育休が自分の働き方を見直すきっかけになる

駒崎弘樹氏(以下、駒崎):僕も育休を取らせていただいて、今は8時間社外で働いていて。当時Slackはなかったんですけど、育休中は1日1.5時間ぐらいメールを見たりして。最初はやっぱり「自分がいなくなったら、すごいみんな困るだろうな」と思って戦々恐々としてたんですけど、誰も困ってなくて(笑)。

小泉文明氏(以下、小泉):ははは(笑)。そうそう、意外に邪魔だったんだよね(笑)。

駒崎:意外と邪魔だったんだ(笑)。「自分の意思決定がかなり会社を左右してると思ってるけど、そうでもないじゃん」と思って。それでかなり社員を信じられるようにもなったし、なんか自分が関わらなくてもいいところまで関わっちゃってたんだなという温度感もわかったので、すごくマネジメントには良かったですね。いい影響になった。

だからそこで、「じゃあ、任せられるんだったらどんどん任せちゃおう」と思って、それこそ権限委譲が進んで、育休後は「本当に自分だけしかできないことってなんだろう?」と思って時間を作っていくことができたので、自分の働き方を見直すという意味でもものすごく良かったんですよね。

なので、本当に多くの経営者の人におすすめしたいし、経営者だけじゃなくても、男性の方には本当に育休をおすすめしたいなと思うんですよね。

育休だけじゃなくて、男性の働き方は本当に変えていかなくちゃいけなくて。さっき「ベンチャーだからいい働き方ができる」とちょっとお話しされてたと思うんですけど、まさに我々ベンチャーって、イノベーションを作っていくんだから、やっぱり働き方にもイノベーションを起こさなきゃいけないと思うんですよね。そのあたりはどう思われます?

小泉:会社を運営していく中で言うと、イノベーションのベースは、生産性とかに紐付けてよく議論されるじゃないですか。生産性って、捉え方が会社によって違うと思うんですけれど、僕らの会社は「生産性=意思決定の速さ」というか、スピードが極めて大事かなと思っています。僕らの会社は意思決定をどれだけ早くできるかということの工夫をたくさんしているんですね。権限移譲も当然そうなんですけども、例えば、僕のところでは社内用の資料では基本PowerPoint禁止。

駒崎:PowerPoint禁止?

小泉:PowerPointをやってると、仕事してる感が出るじゃないですか。資料作って。でも、実はWordでやったら1枚以内にすっきり収まるようなことがけっこう多かったりして、無駄な報告ですよね。なんか会議のための仕事が多すぎるみたいな。そういうのは基本的にもういらないですと。あと、ミーティングは8人以上は禁止。

駒崎:人数で制限しちゃうんですね。

会社の生産性を上げるためのさまざまな取り組み

小泉:話さないやつは別にいらないし、議事録を共有すればいいしというところで、人数が多いミーティングは禁止にしたり。けっこういろいろな無駄を省いていって、どれだけ早く意思決定して、本質的なところだけを議論できるか。

あとはSlackとか、いろんなツールでとことんシェアして、情報はオープンにする設計をしているので、必ずしも意思決定に入ってないから知らないということもない。そういう工夫をしながらスピードを上げていくように設計しています。そういうところもあって、育休を取りながらも会社のスピードは上がっていきますし、生産性は上がっているなと思っています。

駒崎:なるほどね。じゃあやっぱりあれですかね? 死ぬほど働いて疲弊して、グダグダになるとかいうIT業界の像が、徐々に変わりつつあるんですかね?

小泉:けっこうびっくりされるのが、うちはみなし残業45時間なんですけど、45時間残業している人ってあんまりいないですよ。タイミング的に超えちゃうケースはありますが、常に超えるというのは珍しいですね。

駒崎:へぇ〜。

小泉:12時〜16時のコアタイムで、あとは全社員フレックスなんですよ。朝に寄せる人もいれば、夜に寄せる人もいるんですけども、さっき言ったように、残業45時間をやってる人ってあんまりいないので。

でもそれって、業務のプロセスがすごくシンプルだったり、無駄な資料を作らないというふうに徹底的に省いていくと、意外にメルカリぐらいのスピード感の会社ってできると思っています。けっこうそのへんは、常に業務を見直していかないと、どんどん仕事は増えていくので。

働き方改革で「残業代減らせばいいよね」みたいな。「それはちょっと違うんじゃない?」と僕は思っているので。もっと本当に本質的に会社が強くなる方向に、どうやって向かっていけるのかは考えてほしいですね。

日本にもっといい働き方ができる会社を増やしていくには

駒崎:残業を1つのメルクマールにするのはいいんだけれど、残業だけ減らしても、仕事の仕方とか仕組みが変わってないと無理をさせちゃうことになるから、「ちょっとここをやめようよ」とか、「ここを変えようよ」というのもセットじゃないとダメだったりしますよね。

フローレンスでも「やめる会議」というのを定例的にやるようにしていて、やめたいことを持ってこいって言って、「こういう種類のをやめたい」とか「こういう会議はやめたい」とか出てきて、まあけっこう「いいやめる」があって(笑)。事業のコアにかかる部分なんだけど、「確かにそれってなんでやってたんだっけ?」というのがあったりするんですよね。そういうのに気づかされる。

小泉:1個増やすんだったら、1個減らすのは基本的な考え方ですよね。

駒崎:そうですよね。メルカリみたいな会社がどんどん増えていけば、日本の生産性も高まっていくし、イノベーションも増えていくと思うんですけど、どうやったらいい働き方の会社があふれる日本に変えていけるんでしょうか?

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