この頃のIPOマーケットの動きについて

青柳:最近IPOのマーケットって、結構軟調じゃないですか。セカンダリーのマーケットがサポートしなくなると、やっぱり調整が入ると思うんですけど。というのが多分わかっていて、サイクルを経験されているお二人なので。

そういう中で、最近、集めたお金をテレビCMに使い過ぎている会社があるんじゃないかなと思うんですけど、そこら辺、このサイクルと今の状態とを総合的に見られるのがCFOの役割。

CEOは結構そこで、「いや、またそんなのどうせ集まるから」とか言っていて、マーケットがクラッシュすると会社潰すわけですよ。ということが、今後あるかもしれないので、そこら辺をどう思っているのかなと。

小泉:僕で言うと、実は今、去年、一昨年とメンターした3社が直近、14億、15億ぐらいまで今年はやっていて、今度フリークアウトのIPOもやると、一応4社大型のファイナンスがこの5カ月ぐらいであるんですけれども。

秋口に噂されるLINEとかリクルートさんみたいなIPOのパフォーマンスによっては、結構こっち側が影響受けるんじゃないかなと思っているのと、海外含めてやっぱりシグナルは感じていて、何かちょっと怖いかもと思っていたんで、やるならやっぱり早目がいいかなというので、今年に入って少しそこを焦らせているという。

青柳:年内に上場予定のgumiの川本さんの顔色が真剣に(笑)。

都合良くファイナンスなんてできない

川本:でも実際、青柳さんがおっしゃっていることは私も同感で、要は3カ月先いつでも資金が調達できる状態を常につくっておくということと、自分が経験してきたこの3年で思ったのは、やっぱり交渉できるタイミングというのは本当にあるなと、つくづく痛感していて。

どう考えても赤字月3億出ていたあのときに、じゃあアップラウンドでファイナンスだ! とか言っても、金なんか絶対出てこないわけですよね。だから、そこは耐え切るだけ、ここまで耐え切って、たまたまうちは違う人の会社のゲームでヒットしたから、どんと伸びましたけど……。

青柳:あれを仕込んでいたのはgumi venturesの川本さんですよね?

川本:あれは、そうそう。それはそれでよかったんですけど、それも含めて、何て言うんですかね、その時々に応じて資金調達しておく準備というのは常にだれとでもしておいて……。

青柳:二の矢、三の矢は常に仕込んでおくと。

川本:まさに、マーケットクラッシュするかもしれんからという意味では、我々も、今IPOだけに意図してファイナンス考えているというよりは、すべての、いろんな投資家さんともいろいろ話をして、チャンスとしてもしあるならば、そういうのも考えてみようかとか、そういう話は常にやっているので。

青柳:そうですよね、マーケットがクラッシュして、それだからだめなんですと言えないですもんね。

"IPOやるやる詐欺"は、戦略だった?

川本:そうなんですよね、外部環境が大き過ぎて、それまでは変えられないので、我々の努力では。そこのタイミングに、うまくいけばIPOもするし、そうじゃなくても、ファイナンスはちゃんとできる形とか、まさに潜れる時間を買うという話なので。

今ブレイブフロンティアで絶好調になっているけど、実は社内で私が言ってるのは、結構これで時間をいただいたと。ある意味、エイリムを介して、gumiも時間をもらったから、その間にエイリムの売り上げをできるだけ伸ばしつつも、一方で今仕込んでいるものとか、それをいかにたくさん仕込んでいくか。

次の、まさに二の矢、三の矢の売り上げにもつなげるというようなところと、ファイナンスというのが連携しているんだろうなと思っていますね。

青柳:なるほどですね。ずばり、IPOはいつ頃?(笑)。いくらぐらいの規模で。

小泉:いや、多分、東証の人見ていないと思うんで。

川本:さっき、口が滑ってというか、年内IPOコミットしますみたいなこと、一応言っちゃったんで、それは目指したいなと。

青柳:そうですよね。僕も……。

小泉:目指すのは自由ですもんね。

川本:そうです、目指すのは自由です。

青柳:社外役員なのに、パネルでこういうこと、国光さんや川本さんが言ったらしいというので知るという(笑)。そうなのかと。

小泉:シンガポールでね(笑)。

川本:先に言っちゃったから、国光さんが。でも、それもチャンスだと思っているので、年内行けたら行きます。行けなかったら、また詐欺と言われるわけですよ。でも、もう詐欺と言われ続けているんで、そこに対しては慣れている。

青柳:ただ僕、そのIPOやるやる詐欺って、実は一つの戦略だと思っていまして、やっぱりIPO前の会社というのは、IPO前の会社特有の求心力、IPOという共通のゴールがあるじゃないですか。恐らくそれは経済的なものというのもあるかもしれないけど、みんなの共通目標を達成するみたいな意味で、やっぱりそういうものがなくなった後というのは結構しんどい。

ファイナンスによる社内スタッフへの影響

小泉:余談になるけど、僕ミクシィのときに、結構大きいカンファレンスやったんですね。新プラットフォームという……。

青柳:あれ大きかったですね。

小泉:今、グリーさんもカンファレンスとか、たまに大きいのやるじゃないですか。ああいうカンファレンスは僕ね、IPO後は一番やっぱり求心力というか、みんなの達成感、学園祭的なノリでできたのは、あれすごいよかったなと思っていて。何かしらそういうのは、今後もマネジメントツールとして用意しておくというか、準備していこうと思っています。

青柳:そうですよね、ある種スタートアップのファイナンスって、そういう社内イベント的なところもあって、1個1個やっぱり上場するまであまりみんな褒めてくれないじゃないですか(笑)。しかも……。

川本:CFO、倒産前ですね、その頃。

青柳:gumi潰れるみたいなこと言われるわけじゃないですか。という中で、そういうレコグニションがある瞬間というのは、1個ヒットゲームとかあると思いますけれども、そういうのを作っていくというのもすごい重要ですよね。

川本:会社がメジャーになって大きくなっているというのは、従業員たちがやっぱりそれを知るみたいな。ニュースになるし。というので、何となくファイナンス終わると、おめでとうとか、お疲れとか、全体に空気感として出てくるのも、社員的には、特に私のライン直下でやっている子らは、達成感は要るので。

IPOまで息止める瞬間というのはあるじゃないですか。そのときに、「頑張ってくれよお前ら」という手前に、まずはファイナンスをちゃんとやっていくことで一つひとつ区切りをつけていかないと、本当に疲弊しちゃいますよね。

メディアをうまく使う

小泉:最近、経営として社外をうまく使うというか、広報をうまく使うというのは結構あるなと思っていて。例えば、孫さんとか野村監督とかもそうなんですけど、メディアに書かせて浸透させるというか、直接語りかけるのは当然あるんだろうけど、外をすごい使うのがうまいなと思っていて。

その外に出した情報がメディアを通してソーシャル上でバイラルして、その会社の評判がつくられていくじゃないですか。そこをうまくやっていくと、求心力もまたさらに増すなと思っていて。

川本:そうですね。それはgumiが多分、得意としているところで(笑)。何でかというと、実はgumiというのは、ソーシャルゲームをグリーさんに出していたときに、何となく列強の一角とされていたわけですよ。でも、実際から言うと、コナミさんとかグループスさんとか、サイゲームスさんとかクラブさん、ドリコムさんというのが圧倒的に上にいるわけですね、売り上げで言うと。

でも、何となくgumiというのはすごいんじゃないか感というのを、国光さんが世界一とるんや! 何とかやとか言っているのが、すごそうやなという感覚として、ポテンシャル的にすごくなったみたいなところはあるので、メディアの使い方というのは、彼は一番うまくやっているんじゃないかなみたいな(笑)。

青柳:そうですよね。僕も中に社外役員で入らせていただいて、gumiプラットフォーム みたいな感じで (笑)。全然違うよみたいな(笑)。でもすごいですよね。社外へ出していって、広報していって、それで求心力を高めてくというのはありますよね。

最近やっぱり小泉さん、そこら辺、すごくうまくやられているなと思うんですよね。大体毎週、小泉さんが笑顔で14億……。

小泉:イエイ! みたいな(笑)。

青柳:というのが見えて。何かスタートアップ・ファイナンスの実際かわからないですけど、小泉さんを社外役員や監査役にするとお金が湧いてくるという。

コミュニケーション力がファイナンスの武器となる

小泉:でも僕、そういう意味では去年、一昨年は、格好よく言えばスタートアップのメンターですけど、ニートみたいな感じだったじゃないですか、ほとんど定職がないみたいな……。

青柳:どういう感じで過ごしていたんですか。

小泉:その間に会った会社ばっかりなんですよ。会ったというか、そこから月に1回ミーティングしたりであるとか、もっと頻繁にミーティングもそうなんですけども。そのときにやっていった会社が、ここに来てずっと好調になってきて、やっとファイナンスが成立しているという感じなので、ファイナンスのタイミングから入る会社ではないんですよね。

実はもう半年、1年とか、ずっとやっていく中で、何か入りますというか、社外で協力しますよという感じなので、何か……。

川本:IT業界の弁財天みたいな感じだよね(笑)。額触るといいみたいな。

小泉:そういうところから、ベンチャーキャピタルとのコミュニケーションも多くなるので、そうするとVCの方々やファンドからも、もっとわかってきてもらった感が。それでまあ、やりやすくなっているのもありますね。

青柳:でもやっぱり、どうしてもCFO的人材、しかもネットワークが物言うところもあるじゃないですか。

小泉:ありますよね。

青柳:なので、僕いろんな人から、今日、小泉さんにどの会社にどのぐらいコミットするのか聞いてくれと言われたんだけど、それは聞くとして、でも、そういう人が増えるというのは、すごい重要なことで……。

小泉:そうですね。

金融出身者にもっと来てほしい

青柳:コミュニティ全体を盛り上げるというふうには思いました。西條さんとかが、WiLやりながらCoineyやられていて、なかなか難しい立ち位置だと思いますけれども、それが変でない形であれば、すごい良いのかなというふうに思うんですよね。

小泉:そうですね。そういうので言うと、僕はメルカリ、今すごい時間使っていて、ここのマーケットは本当に1社しか勝たないんで、結構時間の勝負だと思っていて。

青柳:もうメルカリに100%、フルコミットということで。

小泉:そうですね、実際、プロダクト以外ほぼ全部見ているので。それ以外の会社、いろいろステージがあると思っているので、協力してやっていく感じだと思っていますね。あと何かよく青柳さんと話すのは、CFOといっても、僕ら金融出身ですけども、まだ言ってもなかなか来てくれないですよね。

川本:いや、全然来ないですね。

小泉:もっと来てほしいなと思っていて、別に金融にいたからできないとか全くなくて、本当にそこは、それなりのロールモデルになっているんじゃないかなという気がしていて。

なぜ「会社と心中する」気になったか?

川本:CFOとして、何か健全なCFOの形になるじゃないですか。CFOというのは、ともすれば上場したらどうせいなくなるんでしょうと、株売って儲けてさよならみたいな感じというのは……。

青柳:そうなんですか?

川本:いえいえ(笑)。私はフルコミットですから、間違いなく。言われがちですが、そうじゃなくて、事業もつくるんだぐらいな感じで。

青柳: gumiと心中する、ある種、gumiであり国光さんと心中すると、お決めになられているということだと思うんですけども。これは、どういうふうにしてコミットメントが深まっていったのか。しかも最初、川本さん入ったときは、赤字じゃなくて黒字だったと思うんです。

川本:そうですね、ゲームの「FIFA ワールドクラスサッカー」が絶好調のときに入りましたから。

青柳:その後、赤字になって、地獄を1回見ているわけなんですけれども。どういうふうにして自分の会社へのコミットメントというのが高まったのか、そこら辺のプロセスをちょっとだけ聞きたいなと。

川本:そうですね、簡単に言うと、自分しかできなかったこと、例えばgumi venturesの件もそうですし、絶好調のときに融資引っ張ってきておいたりとか。そういう私発のCFO的プロダクトをちゃんと国光さんに提示して、そして成功させていた。

結果的に、大分彼との親密度が高まってきて、彼が最近よく言うのは、「思っていたよりはできた」と(笑)。もともとはDBJなので……。

小泉:超ウケる(笑)。

川本:どうせそれは、政府系の官僚みたいな人でしょうみたいなので、結構入る前に反対されていたらしくて、外部の人たちから。でもやっていったら、何となく思っていたよりはできたと、いい感じで評価をいただいているという感じですね。

青柳:いや、川本さんがいなかったら、今の国光さんないのにね(笑)。

小泉:本当、ひどい話だよね(笑)。

川本:ひどいですよね(笑)。

仕事も自分も成長させていく

青柳:大型ファイナンスを決められているお二人ですけど、その後、お金を使って会社を大きくしていくという話がありまして、今後の中長期のお二人のCFOとしての展望、これからこういうふうにしていきたい、こういうふうに自分もなっていきたいみたいなところを、ポストIPOも含めてお言葉をいただきたいなと思います。

川本: gumiも紆余曲折あって、自分が入ってからまさか本当潰れる、潰れかけるというか、貯金通帳を心配しないといけないような状態というのが訪れると思っていなかった。

幸い自分も含めて、そこにかなり手助けできたというか、サポートできたということで、経営として、ちゃんと自分が携わる領域というのが大きくなり、かつ、その重要度、責任というのも大きくなっているので。とりあえず目指すは、国光さんが言っている、世界一のモバイルオンラインゲームプロバイダーになろうというところに対して、当面はフルコミットで行くつもりなので。当面が何年なのかわからないですけども。

でも、IPOもそのための一つですし、まずはgumiという会社を大きくするとともに、せっかく自分もワンチャンス人生もらったので、そこで川本という人間も大成させていきたいと思っています。

ベンチャーのエコシステムを活性化させたい

小泉:僕としてはメルカリ、本当にできて短い会社ではあるんですけれども、かなりいい形で、モノがものすごいよくなってきていますし、会社も大きくなってきていると。これについて、ある意味僕は1回ミクシィの経験があるので、その経験を生かしながら、さらにミクシィを超えるような、そういう会社をとりあえずつくっていきたいとは思っています。

それに対して、今アメリカへアプローチをしているので、アメリカも含め、まだまだそこは僕も見えていないところがあると思っていて、勉強しつつ、さらに伸ばしていきたいなというふうに思っています。

あとは、いろんな会社を経験している中で、そのノウハウがどんどんたまっていって、それをどんどんまたベンチャーのエコシステムに返していくみたいな、そういうことも引き続きやっていきたいと思っているので、本当に大きい会社をこれからもどんどんつくり続けたいというふうに思っています。よろしくお願いします。

青柳:ということで、お二人の非常に熱い意気込みをお伺いできて、非常によいセッションになったかなと思っています。ぜひ今後も、このお二人のようなCFOがどんどん登場して、この業界を盛り上げていただければと思います。

制作協力:VoXT