インターネットが面白くなくなってきた

尾原和啓(以下、尾原):こんばんは、小笠原さん。

小笠原治(以下、小笠原):どうもどうも。

尾原:僕ずっとお聞きしたかったのが、僕がずっとプラットフォームを作ってきたように、小笠原さんって面白いのが、さくらインターネットっていうインフラを支える会社を立ち上げつつも、今は<a href=" http://newsbase.in/ "target="_blank">NOMAD NEW'S BASE(西麻布のコワーキングスペース)とか<a href=" http://awabar.jp/ "target="_blank">awabar(IT業界人が多く集まる六本木のバー)とか、人を支える縁の下の力持ちみたいなことやられてますよね。

小笠原:単純に、最近のインターネットが面白くなくなってきたっていうのがベースにあって。インターネット大好きなんですよ。めちゃくちゃ好きなんですけど、お節介なソーシャル、広告販売目的のメディアのあり様、スマホのインフラ、ソーシャルゲームのインフラ。

あんまそこ興味ないなっていうところばっかりに活用されてて、昔想像したインターなネットワークっていうところからかけ離れていってるっていうのがすごいあって。じゃあ、とりあえずその画面の中から一回出してみようと思って。リアルの場所とリアルな物と。

尾原:なるほど。

小笠原:インターなネットワークの一つとして物のネットワークだったり実際の場所で……。

尾原:場所で人と人が勝手にインターのネットワークを作っていくっていう。敢えてネットから離れることでインターネットっていうものの本質に近いものをやってみようと。

小笠原:もうインターなネットワークっていう感覚は、みんなないじゃないですか。あれが今の自分にとって面白くない原因なんで、それをとりあえず一人でもいいから外出てやってみよう、みたいなのがこの3年くらいですね。

尾原:めちゃかっこいいですね。

小笠原:うまく言っただけですよ。

尾原:でもおっしゃる通りで、僕らの世代ってまさにインターネットワークというものが現れた瞬間だったから、論理的にどうなるんだろうっていうことを色々ワクワクしながら考えてて。

小笠原:本当にそうですよ。ワクワクしたし、期待もしたし。期待が大きかったが故に今がっかりしてるし、勝手に。なので、他に広げたいなっていうのが単純なとこで、お店なんかもやっぱりその延長線上って感じですよね。

ウェブのグロースハックをリアル店舗で実験

尾原:やってみてどうですか? 3年間。

小笠原:お店は割と思った通りというか、特定のネットワークには響いて、そういう人が集まってくれる場所になりましたし、実際にそういう特定の人が集まるとコミュニケーションが密に生まれるし。だけど、裏っ側の仕組みとしてはウェブのグロースハックみたいなことをやって、お客さんを増やして、みたいな。

尾原:なるほど。

小笠原:インターネットでみんなが実験してきたようなことを、リアルでやってきたっていう商売面と、人同士のネットワーキングみたいなとこと。両方それはうまくいきましたけど、でも多分今のawabarにネット系の人が集まってくれてるというのは、多分もうすぐちょっとずつ変わっていくと思うんですよ。コミュニティって流行りもあるので。

尾原:そうですね。逆に今ちょうどいい感じにティッピング・ポイント越えて、ほっといても色んなものが循環するっていう。

小笠原:最初はネットのコミュニティの管理人と一緒で、毎日いましたから。

尾原:めっちゃ大事、大事。

小笠原:この人が来たらこの人が来てくれるとか、この人が来やすいとか。そういう常連さんの情報を全部付けてるんで。

尾原:じゃあもう、フェイスブックで誰がLikeしてくれるからこういうコメント打って、みたいなのと同じように。

小笠原:そうです、そうです。常連さんで、共通の友達見つけたりすると両方呼んで、「こいつも来てんのや」と思ってもらったりとか。

尾原:なるほど、そういうのを裏側でやってたんですか。めっちゃ大事ですね。

グラスひとつを最適化していく

尾原:でも結局例えばフォートラベルの津田さんとか、ああいう初期の頃にずっとコミュニティやってた人って、全く同じようなことずっとやってるんですよね。

小笠原:昔ミクシィのコミュニティなんかも結構みんな常駐してたじゃないですか。

尾原:そうですね。

小笠原:あれと一緒でグロースハックで言うとコップ一個とっても、割れないグラスにすることで会話を中断させないとか。立ち飲みなんで、普通はバタンって倒れて割れるですよ。

尾原:そしたらちょっと冷めてしまって、ネットでいうドロップレートをあげるっていう行為なんですよね。

小笠原:それをネット用語で言っても、飲食店のスタッフには伝わらないので、それをいかに簡単に言うかみたいなことをずっとやってきました。お店のチラシ配ってる子に「コンバージョンどれくらい?」とか言う時ありますから。「わかるか!」っていう話で。でもポイントカードは手動でやってた。色んなこと試しながら実験してます。

ネットを使ったモノづくりの本質とは?

尾原:そういうやり方っていうのがリアルに染み出してるっていうのも一つあるし、逆に今おっしゃられて一番面白かったのが、リアルに持ってった方がインターネットっていうものの本質が浮き彫りになるっていうのが。

小笠原:なりますね。場所が割と上手くいったというか、ちっちゃい実験なので上手くいくんですよ。10坪で売上300万あったら飲食店として合格点だねってなるし、その手法としてネットで試したことをやってみて、そういう手法も飲食店でありなんだねっていうのも良かったんですけど。今度モノってなると、色んな種類のものがあり過ぎて。もう一回、完全にインターネットに戻らないといけないので。

尾原:ロングテールなわけですからね。

小笠原:ロングテールっていうのも、本当のロングテールなのか、あるニッチなところを切り取ってそこのメジャーを取るために頑張らないといけないのかっていう。

尾原:そこも模索中だと。

小笠原: <a href=" http://jp.gopro.com/ "target="_blank">GoPro(多機能カメラ)とか完全にそうですよね。

尾原:そうですね。GoProなんかは特定なんだけど、ものすごい濃度高いから。ニッチなんだけど、ニッチの中ではヘッドっていう。

小笠原:そこをいかに取れるかで、それが上手いなと思うのがCerevoの岩佐さん。

尾原:岩佐さん、そうですね。

小笠原:彼、確実にグローバルニッチってところを狙えます、と。ネットでコミュニティが生まれたことでそういうニッチな人たちのコミュニケーションが生まれて、そこでその人たちが何を欲してるかってことが浮き彫りになる。

それをちゃんと製品として世に出すっていうところを、彼は気づいてやってる。それがすごい面白くて、今からネットを使った物づくりをやる人は、あれをもう一回やるんですよ。

尾原:そうですね。もう一回同じループをやるんですよね。

インターネットの"振り子"を見極めろ

小笠原:尾原さん幾つですか?

尾原:僕43ですよ。

小笠原:じゃあ一緒ですね。26歳の時に今のさくらの田中社長とかと知り会って、インターネットの仕事をやり始めたんですけど、僕らの世代ってずっと頭の中の物事を書きとめるだけじゃなくって、外で動くようにしてきた世代じゃないですか。

尾原:そうですね、確かに。

小笠原:それがディズプレイとかでプロセスも見られるようにして、プロセス繋ぎ合わせるためにOSが出来て、OSが出来たことでアプリケーションが出来るようになって、パソ通みたいな1対NからN対Nっていう形になって。

これは多分ここで一回到達点だと思うんですよね。これが色んな他のことに応用されるはずで、今のクラウドとかはどっちかっていうとN対Nなんだけど、集約させてっていう、振り子があると思うんですよね。

その振り子を体験出来た珍しい世代だと思っているので、この世代って他の業種、他のことやってみたら面白いんじゃないかなって思ってます。

尾原:おっしゃる通りで、物事って振り子なんだから、例えばソシャゲがガーって行き過ぎたとしてももう一回戻ってくることによって、今度は振り子じゃなくて螺旋に変わるっていうところをしっかり経験してるから、もうちょっと長い目で見たら、こういう方向で作ればいいじゃないかって言う事が出来るし、そういう感覚をみんなに持ってもらいたいなっていう。

小笠原:小さい店をやってみたりとか、小さい単位でモノを作るとか、そういうのを実験的にやりたいんで、3Dプリンターとかやってるんですけど。3Dプリンターってもの作りの環境整備の中では、最後の1ピースなので。この15年間みんなネットでものすごい壮大な実験やってきてると思うので、それを上手く転用したいんですよね。

尾原:それがどんどんリアルに染み出すってことやりたいですよね。今日はどうもありがとうございました。