人体における感電のメカニズム

ハンク・グリーン氏:アニメや漫画では、誰かが感電するとすぐわかりますよね。骸骨が透けてチカチカし、髪は真上に立ち上がり、そこらじゅう煙だらけ。体からピカピカ電光が出ていたりします。

しかし実際の電気ショックはそんなに派手ではなく、もっと危険です。

厳密には、幸いなことに「感電死(electrocution)」と言っても、大半が体内を電流が走り抜ける「電気ショック」です。

electrocutionという言葉は「electric(電気の)」と「execution(処刑)」という言葉の組み合わせが始まりで、とくに電気ショックによる死を表現するために作られた言葉です。

電気ショックが感電死につながるかどうかは、関わる電流の性質によります。電流とは、電子やイオンの持つ電荷の流れで、人間の体は電流に非常に敏感に反応します。なぜなら、体自体が常に電流を使っているからです。

例えば、細胞膜内外を移動するイオンによる小さな電気パルスがニューロンを作動させることで、動くことができ、こうしてみなさんに話すことができているんです。

ですから、感電して、体内の電流よりずっと強い電流が体を通り抜けると、その通り道となる細胞が勢いよく流れる電気に過剰反応してしまうことがあります。

非常に弱い電流の場合は、皮膚にくすぐったさを感じる程度で済むかもしれません。強い場合には、神経や筋肉が電流から過度の刺激を受け、軽度から重度のやけど、筋収縮、発作などが引き起こされる可能性があります。

電流量はアンペアという単位で測られますが、たったの20ミリアンペアで横隔膜のコントロールが不可能になり、呼吸停止を引き起こしかねません。100ミリアンペアでは心停止を引き起こす可能性があります。

携帯電話の充電器には100ミリアンペア以上の電流が流れていますが、送電ケーブルに触れたとしてもそれで感電死してしまうことはありません。「試してみて」と言っているわけではありませんけどね。

致命傷とならないのは、ケーブルの中の電流量が実は問題ではないからです。

感電死となりうる要因

問題となるのは、どのくらいの電流が体内に入り込むかということで、それには2つの影響する要因があります。

1つ目は電流を押し出す力の違いを表す電圧で、もう1つは電流に対する体の抵抗です。

要するに、電流とは水管を流れる水、電圧とは水の圧力です。体の抵抗とは水管がもっとも狭くなっており、水が通りづらい箇所のようなものです。

人間の皮膚は、電圧が高すぎない限り、電流への抵抗はかなり高いものがあります。皮膚は厚みがあり乾いているため、自然と電流に強い防壁になり、携帯充電器のケーブルなどより抵抗性があるので、通過する電流もかなり少なくなります。

もちろん、皮膚に電流への抵抗があっても、電流のエネルギーはどこかしらに行かなければならず、そのために熱が発生し、強度の電気ショックではやけどが起こるのです。

500ボルトを超える電気は高圧とされ、電流が皮膚という抵抗の防壁を突き抜けて心停止を引き起こし、人を死に至らしめるのに十分な電圧です。

場合によっては、これが役に立つこともあります。心臓のリズムが正常ではない場合、除細動器によってコンマ数秒単位で3,000ボルトの電気ショックを慎重に正しく当てると、まるでリセットボタンが押されたかのように、心臓の筋肉が通常のリズムを取り戻すのです。

しかし健康に問題がない人の場合、心臓を停止させるのは明らかに良くないことです。

皮膚に傷があったり濡れたりしていると、抵抗性が非常に低くなります。それゆえ、典型的な電気コンセントはアメリカでは120ボルト、ヨーロッパでは230ボルトと「低圧」とされているものの、ドライヤーにはお風呂での使用が命に関わると非常に強い警告があるわけです。

ですから、電気ショック自体は軽度で比較的害のない可能性があるとしても、電源はたとえ低圧でもかなりの危険性を伴う可能性があり、高圧の場合は常に非常に危険です。

そういうわけで、感電の危険性については常に注意する必要があります。そして願わくは、みなさんが決してelectrocutionの本来の定義である「電気処刑」を体感することがありませんように。