物にイエバエの卵をパラパラと撒いて、8時間ぐらいで孵化します。

人間は胃で消化するじゃないですか。孵化したら、幼虫は体全体が胃だと思ってください。だから、消化酵素を垂れ流しながら練り歩いている感じです。幼虫ちゃんたちは必要な栄養素をゴミ・有機廃棄物から吸収していくんですね。

そして、お腹いっぱいになってから、5〜6日間ぐらいかけて外に這い出していく習性があります。これはサナギになるときの工程になるんですが、セミとかも土の中から外に這い出してきますよね。それと一緒ですね。全量を外に這い出してくれて、それを乾燥させて動物性タンパク質として餌にします。残った消化酵素がかかったものがものすごくサラサラの有機肥料となっていて。

これは幼虫の本能を利用した効率的なシステムで、そのへんに飛んでいるイエバエを取ってきても、同じようなシステムになります。「だったらそのへん飛んできたイエバエでやればいいじゃん?」という感じなんですが、そうではないんです。

これは比較になります。自然界に飛んでいるイエバエは処理に3週間前後かかっていますね。MUSCAのイエバエだと、1週間で、さきほど言ったように全量が出てきます。

幼虫の生産効率は、(自然界のイエバエの場合は)原料投入比から見て3パーセント。MUSCAのイエバエは、ミニマムで見積もっても10パーセントなんですね。

それから、過密環境下でのストレス耐性は、自然界のイエバエは非常に弱いです。それに比べてうちのイエバエさんたちは品種改良を1,100世代重ねておりますので、非常に強い。大量飼育が可能なんですね。

ということは、自然界のイエバエと比較しても10倍以上の生産効率となっています。

MUSCA飼料の特長とは

流郷:それでは、出てくる飼料にどういった特長があるのかということについてです。飼料は動物性タンパク質として魚粉に代替されるものですよね。こちらは愛媛大学と共同研究をしておりまして、文部科学省管轄JSTから資金をいただいて、国の研究プロジェクトとして3年間、1億5,000万円かけて研究しております。

飼料の特徴は3つありまして。耐病性付与効果が1つ目ですね。こちらは抗生物質の代わりになるような効果となっています。

(スライドを指して)これは実験データで、マダイで実験しています。マダイに強制的に菌に感染させました。そして、MUSCAを5パーセント添加した飼料を食べたマダイは一匹も死なないでずっと生存していた。MUSCAではない100パーセント一般の飼料のほうは、10日間で全滅してしまったというデータになります。

2番目は、誘引効果についてです。これはブリのモジャコの画像になるんですが、いろいろな魚種で試しても同じ効果が出ています。MUSCAの飼料を5パーセント添加するだけで、こんなふうにダーッと寄っていきます。これを食べ終わったら、ちゃんと一般の飼料に戻ってきます。魚まっしぐらという食いつきですよね。

3番目は、増体効果です。通常の飼料とMUSCA5パーセント添加の飼料を比べたところ、この40パーセントというのが、増体効果の最大値となっております。平均で20パーセント増体しているので、エサ代が少なくて済むのがみなさんもおわかりかなと思います。

お話ししたとおり、最高級の魚粉よりも上回る、本当に高性能な結果が出てきました。

従来の堆肥化処理と比べると

流郷:次はMUSCAの肥料の特長についてです。これはハエの幼虫の排泄物ですよね。さきほどもお伝えしたとおり、幼虫が消化酵素を垂れ流しまくっています。有機肥料には、主に3つの特徴があります。

1つ目が病原菌抑制効果。さきほど言っていた抗生物質の代わりになるといった効果と同じと思っていただいたらいいですね。土の中を矯正させてくれる効果です。ビフィズス菌はたぶんみなさんもよくわかっているとおり、整腸してくれますよね。それと同じで、土の中の環境をよくしてくれる効果となっております。

そうすると、成長促進効果があって、根の張りがぜんぜん違うというのをわかってもらえますかね。

根の張りがよくなると、3番目の収穫量が増加します。これはお米のデータとなるんですけれども……(参加者に向けて)ありがとうございます。バシバシ撮っていただいて。本当に(笑)。

15パーセントというのが、収穫量が増加したデータですね。ということは、1年以上発酵させた完熟肥料以上の性能が、私たちの有機肥料にはあるということです。

それから、現在の畜産糞尿をどんなふうに処理しているかと言うと、99パーセント堆肥化処理で微生物による発酵処理となっております。

従来の堆肥化処理との比較では、処理期間が2〜3ヶ月から、完熟させようと思ったら1年間かかるんですね。それが1週間で終わります。

あとは温室効果ガスが、かなり問題となっています。メタンガスなどが、かなり出ていて問題となっているんですが、MUSCAのイエバエによる処理に置き換えると、99パーセント削減できるんですよ。もう環境負荷がないと思っていただいたらいいですね。

また、臭いの問題。畜産農家さんの周辺の地域は、車が走るだけでもけっこう臭いなと思うんですが、大型の工場を建設しますので、屋内での処理になるんですね。そうすると、当たり前ですが臭くないんです。

あとは、地下水の汚染が非常に問題になっています。私たちのラボは宮崎県にあるんですね。宮崎県は畜産県なんですが、条例で地下水が飲めなくなっているぐらい……田舎こそ飲めないんだと思っていただいたらいいのかなという感じですね。

それは硝酸態窒素が含まれているからと思ってください。MUSCAのイエバエによる処理ですと、硝酸態窒素は含まれていない肥料が出てきます。

外気温による影響で、微生物はなかなか安定しないので「冬は良いけど、夏は悪い」というようなことがあります。でも、昆虫は非常に強いのでそんなことは一切ないということです。そうすると、もう従来の堆肥化処理と比較しても圧倒的な優位性があると思ってください。

強力なキャッシュポイントが存在する

流郷:飼料、肥料、廃棄物処理という3つのキャッシュポイントがあります。

みなさんはさきほどから基調講演やパネルディスカッションを聴いていただいていたと思うので、なんとなくおわかりかなと思いますが、天然資源である魚粉がどんどん枯渇していっております。なので、供給に限界が近づいているんですね。なので、莫大に市場規模も増えています。

肥料を見てもそうですね。世界人口が増加していて、それとともにニーズが拡大します。オーガニック市場もどんどん増えているので、有機肥料が必要になってくるということですね。

あと、産廃処理などを見ていただいたら、世界中で処理が追いついていないので、深刻な環境問題となっているのは周知の事実かなと思います。

非常に強力なキャッシュポイントが3つ存在しているのが、私たちMUSCAなんです。ということは、「見ろ! ゴミが宝のようだ!」という感じなんです。ここ、みんなバーって拍手する感じなんです。

(会場拍手)

MUSCAのビジネススキーム

流郷:ありがとうございます。欲しがりで(笑)。じゃあ、ちょっと真面目に。

私たちは、大型工場を建設しないといけないんです。現在も研究所でハエの種をどんどん成長させている感じです。大型工場を建設する2号機以降のビジネススキームだと思っていただいたらいいんですが、私たちは工場をあまり持ちません。もちろん直営工場の第1号機は作りますよ。誰も一番風呂に入りたくないかと思うので。

サブリースのオーナーさんに工場を買っていただきます。そして、管理・運営はMUSCAが行います。オーナーさんにサブリースのプラントをまず買ってもらいますよね。そこからオーナーさんにはうちから卵を購入していただくことになります。

ということは、プリンターと少し似ていますね。プリンターの本体を買いまして、インクをずっと買い続けなきゃいけないですよね。卵を買い続けてもらわなきゃいけないんですけれども、そこで飼料と肥料について、私たちはオーナーさんに全額買い取り保証をしようと考えています。ということで、オーナーさんの利回り(を考慮して)、安定して工場を持っていただけるようなかたちになっています。

あとはこの流れのとおりで、私たちは基本的には「持たざる経営」を行っていきたいなと思っています。「持たざる経営」と、さきほど言ったような「ストックビジネス」型になっております。

あとは、さきほどのパネルディスカッションでも世界の話題が出てきたように、オランダ、南アフリカ、カナダに競合があって、悔しいですが、(諸外国に比べると日本は)資金調達額がえらいことになっている。「私たち、えらい少ないな、日本!」って感じです。

生産種も違います。私たちが扱っている昆虫はイエバエですが、ほかはミズアブやニクバエなどの昆虫を扱っています。

飼料への変換率は、10パーセントで、私たちが圧倒的に優位なんですよね。でも、資金調達はさみしいなという感じです。あとは(南アフリカが)5.4パーセント。これは表に出ている数字ですから、かなり自信を持っている数字だと思ってください。

このAgriProteinさんは、ビル&メリンダ(・ゲイツ)財団さんなどがお金を入れているような会社になって、かなり有名です。食料残渣・畜糞ができることがうちの強みだと思ってください。

研究期間がぜんぜん違うので、1,100世代という品種改良をずっと行ってきています。AgriProteinさんと比べても生産効率が2.64倍ありますが、圧倒的優位性で世界No.1を走りたいです!

目標達成への課題と光明

流郷:「本当に実行できるのかよ?」ということで。畜産糞尿は日本国内でも8,000万トンあったりするんですが、あとは(スライドを)見てください。

正しいエリアに建設すれば、原材料の調達は容易かなと思います。

私たちに必要な、協業していただく人たちについてです。プラント建設をしなければいけないので、建設会社さんや、FAのFactory Automationのメーカーさんなど、流通や研究開発をもっとやっていかなければいけないことがたくさんあります。こんな感じに、いろいろな方と協業して確実な運営と実現を目指していきたいと思っています。

なので、ここに私が来ると思っていなくて、けっこうナメていたんですが、タンパク質危機にみなさんかなり注目度が高いということで、各業界の大手の方といろいろな協業をしながら、私たちの目指すこのMUSCAの「STOP PROTEIN CRYSIS BY INSECT-TECH」……新しいITと呼んでいます。どうぞみなさん、そちらのブースでお待ちしていますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:MUSCA、流郷さん、どうもありがとうございました。

流郷:ありがとうございます。

司会者:ちょっとだけ時間オーバーしました。

蚕を利用した「シルクフード」

司会者:では、続きまして、エリー株式会社の梶栗さんからプレゼンをいただきたいと思います。こちらも同じく15分になっておりますので、よろしくお願いいたします。

梶栗隆弘氏(以下、梶栗):よろしくお願いいたします。エリーの梶栗と申します。「MUSCAさんがオーバーしてくださったので、私もオーバーできるかな?」なんて思っているんですけれども(笑)。

我々は、機能性昆虫食「シルクフード」という事業の研究開発をやっています。実はまだプロダクト自体ができていなくて、研究開発段階なのですが、それにもかかわらず、このような多くのみなさまの前で、今日事業紹介できることをたいへんうれしく思っています。

では、まず簡単な会社概要から説明させていただきます。我々は京都大学等との共同研究を成果として誕生したベンチャー企業で、昨年の「技術イノベーション事業化コース」で当事業が最優秀賞をいただいておりまして、現在は、京都大学の「GAPファンドプログラム」から採択を受けて、研究助成金をいただいているところです。

私たちの目指すところは、弊社のシルクフードによって、今回のタンパク質クライシスといった食料不足や環境問題の解決を企図しています。それを昆虫食を使ってやっていきたいと思っています。弊社のスライドは情報量がすごく多いので、ザッと見て移っていただければと思います。

なぜ昆虫食かと言いますと、全てを説明するには時間がないので、今日は簡単に説明させていただきます。簡単に言うと、昆虫はすごく生産効率が高くて環境にいい食品だからです。今後人口が増えるにあたって資源制約が出てくるなかで、昆虫はいま非常に注目されています。

昆虫食をどのように普及させるか

梶栗:本日は時間がないのでお伝えしたいことを大きく3点に絞りました。1つ目は、どのように昆虫食を普及させていくのかという点。そして、我々のシルクフードはなにを使っているのかという点。そして最後に、我々が今やっている研究内容とプロダクトについてお話しさせていただきます。

まず、どのように昆虫食を普及させるのかといった点です。昆虫食は今期待されていますけれども、人の食用にする上で一番ここが課題となっているのかなと我々は思っています。

弊社としては、これを解決するためには大きく2つ方法があるのかなと思っていて、1つは、今日のような啓蒙活動を地道にやっていくということ。

人々が地球の将来を考えて自発的に昆虫食を食べていくことが一番理想かなとは思っているのですが、とくに日本のような飽食の国は、環境のために何かを買うことや、いわゆる利他的に何かを買う、購買動機につながることが、ほかの国と比べてもあまりないと我々は思っています。

よって、ここに書いてあるように、機能性をキーに昆虫食を広めていきたい。つまり、昆虫の持っている特性だったり効能であったりをキーに、「昆虫を食べることで人が健康になるよ」「病気を予防できるよ」などの観点で昆虫食を受け入れられるようになってもらいたいと思っております。

今、海外でとくにコオロギ系のベンチャーがすごく増えていて、我々の調べたところによると、スタートアップがだいたい200社程度あるのですが、ほとんどは高タンパク質や環境にいいことなどを訴求して売っていて、機能性を軸にして昆虫食を訴求している企業はほとんどないので、これが我々の最大の特徴であって、この4象限のうちの右上をホワイトスペースとさせていただいております。

家蚕と野蚕、それぞれの特長

梶栗:では、実際我々が扱うシルクフードの原料は何かという話についてです。おそらくほとんどの人が「シルクフード」という名前からイメージできるかもしれませんが、蚕を使います。絹のお蚕さんのカイコです。

蚕には大きく2種類あって、1つは家蚕(カサン)と呼ばれる、絹のための養蚕用の蚕です。もう1つは野蚕(ヤサン)と呼ばれる野生の蚕です。(このように)大きく2分類できます。

その中で私たちが扱うのは、まず一般的な養蚕用の「家蚕」と、野蚕の中の「エリ蚕」と呼ばれる蚕です。私たちのエリー株式会社という名前は、このエリ蚕という名前から取っています。

では、なぜ昆虫の中でも蚕を用いるのか。一番大きな理由は「研究が進んでいる」からです。日本はかつて養蚕大国であったので、世界でも一番ぐらいに研究が進んでいます。

さきほど(のセッションの)「科学の力」を覚えていらっしゃる人もいるかもしれないですが、私たちは科学や機能性を重要視しているので、研究が進んでいるということは大事な条件です。残り3つについては、今から説明をしていきます。

蚕は非常に飼育しやすい昆虫です。養蚕のためにどんどん品種改良されているので、「老人に例えられるほど」と書いていますように、非常に飼いやすい。

また、ライフサイクルが非常に早いため、すぐに成長します。そして気候条件などをあまり選ばず、日本だと年6回程度、育てることができます。

そして、スライド左下に「気にしない」と書いていますように、場所を必要としません。さきほどからある資源の制約というなかで、場所はやはり1つ重要な点だと思っています。蚕は共食いもしないし、狭い面積にも平気で耐えられますので、3齢と呼ばれる段階だと、だいたい1000平方センチメートルぐらいの中で1,250頭程度、さらに大きくなれば、少なくなっていくものの小さなスペースでたくさん飼うことが可能です。

「動けない」「食べない」というのは、蚕は動きが鈍く、逃げもせず、発蛾してからはエサを食べないので、要は生産効率がいいということです。

よって、蚕はコストも安い。ここでは畜産物と大豆小麦と比較させていただいていています。大豆や小麦といった植物性タンパクには劣るものの、牛・豚・鶏といった畜産物よりもローコストで育てることができるのも1つの強みです。

蚕の食料品としての価値

梶栗:また、食品としての価値が非常に高いというのも蚕を選んだ理由です。まず高タンパクで低糖質といった昆虫食の特徴を兼ね備えていて、かつ機能性を多く含みます。

なによりも私たちが重要視しているのは、実は味という部分です。とくにエリサンという蚕は非常においしいですね。たぶん召し上がったことのある方はいらっしゃらないと思いますが、茹で落花生のような味がして、お酒のおつまみにもぜんぜんできるぐらいの味がします。

水野壮さんという昆虫食界隈で有名な方がいらっしゃっいます。(水野氏が監修した)『昆虫を食べる!』という本の中に実際に食べた昆虫食ランキングがあって、エリサンはその中でも2位にいるぐらい味に対しても十分大丈夫という評価がされています。

最後に、現在、我々がどんなことをしているかというところで、まず研究開発をやっています。

研究は、2つのアプローチからやっていて、1つは栄養学的な部分。つまり成分分析や蚕の食としての成分などの機能を分析しています。これは河田照雄先生の研究所でやっています。河田先生は、トマトのリコピンなどを見つけたことで有名で、この先生の研究室と一緒に蚕の機能性を分析しています。

見つけた機能性をいかに安定的に最大化するかという意味では、飼育条件や品種の条件などを整理していかなきゃいけないので、そこは大門高明という京都大学の先生と一緒にやっています。ほかにも農研機構の瀬筒秀樹先生や東農大の長島孝行先生たちにアドバイスをいただいている状況です。

蚕が持つ機能性成分

梶栗:さきほどから言っている機能性とは何か。我々は今、蚕の代謝物をメタボローム解析をして代謝物を明らかにしています。

今、スライド左上には「全体の3,000程度」と書かせていただいたのですが、このインパクトは、先生曰く、豚だとだいたい10〜20ぐらいの代謝物だということでした。だから、これぐらい代謝物が出たことにそもそも驚きでした。

そもそも、昆虫を食として分析していく機会は今までそんなに多くなくて、それを実際にやってみたら、今まで分かっていなかったいろいろな機能性のようなものが見つかっています。

今、我々がわかっているなかでも、グルコン酸というビフィズス菌を増やすものや、L-ドパというパーキンソン病に効くようなもの、血糖値を下げるようなものなどの機能性があることがわかっています。

3,000個の中のまだ100個なので、残りの2,900個に蚕にしか含んでいないものや、今までにない未知の機能性を含んでいる可能性もあって、そのへんは我々も非常に期待しているところです。

実際どう売っていくかというところで、基本的にはやっぱり昆虫食というと抵抗があるのかなと思いますので、粉末化して、加工食品やバーなどの形の見えないものにしようと思っています。

「糞茶」は高級品の味わい

梶栗:エリサンという野蚕でおもしろいのは、スライドにバイプロダクト戦略と書いているように、普通の蚕は基本的に桑しか食べないんですが、エリサンは違う葉も食べるんです。我々がそこで着目したのは桜の葉です。エリサンに桜の葉を食べさせて、糞でお茶を淹れると非常においしいんですね。

糞茶はネーミング的にもよくないし、イメージが悪いかと思うんです。でも、もしかしたら飲まれたことのある方がいらっしゃるかもしれないですけれども、インドネシアのほうで右に書いてあるコピ・ルアクという、ジャコウネコの糞のコーヒーがあって、1杯8,000円ぐらいすると。

それを嗜好的に飲んでいる方もたくさんいらっしゃって高級品になっているので、そういう意味では(エリサン糞茶にも)可能性はまだまだあるんじゃないかなと思っています。

ブランド戦略としても、「昆虫」というところを押すのではなくて、今「シルクフード(仮)」としているように、一般消費者には「シルク」というイメージで押していきたいと思っています。

最後、我々の目指しているところとしては、来年の3月末までに、まず実証実験をしていって研究開発をすると同時に、製品、プロダクトマーケットフィットを実現をしたい。その後に日本に大きく普及させていって、最後は世界に普及させていきたいと思っています。

ここに「日本の企業が昆虫食を普及させる意味」と書かせていただきました。日本はたぶん食料自給や食糧事情の中では世界的にかなり劣っているというか、輸入ばかりしていて輸出をほとんどしていない。ロスもけっこう出している国だと思うんです。

もしも今後の食糧危機の中で、我々の「シルクフード」であったり、今日登壇されるスタートアップのみなさんの企業などからタンパク質や食料を世界に輸出・出荷できることになれば、今まで日本が世界にお世話になった恩返しができると思っています。

そういう意味では、私たちは、日本の企業がこの昆虫食や代替タンパクのスタートアップをやることに非常に意味があるのかなと思っています。 あれ、時間どうですか? 大丈夫ですか? 間に合いました?

司会者:余りましたね。3分ぐらいあるので。

梶栗:本当ですか。すごい早口で話したから。では、どうしましょうかね。さきほど飛ばしたところをいきますね。

シルクフード量産化に向けて

梶栗:蚕がいいのは、簡単に言うと、量産化がすごくしやすいからです。もともと養蚕農家はたくさんあったんですが、今は300件くらいで、ほとんどないですね。ただ、そのバリューチェーンはただ残っているところがあるので、我々が今考えているのは、その既存のバリューチェーンを使って蚕を量産していきたいという思いがあります。

なので、養蚕農家さんは、今で言うとおそらく平均年商が100万円ぐらいでみなさんやられていたりするんですが、私たちの事業と一緒にすることで、そこでビジネスもできるし、養蚕自体もできていくと。

そういったところを目指しているので、そういう意味では量産がしやすいところが蚕を使う最も大きなメリットと言えると思います。

私たちはシルクにかけた「シルクフード」という名前をつけています。シルクロードに乗って文化や食料など、いろいろなものが世界に普及していったように、私たちもこの「シルク」というフードを世界に広めていって、世界の食料事情に貢献したいなと思っております。以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:梶栗さん、どうもありがとうございました。

梶栗:ありがとうございました。

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1 「タンパク質危機」の解決策はハエや蚕 昆虫食スタートアップたちが提示する地球の救済策
2 “藻”がタンパク質危機を脱するカギとなる 化石資源から太陽基点の「循環社会」へ

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