厳しい業績の時こそ、経営者は成長する

武田:僕もたくさんの企業、たくさんの経営者が、業績のいい時に何を言っていたのか、業績の悪い時に何を苦しんでいたのか、結構、見させて頂くことが多くて。

岩瀬:そうですよね。

武田:厳しい業績の時って経営者として育つ。成長する糧だと思うんですね。そういう意味でお2人が経営者として壁みたいなところ……さっき岩瀬さんが1年間社長やってきました、「十分成長できたのかな?」とおっしゃっていたところも含めてですね。ぜひちょっと共有頂けないかなと思います。

岩瀬:もしかしたら村上さんも同じかもしれないんですけど。今まさに最初の壁というか、成長が少し鈍っているところで、色々なことをやっていかなきゃなと思っているので。なのでまだこれを抜け切った後から振り返っている状況じゃなくて。ある意味リアルタイムなんですけど。でも、やっぱりそういう辛いというか、厳しい時こそ、みんなで知恵を絞りますし。なんか本当に真価が試されているんだなって思いますので。

武田:なるほど、なるほど。

岩瀬:色々な人の経験なんかも参考にしながら、日々みんなで元気にやってます。村上さんはどうですか?

今までなんとなくやってたものを見直す機会に

村上:そうですね、壁でいうと幾つかあって。ひとつは創業の時の壁で、これは経営者としてというよりか、事業家としての色が強いかもしれないんですけど。今までにないビジネスモデルでスタートしました。ただこれが上手くいくかどうかわからない。不安で不安で、実際なかなか上手くいっていないっていうところで。

ビジネスモデル、一部ちょっとチューニングしているんですよね。応募ごとにお金頂くというのから、採用ごとにとか。あとお祝い金という仕組みとかを入れていって。あと2008、9年ぐらいに若干売上の伸びが鈍化しているところがあって。そこでも壁がありました。その時にまず何があったというと、当社って創業して2、3年、予算とか月次とかもほぼ見てなかったんですよ。

武田:あ、そうなんですか。

村上:これ、結構驚かれるんですけど。売上売上というよりか、ユーザー数何名だよねとか。どんだけ使われているよねとかで、予算とかはなし。まあ頑張ろうと。予算作っている時間があったら、サービスのこと考えた方が伸ばせる、というのでやっていて、かつKPIの管理とかもかなり甘かったんですよね。

そういうところから、まず売上って何からできているの? と。ユーザー数がいて、応募する率があって、採用率があって。単価をかけて売上だよね。この施策はどこに効くんだとか。しっかりとこう、フレームのもと議論をするようになっていて、そこをもとにこう伸ばしていけるようになったっていうのが2008、9年ぐらいですね。

その時に感じたのが、まあ壁というか、そういった伸び悩む時期があると、ほんと改めて今までの常識っていうのを考え直すなと。「今までこれで伸びてたからいいや」って思っていたところを「本当にこれでいいのか?」って考えるきっかけになるなと思っていて。今まで組織の中でなんとなく当たり前になっているところが、本当に正しいのだろうかとか。

武田:なるほど、なるほど。

村上:あとは本来、当たり前にできていなきゃいけないところが「これできていないよね」っていうのが、色々見えてくる。そういったこう、良いも悪いも竹の節になっていくタイミングになるのかなっていうのは感じましたね。

外から見える成長と中から見える成長にはラグがある

岩瀬:そういう意味でやっぱり減速している時ってオポチュニティなんですよね。上手くいっていると、必ずしも深く考えずにその延長線上でやっちゃうので。またそういう時に考え直して色々なものを仕掛けていって、ただ結果が出るまでにタイムラグがあるじゃないですか。

村上:はい。

岩瀬:だから中にいる人間なんかだと、色々なものが変わっていっている感じがして、またいい流れになっているなって時に。でも、アナリストの方とかはやっぱり数字に出るまでにそのタイムラグがあるので。

武田:そうなんですよ。そこはね(笑)。

岩瀬:でも、なんかその辺、感じ取ったり、嗅ぎ取ったりされるんですよね?

武田:僕もね、それはすごく感じることがあって、僕、成長企業をたくさん見させて頂いているんですよね。成長企業で働いていらっしゃる方達ともよくお話は、経営者だけじゃなくて、プレイヤーの方達ともすることがあって。

で、やっぱりすごく感じるのは、働いている人達って別にお金がたくさんもらえるからとかじゃなくて、企業と一緒に自分が成長している人達って想像以上に多いんですよね。そういう中で、企業の成長が業績として減速するっていうことが、自分の成長の減速っていう風に感じてしてしまう人達が僕はすごく多いように感じていて。

経営者の方達っていうのは、ご自身の経営者としての成長に対して考えなけなきゃいけない部分と、その会社、組織、一緒に働いている人達に対しても考えなければいけない中で。スタッフの方達、一緒に働いている人達の成長っていうベクトルと、外的な数字っていうところの齟齬がどうしても出てくるのを、どうアジャストするのか。さっきの岩瀬さんのご質問には、正面から答えていなくてちょっと恐縮なんですけど。

僕らはどうしても数字っていうのは、後からしか見えない。その時点でラグがあって。というところの問題もありますし、その数字が必ずしも会社の文化を反映しているわけじゃない中で、去年と比べて何%落ちました、伸びませんでした、みたいなところを判断してしまうので、やっぱりそういうところは、どうしても申し訳ないなと思うんです。頑張っていらっしゃる会社さんがたくさんある中で。ちょっとごめんなさい、グチャグチャになりましたけど。

トップが明るくあれ!

岩瀬:僕が質問するからですね(笑)。

武田:いやいや、いいです。なのでお伺いしたいのは、そういう局面において、社内向けのベクトルの揃え方みたいなところで、どんな努力をやられているのかとかですね。

岩瀬:自分が伝えているつもりでも、伝わっていなかったりすることが多いので、やっぱり幹部とコミュニケーションを増やしていくっていうことしかないのかなと思っています。最近は意識して役員とか部長とよく話をするようにして、みんなで答えを見つけていくような感じでやっていますかね。

武田:村上さんはどうですか?

村上:まず第一になんですかね、トップが明るくあれというか。雰囲気ってあるんですよね。サッカーとか見ていても、なんか点を決めているいい流れとか。あまり見えない何かってあると思っていて。その流れがまず綺麗に整えておくっていう。

岩瀬:いつも明るいじゃないですか。

村上:まあそうですね(笑)。

社員にはちゃんとフィードバックしておかないとダメ

村上:私、創業1年目とか、死ぬほど苦しかったんですけど。周りからはなんか元気にやってるねって感じに見られていたっぽいです。根がそっちのほうではあると思うんですけど。そういうような形でポジティブなオーラで満ち溢れている状況にするっていうのと。あとは個人の頑張りと会社の業績は比例するかどうか。そこは経営力の部分というか。各自の目標設定、どう設定できるかっていうところだと思うので。そこは腕の見せ所になるのかなっていう気はします。

武田:なるほど。

村上:あとはもう常日頃から個人において、業績っていうのももちろんなんですけど、業績とかと関係ないところとかで、ちゃんとフィードバックしておかないと。フィードバックであり、コミュニケーション取っておかないとダメだなっていうのは日々感じて。

何かがあった時に、例えば人の異動であり、昇格降格であったり。もうなんとなくにしないで。いまこの状態でここ目指して欲しいんだよね、で、その方法ってこんなことがあると思うよ。もしくはちょっと考えてみよう、そこに行くにはっていうのをちゃんとすり合わせ続けておかないと、成長実感っていうのは湧かないと思いますし。

あとは仮にじゃあ昇格だった、降格したけどなんでだろう?って感じになっちゃう。そこのコミュニケーションを密にやっておくのが大事だなっていうのは感じましたね。

武田:そうですね。業績とか社内のベクトルがちょっと揃わなくなっているっていうところなんかを経営で感じ始めた時って、やっぱりそこの時間をすごく増やさなきゃいけないんでしょうね、きっとね。

業績が予想を下回ったときの、リブセンス社内の反応

武田:あと、ちょっと村上さんにお伺いしたいんですけど。僕、個人的な関心があるのは、上場して初めて今回、業績予想のいわゆる下方修正っていう。

村上:はい。

武田:どんな会社でもやっぱりそういうことって経験することがあるわけですけど。その時の社内ってどんなだったんですか? あるいはそんな時にどういうコミュニケーションを村上さん、取られたのか。

村上:まあ下方修正出してはおらず……。業績が当初予想よりか若干下回っているみたいな感じですね。

武田:ごめんなさい、そうですね。下方修正っていうのは僕の言い方がよくなかったですね。見通しに対して、ややスローでスタートしていますっていう、そういうお話でしたよね?

村上:状況ですね。そこを発表したとき、色々あって。あれなんですよね、ストップ安になって、発表後に。

武田:うーん、そうですね。

村上:冒頭は、発表の時に「ストップ安でした」で入りましたね(笑)。

武田・岩瀬:(笑)

村上:社内が「おおー」みたいな。でも、とはいえ、そういう評価を受けたんだから、そこを理解したけれども。それを全部悲観するわけではなくて。そこからどんだけ学び取って成長できるかがキーだよねとか。あとはまあ、とはいえこういうことをやっていけばいけるじゃん! というので、未来を見せるっていうところ。で、コミュニケーションを取っていって。

まあなんかチャットルームとかがあるんですけども。出ているのが、「いやこういう時、燃えますね」とか。そういうようなポジティブな言葉が結構出てきたなっていう感じがしました。

武田:岩瀬さんもそういう、社内で空気的に何か感じた時には、岩瀬さんがこう手を挙げて「やー」みたいな形で声を上げることっていうのは多いわけですか?

岩瀬:まあそうですね。さっきの村上さんと一緒ですけど、やっぱり明るいメッセージを発信し続けるというのは、当たり前なんですけど。なんかその長期的な視点で見るとどうなの? っていうのを、つい現場の人間とか、自分達も忘れちゃうんですけど。

一歩引いて見ることによって、自分達が長期に渡って何を成し遂げつつあるのかっていうぐらいにズームを引くと、大したことないじゃんというか。そういう時期もあるし、その先にもっといいサービスを作っていける。そのプロセスなんだなっていう風に思っていますし、それを伝えるとみんなも「まあそうだよね」っていうことで、また元気になっていくんじゃないですかね。

成長は「小さな改造」の繰り返し

武田:経営者としての成長。これも定義付けが難しいので、もうほんと主観にお任せしますけど。ご自身が経営者であるっていう風に考える時に、「成長したな」って感じた瞬間とか。出来事とか何でもいいので、1個だけ簡単に。

岩瀬:まだあんまりない(笑)。逆に村上さんと話していて思うのは、どうやって自分のパフォーマンスを最大化するのかっていうものに、ものすごい注意を払って努力されているなっていうのをいつも感じるので。そういうのを見ると、やっぱり経営者もある意味、社員と一緒で勉強もしないきゃいけないし。

武田:なるほど。

岩瀬:工夫もしなきゃいけないし、ということなので。なんか「これだ」ってひとつあるわけじゃないんですけど。自分の仕事の仕方とか、あるいはその生活のスタイルとか。時間の使い方とか。そういうのを色々とちょっとずつ変えていくことによって、少し前よりも上手にできるようになっているのかなっていう。小さな改造の繰り返しですね。

武田:なるほど、そうですね。

村上:私は、なんですかね。やっぱりまあ自分ひとりじゃできないな、っていうのをどんどん感じてきていることが大きいかもしれないですね。やっぱりあの経営者としてというか、初めは「自分で自分で」みたいな感じだったのが、なんか逆に自分がやらないほうがいいんだっていうことで。

あとは自分が逆にわかっていない、できていないことを理解して、それを認めることが会社の成長になるなとか。なんかこう自分がっていうところから、会社であり、組織外にどんどん変わっていっているっていうのがすごく感じますね。

岩瀬:あとはやっぱり会社の仲間からも、色々とお互いフィードバックをするというか。社長であっても役員とか部長レベルから、もっとこういう風にすれば会社がよく動くっていうのを色々言ってもらって。それを自分で消化して、また少しずつ進化させていけるっていうのが、少しずつできるようになってきて「少しは成長しているのかな」って思ったりしますかね。

目標に対して、熱狂する組織を作りたい

武田:そうですね。きっとなんか50歳、60歳になって振り返ると、またなんかすごく面白いお話が聞けるのかなと。村上さんとこの間話したよね。「何歳まで経営やりたいですか?」って。やっぱり50、60まで全然現役でやりたいみたいなお話だったので。ぜひね、またそういう時にもう1回お話聞きたいと思うんですけど。お時間そろそろなので、ぜひこのお二人からですね。ひと言ずつメッセージを頂きたいと思います。

岩瀬:経営者であり、マネージャーであり、色んなプロフェッショナルな方いると思うんですけど。継続して本から学び、人から学び、やりながら学び、自分が高まっていくことがチームの成長に繋がると思うので。私自身も勉強して、成長していきたいと思いますし、みなさんもぜひ頑張ってください。

武田:ありがとうございます。村上さん。

村上:はい。どのような方がちょっと見ているかはわからないところもあるんですけど。まあ抱負として、お話をさせて頂くと。ほんとこれからだ! っていう。まだ創業して10年も経っていない。で、人生考えるとまだまだ折り返し地点来てないような状態で。「当たり前を発明する」っていうその目標に対して、熱狂する組織っていうのを作って、私自身も経営者としても一歩ずつ成長していければなと思いますので、応援よろしくお願いいたします。

武田:はい。ありがとうございました。